- Amazon.co.jp ・本 (112ページ)
- / ISBN・EAN: 9784560071953
感想・レビュー・書評
-
文盲: アゴタ・クリストフ自伝 (白水Uブックス)
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「悪童日記」三部作を読んで、絶対に読みたいと思っていた自伝。アゴタ・クリストフの亡命の背景、母語でない言語で文章を書くことについて、かなり俯瞰して書かれているのが好感ある。
-
この本を読むまで、アゴタ・クリストフがどれだけの思いでハンガリーからスイスに亡命をし、その後の生活を生きてきたのか、想像がつかなかった
1年間で、2人ハンガリーに召喚されるとわかっていながら戻り、4名が自殺したという
自身も亡命してよかったと思っているか、良くわからない文章が続く
3.11を経てのそまないで自分の住んでいる土地を追われた人々や、中東からヨーロッパを目指してきた難民の映像が重なる
新しい土地で生きることイコール幸せではなく、それでも、新しい土地で生きていくことを選んだ人がつぐむ研ぎ澄まされた文章。
作者は亡くなったが、この本と悪童日記3部作が長く読まれることを切に願う -
「悪童日記」三部作の作家の自伝。三部作の源泉が自らの体験に基づいていることがよく分かる。言葉が世界を作る、という考え方があるが、ならば母国語を喪失することは世界を奪われたことになろう。殊に病的に読み、悲しみの捌け口を書くことに求めた著者にとっては。それでも立ち上がる挑戦者の姿が本書にある。根っからの悪戯好きな姿も。もし、世界が彼女の望む姿だったなら、彼女の姿はかなり性悪さが際立って映ったかもしれない(笑)
-
齋藤孝著『大人のための書く全技術』40冊―36
アゴタ・クリストフはもともとハンガリー語が母語。ところがフランスに亡命したために、フランス語で物を書かなくてはならなくなった。
この本を読んだ上で、『悪童日記』を読むと、こんな素晴らしい作品が母語ではないフランス語で書かれたのかと驚嘆する。
この本を読むと、書くということが一文字一文字の積み重ねなんだということがよくわかる。 -
小説を漠然と読んでいるときには気づかなかったけど、ことばが鍵だったのか。
母国から逃げて、言語も含む多くを失い、残ったもので刻んだのがあの小説。
片言のことばに片言の生活。ことばは彼女の生そのものだったから、この体験を母国語で書くことはできなかったのだろうか。
ことばを刻みつける行為自体と小説を関連付けて考えることが初めての経験だったので、面白かった。 -
2016.01.03
面白かったけど読んだ達成感がないので3。
悪童日記未読にして自伝から読んだのは反則?ハンガリー動乱も知らなかった。ヨーロッパの難民は今に始まったことではないんだね。難民となることは、例え生活が豊かになったとしても、人生に大きなしこりを残すということか。 -
★3.5
タイトルに自伝と冠してはいるものの、文体はエッセイのそれに近く、自身のことなのに酷く客観的。が、独特の感覚を持った生々しさは、しっかりと伝わってくる。著者自身が経験した亡命、家族との別れ、敵語の中での生活。それらの全ては、「悪童日記」へと繋がる。あの双子の少年は彼女と兄であるヤノそのもので、双子が辿る結末も彼女とヤノの運命に重なるばかり。幼少時代から言語に翻弄され、母語ではないフランス語で執筆する。その状況を受け入れ、「文盲者の挑戦」と宣言する彼女にただただ脱帽。 -
精神的自伝。
難民、移民の孤独がどういうものか、特に母語との関連で深く考えさせられ胸に迫る。何度も読みたい。
自分の身近な問題にどうしてもひきつけてしまう。在日一世の歩んだ道や、日本語と朝鮮語への思い。また、全体主義社会から自由主義の社会への越境という意味で、脱北者たちのことも。