増補 母性愛神話の罠 (こころの科学叢書)

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  • 日本評論社
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  • Amazon.co.jp ・本 (220ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784535804371

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  • 著者の大日向雅美氏、久しぶりにEテレ「すくすく子育て」に出演しているのを見た。今年度から恵泉女学園大学長になってもう出演しないのかと思っていたが、今日のテーマが「いい母の重圧」であり、まさしく著者の専門分野。

    番組を見るようになって、著者が出ている回は毎回楽しみに見ている。テレビではとても優しい表情と語り口で母親の悩みに応えているが、決して精神論ではなく冷静で論理的であり、たいへん腑に落ちる。

    ときに冷徹さすら感じられるのだが、昨年発売されたこの著書を読んで、その理由が分かった。残酷なほどまでに、日本に未だにはびこる「母性愛神話」をバッサバッサと切り捨てる。(「未だに」と書いたのは原著が1999年でこの増補本が2015年であり、一部の事実は過去の話にもなってきているが、心のどこかではまだ「母性愛」を信じる精神が日本社会に残っているように感じるから。)もちろん根拠のない精神論ではなく、大学教授らしく多数の研究事例から導き出された見解である。

    既に夫婦で育児に3年弱取り組んできたが、つくづく「母性愛」など存在しないと感じるようになった。もちろん「父性愛」も。妻は妻なりの、自分は自分なりの愛し方があるに過ぎない。そしてどちらの愛も正しく、どちらかのみが正解であるはずがない。

    「母として」「父として」など、日本社会が得意としてきた、ただのレッテル貼りだ。そのレッテルを貼ってしまった瞬間から、パートナーのことはもちろん、自分自身のことさえもひとりの多種多様な人間のひとりと認められなくなる。色々な父や母の形があっていいはずであり、それを決めるのはほかの誰でもない。当の本人たちである。

    夫婦で育児に取り組んで3年弱、改めて省みる次第。5年前の結婚式披露宴、自らの新郎挨拶で「両親のように父が頑張り、母が支える、そんな家庭を作りたい」などとぬかしてしまった自分自身への戒めである。(※なお、そのように人生を送ってきた両親を非難する気は毛頭ない。両親は両親で、結果的にそうなったに過ぎないのだろう。)

    育児に取り組む方は、ぜひご一読を。

  • 初版2015年ながら、全く古さを感じさせないことに、いまだに「母性愛神話」が根付いていることを強く実感します。どのように「母性愛神話」ができたのか、何故人々を惹きつけるのか、どのような弊害があるのか、とても簡易に書かれており、わかりやすい。自身が罠にとらわれないよう、ぜひぜひ子育て家族に読んで欲しいです!

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著者プロフィール

1950年生まれ。恵泉女学園大学学長。専門は発達心理。お茶の水女子大学・同大学院修士課程修了、東京都立大学大学院博士課程満期退学。学術博士。母親からの“生の声”に応えたアドバイスに定評がある。

「2020年 『ママの自己肯定感で子は育つ(仮)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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