昨日までの世界 上: 文明の源流と人類の未来

  • 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (414ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532168605

感想・レビュー・書評

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  • 現代国家社会と伝統的社会を人間関係、戦争、子育て、高齢者といった現代社会がまさに抱える誰もが直面する問題を切り口に比較した本でした。この視点が面白かったです。人類学のような民族学のような、それでいて社会学のような。でも専門知識を必要としない分かりやすい内容です。

    「昨日までの世界」は著者のニューギニアでの経験から始まります。1930年代にはまだ伝統的な生活を営んでいたニューギニア人が数多くいました。しかしこの数十年間でもう現代人のような生活を手に入れます。人間が数万年かけ現代的な生活様式に変化してきたことをたった数十年で。それは長い地球の歴史からみれば、伝統的社会であった時代の方が現代化して以降の時間よりはるかに長い時間を人類が過ごしてきたという歴史を、数十年間に早送りして見ているような感覚であると表現しています。しかしその昨日までの世界は新しい世界に置き換わったわけでもなんでもなく、いまも現代人の中に受け継がれているし、そこから学ぶべきこともあるとして伝統的社会の様々な生活を分析し、現代の問題の解決になる糸口を見つけようと試みています。

    なぜ国家が誕生したのか。戦争がどのようにして始まりどのようにして終わるのか。子どもに対する体罰のあり方、高齢者に対する扱い、などの考察は非常に斬新な視点で、しかも身近な問題で参考にできそうな内容です。

  • まだ読んでる途中メモ

    第一章
    友情の概念が社会によって違う
    私たちが生きている今日の世界では、個と個のつながりだけど、昨日までの世界では、その人が生まれ育った背景、姻戚関係が優先される

    ニューギニアの人と西洋人のファーストコンタクト。
    人は死ぬと白くなると信じられていたので、死んだ先祖が生き返ったと思って攻撃しなかった。
    幸運な勘違い?(笑)

    それぞれの社会で、常識と信じられているものが、ものすごく違う。それぞれの常識が成り立っている背景には、きちんと理由や事情があって、何が正しくて、何が間違っているということではない。
    だから、昨日までの世界の常識が間違っていて、今日の世界の常識のほうが正しい、ということでは、決してない。

  • 「銃・病原菌・鉄」や「文明崩壊」の著者ジャレド・ダイアモンド氏による、伝統的社会と現代社会の様々な文化・価値観・システムの比較を行った一冊です。

    上巻では土地や民族の排他性、罪と罰、戦争、子どもと高齢者などを切り口に、議論が進められます。
    ニューギニアなどの先住民と呼ばれる人々の生活習慣には驚くべきものが多々あり、それだけでも非常に興味深い内容です。
    また特にニューギニアで20世紀半ばまで伝統的社会が西洋社会との接触を持たず、非常に原始的な形で存在していた、という記述にも驚かされました。

    この本はそのよう人類学的に驚くべき発見のまとめ、という内容ではなく、そこからさらに変容を続ける現代社会への介入点を探っています。
    そのため、法律や教育、倫理観などの定義しにくい問題の明文化にページを費やしてしまい、冗長になってしまっている部分があり、少し読みにくいと感じました。

  • 現代社会の1つ前の世界として、独立した生活様式を維持していたニューギニア高地人との比較を通して、戦争・宗教・社会的つながりについて考察した本

  • 上下巻まとめて。
    主にニューギニアにみる、現代に残る「昨日までの世界」と、西欧的な現代の社会をどうすり合わせようか、ということか。
    昨日までの世界にある危険と、現代の社会にある危険はさっぱり一致しない。だが昨日までの世界に見られる建設的なパラノイアは、人が人たるためのものであったのではないか、と強く思う。
    短い時間で一気に昨日までの世界から現代の社会に放り出されると、人は大変な変貌を遂げてしまう。
    上巻の印象は、濃密な関係のある世界と、これっきり会うことがないであろう人々の利害でできた世界の対比。下巻は宗教や言語、食事などに期待された役割とその変貌。他にも多くのトピックがあるのだが、似た話の繰り返し、という気もしなくもない。
    やはり隣人とは争うものなのだなあ、などと、きっとテーマとは異なる印象を強くした。

  • 現在田舎に引越して半年。噂が重要なコミュニケーションツールで、性的に寛容、というあたりがこの町とニューギニアを結びつける…

  • 発売当初著者のインタビューをいくつか読んだため、既知の内容が多かったような印象を受けた。
    ページ数に圧倒されるが、各内容についての具体例が多いため、述べようとしているポイントだけ拾えばかなりコンパクトな内容になるのではないかと思う。
    発売当時かなり話題になり、購入した人もかなりいるであろうが、果たしてそのうちの何人が読了できたのだろうか、と考えてしまった。
    というのも、初めのプロローグが長く、そこから続く第1章の要点がつかめずに100ページほど進んでしまうからである。

    新しく知った内容としては、子育てに関する子供に対する体罰を容認する社会かしない社会かという点に、狩猟採集民、農耕民、牧畜民のそれぞれが自己の所有物をどのくらい持つかの違いによる、という点であり、この説明には大いに納得がいった。

    著者が何度も訪れたニューギニアだけでなく、様々な民族の話があげられているため、文化人類学に関心のある方であれば大いに有益な資料となるであろうが、そうでない人にとっては、具体例は表にでもまとめてもらって、それらから導き出される考えをもっと聞かせてもらいたかった。
    そのような点ではは先に読んだ『知の逆転』の方が読んでいてわくわくさせられたのが残念である。
    図書館で借りて期限が迫っているため、第3章と第4章については仕方がなく読み飛ばしたが、この本で最も読みたい箇所が宗教と言語についてのところであったため、下巻の予約が回ってくるのを楽しみに待とうと思う。

    p389鼻薬→媚薬

  • 世界的ベストセラーを生み出し続ける著者の最近作です。『文明崩壊』では,環境保護の必要性を説得的に描き出しましたが,それでは豊かな環境に生きる先住民の暮らし方や思考法は,現代文明社会で暮らす人々に意味があるのか?まったく新しい観点から論じられた文明論です。私は多くのことを本書から学びました。皆さんは?

    *推薦者 (国教)S.T.
    *所蔵情報
    http://opac.lib.utsunomiya-u.ac.jp/webopac/catdbl.do?pkey=BB00330989&initFlg=_RESULT_SET_NOTBIB

  • 伝統的社会と現代社会の比較。
    思考の流れ、仮説が多く、冒頭か章末に結論、まとめを書いて欲しい。
    ニューギニア伝統的社会の事情には相当お詳しいが、近代日本の事情には疎いようだ。

  • ジャレド・ダイアモンド執筆時、75歳
    現代へのまなざし

    【ニューギニア人】p19
    2006年の人々と1931年の人々の間にこれほどの違いがあった理由は、世界の大半の人々が数千年かけて辿った変化の過程を、ニューギニア高地人たちが直近の75年で駆け抜けたためだといえる。

    【国家の誕生】p29
    紀元前9000年頃ようやく始まった食料生産以前には国家は存在し得ず、その後、食料生産が数千年にわたって続けられて国家政府を必要とするほど稠密で膨大な人口が形成されるまで、国家は存在しなかった。初めて国家が成立したのは紀元前3400年前後の肥沃三日月地帯で、それに続いて中国、メキシコ、アンデス、マダガスカルで国家が成立し、続く1000年の間にそのほかの地域にも広がり、ついに今日では地球全体で描かれた地図を広げると、南極大陸以外の土地は全て国家に分割されるという状況にまでなった。

    【エルマン・サービスの4つのカテゴリー】p31
    人口規模の拡大、政治の中央集権化、社会成層の進度によって分類。
    ①小規模血縁集団(バンド)
    ②部族社会(トライブ)
    ③首長制社会(チーフダム)
    「再分配」
    ④国家(ステート)

    List of wars and anthropogenic disasters by death toll
    http://en.wikipedia.org/wiki/List_of_wars_and_anthropogenic_disasters_by_death_toll

    【「ファースト・コンタクト」直近の事例】p97
    1938年6月23日、ニューギニア高地人の発見。
    NYアメリカ自然史博物館とオランダ植民地政府との共同探検隊。
    バリエム渓谷。
    Cf. ボブ・コノリー、ロビン・アンダーソン共著『First Contact』

    <メモ>
    ウルルン滞在記の日本逆訪問
    Cf. 「無限なようでいて、無限でない想像力について」

    アメリカにおける「自警主義(ヴィジランティズム)」:頼れるものは法より自分が持っている銃という考え方。
    Cf. エリー・ネスラー事件

    「修復的司法」:犯罪を、法律に対する違法行為として捉えるだけではなく、個人や社会全体に被害をもたらす行為として捉える。p193

    【戦争の定義】p228
    「戦争とは、敵対する異なる政治集団にそれぞれ属するグループの間で繰り返される暴力行為のうち、当該集団全体の一般意志として容認、発動される暴力行為である」

    ハイゼンベルクの「不確定性原理」の人類学の野外観測調査の文脈への応用。p232

    個人間の自然発生的な争いが軍事的および組織的な戦争へとエスカレートした事例として、1969年6月から7月にかけてエルサルバドルとホンジュラスとの間で行われた「サッカー戦争」である。p240
    http://en.wikipedia.org/wiki/Football_War

    <メモ>ホッブズがいう「自然状態」の中で、つい最近まで生きていた人々。

    【体罰をする社会、しない社会】p330
    ドイツ帝国の宰相ビスマルクは、同じ一家でも体罰を受けた世代の次には、体罰を受けたことのない世代が現れるというように、被大別経験の有無が世代ごとに入れ替わるといっている。
    サミュエル・バトラー「鞭を惜しめば子どもは駄目になる」

    lifehacker:人類はこのまま進化したらどうなるか? 10パターンの大胆予想
    http://www.lifehacker.jp/2012/12/121230kotaku_evolution_of_humanity.html

    <メモ>小規模部族社会において、高齢者は現代のGoogleに代わる生き字引なのである。p374

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著者プロフィール

1937年生まれ。カリフォルニア大学ロサンゼルス校。専門は進化生物学、生理学、生物地理学。1961年にケンブリッジ大学でPh.D.取得。著書に『銃・病原菌・鉄:一万三〇〇〇年にわたる人類史の謎』でピュリッツァー賞。『文明崩壊:滅亡と存続の命運をわけるもの』(以上、草思社)など著書多数。

「2018年 『歴史は実験できるのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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