ドーナツを穴だけ残して食べる方法 (日経ビジネス人文庫)

制作 : 大阪大学ショセキカプロジェクト 
  • 日本経済新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532199555

作品紹介・あらすじ

工学、美学、数学、精神医学、歴史学、人類学、応用化学、法学、経済学――大阪大学の知の精鋭たちは、果たしてドーナツを穴だけ残して食べられるか? 様々なメディアでとりあげられ、ロングセラーとなったユニーク企画を文庫化。

○2014年2月に大阪大学出版会から刊行された同名書の文庫化。

○本書は大阪大学の学生と教員、大阪大学出版会の三者が一緒になって、大阪大学の知を世の中に紹介する本を作りたいという思いから生まれたプロジェクト。2012年春にスタートし、秋にはコンペを行って本企画を採用、出版に至った。第11回出版梓会新聞社学芸文化賞特別賞を受賞している。

○本書の魅力は、それぞれの学問領域ごとに、問題の設定と方法論があることがわかること。例えば、工学ならば「ドーナツという物質を定義し、手段を選び、切削する」であり、数学で言えば「n次元における穴を定義し、次元を超えることで穴を残す」であり、法学で言えば「ドーナツが登場する判例を解釈することによって「穴」を再定義し、穴を残す」となる。

感想・レビュー・書評

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  • ドーナツを穴だけ残して食べる方法
    編:大阪大学ショセキカプロジェクト
    紙版
    日経ビジネス人文庫 B お-17-1

    むずかしいというか、本書の目的がどうもよくわかりませんでした
    各章で語られている内容についても、親和性がどうも低いように感じられました
    ドーナツの穴という問題が提起し、派生した問題を1つの書にまとめたものということでしょうか。

    ドーナツの穴:ドーナツは、トーラスという3次元の図形であり、その内側の空間を穴というのであれば
    その穴は正確に、或る不等式として表現できるので、トーラスそのものが消滅したとしても、その穴は消滅しない
     が結論かとおもっていました

    はじめに には、
     あたりまえを疑え、
     学問の世界からドーナツを眺めてみるとどう見えるのか
    とありました

    まあ、ドーナツつながりで、各国の聞いたこともないような、ドーナツのようなお菓子の紹介があったことは
    よかったかとおもいます。

    目に留まったのは、以下になります

    ・ドーナツ穴談義の各派
     物理派
     化学派
     数学派
     統計派
     地学派
     合理派
     芸術派
     言語派
     哲学派
     懐疑派
     報道派
     政府派
     外交派
     一休派

    ・ミーム:文化を構成する要素として人から人に受け継がれる情報は、「ミーム」と呼ばれている

    ・好きこそ物の上手なれ が学問を究める大きなモチベーションとなる

    ・どのような見方をするかによって、その物の認識の仕方、理解の仕方が変わってくる

    ・冷戦再考:ヘゲモニーとは、生産、科学技術、金融を含めた経済面全般、軍事面、国際関係のイデオロギー面において、他の列強を寄せ付けないほどの卓越した権力のことを指す

    ・アメリカは日本が独自の外交路線をとることを好まない

    ・日本をアメリカの管理下におき、日本の自立的な行動を抑制することがアメリカの本当の目的だったのである

    ・与えられた前提を覆すことこそ、新しい解釈を生み出す第一歩になる

    ・判例を調べるのは、先例に従うことが、通常、3つの法理念(正義、法的安定性、合目的性)に適合しているからである

    ・法令の拘束力には及ばないが、先例にも一定の拘束力がある

    ・長期にわたっていいコミュニティを作るためのルールづくりには、経済学で研究が進んでいるゲーム理論の「繰り返しゲーム」という手法が有効である

    ・コミュニティで他人を助ける場合には、もちろん博愛精神や他者と助けたいという欲求から行うこともあるが、将来自分が困ったときに他者に助けてもらえるかもしれないとの期待からの場合もあるだろう

    ・法的思考のレトリック:司法判断は客観的なのか?
     法の恣意性や、非客観性、裁判官の判断に個人的な価値判断が入ったりする危険性を指摘している

    ・法は専門家だけではなく、我々市民が作り、運用し、改変していく制度に他ならないのである

    目次

    はじめに
     第0章 ドーナツの穴談義のインターネット生態学的考察 松村真宏
    第1部 穴だけ残して食べるには
     第1章 ドーナツを削る--工学としての切削の限界 高田 孝
     第2章 ドーナツとは家である--美学の視点から「ドーナツの穴」を覗く試み 田中 均
     第3章 とにかくドーナツを食べる方法 宮地秀樹
     第4章 ドーナツの穴の周りを巡る永遠の旅人--精神医学的人間論 井上洋一
     第5章 ミクロとマクロから本質に迫る--歴史学のアプローチ 杉田米行
    第2部 ドーナツの穴に学ぶこと
     第6章 パラドックスに潜む人類の秘密 なぜ人類はこのようなことを考えてしまうのか? 大村敬一
     第7章 ドーナツ型オリゴ糖の穴を用いて分子を捕まえる 木田敏之
     第8章 法律家は黒を白と言いくるめる? 大久保邦彦
     第9章 ドーナツ化現象と経済学 松行輝昌
     第10章 ドーナツという「近代」 宮原 曉
     第11章 法の穴と法規制のパラドックス--自由を損なう行動や選択の自己決定
        =自由をどれだけ法で規制するべきなのか? 瀬戸山晃一
     第12章 アメリカの「トンデモ訴訟」とその背景 松本充郎
    おわりに
    文庫版あとがき
    解説
    ショセキ力のあゆみ

    ISBN:9784532199555
    出版社:日本経済新聞出版社
    判型:4-6
    ページ数:288ページ
    定価:900円(本体)
    2019年09月02日第1刷
    2020年10月15日第3刷

  • 何を問うか、どのように問うか、というのは、実はものすごーく重要なことだと思う。

    問い方次第で答え方は変わる。
    答え方が変わるということは切り口も変わる。

    「ドーナツの穴だけ残して食べる方法」は、まさに上手い問いだったんだな、と一人でほくほくしてしまった。

    工学の先生に始まり、美学、数学、精神医学、歴史学、人類学、分子化学、法律学、経済学といった阪大の知が集められている(と言っても、多分過言ではない)

    そんなスゴい人達が、一見、一休さんに出てきそうな(一休さんの時代にドーナツはないが)問いに、真面目に向き合ってくれる。
    ある先生は、簡単に不可能と言いたくないし、不可能ならばその論拠が必要だとまで言う。
    この時点で、教授という存在って、変わってるけどなんか素敵だな、と思わされてしまうのだ。

    ちなみに教授の写真が載っていて、恐らくドーナツを手で表現しているのだけど、もうそれが皆バラバラで面白い。
    中にはドーナツを手で表現してない人までいて、ちょっと笑ってしまった。テーマ性!

    「ドーナツの穴」はあらゆる解釈がなされる。
    そもそもドーナツの穴は何もないということか、穴があるということか、では穴とは何ぞや。
    万物創造の主が登場することもあるし、ドーナツ化現象に例えられることもあるし、次元だって飛び越えてしまう。

    そこから、各々の学問分野に繋がっていく。
    穴だけに。

    なので、ドーナツの穴について、悶々と考えている本というよりは、そこを起点としてそれぞれの分野はこんな世界が広がってますよという本として読んだ方がいいと思う。
    特に大学進学で迷っている高校生は、のんびり一章ずつ読んでみると、進路への視野も広がるし、でも根本的な問いは繋がっている!みたいな、なかなかすごい見地に至る、かも、しれない。

  • タイトルはキャッチーだけど、タイトルとは少し違った内容を論じてる章もあって、そこが残念。
    でも学生達のこの本への熱意と努力がすごく伝わってくる。一冊の本を作るって本当に大変なんだと改めて思う。

  • とても頭の体操になった一冊。

    本書の肝はまさにその辺りにあると見え、あとがきの一節「なにかを知ろうとする姿勢と、ものごとを徹底的に考え抜く態度」(p389)を改めて再認識することが出来た。

    社会人になり幾年、必要に迫られて何かを新たに学ばなければならない機会はあったものの、学びの姿勢としては’知ろう’だとか’考え抜く’だとかそんな前向きなマインドではなく、’いかに楽して短時間でそれなりの状態に持っていくか’を求めていたように思う。一言で表せば’雑’。

    と、自省を覚えた。


    内容としては、適度に難しく適度に易しい、少なくとも私には読み応えの強いものだった。

    第8章・法学からのアプローチや第3章・数学、そして王道である第1章・工学を用いた回答に感動。

    一方で第6章・人類学と、第9章・経済学の文章にはかなり苦しんだ。難しい。


    新しい扉を開けまくれるが、開けすぎて脳ミソが迷子になったような、そんな感じになれた本。



    3刷
    2021.12.21

  • 大阪大学の学生が企画した本。文庫本になったので手に入れた。うん、楽しい。
    ドーナツを穴だけ残して食べるなんて、そもそも可能なの?ということを様々な学問の観点から面白く真面目に考察している。
    工学(切削加工)、美学、数学(次元の壁を越える)、精神医学、歴史学、人類学、化学、法学(ドーナツの登場する判例)、経済学、など。精神医学を除いて全て「ほー、へぇー、ふむふむ、なるほど」と感心することしきり。
    こういう本を企画し出版にこぎつける学生とそれを支える先生たちって、素晴らしい。

  • 題名を真剣に様々な学問の視点から書いた本。学問とはなにか、考えるスタンスを知れとても面白かった

  • タイトルだけは知っていた評判の書が文庫本になり、それもまた数年経って読んでみた。
    表題の問いに対する先生方の回答は、真っ正面から答えようとしたもの、このテーマに触発されたようで、結局は自身の専門分野に引き込んでしまったものなど、実は玉石混交。
    それでも、学生の問いに何らかの返答をしようとする先生方の格闘、総合大学の学問の幅広さを知ることができたのは良かった。
    章の合間に世界のドーナツもどきのお菓子事情が挟まれている。世界で同じような食べ物があることに驚くが、説明しているのもまた大学の先生方のようだ。このことだけでも大学の底深さが垣間見える。

  • 「ドーナツを~」を題材として大学の先生たちがみずからの研究分野について語ってくれているのですが、ほとんどがタイトルの「ドーナツ~」とは関係のない(と思える)内容ばかりで、ちょっと自分には楽しめない内容でした。

  • 本書は、大阪大学ショセキカプロジェクトが編集し、大阪大学出版会から刊行(2014年)された『ドーナツを穴だけ残して食べる方法 越境する学問―穴からのぞく大学講義』を文庫化(2019年)したものである。
    ショセキカ(書籍化)プロジェクトとは、大阪大学の学生、教員、出版会の三者が一緒になって、大阪大学の知を世の中に魅力的にプロデュースする本を作ることを目指して立ち上げたプロジェクトで、「ドーナツを穴だけ残して食べる方法」は、複数の出版企画の提案の中から選ばれたものだという。
    内容は、「ドーナツの穴だけ残して食べる方法」、或いは「ドーナツ(の穴)」自体に関して、大阪大学の教員が、其々の専門分野からアプローチし、何らかの考察を導き出すというものである。具体的には、穴の周りのドーナツをどれだけ薄く残せるのかを「切る」、「削る」という方法で考える工学的アプローチ、「ドーナツを食べればドーナツがなくなる」ということ自体に反論する美学・哲学的アプローチ、4次元空間を使った数学的アプローチほか、精神医学、歴史学、人類学、分子化学、法律学、経済学などからのアプローチにより、奇想天外とも言える論が展開される。
    然るに、読み進めてみて、「ドーナツの穴だけ残して食べる具体的な方法が書かれていないではないか!?」などと不満を言ってはいけない。そもそも、本書の狙いは、「ドーナツ(の穴)」というワードをヒントに、常識を疑って、様々な発想を広げる「学問」の面白さを知らしめることにあるのだから。
    尚、各分野の専門家の書く内容は必ずしも易しくはないので、全編の細部まで理解しようとしない方がいいように思う。私は、美学・哲学的アプローチや法律学的アプローチに関しては興味深く読んだが、知見のないところについては、見出しと、編者が太字で表示した要点を手掛かりに、まずは通読することを心掛けた。
    西洋的な科学技術をベースにした近現代が様々な限界に直面しつつある今、このような柔軟な発想・アプローチこそが求められているのかも知れない。
    (2024年1月了)

  • どんどん本題とは離れていく…

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著者プロフィール

「学生が企画する本を学生の力で出版する」が最終目標のプロジェクトで、大阪大学教員・大阪大学出版会がサポートする。

「2019年 『ドーナツを穴だけ残して食べる方法』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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