- Amazon.co.jp ・本 (373ページ)
- / ISBN・EAN: 9784532352851
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★2008年5月7日 36冊目読了『波乱の時代 上』グリーンスパン著 評価B
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本書はレーガン時代にFRB(アメリカの中央銀行)議長に使命され、2006年までその地位にあったグリーンスパンの自伝である。FRBの使命とは財、サービスの物価を安定させることを目標に政策金利の調整をおこなう。
市場介入を主張している経済学者に対して、経済を深く理解しているわけではないレーガンは自由放任の信奉者として、自由市場には自動修正機能があり、資本主義には富を生成する基本的な力があることを理解していた(P130参照)
1990年代半ば中央計画経済崩壊後のロシアの状況は、自由市場制度に移行できずに闇市場制度を築くことになる。政府が国民の財産権を保護できなければ富の創出と経済成長はできないという混乱の最中にあった。 -
上巻はいわゆる回顧録。
下巻はやや経済学の教科書的な硬い内容。
上巻は、のっけから9・11の同時多発テロのエピソードから始まり、
ニクソン、フォード、カーター、レーガン、ブッシュ親子、クリントン各政権との関わりが綴られており釘付けで一気に読めてしまった。
やはりブッシュ親子とはウマが合わず、
クリントン政権とは相思相愛の蜜月な関係を築いていたようだ。
下巻は、「風が吹けば桶屋が儲かる」的な論理的経済学アタマを駆使しないと、
話についていけない(少なくともわしは)。
上巻とは違って読むのにエラく日数がかかってしまった。
中国経済に対しては過大評価・賛美しすぎ。
しかも共産党独裁や中華思想のダークサイドにノータッチだったのがチョット気になった。
時間がない人は、下巻に関していえば、最後の第二十五章「未来を占う」だけ読めばいいかも。
読む前に個人的にもっとも気になっていたのは、
やはりエドワード・チャンセラーの『バブルの歴史』でも取り上げられ、
昨年のアメリカ大統領選挙戦においてオバマ陣営のマケイン陣営に対する攻撃のネタとなった、
キーティング5人組による1980年代の貯蓄貸付組合スキャンダルをどう語るかであった。
もしかすると、この問題はこの人にとって都合が悪過ぎだし、
タイムマシンがあれば真っ先に帳消しにしたいはずの汚点なので、
スルーかもしれないと予想していたのだが、
上巻の167~168ページにこの件について書かれていた。
興味のある方はぜひご一読を。
以上は上下巻とも読んでの感想です。 -
5-1-6 金融論
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アラン・グリーンスパン。経済学を真面目に勉強したことのある人で、その名を聞いたことがない人は恐らくいないだろう。1987年から19年5ヶ月もの間、アメリカFRB(日本でいうと日銀)の議長としてアメリカ経済の舵取りをしてきた巨匠。経済に与える影響力は時としてアメリカ大統領をしのぐほど。アメリカ経済の規模を考えると、世界経済にとっても最重要人物のひとりであり続けたと言っても過言ではない。そんなグリーンスパンの生後からFRB引退までを綴った自伝を読んだ。
この自伝は、グリーンスパンの生い立ちやキャリアを描写にすると同時に、経済・政治に対する彼の考え方にも触れている。グリーンスパンは非常に高齢(1926年生まれ!)であるため、彼のキャリアを辿ることで、アメリカの現代経済史を読み解くことができる。第二次世界大戦後のアメリカ経済や1972年のオイルショック、1987年のブラックマンデー、1990年代後半〜2000年代前半にかけての米国長期景気(ニューエコノミー)などについて、一人のエコノミストとして、またFRB議長として、どのように経済を見つめていたのかを知ることができる。
読み終えて抱いた率直な印象として、彼は経済に対して非常にバランスの取れた分析をしている。もともと彼のバックグラウンドは統計データをもとにマクロ経済の将来を予測するというものであった。しかし、データによる分析だけでは不十分であると本書ではっきりと認めている。データ取得には時間がかかるため手元にデータが揃った時には新たな景気局面に差し掛かることがある点、統計データでは表現しきれない情報が経済に大きな影響を与えうる点、歴史や文化が経済に関係する点などを指摘している。そのため、もちろん定量データは十分収集するものの、企業へのインタビューや歴史文化も十分考慮した上で、経済を予測している。データ一辺倒に偏るのではなく、また軽視するわけでもない。このような柔軟性・バランス感覚がグリーンスパンを巨匠に導いたのかもしれない。いずれにせよ、非常に参考になる。
またアメリカの現代史について、政策決定者という視点で、知ることができた点も大変興味深かった。FRB議長在任中、レーガン、父ブッシュ、クリントン、子ブッシュという四人の大統領とときに協力し、ときに対峙しながら、アメリカ経済を舵取りしてきた。その間のアメリカ経済や経済政策について忌憚のない意見を知ることができる。印象的だったのは、彼はマクロ経済をマクロなものとして漠と捉えるのではなく、ミクロな視点に置き換えて考えているようである。例えば失業率の低下という問題を家計の大黒柱が収入源を失うという身近で骨身にしみる問題として捉えるというような、ミクロな視点でアメリカ経済を見つめていた。そのため大きな決断をする時は、いつも苦悩と向き合いながら考え抜いていたのだろうと思う。パブリックマインドとして、非常に重要だと思うし、また自分自身もマクロとミクロの思考回路の切り替えを心がけるべきだと感じた。
なお個別の金融政策の是非、とりわけサブプライム・ローン問題の元凶がグリーンスパンではないか、という論争も一部でされている(いた)ようだが、自分は金融の専門家ではないし、正直よくわからない。ひとつだけ言えるのは、アメリカ経済がニューエコノミーと呼ばれていた時代、FRBですらこれまでの経済分析の方法を捨て去ろうかと議論していたくらい景気予測は混沌として難しかったので、ひとえにグリーンスパンだけに責任を押し付けるのは短絡的だと思う。