- Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
- / ISBN・EAN: 9784532171445
作品紹介・あらすじ
川上弘美さんの最新刊は、長らく待ち望まれていた恋愛と結婚を描いた長編小説。500ページ超えも一気読み必至の傑作です。
主人公は1966年ひのえうまの同じ日に生まれた留津とルツ。このパラレルワールドに生きるふたりの女性は、いたかもしれないもうひとりの「自分」。それは読者のあなたのもうひとりの「自分」かもしれませんし、留津とルツの恋人や夫も読者のあなたのもうひとりの「自分」かもしれません。
主人公の2人のように「いつかは通る道」を見失った世代の女性たちのゆくてには無数の岐路があり、選択がなされます。選ぶ。判断する。突き進む。後悔する。また選ぶ。進学、就職、仕事か結婚か、子供を生むか……そのとき、選んだ道のすぐそばを歩いているのは、誰なのか。少女から50歳を迎えるまでの恋愛と結婚が、留津とルツの人生にもたらしたものとは、はたして――
道は何本にも分かれて、つながっていて、いつの間にか迷って、帰れなくなって……だからこそ「人生という森は深く、愉悦に満ちている」。
装画と挿画はファッションブランド「ミナ ペルホネン」の皆川明さんが手がけています。
たくらみに満ちた造本にもご注目ください。
感想・レビュー・書評
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1966年生まれの女の一生、パラレルワールドで二つを軸にいくつか物語は広がる。時代を反映した内容や、女の恋愛、結婚を描く。主人公以外にも同じ人と思われる人が互いの世界に出てくるので、私は少々混乱するところも。結婚か、とか子供を生むとか、嫁集と問題とか、選択を迫られる、自分と重ねて読みました。誰にでも起こりうる、誰でも森に迷い、進んで行く。どの選択肢にも嬉しいこと悲しいことはおきる、選択肢は自分で選ぶ、迷いながらもしっかり歩かなくちゃね。なかなか面白く読めました。
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人生は多くの選択と可能性でできている
あの日、どの道を選んだかによって自分のその後の人生は小さくも大きくも変わる。
どの学校へ進むか、どこへ就職するか、誰と結婚するか、あるいは、しないか。子どもは生むか、生まないか、どういう風に育てるか。どの時点でどの選択を選ぶか、でいくつもの「あったであろう自分」の人生へと分かれていく。
もしもあの時、別の道を選んでいたら。誰もが考えるそんな「もしも」。幸せになるか不幸になるか、選んでみないと分からないし、その道を生きてみないと分からない。でも、あの時選ばなかった道よりも今の道の方が幸せだ、と思って生きていたい。たとえ違ったとしても。あのとき悩んで迷ってせっかく自分で選んだ道なのだから。
と書いてきて思ったのだけど、どの道を選んだとしてもその道の途中で自分の人生を変えることもできるのだよね。選んだ道が問題なのではなく、その道でどう生きるか、が問題なのだ、結局は。 -
人のいない温泉宿で夜中570ページを一気読みしてしまう。すごかった。
主人公の2人+自分の、3人分くらいの人生を生きたようで消耗。さらに自分の周りの人の分も生きた気がするので、もっとか。大変おもしろい。
やはり自分の歳に近いあたりは苦しい。ハッとすることや、反省することや、思い当たることが、数々ある。
笑っちゃうシーンもあり、グサッとくるシーンもある。
ディテール 他人に思いを遣ること なんでも帖 本当におもしろかった。
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これを新聞小説欄で連載していたときはちょうどいいところで切れてしまって続きがよみたいという気持ちが煽られる作品だった。しかも本当いいところで留津とルツが入れ替わるから…
人生の分岐点はいろいろあるけど選択肢は様々。木々の枝分かれや 迷路のような森林を人生に例えたタイトルなのでしょう
皆川さんの描く挿し絵も美しく、主人公など登場人物を馬に例えていたのが印象的。連載しているときはこれも1つの絵本のようで楽しめました -
最初は戸惑いましたが大変満足して読了しました。川上さんの作品では『これでよろしくて?』が大好きで、『真鶴』や『センセイの鞄』は面白いけれどちょっと共感はしづらい、という感じなのですが、この作品は前者と後者の両方の要素を含みつつも絶妙にバランスが取れていて、大変読みごたえがあり、面白かったです。ものごとを色んな角度や軸で見ようとしてみる試みにより、「自分」というか「主観」を疑ってみるとか、過ぎ去った時間を振り返ってみて当時と現在の自分(同じ自分だけれど、時間を経ている分だけ同じではない)では思うこと気づくことが一緒だったり違ったりだとか、そういういろいろのアプローチが説明しすぎる風にならずに物語のなかに自然に組み込まれていて、同じひとつのことであっても人や状況や体調や環境によって受け止め方は千差万別になること、全部違うのだけれど全部本当であること、というような、いつもぼんやり思っていたけどそういうことなんだよね、というのをスッと示してもらったような、そういう読書体験でした。主人公と私の世代が被っていたので、とても入りやすかったです。
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パラレルワールドの設定で、交互にルツと瑠津が出てくる。
登場人物も入り乱れる。
川上弘美さんの味のある世界観、噛み締めたくなるような文章が好きで読み始めたが、
この作品はあっさり読めるもの。
ただ、さすが、書き留めたくなる言葉がたくさんあった。
女の人生、簡単に分けてしまうと、
結婚して子供がいる人生と、独身の人生。
どちらも理解できる、どちらの道を進んでも、
迷いもあるし、別の生き方をしていたらと考えてしまう。
今28歳の自分が読んで共感できる部分と、これから歳を重ねて理解できる部分とあるんだろうな。
歳を重ねても、大きくは変わっていないのかもしれない。歳を重ねてもわからないこと、歳を重ねてもやっと気づくこと、結婚生活のこと、いろいろ考えた。 -
人生の岐路の分、色んなルツの一生があって、どの人生もそんなに悪くないなぁと思いました。パラレルワールドのお話で、結婚して子供を産んだ留津、結婚しなかったルツ、色んな自分の人生があって迷いながら生きることは、まるで森の中で迷いながら歩いてるのと似ているようです。面白かったです!
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不思議な感じ。
1966年に母雪子から誕生した留津とルツ。
最初はあれ?こっちは誰の事だっけ?と混乱しつつ読んだけど、結局はどんな道を選んだとしても、そんなに世界は広がらず、大差ないのかな…などと感じました。
同世代の私にはすごく心の深いところに触れられた気がして、友だちに薦めたくなる本です。