- Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
- / ISBN・EAN: 9784494009909
感想・レビュー・書評
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私がまだ10代で、リマノ、という名で、ある同人誌に、エッセイやイラストを描いていた頃。オオカミ王ロボのつれあいの、ブランカという白いオオカミの、生まれ変わりだと、自分を信じている、自衛隊の女性パイロットという、不思議な人と文通していた。彼女は狼の目で、風景を視るという。大地をかける、狼である自分を感じるという。…妖精が見えるのだという。……少女の頃の、日常を超えた、交流を、想い出した。
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『科学道100冊』の1冊。
おなじみ、「シートン動物記」に収録されたお話の1つ。
おそらくは、「シートン動物記」の中で、最もよく知られた話であり、「ロボ」はあるいは世界で一番有名なオオカミかもしれない。
ニューメキシコ北部の高原に、一帯を統べるハイイロオオカミがいる。
その名はロボ(Lobo)。スペイン語でオオカミを意味する。
賢く強いロボは、少数の精鋭をしたがえ、牧場で最上のウシを狩って美食を謳歌し、楽しみのためだけに多くのヒツジを殺した。
人々は知恵をしぼってわなを仕掛け、毒餌をまいたが、ロボたちは一向に騙されなかった。ロボの首には多額の懸賞金が掛けられ、多くの猟師が彼に挑んでは破れていた。
当時、作家・画家として暮らしていたシートンは、牧場主である友人から、ロボ退治に加わるように頼まれる。シートンは以前、カナダの開拓農場に住んでいたことがあり、オオカミ猟の経験もあった。
都会暮らしに飽きていた彼は、ロボを捕らえることにためらいを感じつつも、この申し出を受け、ニューメキシコ・クルンパへと向かう。
そこで彼を迎えたのは、予想よりもはるかに賢く、想像以上に手強いオオカミの王だった。
子ども向けに多くの版が出ている物語だが、本書の特徴は、全体の1/3強を、訳者でもある動物学者・今泉吉晴による解説が占めることだろう。「ロボは、ほんとうにいたの?」「西部と東部ってなにがちがうの?」「ハイイロオオカミって、どんなオオカミ?」といったQ&A形式で、オオカミについての基礎知識や当時の社会情勢、シートンの人となりをやさしく説いている。
シートンの著作から採った絵や写真が豊富に収録されている点も特筆に値する。シートンの画家としての確かな技量、自然観察者としての優れた眼を十分に感じさせる。また、ボックスカメラと呼ばれるカメラでシートン自身が撮影したロボらの写真が見られるのも興味深い。
なお、これまでの訳書では、ロボの暮らした地をカランポーと表記するのが通例であったが、訳者が現地で調べたところによれば、かつてはCurumpawとも綴られたが、現在はCorumpaと表記され、発音としてはクルンパが近いとのこと。これは先住民族の言葉で「奥地」を意味するそうである。
多くの人の胸を打ったこの物語は、周知のように悲劇で終わる。
ロボには1つ「弱点」があった。愛する白き雌オオカミ、ブランカ。
注意深いロボに比べて、ブランカは少し用心に欠けるところがあった。シートンはその隙をついて、まんまとブランカを捕らえ、殺してしまう。そしてブランカの匂いを使ってロボをおびき寄せたのだ。
誇り高きロボは愛するもののために命を落とす。
後年、シートンの元に、10歳の少女が手紙を寄せたという。
あなたは、最低のひきょうもので、残酷な人です。
これまでどれだけの人が、強いオオカミに魅かれ、その悲劇的な死に胸を痛めたことだろうか。
シートンは、ロボの話を含めて動物記の話を「ほんとうの話」と述べている。
個人的にはこのお話、いささか「出来過ぎ」のように感じてしまうのだが、それでもこの物語に描かれたオオカミの姿の魅力が削がれることはない。
野山を馳せ、人に媚びず、仲間を愛する気高い獣。
その姿は脳裏を駆け巡り続ける。
シートンは、ロボの話を含む動物記で名を成し、全米を講演で回った後、ボーイスカウトを始めとする子供と自然をつなぐ活動に没頭していく。
シートン自身にとっても、ロボの存在は生涯、忘れえぬものであったことだろう。
*日本にシートンを紹介したのは動物学者の平岩米吉です。彼自身、オオカミについての著作(『狼―その生態と歴史』)もあります。 -
シートン動物記の中でも、特に名を知れた物語。
本書は、シートンの物語に加えて、巻末に翻訳者の今泉吉晴氏による「ムササビ先生と読むオオカミ王ロボ」と題した、シートン本人や当時の時代背景、カウボーイや原住民についてのQ&A形式の解説も掲載されています。
はじめて小学生時代に読んだときは、「シートンはなんと卑怯な手を使ったのだ」と憤ったものです。
今読み返すと、アメリカの開拓時代、人間が己の利益のことしか考えず動物を殺し、生態系を破壊した結果、オオカミが家畜を襲うようになったことがわかり、人間の身勝手さに心が痛みました。
再読のはずなのですが、電車の中で不覚にも泣きそうになりました。
人間の仕掛ける罠をことごとく逃れてきたロボが、愛する伴侶を捕えられたのちの行動に胸を打たれます。 -
多摩図書館が編集した、子どもへの読み聞かせに適した推奨本の一冊。
「いろいろなタイプの少し長い物語」としてあげられたなかの、「動物が人間のように口をきいたり、冒険をしたりする物語」として紹介。
「子どもを本好きにする10の秘訣」>「生き物・自然」で紹介された本。 -
初めてこの物語を読んだのは小学生の時でした。
親が買ってくれたシートン動物記シリーズの最初の物語。
読んだその時はこんなに賢い動物もいるのだなとワクワクしてその後のシリーズの様々な物語に惹きつけられ、それを読み耽ったのを今でも覚えています。
成人後に懐かしくてロボの話を再読した時、シートンが感じた感動が自分の中に入ってくるような感覚を覚えました。集団のリーダーとしての立場を一匹の狼がここまで貫けるものなのかと。
人間の驕りというものをロボが教えてくれた気がします。
オオカミ王ロボ、絶対に忘れません。 -
動物は人間が思っている以上にかしこく思慮深いのだと気づかされる一冊。見返しには普通のオオカミとロボの大きさの違いを比較。そういえば、教文館で実寸大のロボのパネルを見たなぁ。
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「シートンがアメリカ・ニューメキシコのクルンパを支配するオオカミのロボに挑んだ壮絶な物語。シートンは、メスのオオカミ・ブランカに対するロボの深い愛情に感動と後悔を抱く。新しいシートン動物記第1弾!
巻頭には、図書館版だけのシートンによるカラーイラストの口絵付!
小学5・6年~」 -
どんな仕掛けをしても引っ掛からないとても賢いオオカミのロボ
家畜を殺されるなどの被害を受ける
人間側はロボを捕まえるために試行錯誤するが…
知恵/聡明/オオカミ
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請求記号 480/Se 93
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昔々、マンガで読んだ気もするけど、どうもオオカミ側を想像して美化して描いてたような。今回は、子供向けではあるものの、あくまでも人目線で迷惑者である、というところをきっちり書いてて、あんま夢見がちじゃないのが良い。こんな賢いオオカミを殺すなんて酷い!みたいな表面だけ追う子供を量産してもしょうがないしな。
なんて面倒なことを言わずとも、カッコいいよ、ロボっち。牛殺された農家から見れば、家の中に賢いゴキブリが入り込んで片っ端から食料を食われるくらいムカつくだろうけど、でもオオカミは見た目がね、やっぱカッコカワイイからね。そこらへんは差別だけどしょうがない。