- Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
- / ISBN・EAN: 9784560047880
感想・レビュー・書評
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戦争で台無しになるのが血筋のサートリス家の物語。物語の中心、主人公として妥当なのはおそらく(ヤング)ベイヤード。彼は戦闘機のパイロット。戦場で同じパイロットの弟が目の前で撃墜されるという壮絶な体験[p234]をする。それが彼を苦しめ、周りの人間を振り回し、果ては短い生涯を閉じさせることになる(PTSD?)。フォークナーの陰鬱だが、美しい作品の出発点となる作品であるらしい[※解説p349]。ダラダラと長く(曖昧なストーリーライン?)、人物が浅いか。
上手すぎて逆に窮屈なところどころの描写が、夜の自動車のヘッドライトのように尾をひきながら最後まで読ませられた。
とりあえず、「この小説はいったい何が言いたいのだろうか」などと真剣に読まないで、(散文)詩として読む(読み飛ばしながら読む…)のが良いかも。絵画のよう。
一般的にフォークナーを読むのは時期やタイミングが限られるか。 -
<斜陽を迎えたアメリカ南部の旧家サートリス家。
第一次大戦を終え、息子ジョンを失い、
もう一人の息子ベイヤードも心に深い傷を負って帰還する・・・。>
著:ウィリアム・フォークナー
記念すべきヨクナパトーファサーガの第一作。
フォークナーは、これを書いている途中で、自分の中に語るべき物語の鉱脈を見つけ、
それを掘りだし、磨き、世界文学に名を残すアメリカ南部ミシシッピ州の中にある架空のひとつの郡、
ヨクナパトーファ郡という地域を作り出し、
そこを舞台にした一連のヨクナパトーファ・サーガを創造したことでしょう。
物語としては第一次世界大戦を経て、圧倒的な虚無感に襲われたベイヤードの、
ロストジェネレーション的なもので、そこに南部貴族の血統を絡めています。
少し冗長な話なのだけれど「サートリス大佐」という名で今までに出てきた
ヨクナパトーファ・サーガを陰に陽に貫くひとつの家系、サートリス家を体感できます。
「サンクチュアリ」のホレスとナーシサのベンボウ家や、
「死の床に横たわりて」の胡散臭いピイボディ先生もしっかりとででてきたのには感動。 -
習作らしいが、なんせフォークナーなので習作?というような出来。ミス・ジェニイが素晴らしく素敵。フォークナーらしく近親相姦めいた双子ラブもアリ。
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作中で描かれる第一次大戦後の虚無感に駆られた「失われた世代」の若者達。これは20年程前の日本で流行した「不良」と言われる10代の反抗と捉えることができるかも。勿論サートリスに登場する若者は夜の校舎窓ガラス壊して回ったりしない(社会人だから)し、盗んだバイクで走り出したりもしない(金持ちだから車を買った)のだが、そこにある人生に対する虚しさ、社会に対する憤りは通底するものがある様な気がした。そしてそれが結局自己陶酔と社会的責任に対する逃避でしかないことも。