夢みる人びと 七つのゴシック物語2 (白水uブックス―海外小説永遠の本棚)

  • 白水社
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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (317ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560071878

感想・レビュー・書評

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  • どの話も辛かったし表題作で泣いた。『ピサへの道』でもそうだったけれど、ディネセンは生きのびるためのつじつま合わせを許してくれない。

    表題作で思ったこと。日常的に、コミュニティに応じて外向けの顔を使い分けて生きるのは普通のことだ。でもディネセンにかかると、そういう「キャラ」はまるごとの自分が求めるものを満たせないから設定せざるを得ない補助物ということになる。まるごとの自分を満たし続けることは不可能だし、サブキャラが何かを実らせることはない。本物じゃない。一生どこかが空っぽだなんてわざわざ知りたくなかった。

    「エルシノーアの一夜」のファニーの最後の叫びには抉られたし、「詩人」もきつかった。おいしいとこ取りしようとすると猟銃で撃たれ石で殴られて死ぬ。

  • 「七つのゴシック物語」後半の3作。

    結婚することなく老いた美人姉妹とのもとへ、かつて結婚式の当日に失踪して海賊になった彼女らの弟の幽霊がやってくる「エルシノーアの一夜」、華々しい活躍をした若く美しいオペラ歌手が火事で声を失い、自分以外のさまざまな人間を演じながら残りの人生を生きようとする「夢みる人びと」、老いた金持ちの老人が、お気に入りの若い詩人の恋している未亡人をあえて自分が奪うことで彼の才能を開花させようとするも悲劇的な結末を迎える「詩人」。どれも「物語り」として素晴らしく面白かったです。

    まさにゴシックな「エルシノーア~」も好きだったけれど、やはり出色だったのは「夢みる人びと」。語りの中にさらに語りがあある何重もの入れ子のような語りになっていて、ヒロインに恋した3人の男たちの追跡劇も、死の間際に彼女が自分自身に戻る瞬間も、なんともロマンチックでドラマチックで、感動的でした。

  • 「1」と共に読了。フィクションを読む快感を存分に味わった。
    19世紀を舞台とし、貴族や枢機卿や修道院など古めかしいものに材を取った内容は、発刊年を考えてもクラシック。ゴシックな舞台の上で美しき人々が織りなすドラマは、「物語」という言葉がぴったりの絵画的美しさだ。イケメンも多く登場して楽しいが、"絵のような"美貌が読んでいて伝わる。ディネセンの故郷かつハムレットの舞台であるエルシノーアが何度も登場するのもロマンチック(本来のロマン主義という意味で)だ。ハムレットやリア王への言及もあり、作家は意図的にシェークスピアのイメージを用いたのではないか。
    精緻でエレガントながら、読者を幻想に誘い、謎めいた場所に連れて行く。奇想、なかでも「1」の洪水や猿にはあっと驚いた。昨今乱発される奇想小説とは一線を画す巧みさ。
    さらに、人間ドラマとして、特に女性の心情や生き方には透徹した視点が潜んでいる。…と感じるのは、ディネセンが女性だと、先日読んだアンソロジーで知ったからかもしれないが。

  • 「ピサへの道」に引き続き、中編が3つ収められています。
    「エルシノーアの一夜」「詩人」が好みでした。
    デンマークという国の不思議な距離感というのでしょうか、パリやロンドンといった大都会とは少し違う、でもとても洗練された国でもあり、でも辺境のような雰囲気もある、そんな異国的な情緒がどの作品にもあって惹きつけられました。

  • (後で書きます。掘り進む場所や方向が時に予想もつかなくて美しい)

  • ディネセンの文章は難しいわけではないのに、するすると読めない。読み進めた先に驚異的な何かがあるわけではないけれど、なんとなく気になってページを捲る。かぐわしさ鮮やかさ、でもきらめきだけではない、静かな魅力があるからかもしれないし、互いに違う考えを持った複数の人物を登場させ、誰にも強く肩入れせずに、それぞれの心理をリアリティを持って想像できるように書かかれているからかもしれない。
    前作『ピサへの道』の感想を読み返したら、おだやかな明るさがあったようだけど(ヒトゴト)、今作は暗くて寒い、北欧の夜気を感じた。特に『ピサへ〜』を読まずに入っても問題は無さそう。三編のうち、表題作はとりわけ好み。

  • 『七つのゴシック物語』第2巻。
    『ピサへの道』に比べると物語性に寄った1冊だった。
    こちらから読んでも特に問題はなさそうだ。

  • 七つのゴシック物語のうち三つが収録されています。『ピサへの道』が四つ収録でしたので、ほぼ同じ厚みの本書に三つですから、一つ一つの物語は若干こちらの方が長めです。でも、そんな長さを感じさせずにグイグイ引き込まれます。個人的には『ピサへの道』よりも物語はこちらの方が面白いと感じたのですが、もしかすると『ピサへの道』を先に読んでいたから作品世界に入り込みやすかったためなのかもしれません。最後の「詩人」は自信たっぷりの主人公が最後の最後にあのような運命をたどることになろうとは……。読み終わってみると、若い二人に対し初老の主人公の惨めさが際だっていたように感じたのは、あたし自身が初老にさしかかっているからなのでしょうか?

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著者プロフィール

1885年デンマーク生まれ。本名カレン・ブリクセン。1914年にアフリカに渡り17年間農園を経営する。帰国後、本書のほか、『七つのゴシック物語』『バベットの晩餐会』など、物語性豊かな名作を遺した。

「2018年 『アフリカの日々』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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