マッキンダーの地政学ーデモクラシーの理想と現実

  • 原書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784562041824

作品紹介・あらすじ

国際関係を常に動態力学的に把握しようとする"ハートランドの戦略論"の全貌。地政学の祖マッキンダーの幻の名著。

感想・レビュー・書評

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  • 今の自分に理解するのは難しく、読むのにとても時間がかかった。
    また、世界史も地理も履修していない自分にとっては、地図帳をめくりながら読み進めたこともあり、特に時間がかかった。
    デモクラシーの国にとって平和を得るためにはという観点で、歴史的な事実にベースを置き、人類が大きく制約される自然(地理)に着目して語られた話は非常に興味深い話であり、今の私にはその奥深さを十分に語る言葉を持たないので、また改めて読みたい。
    最後に、本著から一言引用してメモとしたい。
    「均衡こそ自由の基礎である」

  • 海を制するものは世界を制す。いかなる国も、大海軍国と大陸軍国を同時に兼ねることはできない。Sea Power(SP)を得る条件は、地理的位置・自然の構成・国土の広さ・人口・国民の資質・政府の資質。▼海上交通の要衝(チョークポイント)をおさえよ。マラッカ海峡、ホルムズ海峡、バブエルマンデラ海峡、スエズ運河、喜望峰、ボスポラス海峡、ジブラルタル海峡、イギリス海峡。▼英に代わり、米が世界の海軍国になるためには、大海軍を建設し、海外軍事基地を獲得し、パナマ運河を建設し、ハワイ王国・フィリピンを併合する必要がある。アルフレッド・マハンMahan(1840-1914) 米の海軍士官

    ※米(セオドア・ルーズヴェルト)は教科書通りに実行。ハワイ王国併合(1898)・フィリピン植民地化(1898)・パナマ運河を奪取(1913)
    ※米はアジアのSea Power日本の海軍力を縮小させるため、世論工作を行い、ワシントン会議・ロンドン会議によって日本の海軍力を相対的に低下させた。

    人類の歴史はSea Power(SP)とLand Power(LP)の闘争の歴史。今後、SPは衰退し、LPが優勢になる。東欧を制するものはハートランド(heartland)を制し、ハートランドを制するものはアジア・欧州(英除く)・アフリカの陸地(世界島)を制する。ハートランドとは北極海にそそぐ河川の流域・カスピ海・アラル海にそそぐ河川の流域で、海洋国の軍艦が入って来れないLPの聖域。ハルフォード・マッキンダーMackinder(1861-1947) 英の地理学者

    ※ヒトラーは東欧を制するためズデーテン地方を併合、チェコスロヴァキアを解体、ポーランドをソ連と分割した。

    ハートランドを過大評価すべきでない。ハートランドは雨量が少なく寒冷地や砂漠が多いため、(ウクライナを除いて)農耕に適さない。農耕に適さないため、人口が少なく労働力は不足している。広大な土地のため交通は不便で、輸送コストがかさむ。むしろ、ハートランドの周辺地域(リムランドRimland)を制するものはユーラシアを制し、ユーラシアを制するものは世界を制する。リムランドはフィンランド・バルト三国・ウクライナ・ジョージア・イラン・パキスタン・インド・ミャンマー・ラオス・中国沿岸・朝鮮など。リムランドは温暖で雨量が多い。人口が集中し、経済活動が活発。日英はリムランドの東端と西端を占める政治軍事上の要衝。アフリカと豪は沖合の大陸であり、地中海と南シナ海を制するものの影響を受ける。リムランド諸国が結束すれば、米露にとって脅威となる。米はリムランド諸国の団結を阻止すべきである。ニコラス・スパイクマンSpykman(1893-1943) 米の地理学者

    ※日英同盟(1902)はリムランド同士の結合であったが、米の圧力によって破棄された。

    ***********************************

    国家は生物のように成長する組織体であり、生存のための一定の領域(生存圏)が必要。国境は同化力の境界線であり(外部を国境の中に取り込むことで同化させる)、成長力のある国家の国境は拡大し、その拡大を阻止する力に出会うと戦争になる。領土を吸収合併しようとする傾向は国から国へと伝染する。地球という小惑星には一つの大国しか存立する余地はない。フリードリヒ・ラッツェル(1844-1904) 独の地理学者

    ※ナポ1・ナチスドイツ・中国共産党の思考法

    海洋に分散した英帝国の力は、次第に大陸帝国ドイツに移り、大陸帝国が海洋を制する。ドイツは欧州・アフリカ・西アジアにまたがる超大国になる。国家は自給自足する必要があり、必要とする資源を自らの支配下におく権利がある。ルドルフ・チェーレン(1864-1922) スウェーデンの地理学者

    ※独よりもソ連の論理となる。

    世界はやがて四つの地域に分割される。汎アメリカ(南北アメリカ・中心は米)、汎ロシア(インド含む・中心はソ連)、汎アジア(中国・東南アジア・豪・中心は日本)・ユーロアフリカ(欧州・アフリカ・中近東・中心は独)。四つの地域は最終的に独に統一されるだろう。カール・ハウスホーファー(1869-1946) 独の陸軍軍人

    ※完全に見当違いに終わる。
    ※ヒトラーの世界戦略に影響を与える。

  • 地政学という言葉はビジネスにおいて近年よく用いられている。例えば新興国の議論をする際に、タイは中国、インドという人口大国に挟まれていて地政学的に優位な位置にある、などという使い方がされる(両国への輸出拠点として活用できる、というニュアンス)。しかし「地政学」というものを本格的に学んだことがない人間からすると、果たして正しい意味で地政学という言葉を使っていたか疑問に思うこともしばしばであった。

     そこで本書を手に取ってみたが、まず原題にあるようにDemocratic ideals and realityというように、原題には地政学という言葉はみあたらない。しかし本書を通して一貫して主張されているのが、各国の歴史をひもとくと、その国の地形がどうなっているか、島なのか大陸なのか半島なのか、平地なのか入り組んだ山野地域なのか、また平地でも草原なのか森林地帯なのかによって大きな影響を受けている、という点である。
     こんな単純なことを?という一方で、正直大いなる感銘を受けた。たとえばモンゴルの騎馬民族は草原伝いに一気に西進し、中近東や東欧まで征服する勢いがあったが、その先ドイツ地方には深い森林地帯が広がっていたため、それ以上の領域拡大ができなかった。裏返せば、例えばの話ではあるが、もしロシア南部のコーカサス地域に深い森林地帯が広がっていたら、騎馬民族は中東まで行かなかったのではないか?すると歴史はずいぶん変わってきたのではないか?ということを感じた。

     このように地形を詳細に分析するということは、航空、鉄道、道路(トンネル)技術が発達している現代でもある程度通用するのではないかと思う。ただし本書が書かれているのが、第1次世界大戦終了後のイギリス人の視点であることには留意が必要である。基本的にはユーラシア大陸の覇権がどうなるか、そしてその鍵になるのが東欧である、ということで、日本人からしてみると、あまり実感がないのであるが、本書を読み是非このフレームワークでアジアの覇権がどうなるか、その鍵になるのはどの地域か?というのを考えてみたいと思う。

  • ■一橋大学所在情報(HERMES-catalogへのリンク)
    【書籍】
    https://opac.lib.hit-u.ac.jp/opac/opac_link/bibid/1000588805

  • 地政学の古典である。現在は地政学というと政治を地理的な国の位置との関連で見て分析するという非常に狭い意味をあらわした本が隆盛である。
     このサブタイトルではデモクラシーの理想と現実というタイトルが、現在の地政学の本にどの程度あてはまるであろうか。ここで扱うのはヨーロッパ、主要はドイツとフランスである。第一次世界大戦後に書かれたものであるということで限定付きである。

  • ハートランドの東からアラビアまでは平坦な道が続くことから、東欧を押さえてアラビアに出ればハートランドを支配することが容易になる。その意味で、ドイツの進出を押さえる意味でもロシアとのあいだに独立国を設置することは重要だった。しかし、地政学以上に考えさせられるのはマッキンダーの戦後構想である。自国の消滅をおそれて強大化を図れば、周囲の国はその餌食となる。それを防ぐためにも、国際的な機関と自国の管理を通して国家の自己抑制をすることが大切だという。均整のとれた国家は、地域コミュニティを基盤としており、地域内もバランスがとれていることが望ましい。結局、あらゆる格差は社会の均衡を失わせ、国家を帝国主義的にするのだ。

  • 「ハートランド」ってこんな広い領域を言うの?とはてながついたけれど
    「ハートランド」って現代ではもっと狭い領域のことを言うらしい。
    けれどそれを最初に言い出した祖の世界観を味わえた

  • 地政学の古典。

  • 最新の所在はOPACを確認してください。

    TEA-OPACへのリンクはこちら↓
    https://opac.tenri-u.ac.jp/opac/opac_details/?bibid=BB00599068

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