世界経済危機は終わった

著者 :
  • 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (289ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532355982

作品紹介・あらすじ

大不況に、未曾有の金融緩和で立ち向かった、MIT人脈に連なるセントラルバンカーたちの果断な行動と理論を、豊富なエピソードとともに語る。

感想・レビュー・書評

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  • この著者の「通貨『円』の謎」で眼から鱗の如く、当時(~2013)の円高やデフレの謎を解いてくれた明快さに心酔し、今回も「世界経済危機は終わった」と結構刺激的なタイトルに魅かれて読み始めた次第です。

    リーマンショックに始まり、ユーロ危機等、1929年の大恐慌以来の嵐が吹き荒れようとしていた時に、この難関を軽微な傷に抑え込み見事に克服した経済政策のテクノクラットへの賛辞の本でもある。

    その中心にいるのが、MIT人脈であり、現在の世界各国の中央銀行を動かすモディリアーニの教え子であるフィッシャー、バーナンキ、ドラギ、キング、パパデモス、ブランシャード等々の面々である。特にMVPはバーナンキ前FRB議長とドラギECB総裁が分かち合うべきだと言う。

    途中「MITコンセンサス」「湖水学派対海水学派」の細部になると、かなり専門分野の話になるので、少しダレて、ついていくのが辛くなる。

    最後に今回の経済問題は、テクノクラットの活躍で終焉に向かっているが、彼らに可能なのは、あくまで現状を守り抜くことであり、シリア、ウクライナ問題のような政治問題に対しての次のビジョンとリーダーシップはますます不透明になっていると警告を発し、それをどう立て直すかかが、今後の課題としている。

    特に著者は、メルケルとオバマへの舌鋒は鋭い。
    ユーロ危機に際してのドイツのマクロ経済政策の軽視が危機をこじらし、安定化の妨げになっていると、またウクライナへの戦略なき接近を鋭く批判し、また、アメリカのオバマ大統領に対しても、シリア問題でいきなり軍事介入に言及し、結局引っ込めざるを得なくなった対応の仕方が、世界のリーダーとして、考えられない無謀さで、現実から遊離していると鋭く批判する。
    確かにあのシリアへのアメリカの態度が、プーチンのウクライナ問題への決断に寄与した責任は大きいと思う。

    経済問題が締めくくりは政治問題へとなってしまったが、面白く読み終えました。

  • 新着図書コーナー展示は、2週間です。通常の配架場所は、3階開架 請求記号:333.6//Ta63

  • 金融危機が一応終わったことになっているのに、なぜ企業投資や消費行動は思ったように回復しないままなのか。筆者は冒頭で自ら立てたこの問いに対し、主にアメリカの(国内外における)政治的リーダーシップの凋落と、これに起因するウクライナ危機を挙げる。金融サイドの責務は果たしきった、後は政治がしっかりしろと言わんばかりだが、本当にそうだろうか。それより僕には、危機が去ったという割には何故か日米欧の中央銀行が一向に大規模金融緩和というbattle stationを解こうとしない、この不自然さが経済主体のマインドに影を落としているように思える。確かに本書に書かれる通り、モディリアーニに連なるMIT人脈「海水学派」の現実主義的な政策により、どうにかリーマンショックのアフターマスは押さえ込むことができているのは確かだ。しかし国債を中銀が大量に買う「だけ」という、一見誰の腹も痛まないような方法で100年に一度の危機が克服できたという「出来過ぎた」物語の結末を、どこか頭から是とすることができない多数の人々がいるということではないのか。何せ前回の世界恐慌の際には最終的に世界大戦まで行ったのだ。

    筆者は「ファンダメンタルがそもそもはっきりしないのだから、その規格はずれであるバブルの害悪も確実にあるとはいえない。そして現実に貨幣供給は伝統的ケインズ主義的ルートではなく資産バブルを通じたリスクオンによりインフレ率を上昇させ、これが危機克服につながっている。そしてこのルートを主導したのが経済安定のためにはバブルさえ容認するという海水学派だった」、という。確かに現実に起こったことはこの通りであるように思える。思うのだが、一方で経済学ってそれでいいの、という気もする。簡単にこれまで積み上げてきた理論を捨て、一番安易と思われる方法で効果が出れば「結果オーライ」というのでは身もフタもないのではないか。仮にバブル的ルートでも可とするなら、経済学という学問には、それが問題にならない(またはなっても解決可能)とする論理の提示を期待したいと思う。バブルは事後的にしか分からないので先に考えても無意味、というグリーンスパン的な弥縫策を繰り返すのでは余りに芸が無さ過ぎる。僕がこの本に期待したのは「これでいいのだ」とする理由だったのだが、ついにこの本にはそれが書かれていなかったのが残念。

  • 東2法経図・開架 333.6A/Ta63s//K

  • ルーズベルトは国を1つにしたが、オバマはバラバラにした。医療改革保険制度を始めたのが原因。
    アメリカの国内政治の麻痺に端を発する将来の不確実性は大きい。

  • 「相互信頼が存在」し、「現在の中央銀行を動かす」モディリアーニの弟子たち=MIT人脈(フィッシャー、バーナンキ、ドラギ、キング、パパデモス、ブランシャード)に現実問題の解決を優先する「MITコンセンサス」があり、金融政策の阿吽の呼吸で危機の脱出が図られた、とする仮説。

    今回は、出てくる話がちと古い気が。。

  • MITコンセンサスという視点
    フランコモディリアーニを軸に
    ルーカスパパデモス首相

    マリオドラキ

    ロバートマートン

    スタンレーフィッシャー

    メルヴィンキング

    ジョージアカロフ

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著者プロフィール

慶應義塾大学経済学部教授
1956年東京生まれ。81年慶応義塾大学経済学部卒業。86年同大学院経済学研究科修了。同年同大学経済学部助手。86年7月米国ロチェスター大学に留学、89年同大学経済学博士号取得。2019年より、経済財政諮問会議民間議員

「2020年 『WEAK LINK』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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