アナトール・フランス小説集 1

  • 白水社
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  • Amazon.co.jp ・本 (293ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560048818

感想・レビュー・書評

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  • フランスのノーベル賞作家。
    初めて読むが、よくわからなかった。

    それよりも、昔からこの人の名前をみると思っていたのだが、ペンネームに、国名であるフランスと入れるのは不思議な感覚ではないだろうか。
    本名がジャック・アナトール・フランソワ・ティボーというので、フランソワとフランスで、あまり変わりないのかな。

  • 2008/02/11

  • ノーベル賞作家アナトール・フランスの出世作。

    アナトール・フランスは、1844年セーヌ左岸の古書籍商の息子に生まれ、常に書籍に囲まれて本を耽読しながら成長した。高踏派詩人として出発したが、本書『シルヴェストル・ボナールの罪』で注目され、その後文壇での地位を不動のものにした。

    主人公のシルヴェストル・ボナールは、パリのマラケ河岸の版画屋の四階に婆やと一緒に住んでいる学士院会員で、齡62歳。
    古文書に囲まれ、四十年来キリスト教下のガリア、王朝を創建した僧王たちの出所、サン・ジェルマン・デプレ修道院を研究し、少々偏屈なところもあるが優しい老紳士だ。
    『シルヴェストル・ボナールの罪』は二篇からなり、いずれもシルヴェストル・ボナールが主人公。

    一篇目の『薪』は、顔色不良の貧相な小男が、シルヴェストル・ボナールの家に本を売りに来るが、たいした本を持っておらず追い払う場面からはじまる。
    婆やから、その男は結婚しており、身重の女房と屋根裏に住んでいると聞き、シルヴェストルは良い薪を選んで婆やに一荷運ばせる。
    次の年の夏、階段で子どもを抱いた婦人をみつけたシルヴェストル・ボナールは、婆やにその婦人が身重だった女房であること、本の出張販売員だった小男の夫は死んだことなどを知らされる。夫は死んだが、生まれた男児が愛らしく成長していることにシルヴェストル・ボナールは嬉しく思う。

    自らの研究の爲に喉から手の出るほど欲しい写本が、シチリアにあることを知り、持ち主のポリッツィ氏に手紙を書くと手離すことも貸出することもできないが、拙宅にお越しいただければお見せすると返書がくる。
    シルヴェストルは、早速パリからシチリアに向かって旅立ち、ポリッツィ氏を尋ねるが、息子が骨董品店をパリで開くので写本もくれてやったのだという。
    落胆しているシルヴェストルに旅で出会った婦人が声をかけてくれたので、事の一部始終を話した。
    パリに戻ったシルヴェストルは、自宅から150メートルしか離れていないそのポリッツィ氏の息子の店を訪ねると、確かにその写本はあるが競売にかけられているという。
    競売にも負け、結局、写本を手に入れることができなかったある日、シルヴェストル・ボナールの元に可愛い少年が現れる。
    「おかあさんからです」とリボンのついた大きな包みを手渡し、その包みを開けてみると、ふたつに切った薪の中にこぼれるほどのスミレの花とシルヴェストルがあんなにも求めていた写本が入っていた。
    婆やからさっき家に来たのは、屋根裏で生まれた少年であることを聞く。身重の女房に薪を届けたのは8.9年前か。

    二篇目『ジャンヌ・アレクサンドル』は、『薪』の物語が終ってから5年後の日付からはじまる。
    シルヴェストル・ボナールは、クレマンチーヌという初恋の人がおり、その俤を引きずるところもあってシルヴェストルは独身なのかもしれないが、そのクレマンチーヌは娘を残して死に、その娘もジャンヌという娘を残して死んだことがわかった。
    ジャンヌは、寄宿制の塾に入っており、そこをしきっている女史というのが肩書きにめぽう弱いオールドミスで、シルヴェストル・ボナールとの結婚を目論み、結婚に見込みがないと悟るとジャンヌの後見人と手を組んで、ジャンヌに辛くあたるようになる。
    見兼ねたシルヴェストルはジャンヌを寄宿舍から無断で連れ出すが、グットタイミングで後見人は若い女と駆け落ちする。
    正規の手順を踏んでジャンヌの後見人になったシルヴェストルは、ジャンヌの婚約をまとめ、持参金かわりに、自分の蔵書を婚約者に譲ることにするが、『薪』で語られた美しき親切の所産の写本を持ち出して戸棚の奧底に隠す。ジャンヌの持参金を盗んだのだと正直者のシルヴェストル・ボナールはそれを罪と思う。
    ジャンヌの結婚は無事に棲み、シルヴェストルは田舍にひっこんで、婆やと一緒に別の研究をしながら穩やかに暮らす。そこに若夫婦が遊びにきたりする。若夫婦は子を亡くす不幸を経験するが、シルヴェストルは、彼らの幸せを心から願いながら余生を送る。

    『シルヴェストル・ボナールの罪』が発表されたのは1881年である。
    古書籍商の息子として生まれ、書籍に囲まれ育った経験が大いに生かされている作品だが、30代後半にして、60代のシルヴェストル・ボナールにこれほど命を与えた作品を書き上げているところにアナトール・フランスの力量をみることができる。
    『シルヴェストル・ボナールの罪』で認められて以後、多くの傑作を発表し続けたアナトール・フランスの世界にもっと浸りたいと思う。

    『シルヴェストル・ボナールの罪』は、岩波の文庫でも読めるが今回は、白水社のアナトール・フランス全集の第一卷を読んだ。

  • 「生まれたときすでに老人だった」と言われたA・フランスの本。何とも言えないいい感じ。

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著者プロフィール

1844-1924年。パリ生まれ。高踏派詩人として出発、その後小説に転じて『シルヴェストル・ボナールの罪』、『舞姫タイス』、『赤い百合』、『神々は渇く』などの長篇でフランス文学を代表する作家となる。ドレフュス事件など社会問題にも深い関心を寄せ、積極的に活動した。アカデミー・フランセーズ会員。1921年、ノーベル文学賞受賞。邦訳に《アナトール・フランス小説集》全12巻(白水社)がある。

「2018年 『ペンギンの島』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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