日本防衛の大戦略: 富国強兵からゴルディロックス・コンセンサスまで

  • 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版
3.87
  • (4)
  • (6)
  • (4)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 62
感想 : 5
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (388ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532166953

作品紹介・あらすじ

十七世紀以降、日本はオランダ、イギリス、ドイツ、そしてアメリカと、時代の覇者と同盟関係を結んできた。しかし日本は「無条件に強国に乗っかる」という戦略を選んできたわけではない。本書は、日本の安全保障政策の基盤となる理論と政策実行の際の制約を歴史的に解説し、日本の戦略家がいま創造しようとしている選択肢「ゴルディロックス・コンセンサス」(極端に強硬でも軟弱でもなく、アジアにも欧米にも寄りすぎない大戦略)について検証する。この選択肢が国民的合意を見たとき、日本はアメリカに過度に依存せず、中国の攻撃に脆弱な状態でもなく、安全に存続してゆけるだろう。軍事力と自立を均衡させ、日本の新しい安全保障の選択肢を生み出す日本の大戦略の変貌を、斯界の第一人者が国内・国際政治の歴史を交えて解き明かす。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 日本には戦略がないとはよく言われるが、そうではなく、明治の富国強兵の時代から一貫して、現実主義者による戦略策定が行われてきているとする。

  • MITの政治学者による日本の防衛戦略研究書。良質な翻訳がなされており、1950年代の吉田茂時代から、第一次安倍内閣までの政策の変遷を解説。国外からの視点だからこそ、複数の戦略をグループ化して提示していてわかりやすい。大陸 or 海洋、軍事 or 経済、アジア or 欧州、大国 or 小国。明治以来、日本の安全保障の議論には常にこういった問いが含まれていたという。1930年代は政治から軍事、1950年代は軍事から官僚、そして現在はふたたび政治が戦略の担い手になっているとまとめている。良書。

  • 本書はMITの政治学教授である著者が第2次世界大戦以前からの日本の歴史を紐解きながら、この国の戦略に影響を与える様々なグループと各グループの考え、そして戦略構築過程等を詳細に解説した本です。

    内容を簡単にまとめると

    歴史的経緯)

    戦前、大日本主義と小日本主義の2つの戦略論が激しい論争を繰り広げていたが、両者の勢力争いは欧米の人種差別などにより大日本主義の勝利に終わった。
    そして敗北の後は、小日本主義の流れをくむ吉田茂とその後継者たちが、大日本主義の流れをくむ勢力と平和主義者達の双方を制御しながら長らく日本を率いてきた。
    しかし、小日本主義の流れをくむ戦略によって経済発展に成功した後は、湾岸戦争の屈辱等、様々な要因が重なり安部首相に代表される大日本主義の流れをくむ「普通の国」主義者が実権を握り、今に至っている。

    分析)

    著者によれば、日本は歴史的にヘッジを多用しており、
    例えば現在の場合、日米同盟に強く依存しつつも、東アジア共同体構想の推進する等、安全保障と経済関係を分離させ、万が一の時に備えると言った事をしているとの事です。
    また現在、日本は国家戦略に関して変動期に突入しており、今後、他国に脅威を与える程の軍事力は持たない一方、決して侮れない力を持つと言う方向へ国民的合意がなされるのではないかとの事です。



    安全保障を含む日本の戦略に関して、その歴史的経緯に基づいて理解を深める事が出来る一冊です。
    その為、類書では余り見られない深みのある内容となっており、歴史的経緯の理解の重要性とそれが個人の判断に影響力の強さを理解させてくれます。

    読むと必ず得られるものはあると思いますので一読をお勧め致します。

  • 近代以降の日本の国家戦略として、明治日本の富国強兵、帝国日本の大東亜新秩序、戦後日本の吉田ドクトリンとあった。それを巡って戦前は幣原をはじめとする大日本自由主義者、石橋湛山をはじめとする小日本自由主義者、石原莞爾をはじめとするアジア主義者、北一輝をはじめとする日本主義者らがいて、戦後はそれらが形を変えて岸なんかの修正主義者、吉田なんかの重商主義現実主義者らがいたと。こうゆう人たちがいてどうゆうコンセンサスが生まれたかって。内閣法制局、内局なんかが抑えとして機能した。
    冷戦後湾岸戦争と朝鮮危機を経て日本の安全保障体制は変化を迫られ、2000年から中国を脅威として認識し始めた。世代が代わり、安部や石破などの修正主義者らに内閣法制局が抑えられ、防衛庁参事官制度がいじられ、海保は自衛隊第四の兵科とも呼ばれるような力と地位が与えられた。憲法改正も現実味を帯び、日本の安全保障は大きく変化した。
    そんな感じで日本国内の大戦略の系譜みたいな話。

  • 普天間問題でゆれている日米同盟の話を勉強する意味で購入した。著者はMITの政治学部長。アメリカ人の学者が書く日本の防衛戦略の書である。
    まず明治以来の日本の防衛(対外)戦略を4つに分けて考えようとしているが、これがわかりやすい。1)富国強兵時代 2)大東亜共栄圏を夢見た時代 3)日米安保と吉田ドクトリンの時代。そして筆者は日本がアメリカにも中国にも近づきすぎない4)ゴルディロックス・コンセンサス時代がくると予言している。
    予言提言はそこまで踏み込んだ事は書かれていないが、現状とその背景にある歴史の理解が凄まじく、僕には知らない事だらけであった。
    アメリカにはここまで詳細に日本の戦略を研究し把握している学者がいるが、日本に同様に諸外国の戦略を把握している人がいるのだろうか?若干不安になるのである。

全5件中 1 - 5件を表示

リチャードJ.サミュエルズの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×