出版・新聞絶望未来

著者 :
  • 東洋経済新報社
3.66
  • (6)
  • (10)
  • (15)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 100
感想 : 16
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492762080

作品紹介・あらすじ

サドンデスか?緩慢な死か?紙メディア「最後の日」が近づいている。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ITの進歩は結局のところ失業と格差をもたらしている、99%が反抗すべきはウォール街じゃない、ってとこが慧眼。

  • チェック項目16箇所。日本の電子出版市場は、いまだにガラケーでのBL、TLなどを中心とした漫画コンテンツが売れているだけ、いわゆる一般書とされる文芸書、ノンフィクション書、経済書、ビジネス書などはほとんど売れていない。日本では、紙は定価で電子は自由価格と別々のシステムになっている、ということは、出版社が電子書籍の値付けができなくなると、それが紙の書籍に影響し、紙の書籍が大幅に売れなくなる可能性が出てくる、安くされた電子書籍に対して、高い紙書籍を維持するのが困難になることが考えられる。日本の音楽産業は、ネット配信が普及したことでCDショップが減り、結果的に市場規模が縮小した、そこで、電子書店は、リアル書店と”Win-Win”の関係を築いていくべきだと考えているというのだ。いまの若い世代は、クルマはもとより、テレビもPCも買わないという、たしかに「iPhone」は売れても「iPad」は売れていない、そう考えると、いくら安くなったとはいえ電子書籍専用端末を買うとは思えない。アメリカ人と日本人の読書スタイルはまったく違う、日本では「立ち読み」だがアメリカでは「座り読み」だ、とくに子供たちは、床に座ってマンガが読んでいる。世間は書店の仕事を誤解している、書店の仕事は知識労働ではなく肉体労働である…朝は、まず台車を押して倉庫から本を運び、書棚の入れ替え作業、雑誌の区分け、昼は食事時間もなく電話に出て注文対応、お客に入荷連絡、レジに立てば休む間もなく、カバーかけ、1冊1冊の本は軽くとも、段ボール詰めにされたら腰が抜けるほど重い、実際、書店員の職業病は腰痛で、バイトはそれが原因で辞める者が多い。なぜ書店は大型化しないと、現状では生き残れないのか?それへあ単純にタイトルをそろえなければ、読者のニーズに応えられないからだ…読者は来店してお目当ての本がなければ、昔なら注文をしたが、いまは「それならネットで買う」となってしまう。コミック誌がやってこられたのは、連載の人気漫画をコミック化して利益を出してきたからである、コミック誌で発信し、コミックスで売る、このビジネスモデルが崩れようとしているのだ。「あるデータでは、20代のアニメーターの平均年収が110万円。それだと生活できないので、若い人がこの業界に入らない。それで、高齢化が進んでいるとも言われているます」。最近流行りの「格差社会」論でも、「上位2%の裕福層が富を独占している」などというが、漫画家の世界もまったく同じである、ただ、この構造に対し、「裕福層からおカネを取って配分しろ」とは、誰も言わないことだけが違っている。20年前全米で6万人いた新聞記者は4万人に減ってしまった、その結果、「取材空白地域」(記者が不在で取材がなされない地域)がどんどん広がった、そうしたところでは、公務員の不祥事や投票率の低下など予想されなかった現象が起きたというのだ。法廷に記者が行かなくなったため、裁判はいい加減になった、医療分野の取材も行き届かなくなったために、医療サービスも低下した、しかし、こうしたことをネットメディアは穴埋めしてくれない。テレビはもう完全にコモディティになってしまった、すでに日本でも、高画質高品質は求められていない、まして受像機だけのテレビは新興国でさえ、競争力を失いつつある。あなたは、わたしたちの生活からどれだけ紙がなくなったか、考えたことがあるだろうか?電車の切符はいまやほぼなくなった、そのせいで、電車の改札口に係員の姿はない、銀行通帳もほとんど見かけなくなった、出入金はATMでやるようになったため、銀行の窓口係の数は大幅に減った、つまりデジタル化は失業をつくり出してきたのである。

  • ファクトはたくさん盛り込まれているが、見通しや提言はほとんどない。最後は付け足しのような結論。

  • ☆は4つ。

    表紙にはAmazon社のCEOジェフくんが電子書籍端末キンドル・ファイヤを発表した時の写真が載っている。
    なので題名からの印象もあって、のっけからこの本の著者は米人だと思って読み始めた。しばらく読み進めるが,あの翻訳書独特の読みにくさが無い。しかし引き続き読む。
    いやどうもこれは著者は日本人だなぁ,と思い直してつぶさに奥付とか観る。やはり日本人でした。すまぬ。

    本の中身はいろんことが書いてあるけど一番気になったことだけ紹介。
    漫画雑誌がどんどん売れなくなっているらしい。
    そういえば電車の中で少年ジャンプを読んでいる青年や中年がめっきり少なくなったと思う。
    みんなスマホをいぢっている。
    そうしてなんとスマホで少年ジャンプを読んでいるのだそうだ。おい,それ本当にホントか!?
    じつわわたしはスマホは使っていない。字が小さくてなんとも使えない。困った困った。
    いやそういう話ではなかった。すまんこってす。すごすご。

  • なかなか出版を取り巻く中の人が言い出せないことを歯に衣を着せずにさらけ出している面では、ある一定の評価。
    しかし出版の遙か外にいるいち読書好きが見るこの業界の動向としては、電子書籍ビジネス以前の既得権益に触れられていないところが、非常に残念であり、そこに触れていないところが中の人の限界なんだろうなと思わせる。

  • 2021/07/17

  • ビジネス

  • 卒論のために購入した一冊。私が参考にしたかったテーマは、日本では何故電子書籍は売れないのか。本書では、電子書籍のヒットに成功したアメリカと比較して分析した点で、非常に分かりやすく、理解も深まった。また著者は、電子メディアからもたらされる出版不況の現状を述べた後、本書の終わりにかけて、出版業界だけでなく、様々な業界にまで負の影響が及ぼされていると警鐘を鳴らしている。ごく当たり前に大多数の国民が利用しているスマートフォンの存在が、日本の産業を脅かしていると考えると、極めて恐ろしく感じる。
    2015.12.18

  • 著者の言う通りなら、本当に絶望未来だ。もう救いようがないところまで来ている。確かにネットの出現で情報に対する価値がコペルニクス的に変わってしまった。デジタルに行くも地獄、紙の世界に残るも地獄で進退窮まった、というところか。
    著者の分析はどれも正しいとは思うのだが、そもそも新聞とか出版物を(金を払ってまで)欲しい人が元より少ないというのが根本原因ではないのか?昔は娯楽といえばテレビと読書くらいしかなかったが、ネットとケータイの出現でいくらでも暇つぶしができるようになった。本を読むより、Twitterでしょーもないつぶやきを見たり、バカみたいに画面をこすってドロップを消す方が何倍も面白いという人が圧倒的に多いのだ。一億総白痴化政策の成果である。ICTの進化により、ようやくそういう人にふさわしい娯楽が極めて手軽に提供され始めたのが真相ではないかと思う。
    という訳で、この先も出版業界が以前の輝きを取り戻すことはないだろう。ブクログメンバーのような人口の5%程度の知識人を相手にした極めてニッチなマーケットに、良質なコンテンツを提供することで細々とやっていく、というイメージ。残念だけどね。

  • 光文社を早期退職した著者の、出版業界の現状に対するなんとも言えないモヤモヤシリーズ、というと悪意があるか。
    で、どうしよう?がなかなか見つからないこの手の話。日本全体の構造不況みたいな要素も少なからずあるとも思うし…モヤモヤするよなー。

全16件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1952年、神奈川県横浜市に生まれる。立教大学文学部を卒業後、光文社に入社。「光文社ペーパーバックス」を創刊し、編集長を務めた後、2010年からフリーランスになり、国際政治・経済・ビジネスの分野で取材・執筆活動を展開中。
著書には『出版大崩壊』『資産フライト』(以上、文春新書)、『本当は怖いソーシャルメディア』(小学館新書)、『「中国の夢」は100年たっても実現しない』(PHP研究所)、『円安亡国』(文春新書)、『地方創生の罠』(イースト新書)、『永久属国論』(さくら舎)、翻訳書に『ロシアン・ゴッドファーザー』(リム出版)などがある。

「2018年 『東京「近未来」年表』 で使われていた紹介文から引用しています。」

山田順の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
三浦 しをん
佐藤 優
伊集院 静
ウォルター・アイ...
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×