波乱の時代 上

  • 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (373ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532352851

感想・レビュー・書評

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  • ・・・
    第13代FRB議長の回顧録。足掛け19年ものあいだ、FRB議長として国の金利や財政などの経済回りの政策をリード。政治の世界とも付き合ってきた氏によるメモワール。

    ・・・
    グリーンスパン氏。私の印象にあるのはリーマンショックの陰の立役者(ショック前の低金利誘導のこと?)とかで揶揄されたり、ひいては陰謀論的にユダヤに与するものとかなんとか。要はよく知りませんでした。
    でも本作読んで、氏自身の生い立ちもさることながら、歴代政権や権力者への見解など、現代史を振り返る点でも非常に面白い作品でありました。

    ・・・
    経済回りの方ということは分かりますが、野球少年だったとか、野球といってもデータ(打率とか)を覚えたりするのが好きとか、まあちょっと変わっていますよね。両親が離婚して母親に育てられたとか。

    高校卒業後、召集令状を受け戦場に出るまでジュリアードで学ぶという予定も、まさかの検査でハネられ、失意の中?ビッグバンドでクラリネットを吹くようになったとか。

    戦争が終わり、今後の事を鑑みニューヨーク大学で学び、以降エコノミストの道を辿るのですが、数字からストーリを読み解き文章にすることが得意であったという印象を受けます。

    彼の20代あたりのお話だけで十分に面白く読めるかと思います。

    ・・・
    上巻の中盤は、彼自身の政治への接近が描かれます。

    フォード政権で経済諮問委員として政治の世界に踏み入り、以降政治家の資質・度量を仕事を通じて眺めてきたグリーンスパン。フォード、レーガン、ブッシュ(父)、クリントン、ブッシュ(子)など多くの大統領を見てきた中で、フォードの明晰な理解力、クリントンの人間的魅力、ブッシュ(子)のポピュリズムへの批判など、一定の距離から時の権力者を見てきており、その評価が面白い。

    中央銀行の独立性、大統領の目指すもの、議会との対立・融和など、氏のポジショントーク的なものはあろうかと思いますが、それを鑑みても面白かったです。

    ・・・
    また現代史の一部としてもなかなかに面白かったと思います。

    アジア通貨危機での韓国の突然に失速に外貨保有高に統計上の誤り(隠ぺいに近い)があったとか、ソ連崩壊時に計画経済から資本主義経済へ移行する際のリスク管理や「見極め」など、米国として何を見ていたか、どこまで(なぜ)手を出すかという点が分かり面白かったです。

    同じことはメキシコ危機の記事にもありましたが、世界がグローバル化するなかで、経済的なつながりは一国を越え、景気や金利動向をマネージするのにもはや米国一国を見れいればよい、という時代は終わったことを読んでいてつくづく感じました。

    もちろんこれはどの国も同じであります。「風が吹けば桶屋が儲かる」情勢であり、我々も「風」を感じるべきだなと思った次第です。

    ・・・
    ということでグリーンスパン氏の回顧録の、半分でした。

    政治、経済に関連する話が多いのですが、氏の生い立ちもドラマがありなかなかに面白かったです。

    米国現代史、米国の政治、経済動向等に興味がある方にはお勧めできる本かと思います。

  • ふむ

  • ビジネス
    自己啓発
    お金

  • ★2008年5月7日 36冊目読了『波乱の時代 上』グリーンスパン著 評価B

  • 思ったよりも読みやすく、大変面白かった。
    アメリカの議会、ホワイトハウスとFRBの近づかず、
    遠ざからずの絶妙のバランスの取り方はある意味スリリング。
    ブラックマンデーから同時多発テロの影響まで
    経済的な側面から見れたのはなかなかよい。
    また、経済政策と金融政策の狭間の揺れ動きも
    現在の日本の状況と照らし合わせて考えるとなお面白い。

  •  本書はレーガン時代にFRB(アメリカの中央銀行)議長に使命され、2006年までその地位にあったグリーンスパンの自伝である。FRBの使命とは財、サービスの物価を安定させることを目標に政策金利の調整をおこなう。

     市場介入を主張している経済学者に対して、経済を深く理解しているわけではないレーガンは自由放任の信奉者として、自由市場には自動修正機能があり、資本主義には富を生成する基本的な力があることを理解していた(P130参照)

     1990年代半ば中央計画経済崩壊後のロシアの状況は、自由市場制度に移行できずに闇市場制度を築くことになる。政府が国民の財産権を保護できなければ富の創出と経済成長はできないという混乱の最中にあった。

  • 上巻はいわゆる回顧録。
    下巻はやや経済学の教科書的な硬い内容。

    上巻は、のっけから9・11の同時多発テロのエピソードから始まり、
    ニクソン、フォード、カーター、レーガン、ブッシュ親子、クリントン各政権との関わりが綴られており釘付けで一気に読めてしまった。
    やはりブッシュ親子とはウマが合わず、
    クリントン政権とは相思相愛の蜜月な関係を築いていたようだ。

    下巻は、「風が吹けば桶屋が儲かる」的な論理的経済学アタマを駆使しないと、
    話についていけない(少なくともわしは)。
    上巻とは違って読むのにエラく日数がかかってしまった。
    中国経済に対しては過大評価・賛美しすぎ。
    しかも共産党独裁や中華思想のダークサイドにノータッチだったのがチョット気になった。
    時間がない人は、下巻に関していえば、最後の第二十五章「未来を占う」だけ読めばいいかも。


    読む前に個人的にもっとも気になっていたのは、
    やはりエドワード・チャンセラーの『バブルの歴史』でも取り上げられ、
    昨年のアメリカ大統領選挙戦においてオバマ陣営のマケイン陣営に対する攻撃のネタとなった、
    キーティング5人組による1980年代の貯蓄貸付組合スキャンダルをどう語るかであった。
    もしかすると、この問題はこの人にとって都合が悪過ぎだし、
    タイムマシンがあれば真っ先に帳消しにしたいはずの汚点なので、
    スルーかもしれないと予想していたのだが、
    上巻の167~168ページにこの件について書かれていた。
    興味のある方はぜひご一読を。

    以上は上下巻とも読んでの感想です。

  • 5-1-6 金融論

  • アラン・グリーンスパン。経済学を真面目に勉強したことのある人で、その名を聞いたことがない人は恐らくいないだろう。1987年から19年5ヶ月もの間、アメリカFRB(日本でいうと日銀)の議長としてアメリカ経済の舵取りをしてきた巨匠。経済に与える影響力は時としてアメリカ大統領をしのぐほど。アメリカ経済の規模を考えると、世界経済にとっても最重要人物のひとりであり続けたと言っても過言ではない。そんなグリーンスパンの生後からFRB引退までを綴った自伝を読んだ。

    この自伝は、グリーンスパンの生い立ちやキャリアを描写にすると同時に、経済・政治に対する彼の考え方にも触れている。グリーンスパンは非常に高齢(1926年生まれ!)であるため、彼のキャリアを辿ることで、アメリカの現代経済史を読み解くことができる。第二次世界大戦後のアメリカ経済や1972年のオイルショック、1987年のブラックマンデー、1990年代後半〜2000年代前半にかけての米国長期景気(ニューエコノミー)などについて、一人のエコノミストとして、またFRB議長として、どのように経済を見つめていたのかを知ることができる。

    読み終えて抱いた率直な印象として、彼は経済に対して非常にバランスの取れた分析をしている。もともと彼のバックグラウンドは統計データをもとにマクロ経済の将来を予測するというものであった。しかし、データによる分析だけでは不十分であると本書ではっきりと認めている。データ取得には時間がかかるため手元にデータが揃った時には新たな景気局面に差し掛かることがある点、統計データでは表現しきれない情報が経済に大きな影響を与えうる点、歴史や文化が経済に関係する点などを指摘している。そのため、もちろん定量データは十分収集するものの、企業へのインタビューや歴史文化も十分考慮した上で、経済を予測している。データ一辺倒に偏るのではなく、また軽視するわけでもない。このような柔軟性・バランス感覚がグリーンスパンを巨匠に導いたのかもしれない。いずれにせよ、非常に参考になる。

    またアメリカの現代史について、政策決定者という視点で、知ることができた点も大変興味深かった。FRB議長在任中、レーガン、父ブッシュ、クリントン、子ブッシュという四人の大統領とときに協力し、ときに対峙しながら、アメリカ経済を舵取りしてきた。その間のアメリカ経済や経済政策について忌憚のない意見を知ることができる。印象的だったのは、彼はマクロ経済をマクロなものとして漠と捉えるのではなく、ミクロな視点に置き換えて考えているようである。例えば失業率の低下という問題を家計の大黒柱が収入源を失うという身近で骨身にしみる問題として捉えるというような、ミクロな視点でアメリカ経済を見つめていた。そのため大きな決断をする時は、いつも苦悩と向き合いながら考え抜いていたのだろうと思う。パブリックマインドとして、非常に重要だと思うし、また自分自身もマクロとミクロの思考回路の切り替えを心がけるべきだと感じた。

    なお個別の金融政策の是非、とりわけサブプライム・ローン問題の元凶がグリーンスパンではないか、という論争も一部でされている(いた)ようだが、自分は金融の専門家ではないし、正直よくわからない。ひとつだけ言えるのは、アメリカ経済がニューエコノミーと呼ばれていた時代、FRBですらこれまでの経済分析の方法を捨て去ろうかと議論していたくらい景気予測は混沌として難しかったので、ひとえにグリーンスパンだけに責任を押し付けるのは短絡的だと思う。

  •  幼少期の描写を少なく留め、おそらくは多くの読者が望むであろう、民間エコノミスト時代、FRB議長時代の経済情勢と、それに対して下した判断とその思考過程に関する記述が多くを占めており、好感が持てる。特に、著者が関係した歴代政権の経済政策決定プロセスに関する記述は、経済面だけではなく政治面についても様々な示唆を与えてくれ、読んでいて楽しい。

     本作を読むと、アメリカの共和党と民主党の党員が、大学教授などの本業をこなしながらも政党活動に関わり、その結果として政権運営に携わっていることが分かる。この仕組みの中で、優秀な経済学者などの人材はそれぞれの政党にプールされ、政権を支えるメンバーとなる。これは、政党側にもメリットがあるし、経済学者にもメリットがある。
     経済学は物理学などと違って、実験室で理論を検証することが余り出来ない。小規模な対照実験により検証できる部分もあるが、金利・マネーサプライと景気の関係など、社会を犠牲にしてしか検証できない部分もある。しかし政権中枢にいれば、自分の経済理論を実地で検証する機会に恵まれることになる。失敗すれば批判を浴び二度と立ち直れなくなるかもしれないが、成功すれば賞賛の声と、もしかすると何がしかの実益を得られるかも知れない。

     一方、日本では、政権内部に著名な経済学者が入ることは、余り無い気がする。これは、学者が政治に関わることを禁忌とみなす風習があるのかもしれないし、自分の理論が明確に否定されることを避けたいと思っているせいかも知れない。たいてい彼らは政権外部から批評のみを行い、自分の手で経済を動かそうとはあまり思わないようだ。このような姿勢では、他にも理由はあるかも知れないが、日本人がノーベル経済学賞を取ることは難しいだろう。
    (最近では竹中平蔵氏がこの例外だったが、構造改革の否定という一語の下に、その価値が全て切り捨てられる傾向にある。これは政治への学者の取り込みを目指す際にはマイナス要因になるだろう。)

     回顧録なので、若干自身の表現が美化される傾向にあることは差し引いて見るべきかもしれないが、色々と考えさせられるところの多い作品だと思う。

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