西江雅之自選紀行集 単行本

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  • JTBパブリッシング
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  • Amazon.co.jp ・本 (318ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784533040337

感想・レビュー・書評

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  • 昔この人の本を読んで、異世界観に漂ったことを思い出した。高校生ぐらいだったと思う。
    中でも記憶に残っているのは、ナイロビの売春婦の描写だった。
    肉感的であり、即物的。かつ観念的。異世界でありながら、確実に自分と地続きの人間。
    これは、異性そのものなのだ。

    明らかに連続しているのだけど、明白に違う。その遷移過程には区切りを入れようがない。区切りはあるにはあるが、すべて便宜的な社会通念にすぎず、それを超えることがたぶん性なのだが、そのすそ野は思っているよりも広く、区別も定義もできない・・・ 闇夜に川のほとりに立っているような気分。そういうものなんだ、って。(むろん当時の私にここまで明瞭に言語化できたわけではないが。)

    それまでの私にとって、性とは、「好きな子」や「告白」や「ポルノ」だった。いわば記号だった。
    それが、全く違う様相を持って、精神というよりも脊髄に響いたような気がしたものだった。性的成熟で人間を測るのならば、私はこの段階で大人になったようなものだ。
    自分の性的嗜好のかなり根深い部分に、この人のメガネを通した光景がビルトインされたんだなぁ、と今になって思う。

    私の性の原風景には、ニャンブラ、ンジェリ、ワンジルがいたのだと、再発見した。
    感謝すべきなのかな。

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著者プロフィール

1937年東京生まれ。言語学・文化人類学専攻。現在、早稲田大学文学部教授。卓抜した語学の才能に恵まれ、言語調査のフィールドは世界各地に及んでいる。フィールドでは、たんに調査するのではなく、人びとの暮らしぶりに等身大のまなざしで接する経験は多くの優れたエッセイに結実している。『花のある遠景』や『異郷の景色』『東京のラクダ』などはその代表作であり、ほかに『人かサルかと問われても』という半生記がある。

「1999年 『風に運ばれた道』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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