中村邦夫「幸之助神話」を壊した男

著者 :
  • 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版
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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (372ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532193645

感想・レビュー・書評

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  • 松下を変えた男、として、経済誌などで持ち上げられていたのはもう数年前のことだが、あらためて読んでみると、あの会社にして大改革となることをここまでやったのは本当にすごいんだなぁと感服。
    やっぱり経営理念からなにから偉大すぎる、そして会社の規模も大きすぎるわけで、そこで抜本改革するっていうのはリスクも大きければ失敗する確率のほうが往々にして高いわけで。
    本の作りが時系列でないところがちょっと読みにくいところはあるものの、本書が出た時点では決まっていなかったパナソニックへの社名変更やらなんやらを予測しているし、丹念に取材されたというのが見れ取れます。
    とはいえ、創業者の松下幸之助がどう考えていたか、とかまでは本人でないとわからない部分もたくさんあるので、描くのも大変だったろうなぁ、と思いますし、人事なんて密室で決まることも多いので、それをどこまでドキュメンタリーとして綴れるかっていうのもなかなか苦労が多いでしょう。
    会社の成り立ちからここまでをコンパクトに知り、改革の裏側にあった背景がうかがい知れる一冊です。

  • 覚えてる度:★★★★★

    Panasonicの前社長で、現会長の中村邦夫氏。

    創業者神話を壊し、組織改革を断行していったことで、
    「重く遅い」大企業病に陥っていた会社を、「軽く早い」組織へと生まれ変らせた。

    なぜ神話を壊すことが出来たか。
    様々なエピソードや当事者への取材を交えてわかりやすく書かれている。

    2006年10月の出版だが、ほとんどが2005年に書かれた内容らしいので、
    大坪さんへの社長交代については冒頭の書き足しの部分以外は触れられていない。はず。。

    社名変更についても決定前に書かれた印象。


    ・エンパワーメント(権限委譲)の積極的な実施
    ・事業部制(創業者が作り、それまで聖域とされていた)の廃止
    ・守りの経営、「マネシタ電器」から、リスクをとる攻めの経営、「技術の松下」への転換
    ・供給側の視点ではなく、買い手の視点、「顧客重視の経営」

    ・松下幸之助 →松下正治 →山下俊彦 →谷井昭雄 →森下洋一 →中村邦夫という経営者の系譜
    ・各社長のエピソード
    ・世襲問題

    組織改革の具体的な内容についてと、これまでの社長について理解を深めることが出来た。

  • <span style="color:#000000"> 「カラマーゾフの兄弟」は置いといて。私がここ数年に渡り関心を持って(といっても、あくまでも野次馬的なものだが)その動向を注視してきた企業が松下電器産業である。1990年代後半から、あの松下電産でさえ苦境に立たされた経営を強いられてきたことはご案内の通りである。

     そこにあの「山下飛び」と言われた三代目山下社長ほどではないにしても、驚きをもって迎えられたのは、中村邦夫社長であろう。
     
     その復活劇の詳細は、中途半端な知識しかない私よりも、これから触れる書籍をお目通しいただくとして、実は、私は個人的に、松下電産及びそのグループ企業に対しては、格段な思い入れがある。これも詳細は割愛するが、一言で言えば、私がソフトバンク時代に、松下グループを担当させていただいたということだ。なかなか信じてもらえないが、松下は幸之助の決断によりコンピュータから撤退したことにより、1980年代までは、いわゆる情報産業においては決定的に出遅れていた。当時はNEC98(きゅうはち)全盛時代。大松下といえども、MSXだかなんだかに振り回されながら、どうにもならない状況が続いていた。そこで、ある時期、戦略を明確にし、グループあげてPCの周辺機器を図っていくということでP3(パナソニック・ペリフェラル・プロダクツ)を旗印に大々的に売り出してきた。
     私の記憶に違いがなければ、松下寿電子のHDD(ハードディスクドライブ)、MOD(MOドライブ)、九州松下のプリンタ、松下電子部品のスピーカー、松下電子応用機器のモデム等々でなかったろうか。

     今はすっかり時効であろうが、その売込みに際して、流通と出版部門を持つ我がソフトバンクと様々な打ち合わせに、電産及び先にあげたグループ企業の方たちが何度も、ソフトバンクに来られた。そして、そのソフトバンク側の窓口とさせていただいたのが私であった。事前に、役員から呼ばれ事情を聞き、お前が担当だと言われたときは、さすがに緊張したことを今でもはっきり覚えている。まだ、30歳前のことだ。その後は、私にとっても大変貴重な経験をさせていただいた。松下のP3が軌道に乗ったかどうかはともかく、その後、松下の情報産業躍進における足がかりを作ることができたのではないだろうか。もちろん、ソフトバンク側は私でなくても良かったのだろうし、実際、私の力不足を上司がカバーもしてくれていた。

     余談だが、松下グループの皆さんは、例外なく腰が低く丁重な方ばかりであった。私のような若造に、本当に謙虚に接してくれる。ビジネス上のことだけとは思えないくらいであった。その後、私は多くのビッグネームの会社ともお付き合いさせていただいたが、松下が一番だ。「やっぱ、幸之助さんかなぁ」と妙に納得したものである。NやFなんかひどいもんだった。特に、F。だから私はFのPCは買わないし、以前、携帯を選んでいる際も、気に入ったものがあったが、メーカーがFと知って即やめてしまった。ちなみに、私の現在のPCは色々な経緯があってNだが、デジカメは松下だしビデオもそのグループ会社だ。ついでに髭剃りも。

     前フリが長くなりすぎた。その松下が苦境に陥り、中村邦夫氏が社長としてまさにV字回復を成し遂げた。実は、私は、松下ウォッチヤーでもある<a href="http://www.takarabe-hrj.co.jp/" target="_blank">財部誠一</a>氏のその一連著作を注意深くそして楽しみに読んでいた。(なぜ、財部氏か。なんと言っても、<a href="http://www.takarabe-hrj.co.jp/clock.htm" target="_blank">借金時計</a>である。私は、あれを見て、しばらくPCの前から動けなくなった。)さて、今となっては、それらの著作を発行年次順に題名もあわせ見ていくと、そのV字回復を象徴するものがある。

    <img src="http://yamano4455.img.jugem.jp/20071125_402338.jpg" width="160" height="160" alt="松下に明日はあるか" class="pict" /><img src="http://yamano4455.img.jugem.jp/20071125_402339.jpg" width="99" height="144" alt="松下電器「V字回復」" class="pict" /><img src="http://yamano4455.img.jugem.jp/20071125_402341.jpg" width="112" height="160" alt="中村邦夫は松下電器をいかにして変えたか" class="pict" /><img src="http://yamano4455.img.jugem.jp/20071125_402342.jpg" width="111" height="160" alt="中村邦彦「幸之助神話」を壊した男" class="pict" />

     「松下電器に明日はあるか」(2001年7月)「松下電器「V字回復」の本質」(2004年4月)「中村邦夫は松下電器をいかにして変えたか」(2006年5月)。そして、今回私が旅の友としたのが、財部誠一の著作ではないが、「中村邦夫「幸之助神話」を壊した男」(森一夫著、2006年10月)である(文庫だから)。実際、この順番に読んでいくと流れがつかめて大層おもしろい。「カラマーゾフの兄弟」よりもストーリーに引き込まれる。そう、一連の小説みたいなものだ。

     色々な意味で典型的な日本人企業松下電器産業の盛衰、歴史さらには、日本の企業の一つのあるべき姿を表しているような気がして仕方がない。また、私たちとしても、幸之助氏はもちろん中村邦夫氏からもリーダーとしての明確な指針を感じ取っていくべきであろう。特に経営者は、読まなければいけない一連の著作かもしれない。</span>

  • 「選択と集中」「破壊と創造」「神話の否定」とキャッチフレーズ的に描かれがちな中村改革を構造問題やその原点まで辿り、事実やエピソードを織り交ぜて分析・解説している。特にパラダイムや市場の変化と組織問題については現在でも多くの日本企業に共通する問題意識であり、一歩先んじてそこを改革した松下の状況やその考察は示唆深い。

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