- Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
- / ISBN・EAN: 9784492315248
作品紹介・あらすじ
GAFAが台頭する中、無形投資の増大は生産性や格差にどのような影響をもたらすのか?
企業・投資家・銀行・政府はどのように対応すべきか?
有形資産とは異なる無形資産の4つの特徴とは何か?
これまで計測できなかった無形資産の全貌を、初めて包括的に分析した画期的名著
『フィナンシャル・タイムズ』ベスト経済書
【推薦の言葉】
「世界経済最大のトレンド『無形資産』を理解したければ、本書を読むべきだ」――ビル・ゲイツ
【無形資産の一例】
・スターバックスの店舗マニュアル
・アップルのデザインとソフトウェア
・コカ・コーラの製法とブランド
・マイクロソフトの研究開発と研修
・グーグルのアルゴリズム
・ウーバーの運転手ネットワーク
感想・レビュー・書評
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最初に読んだとき、難しすぎて、よく理解できなかった。
ナニコレ?って思って、2021年11月21日の時点では
★ という評価にしたんだけど。。。
2022年1月19日
マイクロソフトが、米ゲーム大手アクティビジョン・ブリザードを687億ドル(約7兆8700億円)で買収する、というニュースが世界中を駆け巡った。
メタバースへの先行投資で、その朝、日経新聞を読んでて
「あ、この前読んだ、本に書いてあったヤツだ」
って気づいた。
アメリカの有形資産と無形資産の推移のグラフを見て、すぐにピンときた。
かつては、先進国ですら、無形資産は添え物でしかなかった。
しかし、アメリカでは、1990年代半ばに、無形投資が有形投資を追い抜く。
そのことが、この本には書いてあるし
2ヶ月後に読んだ日経新聞の記事にも同じことが書いてあった。
日経新聞の記事をまとめると
マイクロソフトは、なぜ687億ドル(約7兆8000億円)もの金額で、ゲーム会社を買収しなければならなかったのか?
財務諸表を見ても、よく分からない。
アクティビジョンは株式上場企業で、2021年9月末時点の純資産が
1兆9000億円。
買収額がそれを超えた部分
つまりマイクロソフトが支払うプレミアム(のれん)は6兆円弱にものぼる。
ここ10年で6件以上の企業を買収したマイクロソフトにはすでに
5兆7000億円ののれんがあり
新たな買収でそれが2倍以上に増える。
「払い過ぎだ」との声がある一方
「現在の財務諸表を基準にする点にこそ問題がある」との見方もできる。
のれんとは「会計監査で認識できない見えない資産」
現在の会計基準は製造業が主役だった時代に基礎ができたため
無形資産を計測しにくい。
有形資産の少ないIT企業は純資産が小さくなり
買収される際はプレミアムが大きく見えやすい。
アクティビジョンも本当の価値は1兆9000億円と7兆8000億円の間
マイクロソフトはメタバースのもたらす成長余地に期待を寄せ
デューデリジェンス(資産査定)の結果を受けて
のれん部分の6兆円弱を明確な無形資産だと考えた。
逆に言えばIT企業の無形資産がどの程度になるかは定期的な会計監査ではなく
M&A(合併・買収)の際に初めて顕在化する。
他のIT企業にも似た動きはあろうが
注目すべきは財務諸表には映らない「見えないメタバースの資産価値」になる。
この記事を書いた人
日経新聞コメンテーター:中山 淳史
自動車、電機など産業動向、経営トレンドに精通。編集委員、論説委員などを経て
2017年2月より現職。「GEと東芝」「移動の未来」などで講演多数。
2001年の米同時テロをニューヨーク駐在時に取材。アルゼンチン留学も。
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本を読んだだけでは、オレには内容が理解できなかったんだけど
日経新聞のこの記事読んで、やっと、意味が分かったわー。
この本の評価を、★ から ★★★★ に引き上げた。
これは、重要な本だ。
さて、本書の内容に戻る。
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図2-1 アメリカの有形資産と無形資産の推移
かつては、最先進国ですら無形資産というのは添え物でしかなかった。
アメリカでは、どうも、1990年代半ばに、無形投資が有形投資を追い抜いたらしい。
53
知識生産もGDPを引き上げる
95
なぜ無形投資はスケーラブルなのか
97
ウーバーの運転手やAirbnbホストやインスタグラム利用者のネットワークやHTMLのちからや、ウェブの元となっている無数の規格は、無形資産であり有形資産ではない。
98
グーグル、MS、フェイスブックは、かつての製造業の巨人に比べて必要な有形資産が少ない。
99
グーグルの検索はアルゴリズムが最高でほぼ無限にスケーラブルなら、ヤフー検索なんか使う理由はあるだろうか?勝者総取りシナリオが普通になるだろう。
105
スピルオーバー
ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「スピルオーバー効果」の解説
スピルオーバー効果
spillover effect
漏出効果,拡散効果という。
元来,公共経済学の分野での用語であり,公共サービスの便益が,給付を行なった公共体の行政区域を超えて拡散し,費用負担をしていない周辺の公共体もその便益を享受する現象であり,ある種の外部経済効果である。
たとえば,公園,公共施設の便益が周辺に及ぶ場合のほか,河川の水質規制の強化が下流域の他の公共体にその便益が拡散する場合などがあげられる。
最近では,技術開発の分野で,その効果が本来意図した業種を超えて他の関連業種にまで波及することを指していうこともある。
まとめ
グラフがいっぱいあるのは、視覚的に理解できるので分かりやすかった。
カタカナになった英語が、分からないものが多かった。
オレはモノを知らなさすぎる。
頭の良い翻訳というのは、ムダに、分かりにくい表現は使わない、ということを、山形浩生は分かっているはずなのに、どーして、こんな日本語になっていないカタカナ英語を多用するの?詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
世界時価総額上位をみれば無形資産を活用する企業ばかり。それらの企業はいまや国家を超越しようとしている。無形資産企業への富の集中と不可分性(と無形投資という多分の投機性)を、主に経済学的視点から分析する。著者曰く無形資産の特性は①スケーラビリティ、②サンクコスト、③シナジー、④スピルオーバーの4つあり、特に③④が無形リッチがWinner takes allになる本質であろう。GAFAMしかり、これからの自動運転のCASEやシェアリングエコノミーも同様の世界が来るだろう。面白いのが無形資産が優位性の源泉となればなるほど、人材といったソフト部分の流動性は高まるということだ。無形をいかに固着させるかという逆説が今後の経営戦略の要になるかもしれない。
途中から無形資産からポリティカルまで展開するのはやや飛躍し過ぎだが全体的には興味深い分析が多い本であった。
余談だが会計で『無形「固定」資産』と呼ぶが、最初は「無形」で「固定」とはこれ如何に?と混乱したものだが、所謂権威あるお偉い方のこういったセンスにややガクッとする。 -
アメリカの経済学者による無形資産について述べた本。企業が発表する財務諸表では、有形資産のみが記されているが、「のれん代」といわれる資産やシステムやソフトウェア、ガバナンスや教育など、企業の経済活動に大きく影響する無形資産の価値が、大きくなってきている。しかしながら、この無形資産はその価値を数値化しづらく、影響も測り難い。これら無形資産の特徴を纏めており勉強になった。内容はやや発散的であり、体系的ではないところが残念。
「あのライト兄弟は、世界初の飛行の後で、もっと優れた飛行機の開発に時間を費やすどころか、特許を侵害していると思った競合開発者と戦うのにほとんどの時間をかけていた」p14
「雇用と解雇に制約の多い国は有形資産に多くを投資し、無形資産への投資は少ない」p44
「(コンピュータによる定型作業の置き換え)電話交換所での交換作業、生産ラインでの反復作業、銀行での現金払い出しなどだ。そして過去数年でコンピュータはさらに賢くなった。飛行機の搭乗券を発券し、スーパーでレジ打ちをして、電話でありがちな質問に答えてくれる。こうしたコンピュータがますます安くなると、企業は低技能労働者をコンピュータで置き換えるほうがずっと得になる。その結果、労働者の需要は下がり、したがってその賃金も下がる」p181
「企業戦略、経営、会計、経済学の専門家に投げかけるべき最も重要な実務的質問は「どうすればうちの企業が他を出し抜けるだろうか?」というものだ」p275
「(無形資産についての本書の結論)
1. 有形資産から無形資産への長期的なシフトが起こっており、今なお続いている。
2.このシフトの大半は企業のバランスシートや国民会計に登場しない。会計士や統計学者は無形支出を投資としては計上せず、日常的な経費扱いにするからだ。
3.無形資産が生み出す無形の知識ベースの資産はスケーラブルで、サンクコスト(埋没費用)を持つ。そしてその便益はスピルオーバーし、他の無形資産とシナジーを示しがちだ」p353
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【電子ブックへのリンク先】
https://elib.maruzen.co.jp/elib/html/BookDetail/Id/3000086512
学外からのアクセス方法は
https://www.lib.muroran-it.ac.jp/searches/searches_eb.html#mel
を参照してください。 -
経済学の位相転換がよくわかった
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見えるものにしか価値を示しにくい「人間」の本質をついている。これだけソフトパワーの時代と言われても、まだ変化してない。
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今日、先進国では「無形資産」への投資が増えている。この無形投資の台頭は何をもたらすのか。有形投資とは異なる特徴を述べ、経済や社会に及ぼす影響について解説した書籍。
無形資産とは、物理的なモノではなく、アイデアや知識、社会関係でできた資産のこと。あらゆる先進国で重要性を増しており、一部の国では有形投資を上回っている。
無形投資には、次の4つの特性がある。
・サンクコスト(埋没費用)
無形資産は売却することが難しい。そのため、サンクコストと呼ばれる回収不能な費用が生じやすい。
・スピルオーバー(波及効果)
無形資産は、他社が比較的簡単に活用できる。例えば、ほとんどのスマホは、アップル社のiPhoneを真似ている。
・スケーラブル(拡張可能)
無形資産はスケーラブルであることが多い。例えば、いったんチェーン店のマニュアルを作れば、それは全店舗で使える。
・シナジー
無形資産は、組み合わせることで価値が高まる。こうしたシナジーは、しばしば革新的で予想外の規模になる。
現在、経済学の分野で最も困った問題の1つが、投資と生産性の低下つまり「長期停滞」。「有形投資から無形投資への長期的なシフト」がそれを引き起こしている可能性がある。
金持ちは過去数十年でより豊かに、貧困者はより貧しくなった。無形投資の増大が、富と所得双方の格差を増大させている。
無形資産は、有形投資とは違う振る舞いをする。よって、無形資産が支配的な経済もまた、違う振る舞いをするだろう。 -
GDPの救えていない価値を理解するという点で、非常に参考になった。一方、結局定量化は難しいんだなあという点で、今後の行動への示唆はあまりないのかなという感じでもあった。
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無形資産の可能性を感じさせる一冊
ただ結論めいたものが見えなかった
共有=コモンの考え方も今後の流れかな -
●GDP要素のうち、公共不況の原動力となるのは投資だ。その中の無形投資の割合が大きくなっている。
●無形投資は埋没費用を表すことが多い。有形設備のように転売して換金することが困難だ。トヨタのカンバンなど。
●トレーニングジム。ソフト、ブランド、プロセス、研修〜。短期的にはお金がかかるが、長期的にはジムが機能して儲けるのに役立つ。
●スーパーなら、ポイント、顧客、在庫管理システムや、ブランディング、マーケティング。
●Appleなら、デザインやサプライチェーン。
●ほとんどの有形投資は製造業が中心だ。対して無形投資は労働のウェイトが高い業種。
●無形経済の唯一の原因がコンピュータの台頭かと言えば、ちょっと考えにくい。
◾️無形投資はますます重要になってきた。いろいろな理由があり、経済におけるサービス業と製造業のバランス変化、グローバル化、市場の自由化拡大、ITや管理技術の発展、サービスの投入費用変化などがある。
●GDPはどうやって測るのか?国内の消費者が支出した額だけではなく、企業の設備投資を足す。この枠組みでは、物理的なものだけに厳しく制限された。93年にソフトウェアも投資とみなせると発表し、無形投資が含まれるようになる。
●無形資産で難しいのは、減価償却と除却の計算である。その見積もり具合。
●無形資産は簡単に真似される。大きなスピルオーバー(漏れ出す)を持っている。
◾️スケーラブル、サンクコスト、スピルオーバー、シナジー 4S
●安い金利なのに低投資。これが長期停滞。
●無形資産は移動性が高い、つまり課税し難い。