コレクター 上 (白水Uブックス 60)

  • 白水社
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感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (212ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560070604

感想・レビュー・書評

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  •  あっという間に読んでしまった。映画にもなった有名な小説だけど私は読んでなかった。映画を見ていたら読めなかったかもしれない。
     誘拐して監禁する男と被害者の女の子。ふたりの視点でに語られる。
     私は読んでいて愕然し、不安になった。同じ出来事も人が違えば立場が違えばまるで印象は変わるということを改めて思い知った。記憶する場面だって全然違うし捉え方だって違う。読んでいて犯人と被害者はまるでそっくりじゃないか、と思った。男は他人とうまく付き合えない内向的な人間で、女は自分の美しさに自信を持った社交的な人間。ふたりは真逆の立場にあるけれど、私には鏡に映ったひとりの人間のように思えた。
     私は人と関わる時、相手のことが気になってしまう質だから、今相手はどう思っているのだろう?と気にしてばかりいて自分の意思(楽しいとかそういう感情)がなくなってしまう。だから人と関わると後悔ばかりしてしまう。どうしてあんな風に振る舞ったのだろう、とか、どうしてあんなことを言ったのだろう、とか、後から後から湧き出て来て、最終的には人と関わったことを後悔してしまう。ひとりでいればこんな思いはしなくて済んだのに、と。だからどちらかというと私は犯罪者である男の気持ちを理解できてしまう。人とうまく付き合えないという点で。犯人の視点で書かれた章は読んでいても不快じゃない。ところが被害者である女の子の視点になると不快な気分になってしまう。憤慨に近い感情まで起こった。もしかしたらどこか女の子が自分に似ているところがあったのかもしれない(絵を描いているということ以外の部分でも)。自分の嫌いなところが重なっていたのかもしれない。似ていると嫌いになったりするものだから。
     もちろん誘拐して監禁するのは良くないことだが、男にとってはそれが普通の人の友人関係や恋愛関係の道程と同じなのだ。だから単なるサスペンスものとは違って、共感できたり考えさせられたりする。この話はファウルズが書かなければうまくいかなかったと思う。訳者の言葉を借りれば「男は広島・アウシュビッツ以後の暴力世界の代表者であり女は新しい非暴力主義の代表者であり、時に二人の役割は入れ替り、交差する」そういう物の見方でこの内容を描かなければつまらない作品になってしまっただろうと思う。
     万人におススメできる読みやすい本だけど、私は『魔術師』の方が好き。

  • 思えばこの手の作品への傾倒は、この本から始まった。

  • 陰湿な男の女性監禁。
    憧れの女性をただ所有するだけ。手出しはしない。

    お互いの立場と主従関係が逆転している二人の関係が、ときに滑稽に思える。

    この根暗草食系男子の恋物語の結末はどうなっていくのか?

    そういえば、最近日本でも似た少女監禁事件があったな。そう思うと恐ろしい題材。

  • 恩田陸先生推薦

  • 三月は深き紅の淵を

  • ただ、キレイで儚いものが好きで、でも不器用で、どの様にしてそれらへの愛を表現するか、ノーアイディアだった男の人が、ますます孤独になる、という話でした。

  • 最もよく常識を理解する物のみが常識を逸脱し斬新な手法をとることができる。the Manyで在り続ける自分をCleggとどう関係させるか。

  • 子供の頃からよくテレビで映画版を観ていたけど、ふと、唐突に原作を読んでみたくなりました。こんな本、今まで読んだ事ない…と読みながら思った。(『コレクター(下)』に続く)

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