僕が「プロ経営者」になれた理由: 変革のリーダーは「情熱×戦略」
- 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版 (2016年12月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (230ページ)
- / ISBN・EAN: 9784532321185
作品紹介・あらすじ
HPとコンパックの統合を成功させ、
ダイエーの経営破綻を回避し、
不振のマイクロソフト日本法人を立て直した男が語る、
「プロ経営者」の本質。
「内気で話し下手のサラリーマン技術者」だった著者が、心機一転、ハーバードでMBAを取得。
プロ経営者として次々と成果を挙げてきた。
彼はなぜ、大手企業の技術者という安定した職を捨て、茨の道を選んだのか。
なぜ、再建に成功した企業にとどまらず、次の「問題企業」へ飛び込んでいくのか。
その波瀾万丈な経営者人生から生まれた、血の通った経営論が本書だ。
樋口氏は、鮮やかな戦略で急成長を遂げるのではなく、現場に何度も足を運び、
顧客や社員と腹を割って話すことで、地道に結果を出してきた。
「外資系」「プロ経営者」「MBAホルダー」「元コンサルタント」という肩書きが想起させる
リーダー像とは対極にあると言えるだろう。
そんな彼の言葉は、急激な時代の変化に不安を抱く、普通のサラリーマンにこそ響く。
「挑戦する気概さえあれば、君もリーダーになれる」「変革の時代だからこそ、みんなにチャンスがある」──
自分のキャリアアップについて悩む若手や中堅ビジネスパーソンの背中を押してくれる、メッセージが満載だ。
感想・レビュー・書評
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尊敬する経営者、樋口さんの書籍を久しぶりに読みました。
樋口さんとは、「愚直論」で書籍上で出会って以来、ずっと応援している経営者です。
※愚直論
https://booklog.jp/users/noguri/archives/1/4478733066#comment
今回は、マイクロソフト時代までの経営者としてのリーダーシップをまとめた本。
中盤からの樋口さんの実体験に基づいたリーダー論は、胸が熱くなります。
まさしく、情熱×戦略の両方を兼ね備えた人。
中々こんな人にはなれるような気がしませんが、追い求め続けたいリーダー像でもあります。
マイクロソフトからパナソニックに移られて、
新しいチャレンジをされている樋口さんですが、
パナの再生に貢献してもらいたいです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
研修で企業訪問をすることになったため、事前学習のために購入。経歴は、阪大工学部→パナソニック(溶接機→サーバー→MBA(ハーバード)→映画)→BCG→アップル→コンパック、HP(事業統合)→ダイエー→マイクロソフト→パナソニック。HP時代から社長を務め、複数の企業で事業再生を牽引してきた。本書執筆時点ではマイクロソフトの会長。華々しい経歴の割に、目の前の目標を一つ一つ達成していく愚直な姿が共感できる。
本書のメインテーマは、事業の変革を牽引する「プロ経営者」について、事業変革の方法や経営者の要件を深堀している。叩き上げやオーナー経営者とは、良し悪しではなく役割の違いであることに注意したい。本書で言うプロ経営者は、社外から来た経営の知識・スキルと実行力の両面を備えた専門家で、社内人材では難しい変革の実行を主として担う。
20代・30代の社会人生活の送り方(→市場価値の高め方)についてのアドバイスもある。自身のこれまでと照らしても共感できる内容だった。プロ経営者は叩き上げと比べると、より精神的なタフさや経営手法のバリエーションが求められそうであるが、それだけに達成感も大きいものだろうと思う。
以下、まとめきれていないが、参考にしたいポイントをメモ。
■市場価値の高め方
・20〜30代前半は、知識・スキルによる個人の生産性向上。目の前のことに集中してやりきることで鍛える
・30代後半からは、社内外の人に関するマネジメント能力による集団での価値最大化。スキルの転換点であり注意が必要。多様な環境に身を置きさまざまな人と仕事をする中で、言葉で表すのが難しい人間の厚みが鍛えられる
■人口オーナス期の組織力に重要な要素
※人口オーナス期とは、人口構成の変化が経済にマイナスに作用する状態のこと。激しい変化に伴い、構造改革や事業再生が繰り返し求められる
・1つめに必要なのがダイバーシティ&インクルージョン。老若男女が共同して働くために必要。多様性を受け入れるだけでなく、新たな価値創造へ繋げることが必要
・2つめに必要なのが戦略と実行。戦略の転換でビジネスモデルが変化すると、各人の果たすべき役割も変わる。各人が腹落ちしなければ変革は進まない
■組織変革に必要なリーダー像
・メッセージを煮詰め、確信を持って発信し、結果を出すまでぶれない。熱い思いで、繰り返し伝える
・目指す姿とそのための具体的な仕事を用意し、リーダーが率先して実績をつくる
・会社の進路を大きく変えるときはトップから担当へのダイレクトコミュニケーションが有効。職制を通じた上意下達による落とし込みは難しい
・優先順位づけ。社長のスケジュールは勝手に埋まる。忙しくても仕事をした気になってはいけない
・身体を張って得た経験が人を動かす
・素の顔と演技の使い分けも必要
・ほめることでモチベーションを高める。優秀な集団ほど重要
■戦略的思考
・戦略にはビッグピクチャー(大局観)が必要。将来にわたる競争環境や社会環境を想定。戦略のレベル差は視点の高さの差そのもの
・戦略を練る訓練は経験が必須。まずできるのは「会社が何のために存在しているか」を考える習慣をつけること
・自社の強みを活かそうとすると、必ず過去に固執してしまう。自社の生態系の外から戦略の検証が必要
■その他
・外資系企業の日本法人では、日本市場の中でウェットな合わせ技でやる部分と、本社に対してアグレッシブでロジカルにやる部分の両面が必要。これは日本企業がグローバル化を進める上でも必要な能力 -
36ページ
他社との協業の状況、他者へのインパクト、他部門への協力などいずれも1口ですぱっと表現したり評価しにくいものだが、難しさはあってもそのような評価を確立していこうとしている
41ページ
若い人にとって魅力的な職場でなくてはならないし、若い人に対して民主的な職場にならなくてはならない
54ページ
今求められているのはマクロでもミクロでも構造的に起きている変化に対応するための基礎的なリテラシーとしてのリーダー論であり、誰もが共有して自身の資質として身に付けなければならないリーダー論だからだ。
ここの従業員が変革のリーダーとしての自覚と資質を備えて環境の変化に向かい合わなければ、個人にも企業にも持続的な成長がもたらされない。
58ページ
老若男に男が、共に働き、生産性を高めて短時間で稼ぎ、それらのために多様な価値観を認め合う。ダイバーシティーは人口オーナス期の社会にとって絶対に必要不可欠な価値観である。
97ページ
こうした企業文化の違いや不安を解消するにはどちらの会社の出身かの痕跡を全てなくすのが即効的かつ最も重要な取り組みであるのをわかっていた。
109ページ
夢を与え実績を創造する=社員に目指すべき状態とそのための具体的な仕事を用意しリーダーとしての素の姿を見せながら一緒に実現する
121ページ
関係者が集まって談論風発侃々諤々の議論を楽しむことの大切さ。
たとえ無駄話の連続のように思えても、そこから何かしらが出てくる。そうしたものにこそバリューがあった。
130ページ
戦略とは事業のあり方をどのように考え、どのような方向を目指すのかを示しているものだ。
戦術とは戦略をいかに実行するかの策である。
言葉を変えればビジョンも戦略でビジョンの実効策が戦術となる。
131ページ
将来にわたる競争環境や社会環境などをきちんと想定した絵柄でないと精度の高い長期的意思決定はできない。
絵柄がどれだけ鮮やかにイメージできるかによって戦略の精度や有効性が決まってくる。
135ページ
会社は何のために存在しているのかと言う根幹を常に考える。
136ページ
正解がないからこそ根幹部分が大事であり、意識し、そこから戦略を見出していく。
戦略がどれほど子理論的に素晴らしく、男として美しくても、その実行可能性が担保されていなければならない。
137ページ
さらに成功するまでやりきる姿勢が実は戦略を戦略たらしめている。
162ページ
だからこそキーリーダーはチアリーダー的でなければならない。
「やろうよ世界を変えるんだ」「これいいね、やってみようじゃないか」などと部署間の枠を超えた議論を促していく。
184ページ
社長直轄プロジェクトで各部門の社員を集め議論してもらうと、まず各部門の事情や言い訳が先に立つ。幹部は決して一線を越えようとしない。
それをゴリゴリと責め合わせていくと圧力の力で枠が溶けていき、相手への理解と自分ができることへと関心が移っていく。それをぐいぐいと押し出すのは経営トップである社長の役割だ。
216ページ
CIOが経営視点でITを議論できるようにならなければならないし、CEOは事業におけるITの位置づけを自ら描いて見せなければならない。
217ページ
経営レベルのIT理解とは、経営を支えているITの構成や、それに伴うリスク等について考えが及んでいることだ。 -
自分でキャリアを切り開いていく、キャリア戦略を実行していく姿がかっこいいと思った。もっとちゃんと読めば良かったと少し後悔。
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松下電器→(MBA)→BCG→アップル→ダイエー→HP→Microsoft→Panasonic とキャリアを重ねた著者の変遷と経営に対する考えをまとめた書。
『よくある成功物語ちゃうん?』と、やや斜めから読んでいたが、思いのほか、よかった。MBA由来の理論と、経営現場の浪花節が相まって、非常に腹落ちする。 -
この本を読んで感じた事は2つある。
第一に海外MBAを取ることがその後のキャリアを大きく発展させると言うことである。
この著者は海外MBAを取ったことでパナソニックからbcgへ進んでいる。
第二にサラリーマンが最終的に行き着く能力としてマネジメント能力があるということがわかった。 -
樋口さんの多様なキャリアをもとに自分のキャリアを考えるきっかけとなりました。
特に印象的だったのは、経営者は一分野だけでなく他分野に精通している必要があるとの考え。例えば、技術系のトップは経営的な視点を欠いていて優秀な参謀にそれらを任せているケースが非常に多い。その逆も然り。とはいえ、各分野を極める必要はなく、話を聞いた時に理解できるくらいの素養を備えることが大切。 -
松下電器の技術者からスタートし、いくつもの転職を重ね日本マイクロソフト会長という経験があるからこそ見えてきたものを読者に伝えてくれる。
当時は転職=ネガティブなイメージが強かったはずだが、現在容認されつつあるように、自分のキャリアを磨くために転職する。ということを積極的におこなっていた。
経歴を見ると、エリート中のエリートのような人物であるが、単純な天才でなく努力する天才だということが本書から読み取れる。
「決して現状に満足しない姿勢」「企業のポリシーや理念を尊敬し、自分に落とし込む」「リーダーとしてブレない軸」など、仕事で成功するための肝心なキーワードを教えてくれる。
転職に悩む人、これから経営者や上司として成長を目指す人に読んでほしい本だと思います。 -
プロ経営者というものは様々分野に造詣があるだけでなく、人をマネジメントでき、時として愚直に、現場とも語り合いながら、会社とはなんであるかという会社のあるべき方向性を指し示す存在だということが分かりました。また現在の状況を見ながら取捨選択ができ、論理的に物事を進めることができる人だということもわかりました。
実際にこれをするためにはまさに真剣に会社に、社員に向き合わなくてはいけない。そうしたことで組織文化も含めた大きな変革ができることが分かりました。
上記なこと以外も非常に大きな学びがあり、大変良い本だと感じました。 -
自分自身、34がはじめての転職。
もがけ、もがいて、経験をつめ。
幅広い人と、幅広い仕事を。それが将来につながる。
t字型(強み領域の深掘りと、広い人脈や知識)で成長する。
ダイバーシティアンドインクルージョン。価値創造へつながる。変化への対応でもある。
素と演技が半分半分。素とは自身の好奇心ままにうごくこと。メッセージを浸透させるために、意識的なコミュニケーションがひつよう。
完全なる自由裁量のないなかで、社員にどのような夢を与え、実績を創造するか。
社員にめざすべき状態と、そのための具体的な仕事を用意して、リーダーとしての姿を見せながら一緒に実現する
プライオリティを考えろ。経営者の時間は限られている
大局観をもって戦略をかんがえる。
目の前の数字に一喜一憂しない。
ビジョンを現場にかたることは経営者の仕事。
経営者として、ぶれない。 -
Yotsuya
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ITが経営を支えるということを体現してきた数少ない日本人の一人だと思う。
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◎転職をすることが重要なのではない。
きちんとスキルを身につけ、多様な経験を積んで、1つの閉じた世界だけでなく、普遍的に周囲から評価される「市場価値」を高めることが大切なのだ。
◎実は本当に危機だと思っていない経営者たち。
経営者も社員も、「長い間、自分で考えることをやめていた。考えずに済んでいた。」
そのために変革が難しい状況に日本の会社は陥っている。
それほど、高度成長期からの成功体験は強烈だったのだ。
滅私奉公・長時間労働・年功序列・終身雇用という”生態系(エコシステム)”から抜け出せない。
こうして、ある特定の生態系でずっと生きてくると、別の生態系が存在することすらなかなか理解できない集団になってしまう。 -
プロ経営者として実績を残された方の本。
同じプロ経営者の原田氏の考え方も知っておきたい。そこに共通点はあるのだろうか。
・リーダーには自分の「素のキャラクター」でやる部分と「演じる」部分の両方がある。 -
企業のトップとして、危機のダイエーを活性化させ、マイクロソフト日本法人の変革をリードした。そんな「プロ経営者」樋口泰行氏が自分と組織の「殻の破りかた」を語る。
第1章 どうすれば「自分の価値」を高められるのか?──キャリアとスキルとビジネス経験
第2章 なぜ、リーダーをめざすのか?──変革の時代のリーダー像
第3章 なぜ、組織を変え続けるのか?──変革をマネジメントするということ
第4章 なぜ、戦略がうまくいかないのか?──徹底的にやり切るためのリーダーシップ
第5章 なぜ、マイクロソフトは変わったのか?──外資系IT企業にも大企業病は忍び寄る
第6章 これからITはビジネスをどう変えるのか?──クラウド革命とITリテラシー