アメリカの世紀は終わらない

  • 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (243ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532169725

作品紹介・あらすじ

「中国の世紀」到来論は誤りだ。アメリカの地政学的優位は揺らがない。20世紀とは異なる新たなリーダーシップこそ、アメリカには必要だ。世界を代表する賢者が発する、未来への鋭い洞察。

感想・レビュー・書評

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  • 国際政治の力学要素として、経済力、軍事力にプラスして、ソフトパワーの重要性を入れた研究者の本。
     終わらない根拠も丁寧で説得力がある。
     とりわけアメリカの同盟国には、有力な国々が多いことが、アメリカの世紀が終わらない根拠の一つになっているところが興味深い。

     いずれにせよ、ナイ教授の学術書も読んでみたいものだ。

  • アメリカの世紀を仮にアメリカが背かい最大の経済国である期間と定義するならば、ほぼ20世紀と重なる。

    ナイは、サイバーや宇宙のような新しい領域でも中国はアメリカとまだ対等でないと指摘している。

  • 米国民主党系エスタブリッシュメントの頭脳である、ジョセフ・ナイ氏による著書である。
    出版は2015年であるが、2020年3月現在も色褪せていないと思われる。
    結論は以下となる。
    ——-
    結論を言うなら、アメリカの世紀は終わらない。それが、アメリカが軍事、経済、そしてソフト・パワーの資源で傑出し、アメリカがグローバルなパワー・バランスの働きの真ん中に構え、国際公共財の提供でも中心的な役目を果たしているということを意味するのであれば、この驚くべき時期は、なお続くのである。
    ——-
    アメリカは内向きになった訳ではなく、自国の繁栄が続くと認識している様である。
    この認識は私の認識と一致しており、また日本にとっても良いものと考える。

    2020年の米国大統領選挙では、民主党の大統領候補書はバイデン氏かサンダース氏であると目されている。
    バイデン氏は、ジョセフ・ナイ氏と認識を一致させていると思われる。
    一方でサンダース氏については、私には不明である。サンダース氏がどの様な認識を持っているか、調べる必要がある。

  • 「ソフト・パワー」という言葉で有名な著者のアメリカの将来像を考察した書籍です。
    結論としては、引き続き世界のコアとしてアメリカは、その中心に位置するということでしたが、各国の分析やアメリカ自身の分析など、過去に政治の中枢を担っていた著者ならではの視点で、面白い内容が盛り込まれていました。
    この手の著書は、切り口が重要ですが、アメリカの分析の中で、「相対的衰退」「絶対的衰退」というキーワードが印象に残りました。
    確かに経済成長などで考えれば、近年の中国の台頭は著しいですが、グローバルパワーを行使するためには、経済・軍事だけでなく、著者が主張する社会制度・文化・教育・技術などソフトな面でのリーダーシップと、他国とのアライアンス・信頼関係など、ソフト面での充実が必要です。
    良書です。

  • [下向きに喝]「Gゼロ」や「中国の台頭」といった表現が飛び交い、長期的な衰退が囁かれるようになったアメリカ。そういったいわゆる衰退論を検証した上で、力強く「アメリカの世紀は終わらない」と訴えた作品です。著者は、「ソフトパワー」という概念の提唱で知られるジョセフ・S・ナイ。訳者は、日本経済新聞社で経済解説部長も務めた村井浩紀。原題は、『Is the American Century Over?』。


    様々な衰退論を取り上げながら話が進んでいくため、アメリカの世界における立ち位置に関する近年の議論を整理するにあたり有益な一冊。中国やロシア、欧州や日本などの(軍事力やハード・パワーに限定されない)国力に関する議論も、各国の強みと弱みを比較する上で参考になるかと。

    〜アメリカの世紀は続く。それは、パワー・バランスの中央にアメリカがいて、公共財の提供でアメリカがリーダーシップをとっているという意味においてである。前世紀の後半のアメリカの行動様式とは、かなり違って見えるだろう。〜

    そろそろアメリカ大陸に足を踏み入れてみたい☆5つ

  • 今日の書評は「アメリカの世紀は終わらない」ジョセフ・S・ナイ先生の本です。

    でどういう本かというと、端的に言ってアメリカの覇権(ヘゲモニー)はこのままずっと続くということです。

    それはこのような反省に立っています。70年代にはソ連のパワーを80年代には日本のパワーを過大評価していたが、見事外れた。これは中国にも言えるのではないか?と言うことだ。

    なぜなら、中国にはソフトパワーが欠けているというのである。即ちパワーは強制と報酬というハードパワーの他に、その国の魅力というソフトパワーがあるという。

    例えば、世界的な「ブランド」の上位25位のうち19までをグーグル、アップル、マイクロソフト、IBM等アメリカ勢が占めるというからだ。したがって中国の貿易はアメリカ及びドイツより多いが、洗練されている度合いは低いということである。

    またイノベーションも自前では起こせず、他国の技術の模倣する戦略に多くを依存している、というのだ。

    ソフトパワーについても、中国にはハリウッドやボリウッド(インドの映画産業ね)と競争できる文化産業がなく、世界ランキングのトップクラスに入る大学もない、アメリカでは非政府組織がソフトパワーの大半を生み出すが、中国にはそのような存在はない。確かに伝統文化は魅力的で孔子学院はあるが、まだまだだとのことだ。

    他にも間違った政策があるという。20世紀にはじまった「一人っ子政策」で「豊かになる前に老いていく」というのだ。

    情報面の統制もマイナスであると筆者は説く。中国には6億人の世界最多のネット人口がいるが、政府により厳密な管理がされているというのだ。そこでは激しい国家主義のものが多く、少数なリベラルな意見は排除され、反対派は罰せられる。この統制が発展を妨げるというジレンマに政府は陥っている。

    軍事力でもアメリカに劣る。世界全体の軍事支出に占める比率は中国が11パーセントで、アメリカの39パーセントよりもかなり低い。しかし中国の増加率がこのまま続けば、今世紀半ばには両者はほぼ同等になる。それでも配備済みの軍備の近代的な規模で見れば、アメリカは中国に10対1の比率で優位であるという。つまり軍事的に中国はアメリカに太刀打ちできないのだ。

    しかしながら、アメリカは中国と険悪な関係を継続しようとするのではない。第一に、反中国の同盟を形成することは不可能だというのだ。アジア諸国はアメリカと中国の両方との良い関係を欲している、1990年代のクリントン政権で中国と敵対的な関係を求めないことを志向した。

    例えば、中国は世界貿易機関(WTO)に加盟し、歓迎された。また中国の脅威を防ぐため日米は安全保障条約を再強化した。

    中国とアメリカの差は双方の国家が結んだ、同盟国の数だという。アメリカは60か国ほどあり、中国は殆どない。(評者注:この本が書かれたのはアジアインフラ投資銀行の設立前)世界の国を線引きしたならば、150か国のうち約100か国がアメリカに近く21か国のみ、アメリカに反発しているのだという。

    ドイツは第一次世界大戦が始まるまでにイギリスのすぐ後に迫った(工業力では抜き去っていた)だが、米中の場合これとは違ってグローバルな比較で軍事、経済、そしてソフトパワーで数十年先行している。

    いいかえれば、イギリスと違ってアメリカは首尾よく対処するための時間がもっとあるということだ。米中に関しては正しい選択をすれば、軍事衝突は起きないと思える。世界を舞台にした中国の台頭はまだ先の長いプロセスであり、アメリカの世紀は終焉していないと見て取れる。

    このほか、著者はロシア、ブラジル、インド、日本等にも言及しているのだが、ハードパワー・ソフトパワーともアメリカに肩を並べられない、と見て「アメリカの世紀」は今後も長く続くと結論付けている。

    私の感想としては、著者はアメリカの内政状態を矮小化しているのではないかとも思うが、現実米国は様々な困難を乗り越えてきた。例えば、格差が激しくなるとサンダーズ氏のような人物が、オバマ大統領の実行力の無さが表面化して来たら、直言的なトランプ氏などが大統領候補として出てくる。きちんと、ビルト・イン・スタビライザー的な自浄作用がアメリカにはあると思う。したがって私はナイ氏と同じく「アメリカの世紀」はしばらくは、かなり長い期間終わらないと思う。

  • 国家の繁栄は多くのパートナー国家がいることがカギになるとの指摘は肯ける。

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