両利きの経営(増補改訂版)ー「二兎を追う」戦略が未来を切り拓く

  • 東洋経済新報社
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  • Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492534519

作品紹介・あらすじ

既存事業を深め、新規事業を育てる「両利き」こそ、DX・コロナ時代を生き抜く知恵だ。
世界のイノベーション研究の最重要理論「両利きの経営」に関する初の体系的な解説書の増補改訂版。前版は2019年2月に刊行され、経営実務の世界でも大きな話題になった。本書は、2021年9月に刊行された原書第2版の翻訳である。豊富な事例を挙げて、成功の罠にはまった企業・リーダーと、変化に適応して成長できたそれとを対比させながら、イノベーションで既存事業を強化しつつ(深化)、従来とは異なるケイパビリティが求められる新規事業を開拓し(探索)、変化に適応する両利きの経営のコンセプトや実践のポイントを解説する。これは、多くの成熟企業にとって陥りがちな罠であり、イノベーション実現に必要な処方箋が、この理論の中にある。ネットフリックス、アマゾン、富士フイルム、AGCなど、企業事例を豊富に収録。日本企業への示唆も多い。改訂にあたっては、第4章(企業文化)と第7章(イノベーションの3つの規律)などが追加されている。入山章栄氏(学術的な観点から)、冨山和彦氏(実務家の観点から)による「解説」を収録。

感想・レビュー・書評

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  • 前々から読もう読もうと思っていて、
    積読状態だったんですが、
    あれよあれよという間に年月が経ち、
    気が付けば、増補改訂版が発売。
    という訳で、増補改訂版も買うことになり、
    ようやくこちらの本を読むことができました。

    分厚い本の割には読みやすく(でも読むのに時間がかかった)、
    たくさん選も引き、読んでみたらやっぱりスゴ本だったというオチです。

    「両利きの経営」については、至る所で言われていることであり、
    「もはやネット上本だけでまぁいいか」となると思うのですが、
    やっぱり本家本元のこちらの本を読むことで、
    自分の「両利きの経営」に対する理解度を格段に上げることができました。

    こちらの本に感化された人は、
    本の中にも出てくるAGCのケースをより詳細に記した
    「両利きの組織をつくる」も是非、一緒に読んでもらいたいですね。

    ※両利きの組織をつくる
    https://booklog.jp/users/noguri/archives/1/4862762867#comment

    経営者(を目指す人)なら、絶対に必読な本でしょう。

  • 両利き。つまり既存事業の深化と新規事業の探索。これらの両軸で事業拡大させていく。既存事業の成功体験が新規に悪作用したり、そのリソース配分やリーダーシップの在り方は単純ではない。時勢のタイミングや商材、競合にもよる。そうした難しさを事例を挙げながら解説。教科書のような本。

    破壊的イノベーション、破壊的技術は、新しい顧客層の心をつかみ新しい製品やサービスを通じて新規市場を創造する。しかし合理的な経営者であれば収益性の悪い小規模でかつ不確実な市場に参入することについて、説得力のある論拠を示す事が難しい。コストダウンが命題の成熟事業で何とか競争しながら、空振る可能性のある新しいビジネスモデルを探索する必要がある。組織文化も違え、矛盾するようにも見えるが、これを成立させた後にティッピングポイントがある。

    例えば、Netflix VSブロックバスターの事例。Netflixは新事業を成功させるために、既存事業とのカニバリゼーションも辞さなかった。郵送DVDレンタルの売り上げを犠牲にし、動画配信へ。

    1848年創業の時計メーカーオメガは1960年代半ばに電子式時計のアイディアを探るためヌーシャテル大学に補助金を出した。研究者は電子式時計に必要な特許を取得しオメガに提供しようとしたが、オメガは申し出を断った。その後、その特許は日本の服部時計店、現セイコーホールディングスとライセンス契約。それからスイスの時計産業が崩壊し、800社が倒産。新しいCEOにニコラスハイエクが起用されてようやく持ち直しているが、こうした事例も紹介される。

    大手航空会社と格安航空会社は、多くは大手が格安航空会社を買収したりLCCを設立するなどして共存態勢に入ったが、基本的な組織能力は同じながら顧客セグメントが異なっていたため、結果としてうまく運用できなかった。LCCの経営ではスピードと柔軟性が求められるがサービスは求められない。フルサービスの航空会社は逆。2つの組織では人材、指標、インセンティブ、文化のタイプが全く異なっている。結果的に対立や運営上の混乱が生じたケースもある。またLCCの低収益事業からのリターンを理解されなかったケースもある。

    多くの企業では研究開発部門がアイディアを創出する業務を担っている。しかし多くの場合、既存の利益を維持しなければならないと言う考えから新しいものを開発するよりも、既存事業の改善に集中される。成熟事業のリソースをいかに新規事業に振り分けるか。情報共有のモチベーションも上がらない。至近、こうした課題につけんだ舶来のSFAがプラットフォーム利権を得ようと、日本のサラリーマン企業に侵食してきている。よくよく考えて導入すべきだろう。

  • 両利きの経営とは、深化と探索の両方を追求する経営のこと。

    社会や技術が素早く変化する現代においては、既存事業の成功が”時代を遅れ”を生み出す元凶になる場合もある。(サクセストラップ)

    よく勉強をしている人ならば、「そんなことはわかっている」と思ったかもしれない。

    この本がすごいのは、「両利きの経営が大切だ」とただ声高に叫ぶだけでなく、様々な企業の成功事例、失敗事例から、両利きの経営を目指したときにあらわれる課題や、その課題の乗り越え方まで踏み込んでいるところだ。

    深化と探索は、反対方向の力が必要だ。(探索とは既存事業の焼き直しや、小さな改善イノベーションではなく、自社にとって未知の領域への拡大を指す)

    方向性が違うので、既存事業のマネジメントやリーダーシップでは、適応できない。つまり同じ組織・風土の中で両立させるには常に矛盾が生じる。

    本書では経営者(層)や中間管理職(ミドルマネジメント)による、リーダーシップの課題であると位置づけている。

    つまり、両利きの経営の成否はリーダー次第ということだ。

    両利きの経営を実行する際に必要なリーダーシップの5原則を以下に抜粋する。

    1. 心に訴えかける戦略的抱負を示して、幹部チームを巻き込む
    2. どこに探索と深化の緊張関係を持たせるか、明確に選定する
    3. 幹部チーム間の対立を回避せずに、向き合う
    4. 意図的にユニットごとに異なる基準を課して「一貫して矛盾する」リーダーシップ行動を実践する
    5. 探索事業と深化事業に関する議論や意思決定の実践に時間を割く

    第1,第5の原則は、普遍的なリーダーシップのありかただが、2,3,4に関しては複雑かつ高難度なリーダーシップである。

    経験や明晰で論理的な思考力だけでなく、強い意志、精神力、高度な調整力などが求められると感じた。リーダーとしてはかなりのハードモードと言える。

    この時代に経営の持続可能性を担保するには、訓練により身につけた強さとしなやかさを兼ね備えたリーダーシップが必要なのだろう。

    チャレンジしてみたい気持ちはあるが、正直、うまくできる自信はない。

  • 両利きの経営の増補改訂版。事例がアップデートされ、入山さんと冨山さんの解説も増補されている。
    両利きの経営は人口に膾炙した感があるが、その実行の難しさはあまり理解されていないように思う。単に深化と探索の両方を追えばいいというわけではなく、容易に深化の道に陥ってしまう組織の慣性=経路依存性を跳ね除け、探索の道を探るのか。また、単にアイディアを出せばいいというものではなく、それをいかにスケールされるのか。そこに力点がある。
    そのためのフレームとして、既存・新規事業×既存・新規顧客のマトリクス、深化と探索、アイディエーション、インキュベーション、スケーリングを提示する。
    膨大な事例とともに著者たちがポイントとしているのは、探索型組織をどこにつくるのかとスケーリング。
    探索型は既存組織のリソースを活用しながら、一方で既存組織の枠組みからは離れて動けるようにしてあげる必要がある。なので、スピンアウトするのではなく、社内で別組織とするといったことが強調される。また、スケーリングの難しさは多くの紙幅が費やされている。実際、スタートアップとの連携やデザイン思考、リーンスタートアップなどの方法論によって、アイディエーションやインキュベーションに取り組んでいる企業は数多くあるが、スケーリングのタイミングで大体失敗している。スケーリングにあたっては、既存ビジネスから新規事業へのリソースの移転が必要だけれど、それ自体、そもそも既存事業側からしたら面白くない。さらに新規事業は簡単には収益化せず、短期的には既存ビジネスに投資した方が有効にみえるからだ。
    そのために、経営がちゃんとコミットし新規事業を支援すること。一方で撤退の基準も決めておくこと。このあたりの具体的な事例が特にIBMとシスコの事例を使って説明される。
    また、冨山さんの解説でも触れているがアイディエーションも自分たちで画期的なアイデアを考えないといけないという思考パターンにはまることも多く、どちらかというとパクるつもりで取り組む必要があるなど、学びは多い。
    それにしてもアメリカの本らしく分厚い。そこだけが玉にきず。最後に冨山さんがちゃっかりIGPIの宣伝をしているのが笑えた。

  • 新設の組織文化の章を読みたくて手に取り、一気に読めた。事例は豊富であり、Amazonのケースは興味深い。

    探索と深化の両立を最初から選択肢で外す企業は少ないだろう。しかし、リーダーシップが要であるということになるとそれはそうですよね、とはなる。個別性が強いようにも思えて、何となくモヤモヤしてしまった。

    傍においておき、自分が壁にぶち当たった時にふと読み直すと感じ方が変わるのかもしれない。

  • 久しぶりのザ・経営書。
    イノベーションと言えば、クリステンセンさん世代(?)な私。有名な「イノベーションのジレンマ」を越えるには、クリステンセンさんの言うように新規事業担当を別組織にするだけじゃ既存の経営資源使えないじゃん?という問題意識から書かれている。
    しかし、結局は別組織にして、上が仕組みや文化でしっかり繋いでねというように読める。
    この手の経営書、以前は随分読み漁ったが、結局経営者次第じゃんと思えてしまって、しばらく遠ざかっていた。この本は訳が良いのか翻訳本にしては読みやすいし、事例も豊富で面白いんだが、やっぱり当時の感想を思い出した。学者さんが大企業を一括りにして語っている感が、マネジメント層ではない人間には刺さらないんだよなあ。。

  • 2022/7/13
    イノベーションのジレンマでも語られている通り、優良企業は持続的イノベーションができているからこそ、破壊的イノベーションができない。短期的視野に立ったときに破壊的イノベーションは市場規模が小さいにもかかわらず多くの投資を必要とするため合理的で優秀なマネージャーは破壊的イノベーションに手を出さない。本書のなかではサクセストラップとして語られている、持続的イノベーションと破壊的イノベーションでは必要とされる人材、スキル、KPI、プロセス、要するに組織能力すべてが全く違うのであり、持続的イノベーションを起こすための調整は破壊的イノベーションを阻害する調整でもある。
    2つのイノベーションの両立の難しさの論理は引き継ぎつつ、既存事業をもつ優良企業が破壊的イノベーションを起こすためにどうすればよいのかという問いに対して、クリステンセンはスピンアウトすればよいという短い回答だったが、本書では既存事業の深化と新規事業の探索を両立させる両利きの経営をすることの重要性をといた。両者を適切に分離して新規事業が独自の意思決定と組織能力を培えるようにしつつ、既存事業の顧客、技術、バックオフィスといった資産にアクセスして単独のスタートアップに対する優位性を確保しなければならないからである。ここではstrategic positioningだけでなくorganization capabilityも重視されている点に留意したい、破壊的イノベーションができなかった企業はその重要性に気づかず戦略を持たなかったのではなく、戦略を持ちつつそれを実行するために適切な調整を行う組織能力を持たなかったためである点が強調されている。
    両利きの経営の要点は下記4点である
    ①既存事業で培った資産を活用する新規事業戦略。これは既存事業と新規事業の協力を促すために必要
    ②経営陣の保護や支援。新規事業に対する投資とこれに関わるメンバーの評価・報酬を適切に与えないと既存事業は自分たちにとって邪魔な新規事業を潰してしまう
    ③組織的アーキテクチャ。CEO直下にするか経営ボード直下にすることで既存事業からは切り離しつつその協力は得られるようにすることが必要。探索フェーズ終了後も儀礼的な管理プロセスが続かないように投資、EXITに関する規律も必要。
    ④組織的アイデンティティ。グループで共有する価値観は①のロジカルな側面に対して、エモーショナルな側面で協力のために必要
    またなにより両利きの経営の実践にはリーダーシップが必要である。下記の3点が重要
    ①リーダーは自ら戦略と両者を統合するアイデンティティを語り経営幹部を巻き込まなければならない、決して戦略だけを決めてその後を人任せにして成功することはできない。
    ②対立を明らかにしつつその葛藤を議論して建設的に乗り越えるようチームを導く必要がある。そうしないと重要なことから目を背け、儀礼的なアジェンダで時間を消費する会議が蔓延するようになる。
    ③深化と探索は本質的に異なるものであり、両者で求めることが違うことを理解して一貫して矛盾した対応を取り続ける必要がある
    ・カタログ販売から百貨店への移行に成功したがそこからカテゴリーごとのディスカウントショップやECに破壊されたシアーズ。
    ・フィルム市場の消滅と運命をともにしたコダックとヘルスケアやプリンター事業への移行に成功した富士フイルム。
    ・DVDの郵送からストリーミング配信企業に移行して成功したネットフリックスと、その存在を認知しながら軽視し、ビデオレンタルショップの衰退と運命をともにしたブロックバスター
    ・書籍コマースから総合コマース、物流、クラウド事業に移行したアマゾン、ハードからソフトウェア・サービスに移行したIBM、新聞・テレビからネット配信に移行したUSAトゥデイが成功事例として紹介されている

  • p109 ベゾスの哲学は、物販で儲けるのではなく、顧客の購買決定を手伝うことで儲ける〜
    p123 ゆっくりと安定的に進んでいけば、時間とともに、どのような挑戦にも食らいついていける。



  • 深化と探究は
    市場と組織能力の掛け算

    既存×既存=領域A (深化)
    新規×既存=領域D
    既存×新規=領域C (深化)
    新規×新規=領域B (探究)

    比較
    Amazonの成長過程
    ブロックバスターとネットフリックス
    コダックと富士フィルム
    シアーズとウォルマート
    オメガとSEIKO

  • DX・コロナ時代の生き抜きは「両利きの経営」。増補改訂版は世界のイノベーション理論を具体的な事例で解説し、既存事業を強化しつつ新規事業を開拓する戦略を提示。企業文化とイノベーションの規律に焦点を当てた新章も追加。ネットフリックス、アマゾン、富士フイルム、AGCなどの事例から得た知見が、多くの企業に示唆を与える。

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著者プロフィール

スタンフォード大学経営大学院教授。米国を代表する組織経営学者であり、「両利きの経営」の提唱者。カリフォルニア大学バークレー校で経営学修士(MBA)、組織行動論の博士号を取得。同校教授、ハーバード・ビジネススクールやコロンビア・ビジネススクールの客員教授を経て現職。専門はリーダーシップ、組織と企業カルチャー、人材・人事マネジメント、イノベーションなど。主な著書に、『競争優位のイノベーション』(ダイヤモンド社)、『両利きの経営』(東洋経済新報社)。

「2020年 『両利きの組織をつくる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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