サッカーと独裁者 ─ アフリカ13か国の「紛争地帯」を行く

  • 白水社
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  • Amazon.co.jp ・本 (329ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560081877

作品紹介・あらすじ

サッカーから見える、「新生アフリカ」の光と闇。内戦や貧困、政変が続く一方、経済発展を遂げ、スター選手を輩出し、W杯を成功させたアフリカ。エジプト、スーダン、ソマリア、ルワンダなど大陸を縦断、激動の情勢と驚愕の真相に迫る!写真多数、地図・各国最新情報を収録。

感想・レビュー・書評

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  • 原書タイトル「アフリカ連合―サッカーでアフリカを読み解く」との通り、イングランドプレミアリーグの熱狂的アストン・ヴィラファンにして英国新聞「インディペンデント」の特派記者が、紛争地帯含むアフリカ各地の政治情勢をサッカーをキーワードに紹介した2011年出版の著作。

  • ヨーロッパリーグで活躍するアフリカ出身のサッカー選手たち。彼らの母国は独裁政治が続いていたり、内戦状態だったり、政情不安だったりと、決してサッカーに打ち込める状況ではない。エジプトのムバラク政権がそうであったように、政権の宣伝に利用されることも。部族間の争いで、国内リーグがめちゃくちゃな国もある。

    この本はサッカー好きな元「インディペンデント」特派員が、サッカーという切り口から今のアフリカ情勢を取材して分かりやすくまとめたものだ。独裁者が利用するほどのサッカーが持つ影響力の大きさと、難民キャンプの辛い生活から子どもたちの心を一瞬でも救うことができる素晴らしいスポーツだと思い知らされた。

    サッカー好きな人にもぜひ読んでほしい一冊。

  • 原書は「How Football Explains Africa」。こっちの方が内容に近い。フットボールでアフリカを読み解く。10年くらい前の本だけど、アフリカのサッカーというよりこの書で描かれるアフリカの置かれた状況が特殊すぎて想像以上。蔓延する汚職、整わないインフラ、そして政治と密接(癒着?)したサッカー。13の地域が紹介されてるが、国の置かれてる状況もサッカーの置かれてる状況も様々なんだけど、僕からするもどれも「マジかよ」な状態…。その国々でサッカーはその全てが希望の象徴となってる訳でもないんだけど確かに存在していて、うん、たしかに存在してる。いいことも悪いことも含みながら。有り体な言い方だけど世界は広い。見えない世界を知りたくなれました。

  • 「独裁者」には昔から興味があって、自宅の本棚にそれについての本も並んでいるが、「サッカー」のほうはオフサイド(?)もろくに知らない。
    私はそういう読者である。そしてこの本は、「独裁者」より「サッカー」に重きを置いて書かれている。それでも本書は、「面白かった」「有益だ」と言える本だった。

    タイトルと内容が若干乖離している本書は、原題を「サッカー連合——サッカーでアフリカを読み解く」という。こちらはまさに、内容を的確に表したタイトルである。だが、これでは売れないだろうな(少なくとも「サッカーと独裁者」よりは)というのもわかるので、細かいことは言うまい。
    1章に1〜2か国を取り上げ、じっくりと「ありのまま」を綴っていく著者の筆は丁寧で誠実だ。サッカーについてもアフリカについても、取り上げている内容は高度なのに、門外漢の読者を突き放すところがない。サッカー通の人が読んだら(たぶん)もっと楽しめるのだろうが、知識がなくても途方に暮れさせられるようなことはなかった。
    アフリカの懐深くまで食い込むような内容は、著者がヨーロッパの白人でなければ書きえなかったものだろうという気もするが、彼の先祖がこの大地で収奪を働いたことに、彼自身は責任がない。訳者あとがきには「距離的に近く、歴史的にも深い関わりがあるヨーロッパの人たちにとっても、アフリカは心情的には遠い大陸らしい」などとあって暗澹とさせられるが、「アフリカ 苦悩する大陸」といい、たまさかこういった大ホームランをかっ飛ばすのはやはりヨーロッパ人だ。

    そんなふうに、距離的にも歴史的にもアフリカから遠い日本人には興味深い本だったが、強いて言うなら翻訳があまり良くない。壊滅的というのではないが、ときどき「ん?」とひっかかるので星一つ減。
    あと、「アフリカ各国情報」が巻末に置かれているのは、原書からの体裁なのだろうか。本文の前にあるべきだと思えたのだが…。

    2014/6/11〜6/15読了

  • 2010年W杯のエジプトとアルジェリアの最終段階での争いは記憶に新しいところですが、それが昨年のエジプト・ムバラク打倒革命に繋がっている遠因にもなっていたとは理解できなかったことでした。スーダンとチャドの国境紛争と同じくして行われた両国のサッカー戦はドラマティックな展開ですね。このように、サッカーが国際政治に影響を与え、独裁者がそれを愛国心⇒自らへの忠誠心盛り上げに利用しようとすることは当たり前のことなのでしょう。ましてアフリカはそれが極端な形で表れてくる地域なのかも知れません。

  • 世界的知名度のあるサッカー選手は富を得たのは欧州リーグ。
    アフリカ国内リーグの大半は劣悪な環境にある。

    ガーナ人経済学者ジョージ・アイッティはアフリカを明るい未来へと先導する最前線に立っている人たちを「チーター世代」と呼び、近い将来、既成の価値観にとらわれる「カバ世代」に取って代わるに違いないと予測されている。チーター世代の中心にいるのが、Webデザイナー、建築家、ミュージシャン。21世紀の最初の10年が終わったとき、アフリカ諸国を牛耳っていたのはカバ世代(p14)

  • ヨーロッパ各国のサッカーリーグは常日頃煌びやかで、ビッグマッチともなれば、世界中の視線を一身に集めます。そしてその中でひときわ輝きを放つアフリカ出身の選手たち・・・・「プリンス」ボアテング、ヤヤ・トゥーレ、ソング、アデバヨール、ドログバ、エッシェン・・・・しかしそうした選手たちの母国でのサッカー事情について、私たちはどの程度知っているのでしょうか。

    この本は紛争や貧困などいまだ多くの問題を抱えるアフリカの国々を、「サッカー」とともに描き、ともに歩んだ人によって書かれた一つの紀行文です。決してプロとは呼べないレベルにある国の現状から、コンゴや南アフリカ、エジプト、ナイジェリアなど活発なプロチームを有する国に至るまで、アフリカを縦断するように、多くの国のサッカー事情が触れらています。

    フットボールを愛してやまない人たちはもちろんのこと、アフリカの政治について関心のある人たちにとっても、面白く読むことができる本だと思います。星四つ、つけておきました。

  • 原題に「サッカーでアフリカを読みとく」とあるように、サッカーを通じてアフリカ諸国の政治的な明暗をくっきりと表現している。

    日本と欧米のサッカーしか知らない人にもぜひ読んでほしい一冊だし、アフリカの社会的にも問題に関心がある人にとっても、サッカーという側面から新たな発見ができる本だと思う。

  • 普段ニュースで耳にするアフリカサッカーのゴタゴタ事情の何故が良くわかる本だった。サッカーというスポーツが世界で最も普及しているからこそ、アフリカにおけるサッカーが様々なフィールドで多大な影響を及ぼしているのだろう。また、10年後が知りたくなる。

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