誰がアパレルを殺すのか

  • 日本経済新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532199739

作品紹介・あらすじ

なぜ、変われなかったのか?
この産業を衰退に追いやった“犯人"は誰か? 大反響を呼んだ
ルポルタージュ、ついに文庫化。

本書は17年5月に日経BPから刊行されたベストセラーを加筆、文庫化したものです。

アパレル業界は未曾有の不振にあえいでいます。オンワードホールディングス、ワールド、TSIホールディングス、三陽商会という大手各社の売上高は激減。店舗の閉鎖やブランドの撤退も相次いでいます。アパレル業界と歩みをともにしてきた百貨店業界も、地方や郊外を中心に店舗閉鎖が続き、事態は深刻さを増しています。

なぜ突如、業界は不振に見舞われたのか。本書は日経ビジネス記者が、アパレル産業を構成するサプライチェーンをくまなく取材、真相に迫ります。

同じような服ばかりで買いたい服がない。
過剰供給→大量売れ残り→不良在庫の悪循環。
問題点は明白なのに変わることができない--。
アパレル業界には、他の衰退産業とも共通する病巣がある。
サプライチェーンをくまなく取材した渾身のルポです。

感想・レビュー・書評

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  • 大学の講義にて紹介されたため興味がでて読んでみた。

    非常に面白かった。
    なにが面白いかというと、簡潔に言えば「思想がある/なしがその企業の行方を決めている」といえるためである。
    アパレル業界は長い間高度成長期に「顧客が望むもの」を次々に投下し、巨額の利益を出していたわけだが、今のような時代にそんなバカバカとアパレルが売れるわけではない。(ユニクロを除く)大手アパレル企業は、ブランドを次々に発表し、さして企業努力もせず発注した商品に自社の新規ブランドをひっつけて売ってきたわけである。結果として、「我々はなんなのか」を全くもって失ってしまったと言わざるを得ない。
    対して、UNIQLOは2015年以降「ライフウェア」という、普段着として活用して欲しい、スポーツの際にでさえも身にまとえる製品を開発している。その思想があるからこそ、普段着に耐えうる安さ、高品質さを求める製品開発・研究に資金が投資できていると言えよう。
    つまり、前者と後者の違いとは「思想が資金配分を決めている」という点であろうと思う。思想も戦略もそうだが、「〜をすると決める」というよりは、「〜以外をしないと決める」ということが重要であって、その思想がないからこそ「迷う」状態に陥ってしまうのだと思う。
    そう言った意味で、今のアパレル業界が向き合わなければいけないのは、自社が「なんなのか」を改めて見直すことであって、それを見つめ直さない限り、「再興」には至らないだろうと感じた。

  • アパレル産業の戦後から現代までの変遷、アパレル業界の実態などまとめてある。
    ZOZOタウンやメチャカリ(洋服レンタルサービス)などのネット通販やシステム化・サステナブルな取り組みを取り入れたアパレル会社などのビジネスモデルも学べる。
    多売薄利で人件費を抑えてきた結果が
    似たデザイン・似た生地感など売れる服を追求した為、着たい服が無くなってしまったというフレーズに共感した。

  • もともとは2017年に出た本の文庫版。アパレル産業が集団自殺ともいえるような状況に陥るにいたった経緯と、新しい動きの紹介。
    1990年代にDCブランドが売れなくなって、中国に生産拠点を移してコストを抑えて大量に作り続けた。大量の売れ残りを前提に価格を設定してたくさん作るも、2014年頃崩壊。
    中国で作るようになって、なぜか商品企画も丸投げする様に。自分達では作らなくなって、似たようなブランドの乱立につながった。買い物に行ってもどこも同じに見えて結局何も買えない理由はこれなんだなと思った。
    こんな状況でも、志があって経営者の意図がはっきりしているブランドは売れているという。
    掲載されていたインタビューで心に残った言葉:ブランドに思いを込めて、哲学やコンセプトを定め、ブランドに合わないことはやらないと突き詰めることで、ようやくブランドが維持できる。(でも日本のアパレルメーカーは、露出や知名度を上げることに腐心し、それがブランディングだと考えてしまった)
    面白かったけど、2017年時点の情報ではあるので、アパレル産業のもっと新しい本も探して読みたいと思った。

  • 若い頃憧れだったアパレル店員が、薄給の使い捨てだったという事実に虚しくなった。
    確かに今やどこのブランドを覗いても同じようなデザインの服ばかり…、その理由にも納得。
    ファストファッションが流行り出してから、安くて良いものを追い求めていたけれど、私たち消費者側も考えを変えていく時期になったのだと感じた。

  • アパレル業界だけではない。新品を作って売り、残りは廃棄して、また次のシーズンがやってきては新作が登場する。小売の世界で行われてきたことではもう誰も幸せにはなれない。例えばiPhoneも、毎年新機種が発売される。人々は二年に一度、機種変更をするのが常態化しているが、二年で使えなくなるから変えるわけではない。消費の快楽のために私たちは物を買っている。企業はそれを分かっている。変わらなくてはならないのは企業だけではなく、消費者も同じなのだ。新しいものを手に入れることでしか満足を得られない私たちの精神を変えていかなければならない。幸い、気付き始めた人たちはたくさんいる。物に飢えていた時代に、物は飛ぶように売れた。けれど今は物を持つことの本質を知ることが大切で、多くの物を買う必要はない。精神性が求められる時代に到達した。

  • アパレル業界の変われなかった特殊な事情などあって、興味深く読みました。
    無駄に作って、捨てるなんて、本当に悲しい。
    しかも、無駄に作ることに命をかけている人(かけさせられている人、安い労働力として搾取されている人)がいるなんて、人はどこまで悪魔になれるのかと思います。しかも、それがお金のためなんて。
    狂ったアパレル業界を変え始めている先進的な企業や人の取り組みも掲載されていて、希望も持てる本です。

  • 特にそんなに発見はなかったかな

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著者プロフィール

日本経済新聞記者
1981年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。2005年日本経済新聞社に入社し、
大阪経済部でアパレル・スポーツ用品業界などを取材。
2009年に東京に異動し、経済部で金融機関や日本郵政などを担当。
2015年、日経BPに出向し、『日経ビジネス』記者。
2016年秋からアパレル業界を中心に取材。
2018年より日本経済新聞経済部で国土交通省、経済産業省を担当。

「2020年 『誰がアパレルを殺すのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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