太陽の肖像:文集

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  • 白水社
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  • Amazon.co.jp ・本 (380ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560084960

作品紹介・あらすじ

戦後を代表する写真家、初のエッセイ集
 長崎県沖の軍艦島と熔岩に埋もれた桜島でたくましく生きる人々を捉えた〈人間の土地〉、北海道の修道院と和歌山の婦人刑務所の孤独な空間で人間の存在を見つめた〈王国〉などで知られる、日本写真界の巨匠・奈良原一高。本書は文筆にも定評のある奈良原の文章を初めて集成し、作家の全貌を伝える待望の一冊。
 満洲事変の年に生まれた奈良原は、中学一年で学徒動員され、死と隣合せの日常を過ごす中で敗戦を迎えた。「不毛それ自体が生きていく手がかりとなりはじめた」――無力感にとらわれながらも、自らの心情を重ね合わせるようにカメラのファインダーを覗き、生を模索していったのだ。そのありのままの思いが伝わってくる。
 デビューまでの自叙伝をはじめ、欧州を駆け巡り改めて日本文化を見つめ直した60〜70年代、そして自身の入院経験をもとにX線写真やCGを生かした近作までの思索の軌跡を辿る。ダイアン・アーバスが自殺する直前にNYで行なわれたワークショップの記録には息をのむ。
 巨視的な視点で生と死を見つめ、写真表現の最前線を切り拓いてきた奈良原の歩みは、日本の戦後写真史、ひいては戦後史そのものだといえる。そこには、瑞々しい感性でとらえた生きる歓びと静かな情熱が溢れている。代表写真45点収録の決定版!

感想・レビュー・書評

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  • 出版当時(2016年)の朝日新聞書評がスマホの写真に残っており、写真家によるスペイン紀行として高評価だったので図書館で借りた。池田満寿夫らと同世代(1931年生まれ)で美術批評家を目指して大学院生だった奈良原が軍艦島を題材に写真家としてデビューし、1960年代初頭にスペイン中心に3年以上ヨーロッパに滞在する。たしかに闘牛やパンプロナの牛追い祭りの熱狂を、静謐な白黒写真と抒情的な文章で巧みに表現している。
    アメリカ滞在中のダイアン・アーバス(写真家で、この後に自死)やルイジアナ州バトンルージュで開催されたロックフェスcelebration of lifeへの参加も貴重なドキュメントかも。
    今調べたら2020年に88歳でお亡くなりになっていた。合掌。

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著者プロフィール

1931年福岡生まれ。1959年早稲田大学大学院(芸術学専攻)修士課程修了。在学中の1956年に、初めての個展「人間の土地」が大きな反響を呼び、写真家としての活動を始める。1959年、東松照明、細江英公、川田喜久治らとセルフ・エイジェンシィ「VIVO」を結成(1961解散)。その後、パリ(1962-1964)、ニューヨーク(1970-1974)と拠点を移しながら活動。1974年帰国後も世界各地を取材し、多数の展覧会を開催。写真集も数多く出版し、国際的にも高い評価を受ける。
主な個展に、「Ikko Narahara」ヨーロッパ写真美術館、パリ(2002-2003)、「時空の鏡:シンクロニシティー」東京都写真美術館(2004)、「手のなかの空 奈良原一高 1954-2004」島根県立美術館(2010)、「王国」東京国立近代美術館(2014-2015)など多数。

「2019年 『王国 Domains』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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