10:04 (エクス・リブリス)

  • 白水社
3.60
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本棚登録 : 133
感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560090503

作品紹介・あらすじ

米の新鋭による「遊歩(フラヌール)」小説
 ハリケーンの上陸が迫るニューヨーク、ブルックリン。詩人である語り手の〝僕〟は前年に発表した処女小説で思いもよらぬ評価を受けていた。新たに『ニューヨーカー』誌に掲載された短篇を組み込んで長篇を書くと約束すれば、6桁強の原稿料が前払いでもらえるという。その一方で、〝解離〟の可能性があると診断された〝僕〟の大動脈。人工授精のために〝僕〟の精子を提供してほしいと言い出した親友の女性、アレックス。ニューヨークの街を歩き回ったり、テキサス州マーファで芸術家としてレジデンス生活を送ったりしながら、〝僕〟は長篇の構想を練る。そして、自分がかつて雑誌を編集していたときに著名な詩人たちとの間で交わしたやり取りを偽造し、小説に取り込むことを思い付く……。
 作者はオースターやフランゼンが絶賛する1979年生まれの若手。詩人としての評価も高く、本作の自意識的な主人公の語りでも、その独特のリズムを存分に味わえる。「同時に複数の未来に自分を投影してみようと思う」と冒頭で宣言するこの語り手を通じて、私たちはいくつもの、現実とは「ほんの少し違う」世界を目撃する。図版多数収録。

感想・レビュー・書評

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  • 文学ラジオ空飛び猫たち第79回紹介本 https://spotifyanchor-web.app.link/e/dq6zMjPXhwb 遊歩小説として紹介されているので、漢字のイメージからインテリが余裕で書いたエッセイ風の創作かなと思いきや、ぜんぜん違う。最後まで読むとわかるけど、作者は崖っぷちでこの小説を書いている。他の小説ではなく、この小説を書いたのは追い込まれていたからだと思う。でも詩人ということもあり、表現の仕方がとんでもなくうまい。

  • 自分が今まで読んだ小説の中で(大した量ではないが)読んだことのないタイプの小説だった。フラヌール(遊歩)小説と言ったジャンル。現実と虚構、過去と未来、小説と小説内小説、さまざまなものが入り乱れて存在していて、大きな渦の中に自分がいる感覚だった。私小説的な部分もあるらしい。
    読んでいて、今自分がどのあたりにいるか混乱していたけど、心地いい混乱だった。
    いいね、すごくいい。マーファでの主人公と研修生のやりとりが好きだな、
    ベン・ラーナーという人物に興味を惹かれた。

  • 詩人のベン・ラーナー小説2作目。読んだことのないタイプの小説でオモシロかった。あとがきによると主人公の境遇と著者自身が重なっている部分がかなり多い私小説とのこと。私小説の場合、現実からどのようにずらしていくか?ここにオモシロさが詰まっていると思うのだけど本著はそのずらし方がユニークだと感じた。NYの街で暮らすリアリスティックな描写が続くものの、どこかこの世のものならぬ雰囲気が漂っているというか。エッセイのように様々なエピソードが紹介されていく中で主人公がそれをグイグイ吸収してフィクションへと昇華していき小説内小説というメタ展開が用意されていることも影響しているのだろうか。冒頭で写真がガンガン使われているのも驚いた。話が色々なところへ転がっていくものの、最初と最後は時間と科学にまつわる話で円環構造をなすところが良い。とくに科学が常に過去の誤りを正し、進歩していることを宣言する点は、非科学的言動が目に余る最近ののコロナウイルスに対する日本の対応でゲンナリしていたけど鼓舞された。誤りを逐一指摘することは必要だ、なぜならそれが進歩だから。円環構造でいえば、シチュエーションとしても嵐で始まり嵐で終わる。詩人ゆえなのか、あとがきでも言及されているとおり、他の場面でも対比になっているものが多く、これはあれと共鳴して、と想像できるところが本著の魅力だと思う。またこれも詩人ゆえなのか、パンチラインも多いし日常の描写でもそんな見方したことないなーという観点も多くてオモシロい。特に好きだったものを引用しておく。

    最も不穏で辛いで自分のアイデンティティーを失うことの中にも、いかにも屈折したものとはいえ、来るたるべき世界のきらめきが含まれている

    韻律の超個人性が共同体を形作るのと同じ原理。詩人は人目につかない形で世界のルールを定めているのだ

    なおタイトルは映画「Back To The Future」にちなんでいるので、ますます見なければ…という思い。
    (まだ見ていないだなんて誰に言えるだろうか、いや言えない。)

  • バック・トゥ・ザ・フューチャーの写真を挟み込むのとか、斬新だな・・・

  • 文学

  • 書籍についてこういった公開の場に書くと、身近なところからクレームが入るので、読後記は控えさせていただきます。

    http://www.rockfield.net/wordpress/?p=9247

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著者プロフィール

作家・詩人。1979年カンザス州トピーカ生まれ。これまでにフルブライト、グッゲンハイム、ハワード、マッカーサー各財団のフェローに選出される。詩集を3冊発表しており、Angle of Yaw (2006) は全米図書賞の最終候補に。本書の前作となる処女小説Leaving the Atocha Station (2011) はポール・オースターやジョナサン・フランゼンに絶賛され、文芸誌『ビリーバー』が主催するビリーバー・ブック・アワードを受賞した。なお、本書の抜粋は『パリス・レヴュー』誌のテリー・サザーン賞に選ばれている。現在はニューヨーク市立大学ブルックリン校の英語学科で教授も務める。また、ドイツの現代美術作家トーマス・デマンドの作品に詩を寄せた共作Blossom (2015) がある。

「2017年 『10:04』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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