臨床ユング心理学入門 (PHP新書 4)

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  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (218ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569553399

感想・レビュー・書評

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  • ひとりの医師としてどう取り組んできたかというのがベースで、その軸にユング心理学がある。なので臨床ユング心理学ということに。フロイトやアドラーも踏まえつつ、心理学の軌跡をユングー河合隼雄を踏襲しつつ少し引いたところから様々なことを踏まえて書いてある。やり甲斐はあるかもしれないけど大変だなというのが印象に残る。

  • 入門書として、様々な概念や療法が、とても分かりやすく解説されている。巻末の文献一覧も、とても参考になる。

  • こういった心理学というのは
    えてして難しい、というイメージがついて
    回ってくるかと思います。

    ところがこの作品は
    そういった難しさがなく
    ユング心理学というものがどういうもので
    どういう視点で患者を見ていくかを
    実際の患者の例をもちいて
    わかりやすく説明しています。

    その中には新設する学会に対しての
    心得もあります。
    やはり大事なものというのは
    実績なんですよね。

    知っている人は知っているであろう
    絵画療法や箱庭療法も出てきています。

  • 第3章までがユングを取り巻くフロイト、アドラー等の当時の関係性が分かりやすい描かれていて、整理しやすい。第4章以降が具体的な臨床例を加えた内容。
    方法論は違えどクライアントの内包する感情をどのように引き出すか、それが絵を描かせるのか、箱庭を触らせるのか等の違いであって目指すところは一緒。
    心身症を抱えたクライアントとの応対について書かれているが、この方法論については日頃、誰かと何気なくコミュニケーションしている場面において、一歩立ち止まることで重要なヒントとなると考える。

  • ユング派の心理学者である著者が、わが国におけるユング受容の経緯を踏まえながら、臨床的な立場に立ってユングの理論を解説した入門書です。

    著者は、ユングの心理学だけを唯一正しい理論だとは考えてはいません。フロイトの精神分析理論は、3歳から30歳くらいまでの心の問題、とくに神経症の説明に有効であり、行動療法は、ある特定の病状の特定の時期におこなえば、他のどんな理論よりも効果があるとしています。これに対してユングの心理学は、人間の一生や、人間の心の全体性をとらえるためには一番ふさわしいと、著者は述べます。

    ただし、錬金術やシンクロニシティに接近するユングの理論には、ある種のいかがわしさが付きまとっているのも事実です。この点で、わが国にユング心理学を導入した河合隼雄の功績は大きいと著者はいいます。河合は箱庭療法を中心に臨床的な経験を積みかさね、ユング心理学が治療法として十分な信頼を獲得することに力を注いできました。著者は、河合の箱庭療法や、著者自身が精力的におこなってきた絵画療法などを「表現療法」と呼び、そこにユング心理学の臨床的な可能性を見いだそうとしています。

  • 仕事・結婚・子育ては人生の半分でしかなく、「生きられなかった人生の半分」をどう考えるか?という「個性化」への道筋の有無が、フロイトは30歳までの青年期には有力だが、それ以降はユングが相応しいという事の理由なのだろう。
    また、「神とは人間の投影である」という考えは中々面白い視点で、ひとつの切り口ではあるなという気はする。牧師である父との葛藤の中から生まれた独自のキリスト教観なのだろうが、若干カルト臭いユングの考えを河合隼雄がうまくジャパナイズしたという点も見逃せない。ユング&河合で西洋・東洋の各々の思想が上手くミックスしている印象。
    前に読んだ入門書よりは説明が絞り込まれており、章立て毎に構成もしっかりしているのだが、後半は著者の臨床体験話でユングの話ではない。これはこれで面白いけど。

  • 臨床の「臨」とは臨在すること、隣にいることを意味する。そして、「床」はかつて「死の床」を意味していた。
    つまり死の床にある人の傍にいて、この世からあの世に魂を渡す手助けをするのが「臨床」(クリネー)の本来の意味であった。だから、臨床家といつのは、かつては僧侶のことであった。

    ユングというと、どうしても夢分析なんかの話が出てくるとどうしても、オカルトチックになりがち。

    本書前半は、かなり思想、哲学、宗教色が強く、後半からようやっとユングの話へ。
    後編の診断の具体事例紹介は、実に興味深かった。身近にあったことと、かなり重なることもあり。

    カウンセリング心理学と対比して読むと、より理解が深まる。

  • セラピーの時間とはセラピストもまた守られるということ、という緒言から引きこまれる。まだまだ奥深いこと多し。

  • 「臨床」の冠がタイトルに見られるように、真摯にクライエントに向かい合ってきた精神科医・カウンセラーのユング論である。

    時に、ユングの考えを批判的にとらえつつも、一つ一つの異なる病態に対して、心、いや、魂の次元からの洞察をする筆者の姿勢は、非常に説得力がある。

    特に私は不登校、自閉症のとらえ方にうなづくことしきりであった。

    また、病状が「悪くなること」は「まだ良くなる可能性がある」という意味の裏返しである、という発言は、治療者としての山中氏の良心を見る思いがした。

  • 23.12.4津島市立図書館で借用
    12.8返却

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著者プロフィール

北海道大学大学院環境科学院准教授/理学博士(東京大学)


「2010年 『Sustainable Low-Carbon Society』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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