市場サイクルを極める: 勝率を高める王道の投資哲学

  • 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (423ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532357993

作品紹介・あらすじ

■サイクルに注意を向け、耳を傾けよ。

■投資において、たった一つの最も重要なことなど存在しない。前著『投資で一番大切な20の教え』で論じた20の要素一つひとつが、成功を願う投資家にとって絶対に欠かせないものなのである。

■だが、最重要項目にまちがいなく一番近い要素は、市場サイクルを理解することだ。これまで私が知り合ったすぐれた投資家の大半は、サイクルの一般的な動き方と、「今、サイクルのどこに位置しているのか」を察知する類まれな感覚を身につけている。

■残念なことに、サイクルの根本的な性質について書かれた文献はほとんど存在しない。そこで私は、サイクルとは何かというテーマに的を絞った本を書く決意をした。

■投資家はサイクルを認識し、評価し、どうすべきかをそこから読み取り、それが示すとおりに動く術を身につけなければならない。サイクルに耳を傾ける投資家は、サイクルが引き起こす大混乱を理解し、それに乗じて著しいアウトパフォーマンスを得られるだろう。

■オークツリー・キャピタル・マネジメント共同会長兼共同創業者が、勝率を高める王道の投資哲学を説く。

■世界的投資家も大絶賛!
「ハワード・マークスからの『顧客向けレター』が届くと、私は何をおいても必ず真っ先に読むことにしている。常に新しい学びがあるからだ」――ウォーレン・バフェット

「『歴史は最良の教師である』と私は常々述べてきた。本書は、歴史から学び、未来を見通す知見を得る方法を授けてくれる」――チャーリー・マンガー

「当代最高の投資家が、サイクルという重要な概念を説明している。必読」――レイ・ダリオ

感想・レビュー・書評

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  • 読了
    1回目 2021.10.4

  • 良書。
    クレジット投資家の視点から、景気サイクル論に裏付けられた見方を紹介。名のある投資家の考え方を知るにはお勧め。

  • 以下気になったところ

    はじめに
    前回の著書から7年。20の投資に対しての心がけを書いたが、一番大事だと思うことが、サイクルを理解することだと思っている。顧客にも『今、サイクルのどの位置にいますか?』という質問と多いため、この本を著すことにした。
    サイクルは自然発生的に起こるが、人間の心理の浮き沈みや行動によって動くことも多い。サイクルを理解することは著しいアウトパフォームの鉱脈になりうる。

    ❶なぜサイクルを研究するのか?

    ①サイクルの中での立ち位置が変わると勝ち目が変わる。立ち位置を理解することにより、自分に有利なポジションを立てることができる。

    ②インデックスを一貫してアウトパフォームすることは難しい。そのためには、他の投資家より良質な情報を持っていて、情報分析にも長けている、その情報から適切なポジションを持ち、かつ逆にいっても我慢強く持ち続けることが出来ることが条件だ。普通の投資家はこんなの無理だ。

    ③マクロ情勢の分析でアウトパフォームはできない。やれることは、分析力を磨く、本質的価値から乖離した価格のものを拾う、サイクルを理解した上でポジションを組むことである。

    ④キーワードは『調整』することである。価格が割安な時は積極果敢に攻めるべきだし、割高な時は手を引くべきだ。簡単な理屈だが、これが難しい。

    ⑤物事は様々な選択肢の中から1つの事が起こっている。起こり得ない事もあったことを肝に銘じるべきだ。投資家は起こり得ることを確率分布の考えを用いて未来に備えるべきである。

    ⑥確率分布的な考えをするうえでも、比較的高い確率で起こり得ることと(国債が来月償還しそう)、全く分からないこと(来月の株価水準)は分けて考えるべきである。

    ❷サイクルの性質

    ①1つのサイクルの中の出来事はただ単に次の出来事て続くという流れで捉えるべきではない。はるかに重要なことは『起こったことが次の出来事を引き起こす』と捉えるべきである。

    ②サイクルには明確な始まりや終わりというものはない。

    ③サイクルや振り子な特徴として、中心点で止まることはほぼない。割安な状態から始まり、適正な水準までいったら、そこでは止まらず、ファンダメンダルズの改善や楽観主義の台頭を経て、割高な水準へ向かっていくのだ。全てがそうなるとは限らないが往々にしてそうなる。

    ④中心点からの乖離が大きければ大きい程、次のサイクルや振り子の振れ方は大きくなる。要するに『山高ければ谷深し』である。

    ⑤1つのサイクルは別のサイクルにも影響を与えるということを認識すべきだ。

    ⑥景気サイクルは企業の収益サイクルに影響を及ぼし、企業の収益サイクルに影響された企業の業績発表は投資家の姿勢を変化させる。投資家の姿勢は相場を動かす。そして相場の変動は信用サイクルに影響し、それがまた景気、企業、市場へ波及するのだ。

    ⑦投資家は過去をすぐに忘れる。だからバブルは何度も起こるし、サイクルが増幅されて動いてしまうのだ。

    ⑧人間の認知は非対称である。上方への価格変動は『利益』と呼ばれ、下方への価格変動は『ボラティリティ』と呼ばれる。相場が暴落すると『パニック売り』と呼ばれるが、暴騰した時は『爆益w』みたいな表現が使われる。市場サイクルの底で投げることを『投資家の降伏』と捉える人間は多いが天井圏で買わなかった人間が買いに走ることは『投資家の降伏』と呼べないのだろうか?

    ⑨ブームと暴落という現象はサイクルの対称性を示す好例である。ブームの後は痛みを伴わない穏やかな調整では終わらない。ブームがなければ、大きな痛みを伴う下落というのもこない。

    ⑩ブームが極限まで達するには何年もかかることがあるが、頂点から落ちるまでのスピードは上昇のスピードと比べてはるかに早い。

    ⅺ)サイクルは分析と直感の両方に基づいて理解する必要がある。先んじることが出来る人間はロジックとアートの両方を兼ね揃えた人間である。

    ❸サイクルの規則性

    ①サイクルは完全に科学的、機械的なプロセスから生じる者ではない。正弦波のような規則性のあるものではない。人間の心理面が影響を及ぼすのだから当たり前である。

    ②我々、人間の脳は負荷を軽減させるために、物事のつながりをパターン化して法則を見出そうとする。人間の持つ重要なバイアスである。

    ③サイクルのタイミングについてほとんど知らない、という理解をすることは、サイクルとそこから導き出せる適切な行動について知らない人間より圧倒的な優位性がある。サイクルが与える効果を知るだけでもパフォーマンスは変わる。

    ❹景気サイクル

    ①長期サイクルを考えるにあたっては1国のGDPがどうなるかを考えると良い。GDPはその国で生み出される付加価値の合計だ。GDPは人口と生産性が重要な要素である。

    ②生産性の歴史を紐解くと、まず生産性が劇的に向上したのは1760〜1830年にかけて蒸気機関が発明された時だ。次が19世紀末から20世紀にかけてで動力源が電気になって、自動車が使われるようになった。3度目は20世紀後半にコンピュータが使われることで行われた。そして、今大情報時代に入りAIの本格普及している時期に入っている。

    ③短期のサイクルにおいて、経済活動をする上でサイクルができる1番の原因は人間の心理面にある。

    ④例えば消費者が消費する場合も増えた分一定の割合で消費が動くわけではなく『限界消費性向』の変動によって新たに増えた分のうち、どれだけ消費に回るかも短期間で変わる。景気拡大、減税、融資姿勢の緩和など様々な要因があるが、特に大事な要因として資産効果が挙げられる。

    ⑤マクロ環境の大半は過去からの延長線上で動くため、その範囲の予測であれば当たる。一方で、マーケットはたまに過去からの延長線を大きく逸脱する動きをとる。その時に備えてどう動くかが長期のパフォーマンスを占う上で重要である。

    ❺景気サイクルへの政府の干渉

    ①政府と中央銀行は適切だと感じる成長率、インフレ率、失業率などの条件を満たす成長率にコントロールしようとする。そのため、景気サイクルに介入するのだ。

    ❻企業利益サイクル

    ①企業の利益を決定づけるプロセスは複雑だ。売上が景気サイクルに左右される会社もあれば、そうでもない会社もある。また、主として財務レバレッジと営業レバレッジのかけかたで売上が同じ割合で変化しても残る利益が変わることもあるのだ。

    ②テクノロジーも企業利益に大きな影響を与えうる。インターネットビジネスは無料を基本としており、低価格競争の圧力が強まっているし、ビジネスモデルの新陳代謝のサイクルも非常に早い。

    ❼投資家心理の振り子

    ①企業、金融、市場のサイクルからの上下への行き過ぎた乖離はほとんどの場合、心理の振り子の過剰な揺れによって生じる。したがって、この投資家心理の振り子のメカニズムを理解することは他の投資家をアウトパフォームする第一歩となる。

    ②マーケットが力強い上昇をすると振り子は(陶酔感、好材料への歓喜、過大評価、強欲、楽観主義、リスク許容、軽信、将来価値への期待、焦り買い)といった反応を示す。逆に下落が続くと(沈滞感、悪材料に対する強迫観念、過小評価、恐怖、悲観主義、リスク回避、懐疑主義、現在の目に見える価値へのこだわり、パニック売り)という反応を示すようになる。

    ③相場は常に楽観と悲観の間を揺れ動いている。相場がほとんど均衡しているときは楽観主義と悲観主義の勢力が拮抗しているからだ。

    ④強欲と恐怖のサイクルの極みにある時が最も投資収益が高い局面になる。

    ⑤ ②で記載した分類は互いに影響を及ぼし合ってそれが振り子の動きを強めることになる。そして、往々にしてトレンドを形成することが多いように思える。

    ⑥空きビルの価値で例える。空きビルの価値は本質的には再調達価格で評価されるが、現状は何のキャッシュも生み出さないうえに、税金やメンテナンス費用、金利、保険料などがかかってくる。市場のムードが悲観的な時は、コストに目が向かい、入居者から賃料を得るという発想になりにくい。一方でムードが好転した時は入居者から賃料を得て転売まで考えるという発想まで及ぶのである。
    いかに、発想がセンチメントに左右されるかがわかる。

    ⑦常に冷静でいられる投資家は驚くほど少ない。したがって、良い時も悪い時もフラットでいられることは強みになる。

    ⑧ ⑥にもつながることだが相場のセンチメント次第でデータの捉え方が変わるということはよく起こる。例えば、金融緩和を欲しているマーケットにおいては良い雇用統計の数字より悪い数字が好感される。現在置かれている環境を踏まえてデータは取り扱わなければいけない。

    ❽リスクに対する姿勢のサイクル

    ①理性ある投資家は熱心で疑い深く、いつも適切にリスク回避的であるだけでなく、リスクリターンに見合う機会を探し求めている。一方で、数多くの投資家はマーケットが良い時はリスクラバーになり、悪い時には極端に嫌悪するようになる。

    ②マーケットは往々にしてトレンドができるが、例えばポジティブフィードバックのケースを考えてみる。
    株価が底打ちから数%上昇し初期のトレンドができる→楽観主義の度合いが幾分強くなる→リスク許容度が高まる→株が買われる→リスク許容度が再度高まる。
    この繰り返しが振り子の際に振れるまで行われる。最後に買う投資家はリスク許容度が最大で本人はリスクを感じていないだろうが、実はその時が一番危ない。

    ③天井で掴んだポジションは当然痛みを生むポジションになる。軽視していたリスクが現実化した時に、初めて強欲と軽信に駆られていた自分に気づく。そして、なぜあの時馬鹿げた買い方をしたのか自分を責める。リスクを理解していなかったことを認める。天底圏では、逆のことが起こる。直前の投資家が受けたダメージにより、その強弱は変わるように思える。つまり、ダメージが大きいと押しが深い。

    ④リスク回避が顕著になると、資本市場線の傾きが大きくなる。

    ⑤投資リスクの最大の源は何だろうか?悪い経済指標、予想を下回る企業決算、製品の競争力低下…。いろいろ考えられるが、おそらく最大の源は投資家が何らかのきっかけで過度にリスクをとって資産を買い上げた時に訪れる。楽観主義と軽信が蔓延しリスク許容度が最大になったときに投資リスクは極大に振れる。

    ⑥懐疑主義と悲観主義、楽観主義は同義語ではない。悲観主義が行き過ぎると楽観主義をもたらす。一方で楽観主義が行き過ぎると悲観主義をもたらすのだ。

    ⑦人は一番慎重になるべきときに買いたがり、最も積極的に動くべき時に買うのを躊躇う。優れた投資家はこのことを理解して逆張りで動く努力をしている。

    ❾信用サイクル

    ①信用サイクルの理解は重要である。景気の変動に左右されやすく、他のサイクルにも多大な影響を与える。それ自体の変動も極めて激しい。その極端な動きは他の多くの分野の活動に影響を及ぼす。

    ②信用サイクルは景気がわずかに変動しただけでも利用可能な信用の規模は大幅に変化して、資産価格や景気そのものにも多大な影響を及ぼす。

    ③信用サイクルは今まで挙げてきた、景気サイクル、企業収益サイクルなどと比べても一番重要で理解しなければいけないサイクルである。

    ④信用サイクルは窓に例えると分かりやすい。窓が空いている時は資金調達が容易な時で閉じているときは資金調達が困難な時だ。

    ⑤信用サイクルを重視する理由として三つある。一つは、資本、および信用は生産プロセスに不可欠な要素で、成長余力は追加の資金がどの程度使えるかで変わってくることが多いからである。
    二つ目は、満期を迎える負債の借り換えをするために利用可能な資本が必要とされる。企業は金利の安い短期金利で資金を借りて長期の資産に投資を行う。期間が合わない投資をするため、借り換えができないとすぐに行き詰まる可能性が高まる。
    『短期で借りて長期で貸す』というビジネスモデルは銀行にも当てはまる。銀行は信用サイクルに多大な影響を受けやすい。
    最後に、信用サイクルの変調自体が他のサイクルに多大な心理的影響を及ぼすということだ。閉鎖的な信用市場が企業マインドに影響を及ぼし、それがまた信用サイクルにフィードバックされて、スパイラルに影響が出やすくなってしまう。

    ⑥歴史を振り返ってみても、低利のカネは必ず貸してはいけないところへ流れる。そして、それは損失となり悲惨な結果を生み出すのだ。最近の例だとSPACなどがいい例だろう。甘い事業計画のもと、有象無象の企業へ熱狂的な投資家が押し寄せた結果、信用サイクルの暗転で無残な結果を招いてしまった。

    ⑦景気の先行きについては読めない。資本の需給に関わること程は多く知ることができない。誰もがカネを注ぎ込む分野に身を投じることは災厄を生むことになる。

    ⑧投資において起きる現象の大半はそれらを身をもって経験しない限り理解できない。

    ➓ディストレストデットのサイクル

    ①ハイイールドのマーケットも他のサイクルの影響を大いに受ける。リスク許容度が高まると、無分別な発行が増えてくる。

    11)不動産サイクル

    ①不動産サイクルも他のサイクルと概して同じである。違いといえば、他のサイクルと比べてリードタイムが長いことである。また、有価証券などと比べると供給に柔軟性が欠ける難点もある。さらに、投資金額も大きいので財務レバレッジがかかる。

    12)すべての要素をひとまとめに-市場サイクル

    ①投資家の仕事はシンプルである。資産価格に向き合い、それが今どのような位置付けになっているか評価し、どう動くかの判断を下すのである。価格は主に、ファンダメンダルズと心理に左右される。

    ②ファンダメンダルズと投資家心理は独立して動くのではなく互いに影響し、効果を増幅する形で動く。
    短期間に倍以上になる株の動きを考えるとわかりやすい。ある材料(業績など)で株価に火がつくと楽観に傾いた投資家心理が株価を押し上げる。出来が更なる出来を呼び株価は上がり続ける。投資家の楽観がピークに達して投資家の期待値を下回るところまでくると、上昇は持続不可能になり下落に転じる。

    ③何度も言うが、未来を見通すことはできない。先を見通すには先見の明や直感、二時的思考が必要だ。それよりも、投資家がいかに非合理的な存在で、そのとる行動がサイクルの変動にどのような影響を及ぼすかを観察することが大事である。

    ④行動心理学から言われている話は押さえたほうが良い。

    ⑤賢明な人が最初にやることは愚者が最後にやることである。

    ⑥『友人が金持ちになるのを隣で見る程、心の平安や判断をかき乱されることはない』は群集心理を表す言葉として分かりやすい。

    13)市場サイクルにどう対処するか

    ①カギとなるのは何か。心理の振り子とバリュエーションのサイクルがどの状態にあるのかを知ることだ。過度に楽観的な心理と高過ぎるバリュエーションであった場合には機会損失は諦めて買わないこと。逆に、悲観的な心理と低過ぎるバリュエーションで投げ売りが見られる場合は勇気を出して買いに走ることだ。

    ②サイクルについてのおさらい
    ⅰ 基本的なテーマは繰り返されて、歴史は韻を踏む。
    ⅱ 人間の本性に関するものは浮き沈みする。時に極端な方向性にも向かいやすい。心理は環境に極端に反応する。
    ⅲ サイクル自体、連続性があり直前に起こったことは未来に影響を及ぼす。また、他のサイクルにも影響を与える。
    ⅳ 景気サイクルと企業利益サイクルが投資サイクルを作る。

    ③バリュエーションは株であればPER、債券ならイールドスプレッドなどで過去と比較すれば足元のバリュエーション評価はできる。

    ④バリュエーション尺度が常識的な水準から乖離しない状態で市場サイクルが極限に達することはあり得ないと言う点は把握しておいた方が良い。バリュエーションは投資家心理がもたらす結果であり投資家心理の状態を示しているといえる。

    ⑤市場が暴落している時『落ちるナイフは掴むな』という格言があるのか正しいのか?
    底に達する前に買うのが正しいと思っている。
    理由は、恐怖の極みというのは一瞬で誰にも分からない。ただ、反転してある程度の時間が経った時にはバーゲンは終わっている。
    ほとんどの投資家がナイフを掴まないように傍観している時に、投げ売っている投資家から買うのだ。

    ⑥もう一度、同じことを言うが、底打ちしてから買っては遅い。では、いつ買うか?それは本質的価値を下回ったと判断したときだ。おそらく、買ってからも下がり続けると思う。その時は買い下がるのである。他の多数の投資家と逆の行動をするのでメンタルが相当削られるが、他の投資家を出し抜き、アウトパフォームするのに必要な行動である。

    ⑦サイクルを理解し、その変動を乗り切るための精神的な強さ、金銭的強さを身につけることが投資を成功に導くうえで欠かせないことである。

    ⑧『市場はあなたが支払能力を保てる期間より長く、不合理な状態を続けることができる』サイクルの変動は自分が思っているずっと読めない。マクロはわからないことを肝に銘じながら、細かくサイクルのどの位置にいるのか確認して相場に乗り続けるしかない。

    ⑨投資を面白くしているのは必勝法がないからである。サイクルが刻一刻と変化する中で、その場面に合わせた戦術をとる必要がある。

    14)サイクルポジショニング

    ①成功の要素3つある。アグレッシブさ、スキル、タイミングである。然るべきタイミングでアグレッシブさを発揮できれば、実はスキルはあまり必要ない。

    ②サイクルポジショニング…基本となるサイクルに関する判断に基づいてポートフォリオを組むにあたり、リスクに対してどのような姿勢をとるか決めるプロセス。

    ③資産の選別…どの市場やセクター、個別の証券や資産をアロケーションするプロセス。

    ④攻撃性…上昇トレンドを想定する時にとる戦術。ベータが高いので、マーケット想定を間違うと食らうダメージも大きい。

    ⑤防御性…上昇トレンドの確信が持てない時に保守的にとる戦術。より自信がなければキャッシュポジションを増やすこと。

    ⑥スキル…インデックスをアウトパフォームするために必要なもの。別名アルファ。

    ⑦運…スキルや妥当な仮定が成り立たない、つまり合理的なプロセスよりもランダム性が出来事に大きな影響を及ぼす数多くの上昇において生じる。暴落時を想定すると分かりやすいかもしれない。

    ⑧運とスキルはポートフォリオ管理における決断の成否を決める重要な要素である。

    ⑨結果を確率分布で考える以上、打率10割なんてことはあり得ない。良い結果を引き当てるにはどんな優れた投資家であっても運に左右される部分がある。ただし、連続して良い結果を引き当てるには、確率を少しでも上げる努力が欠かせない。

    15)対処できることの限界

    ①どれだけ良い準備をしたとしても運に左右される要素があるということを認識すべき。例えば、投資家が楽観的でリスク許容度が極めて高いと判断して、ポートフォリオを保守的にしたとしても、さらにそこから上がることもままあるのだ。あまりに早い判断は、特に他人のカネを預かる機関投資家は仕事を失うリスクにもつながる。
    サイクルのどの位置にあるかを認識しても、そこから取る行動が常に適切なものになるかは分からない。

    ②サイクルに乗じることは『常に』上下に揺れる波を乗りこなすことと同義ではない。極限に達しない状態では資産と本質的価値の乖離は出にくく、ポジショニングの精度は極限時に比べると落ちると認識すべきである。

    16)成功のサイクル

    ①成功のサイクルもこれまでの話と同様に人間の本性に関わる部分から生まれる。同時に、サイクル自体に連続性があり、他のサイクルにも影響を与える。

    ②投資に成功すると投資家は自信を深め、リスク管理に甘くなる。これは破滅への第一歩となる。常に一歩引いた目で自分の判断が正しいか自問自答しなければいけない。

    ③短期的な投資パフォーマンスは人気投票のようなものである。この本で解説した内容の掘り出し物は大抵は人気がなく出来も少ないものがほとんどだ。一方で短期的にパフォーマンスを上げるものは人気も出て出来高もできて価格が高くなった資産である。

    ④類稀なパフォーマンスが出ているものがあると、そこにめがけて資金が入る。やがて、人気になったものは平均的なパフォーマンスに落ち着いてしまうのだ。最近ではアークのETFを想像するとわかりやすい。
    資金流入のピークは同時に投資先のピークを示唆している。

    ⑤成功は長続きしない。むしろ、特にマーケットに過熱感が出てくると往々にして失敗が大きくなりがちである。希望的観測で物事を判断しないよう注意する必要がある。

    17)サイクルの未来

    ①極端な行動をとってしまう人間の本性が改善されることはないだろう。同時に、そうした極端な行動は永続せずにどこかで修正される。つまり、サイクルがなくなることはない。感情を持った人間が経済活動の主体である限り、経済が直線的に成長することはない。サイクルの仕組みを理解した上で適切な行動をとることによって優れたパフォーマンスを残すことができる。

    ②決断をするにあたっては様々なアプローチが考えられる。冷静で感情に左右されにくい人間もいるだろう。ただし、人間である以上、他の人からの影響や客観性の喪失と無縁でいることはできない。

    18)サイクルの本質

    ①投資で成功するのはくじ引きで当たりを引くようなものである。なるべく確率を上げようと努力しても完全に思い通りになることはない。準備をしたうえで、最後に必要なピース運であることを肝に銘じる。

    ②すぐれた投資家は箱の中にどのようなくじが入っているか、ひいては、くじ引きに参加すべきか感知することができる人たちである。

    ③サイクルの立ち位置が変わると勝ち目が変わる。

    ④ポートフォリオはサイクルの立ち位置によって、攻防のバランスをとって決めるべきである。

    ⑤上昇のあとはちょっとした調整が起き、強気相場の後は弱気相場が訪れる。だが、行き過ぎた上昇はその後大きな損害をもたらす崩壊への一歩となる。

    ⑥投資の面白いところは楽観の極みに達した場合、次は悲観の極みに達するまで振り子が振られることである。『山高ければ谷深し』である。

    ⑦いかなるときでも、投資家が集合体としてリスクをどのよつに捉えていて、それをもとにどのように振る舞うかが、我々を取り巻く投資環境が形成される過程で圧倒的に大事である。
    マクロ環境は読めないが、サイクルの位置を把握するだけで勝ち目は劇的に変わる。

    ⑧何度も言うが、人は一番慎重になるべき時に買いたがり、一番積極的になるべき時に売りたがるのだ。優れた投資家はこのようなクセを理解している。

  • 400ページ超でなかなかのボリュームです。

    内容としてはタイトル通りで、投資をするうえではサイクルをしっかり考える必要があるということです。

    それが繰り返しいろんな書き方がされています。

    最後の18章に全体の要点がまとめられているので、そこだけ読んでもよさそうな感じです。

    投資で成功するには大多数の人と逆の行動をとらないといけないという基本をしっかり再認識できる本です。

  • 思考方法。続編。
    単純化できない考えを40年の経験則から見る。
    基本長期投資の考え。バリュー投資派。
    前とほぼ同じ内容か。

    同じ歴史はないが、サイクルとして韻を踏むという考えは心にとめておきたい。
    予測する未来に対して、次のための今という動きは投資に限らず持ちたい考え。

    1年ぶりに読み直し。
    17章からを改めて読み込む。
    サイクルは人間の感情そのものと捉えてよいだろう。つまりサイクルの外から見るべきで、サイクルの最中にいると気づくメタがない限りは、未来を予測したり一喜一憂する最中になる。
    予測せずさもあらんという状態におけるかが改めて鍵だなと長期軸で感じる。

  • 経済や市場はパターンに従って動き、その中に「サイクル」と呼ばれるものがある。
    サイクルは自然発生的な現象に起因するが、人間の心理や行動に端を発する場合もある。

    投資の世界では、サイクルが中心点や長期トレンドの周りで浮き沈みを繰り返し、振り子が行きつ戻りつする。
    サイクルの形は様々だが、根本的な原因・動きのパターンには共通する部分が多く、時代が変わってもある程度、一貫している。

    投資家にとって重要なサイクル・振り子には、次のようなものがある。
    ・景気サイクル
    ・景気サイクルへの政府の干渉
    ・企業利益サイクル
    ・投資家心理の振り子
    ・リスクに対する姿勢のサイクル
    このうち最も重要なのは「リスクに対する姿勢のサイクル」。
    過度のリスク許容は危険の発生を後押しし、リスク回避姿勢が行き過ぎると相場は下落するからだ。

    サイクルは次のような性質を持つ。
    ・物事、特に人間の本性に左右されるものには、浮き沈みを繰り返す傾向がある。
    ・サイクルの中の1つ1つの出来事は、相互に作用し、影響を及ぼしあう。
    ・サイクルには、極限まで触れる傾向がある。

    投資成績は何を買うかではなく、いくらで買うかで決まる。
    そして、いくらで買うかは投資家自身の心理と行動で決まる。
    市場の状況に見合った行動をとるためには、他者の心理と行動をいかに評価するかが重要である。

  • 投資の市場におけるサイクルポジションの重要性と投資戦略について、いろんな表現や事例を用いて解説してくれる。いまサイクルのどこにいるのか、振り子の極端な極限に到達する過程でどう行動すべきかの指針となる名著。逆張り投資家向け。

  • 株式に限らず、投資全般における市場サイクルについて解説した1冊。15年間隔とも言われる大きな相場サイクルの構造を分析している。相互作用する別々のサイクルを一つず説明しているけれど、現実には同時かつ複雑に発生するのだろう。時間をおいて、読み返したい。

  • 基本的な投資家の考え方というのを学べるとは思います。が、正直読んでいて面白いとは思えませんでした。
    20の教えの引用や参照も多く、そっちを読んでからこっちを読んだらもっと深く考えられるのかな?

    サイクルが企業活動でも経済、不動産、株式でも何でもあって、将来を予測する事は不可能だから、今がサイクルのどこにいるのかをしっかり見極めろという事です。

    人は気分が高まってる時には警戒心なく買っていくので、その時には警戒し、下げ相場の時はどんどん買えという事。ただし、底値の時にはバーゲンは終わってる。

  • 要は株式市場も歴史は繰り返されるということ。
    そして、安く買って高く売る、これができるようにアンテナ張っておくこと。今の株価はどの立ち位置にいるか、投資家としてリスクをどう取るかを判断すること。

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著者プロフィール

オークツリー・キャピタル・マネジメント共同会長兼共同創業者。
オークツリー・キャピタル・マネジメントの共同会長兼共同創業者。オークツリー・キャピタル・マネジメントの運用資産は1200億ドル以上。ウォートン・スクールにて金融を学び、シカゴ大学にてMBAを取得。ニューヨーク市在住。

「2018年 『市場サイクルを極める』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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