資本主義は嫌いですか: それでもマネーは世界を動かす

著者 :
  • 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (283ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532353261

作品紹介・あらすじ

「紙切れ通貨制度」の功罪。バブル、サブプライム問題、通貨危機、投機ファンド、市場原理主義、デフレ…厄介な問題をいくら抱えても、われわれは管理通貨制度とうまく付き合っていかなければならない。

感想・レビュー・書評

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  • 感想
    過熱防止。政府はマネーストックから経済状態を把握。民間は自らの行動を抑制する。そんなこと難しすぎる。だからバブルも崩壊も繰り返す。

  • 「経済論戦は甦る」ではもやもやしていた頭の中がだいぶ整理された感がありましたが、本書でもかなり今回のサブプライムローンに関わる論点や構造、またどんな経済理論がこの状況を説明しようとしているかなど、大変勉強になりました。竹森氏は難しい経済論文をわかりやすく説明する天才と今回も感じました。そして改めて経済学は面白いなあというのを強く感じた次第です。本書の後半に書かれていましたが、多くの人々が資産価格が「ファンダメンタルズ」を大きく超えるバブルの存在は認めるが、逆のパターンは暗黙的に認めないという議論、なるほどと思います。また安易に「ファンダメンタルズを超えた・・・」と議論している人は確かにまゆつばで、じゃあファンダメンタルズを超えたとなんであなたは判断したの?と聞いてみたい気もします。
     また市場自由主義を信奉する人々は今回のサブプライム危機をきっかけに規制の機運が高まっていますから、心底落胆しているんでしょうけれども、かのチャーチル元英国首相が「民主主義はこれまで試された他の制度を除けば最悪の政府の形態である」という意味深の言葉を述べていますが、まさに「市場自由主義も他の制度(共産主義など)を除けば最悪の経済制度である」という謙虚な気持ちで今後改善していかなければならないという意識が必要だと思います。

  • サブプライムローンの原因、バブルと流動性、ボラティリティ等経済の実際に起こったことについて詳しく述べられていた。少し難しい。人は必ずしも合理的な行動をするわけではない、合成の誤謬、CDS、過剰流動性、ファンダメンタルズ、等はマネーが動くときには発生するものだ。今回のコロナショックの経済的影響を考えるきっかけになる。

  • サブプライム危機を多様な側面から論じた本。
    キーワードは「バブル」と「流動性」でしょうか。

    第?部で、「流動性」とは、その経済の「投資意欲」のことを指す、という考え方が紹介されています。
    「意欲」とは、個々人の「心理」であり、社会全体の「風潮」のようなものでもあるのでしょう。
    貨幣経済が「信用」で成り立っている以上、「意欲」は連鎖反応を起こし、上向きなときはとことん上昇し(バブル)、下がるときは一気に下降する(バブル崩壊)。
    それは資本主義経済の運命(さだめ)なのだと思う。
    バブルもバブル崩壊も起さない「安定した」経済が望ましいものなのか、この本は明言をしてはいません。
    もしかしたらバブル無き社会にはイノベーションは生まれないのかもしれない、と。

    素人の自分にも理解しやすい噛み砕いた論旨が展開され、非常に読みやすいのですが、内容的には結構専門的な議論も含んでいるのではないかと思います。
    だから、読後もすべてが明解に頭に入った!という爽快感はない。
    手元に置いて何度も読み返せば、かなり経済に対する理解を深められる一冊なのではないかと思います(自分は残念ながら図書館で借りたので返してしまいますが)。

    印象に残った部分を、備忘のため以下メモしておきます。

    ・「その経済における投資収益率が成長率を上回る」という「動学的効率性の条件」が満たされない(すなわち投資収益率が成長率を下回っている)状態では、バブルが経済に寄与する。富を真正な投資に回すよりも、国債を発行して無駄遣いし、国債の償還のためまた国債を発行するといった「ねずみ講」が問題を生まないことになる。
    ・サブプライム危機が発生するずっと以前、2005年8月のカンザスシティ連銀主催シンポジウムにて、今まさに話題となっている、金融機関の時価評価会計の問題や、金融システムへの規制強化の問題が議論されていた。
    ・何が資産の「ファンダメンタルズ」なのかは誰にも知ることができない。一般的に、バブルとは資産価格がファンダメンタルズから大きく上ぶれすることである一方、バブル崩壊で資産価格が下落する局面ではファンダメンタルズに一致(収斂)するという考え方が広く認識されているが、これは「誤解」である。資産上昇の局面でファンダメンタルズから乖離するのであれば、資産下落の局面でもファンダメンタルズから乖離するはずであり、そのように対称的に考えたほうが自然だ。

  • ・「バブルの頻発」は世界経済の高成長を維持するために経済システムの「自動制御装置」が働いた結果。しかし、制御装置はシステムの安定性をもたらさないこともある
    ・住宅価格を説明する一番重要な要因は「個人所得」
    ・世界経済は1997年を転機に貯蓄過剰(低金利)へ。貧しい国から豊かな国へ資本が流れる「いびつな構造」に。低金利は住宅バブルを生む
    ・「動学的効率性の条件(その経済における投資収益率が経済成長率を上回る)」が満たされない(=投資が過剰な経済) ⇒ バブルが経済効率の改善につながりうる
    ・「世界的な低インフレ」と「世界的な低金利」は表裏一体の関係
    ・低インフレは避けたい ⇒ 国を挙げて投資対象(バブル)を作り出す
    ・サブプライムバブルは「ビッグ5」と比べても抜けている(実質住宅価格の上昇、経常収支の悪化)
    ・ロゴフの落とし所:世界経済全体の成長率を現在よりも引き下げること
    ・新興国が生活水準の改善を「恒常的」と捉えれば貯蓄率は低下へ…?
    ・欧米の銀行:金利の低下 ⇒ 貯金の魅力低下 ⇒ CPなどに依存
    ・今回の金融危機での対応の速さ ← 中央銀行等がどのような形で危機が起こるのかを認識していた(2005年のシンポジウム)

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  • 筆者がどの立場に所属するかは明快でないか、先行研究の議論を鮮やかにまとめ経済学の潮流をわかりやすく説明。

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    ①現在の国際経済はインバランス
    ・経常収支赤字を前提とした覇権国アメリカの消費に依存して資本輸出をおこなう日本、東南アジア(過剰貯蓄→資本輸出)
    →これの唯一の解決策:成長を止める(ほんとに可能かは別として)
    ②金融緩和推進派→リスクを分散することで金融の安定性を担保、経済成長を促す
    ←サブプライムローンで見事に粉砕される
    ③金融緩和推進に懐疑派→リスクは分散されたが、かえって金融ショックが起きたときにそのショックが巨大なものとなり金融システムそのものを脅かすのでは?

  • 本屋でこのタイトルだけみるとたぶん手に取らないだろうけど、中身はまとも。ただ、理解するには多少の経済学の知識が必要でしょう。

  • サブプライム問題を受けて書かれた本。

    なんだけれど、内容は正直微妙。政治的要素を抜きにできないことも政治的要素から目を背けたまま書かれる内容は悪い意味で”経済学者”だなーと言った感想。
    低金利がバブルの犯人ではない、バブルも使い方で有用になるといった話は否定するものでもないけれど、金融制度を巡るゴタゴタについては原因としたり安定化に寄与したとしてたりとなんだかなーといった印象。金融制度は大事だってところからもう一歩先に進んで、どのようにしたらより有用に使えるか暴走を防げるかといったところまでいかないと帯に短し襷に流しにしかならんなってなる。

  • 他の著書などでリーマン・ショックを振り返っていてある程度の知識があったせいか特にこの本で得られるようなものはなかった。
    資本主義自体を大きく論じている内容ではないことには注意。

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著者プロフィール

慶應義塾大学経済学部教授
1956年東京生まれ。81年慶応義塾大学経済学部卒業。86年同大学院経済学研究科修了。同年同大学経済学部助手。86年7月米国ロチェスター大学に留学、89年同大学経済学博士号取得。2019年より、経済財政諮問会議民間議員

「2020年 『WEAK LINK』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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