毒が変えた天平時代:藤原氏とかぐや姫の謎

著者 :
  • 原書房
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784562059294

作品紹介・あらすじ

遣唐使はさまざまな文物とともに大量の「毒と薬」を日本にもたらした。それが藤原氏と天皇家の権力闘争に利用されていたとしたら……。薬物の専門家が複雑にからみあう時代と人間像を丹念に掘り起こし推理する。

感想・レビュー・書評

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  • 毒をキーワードに天平時代を分析した歴史書。藤原氏は冤罪をでっち上げて長屋王らの対立者を葬り、権力を握った。藤原氏は冤罪だけでなく、毒殺という卑怯な手段も用いている。毒殺という卑怯な手段は藤原一族にも向けられることがあった。

    これを藤原氏の体質と見ることは一つの見解である。鎌倉時代を舞台とした歴史小説では毒殺は公家勢力の卑怯さを印象付けるものと描かれる。
    「毒を用いてなんの武者にござるか」(『時宗 巻の壱 乱星』日本放送出版協会、2000年、76頁)
    「毒を用いるような者にこの国を預けるわけには参りませぬ」(同96頁)

    一方で藤原仲麻呂個人の異質さで説明することもできるだろう。藤原氏は他氏を排斥する段階では一族内では結束したイメージがある。仲麻呂は恵美押勝の名を賜り、藤原恵美家として藤原氏からも特別になろうとした。

    『毒が変えた天平時代』は竹取物語の作者を吉備真備と推測する。竹取物語は空想の御伽噺ではなく、現実世界を背景にした告発書である。竹取物語では車持皇子(くらもちのみこ)が、、かぐや姫から自分と結婚する条件として東方海上にあるという「蓬莱の玉の枝」を取ってくるように言われた。ところが、車持皇子は航海に行かずに職人に偽物を作らせ、だまそうとした。車持皇子は藤原氏をモデルとし、だまして権力を得た藤原氏への批判が込められている。

    車持皇子は航海の危険を恐れて職人に偽物を作らせた。大伴御行は、かぐや姫から「龍の首の珠」を求められ、船で探索するが嵐に遭って重病になってしまう。これも当時の航海の危険を反映している。ここから竹取物語の作者は航海の危険を認識していた人物と推測できる。遣唐使経験のある吉備真備は作者候補に該当する。

    竹取物語の作者には菅原道真説もある。竹取の翁の名前は讃岐造(さぬきのみやつこ)である。道真は讃岐守であった。道真は冤罪で左遷された点から告発書の作者として相応しい。道真は航海の危険を理由に遣唐使の廃止を提言している。航海の危険について現実的な恐れを持っていた。

    『毒が変えた天平時代』は、かぐや姫のモデルを真備が仕え、または仰ぎ見た藤原宮子、光明皇后、孝謙天皇、楊貴妃という高貴な女性達とする。竹取物語に女性崇拝的な要素を見出すならば真備説に説得力が出る。ここは道真では説明しにくい。一方で、かぐや姫を存在感の乏しい無機的なキャラクターと見るならば、道真らしい作品になる。

  • 『毒が変えた天平時代:藤原氏とかぐや姫の謎』(原書房) - 著者:船山 信次 - 船山 信次による後書き | 好きな書評家、読ませる書評。ALL REVIEWS
    https://allreviews.jp/review/5492

    <東北の本棚>権力者の死因に新見解 | 河北新報オンラインニュース / ONLINE NEWS
    https://kahoku.news/articles/20220703khn000004.html

    毒が変えた天平時代 - 原書房
    http://www.harashobo.co.jp/book/b570626.html

  •  遣唐使が唐からもたらした文物の中に、「毒薬」があり正倉院に収められていた。女性天皇が多く即位した天平時代は、文化が花開くと共に同時に藤原氏と皇位をめぐる政争、乱が相次いだ時代でもある。

     そんな時代に「毒物」が相当量「消費」された。著者の見立ててでは、暗殺あるいは処刑に使われたのだと。そして、この時代に書かれたと思われる「竹取物語」の作者を推察する。

     正直ちょっと読みづらい。毒については説明口調が目立つ。「竹取物語」の作者については、著者の希望的推測とも言うべきもので、決め手となる根拠は示されていない。

  • 「竹取物語」は、天平期、藤原一族への告発の書だった・・・と
    薬学大学の教授が、専門知識を駆使しつつ、読み解きます。
    正直、国文出身としては、どうなのかなぁと言う部分もありますが
    読んでいてワクワクすることは確かでした。

  • 斬新な考察もあり、面白くはあるけど
    最後の結論辺りは無理やり書いたな〜…という感が拭えないかも。

    それでも端々に書かれた知識や出来事は非常に興味深いものが多々。
    正倉院=藤原仲麻呂による、宝物と毒薬の保管庫であったのなら、今それが貴重な歴史遺産となっているのは非常に面白い。
    まぁ毒殺は横行してたんでしょうね…この時代やしね。そりゃ多かったのでは。
    聖武天皇の母・藤原宮子が藤原不比等の娘ではなかったというのは、有名な説のようで。
    その口封じとして息子にもずっと会えなかった(幽閉されていたそうな)のだとしたら、まさに藤原氏の犠牲になった人物。
    その宮子×光明子、孝謙天皇、楊貴妃=かぐや姫、というのは、まぁ面白いけどね。
    ちょっと無理やりかな。(笑)
    吉備真備が作者というのも根拠は今ひとつ欠けるけど、確かにドロドロとした奈良時代の全てを見届けたのは吉備真備だなとは納得。
    孝謙天皇のことは、本当は恋焦がれてたんやろうけど、だからこそ真備なりに手を出さなかったのかなと思うと興味深い。
    気分屋で頑固で気持ちを曲げない彼女が、藤原仲麻呂や道鏡に入れ込むのも見ながら耐えてたのだとしたら………、
    吉備真備はええ男やなと思います(笑)

  • 読み終えられない。

    読み続けられない。

    ある毒が、7.14キロが100年後856年に607グラムに激減し現存量は0.39キログラム。
    初期に735年にもたらされてたとしたら、
    737年 藤原四兄弟の死。
    744年 安積親王の死。
    時間的に十分に間に合っている。

    お、面白くなるか、と思っていたら、皮膚病薬として使われていた話しになり、ウーン
    藤原仲麻呂が443人処刑されている。
    それは、毒による自殺の強要。お!
    誰それが、○○○と述べている。
    ウーン。

    著者と編集者が作った本。

    私には、読み続ける力がありませんでした。


    「竹取物語」の竹と金、金が国内で産出した喜びが、表れている。には1票。





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著者プロフィール

日本薬科大学教授,薬学博士,薬剤師。
1951年生まれ。東北大学薬学部卒業,東北大学大学院薬学研究科博士課程修了。天然物化学専攻。米国イリノイ大学薬学部博士研究員,北里研究所室長補佐,東北大学薬学部専任講師,青森大学工学部教授などを経て現職。日本薬史学会常任理事。著書は,『アルカロイド』(共立出版),『アミノ酸』(東京電機大学出版局),『毒と薬の科学』(朝倉書店),『毒と薬の世界史』(中央公論新社),『〈麻薬〉のすべて』(講談社),『カラー図解 毒の科学』(ナツメ社),『民間薬の科学』(SBサイエンス・アイ新書),『毒! 生と死を惑乱』(さくら舎)など多数。

「2017年 『毒と薬の文化史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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