マンゴー通り、ときどきさよなら (白水Uブックス)

  • 白水社
3.85
  • (8)
  • (7)
  • (10)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 173
感想 : 12
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560072189

作品紹介・あらすじ

金原瑞人氏推薦! 移民文学のバイブル

 「いつか、本と紙をバッグにつめよう。いつか、マンゴー通りにさよならをいおう。わたしはあんまり強すぎるから、永久にここに留まらせておくことはできないよ。いつか、わたしは出ていくからね」(本書より)
 アメリカンドリームを求めて、プエルトリコやメキシコから渡ってきた移民が集まる街に引っ越してきた少女エスペランサ。英語とスペイン語文化が入り混じるなかで育ち、思春期にさしかかった彼女の目を通して、街の人たちのさまざまな夢、日常の喜びと悲しみ、声にならない声を、みずみずしい感性ですくいあげた44の掌篇。
 米国の移民社会をリアルに描いた本書は世界各国で翻訳され、年代を超え、世界中で読み継がれている。現在の日本で改めて読まれるべき名作。解説・温又柔

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • サンドラ・シスネロスの伝記-子供の頃、人生の成果、タイムライン - 作家
    https://ja.celeb-true.com/sandra-cisneros-american-writer-known-audaciously-penning-realities

    U218 マンゴー通り、ときどきさよなら - 白水社
    https://www.hakusuisha.co.jp/book/b357605.html

  • くぼたのぞみさんを人間として信頼している。
    自分が本当にいいと思うだけでなく、紹介しなくてはならないという使命感を持って翻訳に取り組んでいると感じる。英語以外の言語も複雑に混じりあった、歴史的・政治的背景も熟知していないと訳せない作品を、すばらしい日本語にされている。
    クッツェーのような知的で複雑な男性の作品の訳も良いけれど、アディーチェやこのシスネロスのように、自分を変えたい、ここから抜け出したい、でもここにいる人たちを愛する心を否定できない、というような女の子の思いをイキイキと訳すのも上手い。
    解説もすばらしいので、あれこれ書く必要はないけれど、こういう話、普遍的なものだと思う。ちょっとオツムの足りない可愛い女の子が、男たちのいいように扱われてしまうような、何てことない喧嘩や暴走であっさりと命を奪われてしまうようなヤンキー過多の日本の田舎町でもよくある風景だと思う。
    でも語り手のエスペランサは泣いてばかりの女の子じゃない。自分で自分の人生を切り開くって信じてる。そこが、物語に明るさと希望を生んでいる。
    マンゴー通りを離れても、やっぱり心はときどき帰って来るよね。
    BGMはTom Waits の In the neighborhood

  • 移民の集まるアメリカの街。
    いわゆる貧困の問題や、その中でもさらに皺寄せが来てしまう女性の問題、
    ということに触れつつも重く地面に縛りつけられるよりは
    スキップしながら通りを走り抜けるような軽やかさがある。

    これはこれである種のステレオタイプの再生産に違いないだろうけれど
    このステレオタイプは文字に書き起こされなかった類のものでもあって、
    社会をそのままに受け入れつつも、納得したわけではない少女の立ち位置がこのお話の核だろう。

    だからあれこれの人の話が出てくるけれども
    主人公であるところのエスペランサはレンズのように機能していて、
    本人の像ははっきりとしないことも多い。
    それが、時折自分を覗き込むと、
    貧困や女性問題とはまた別の普遍的な問題にリンクしていく。

    こっからどこ行こうってね。
    (Where do we go from here.ってジャミロクワイの曲にあった気がするけど、あれ好きだったな)

    楽しい気持ちで読める本だと思います。


    >>
    ネニーとわたしは、ぱっと見ただけでは姉妹には見えない。家族全員が棒付きのアイスキャンディーみたいなぶあつい唇をしているレイチェルとルーシーなら、すぐに姉妹だってわかるのに。でもネニーとわたしは見かけよりずっと似ている。たとえば笑い方。レイチェルとルーシーの家族はみんな、アイスクリーム売りの鈴みたいに、はにかんだようにクスクス笑うけど、わたしたちはお皿の山がガシャんと割れてびっくりしたときみたいに、いきなり大声で笑う。ほかにもあるけど、うまく説明できない。(p30)
    <<

    ほんとうのことを伝えようとしているのが分かる文章だと思う。これは美点だ。

  • 『サンアントニオの青い月』が良かったので購入。
    こちらも面白かった。
    断片的な文章から浮かび上がる景色が凄い。

  • 軽やかな翻訳でとても読みやすく、楽しい気持ちになれる本。ティーンエイジャーにこの本を読んでほしいと思う。

  • 日常を淡々と描く中で、自分が子供だった頃の揺らぐ感情を思い出させてくれる。
    温又柔さんの解説に涙が出ました。

  • 書くことでその街から出て行き、書くことでその街に帰っていくんだな。

  • 50ページくらいから人物たちが動き出していった感じ。
    ●「わたしは 海のうえの/波のようになりたい/風のなかの雲のようになりたい/でもわたしはわたし/ある日 このからだから/飛びだしていくの/百のヴァイオリンみたいに/空を震わせて」

  • 少女の一人称で描かれているので、年齢的にはYAなのかもしれないけど、彼女のまなざしは、思春期の悩みとかそういったことだけでなく、人生とか社会そのものを映し出す。それを少しも気取ったところがないのにとても詩的な言葉でつづっていくところがいい。じわーっと心にしみてくる。

  • 書籍についてこういった公開の場に書くと、身近なところからクレームが入るので、読後記は控えさせていただきます。

    http://www.rockfield.net/wordpress/?p=11913

全12件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1954年、アメリカ・シカゴ生まれ。父はメキシコからの移民第一世代、母は米国生まれのメキシコ系アメリカ人。シカゴのプエルトリコ人居住区で育つ。1984年刊行の『マンゴー通り、ときどきさよなら』がベストセラーに。数々の賞を受賞し、全米の中学、高校、大学で必読書となる。92年、本書『サンアントニオの青い月』が全米芸術基金奨励賞を受賞。2015年にはオバマ大統領より全米芸術栄誉賞を授与された。

「2019年 『サンアントニオの青い月』 で使われていた紹介文から引用しています。」

サンドラ・シスネロスの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
小川 哲
レティシア コロ...
マーガレット・ア...
パトリシア ハイ...
クラリッセ・リス...
恩田 陸
カズオ・イシグロ
ジュンパ ラヒリ
村田 沙耶香
ヴィクトール・E...
ショーン・タン
ミヒャエル・エン...
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×