日本人が知らない世界と日本の見方

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  • PHP研究所
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569799230

感想・レビュー・書評

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  • この本は別に以前から読みたいと思っていたわけでもなく、存在を知っていたわけでもありませんでした。  たまたま9月の末で有効期限が切れてしまう Sony Point があって、捨てちゃうのも勿体ないし何かあれば・・・・と Sony Reader Store を覗いてみたらその切れちゃうポイント見合いの本の中で、「これなら読んでみてもいいかも♪」と思えたのがこの本だけだったので、とりあえず購入してみました。  大学を卒業して早○0年余り。  たまにはアカデミックな本を読んでみるのもいいかなぁ・・・・なんぞと殊勝なことを考えてみたっていうわけです。

    実は KiKi は大学時代(2回生から3回生に進学する時)にそれまで専攻していた「英文学」でこのままいくのか、はたまた別の方向に進むのか悩んだ時期があったんですよね~。  その時に考えた別の方向っていうヤツが「国際関係論」で、たまたま大学の一般教養課程で選択した「国際関係論」の授業に嵌っちゃって、学問としてはこっちの方が面白そう!なんぞと考えたんですよね~。  その時は、当時の指導教授(英文学の教授)に相談して、結局は説得されて英文学の道を継続することにしたんだけど、心の中のどこかに「国際関係論」とか「国際政治論」への興味はわずかながらもくすぶり続けていたんですよね。  ま、てな背景があって見つけたこの本だったので、「あの京大での現代国際政治の講義」という帯(電子書籍だから帯はないけど・・・・ ^^;)の文言は実に魅力的だったっていうわけです。

    さて、読了してみてまず思うのは、「え?  これがあの京都大学の講義??」ましてや「3回生や4回生も聴講生には含むレベル?」というのが率直なところでした。  何て言うか、「天下の京大にしてこのレベル??」と思っちゃった(苦笑)  もちろん読み物としては面白かったし、アカデミックな世界からは随分遠のいた今の KiKi にしてみれば忘れかけていたあれこれを反芻できて楽しい読書体験だったんだけど、京大みたいな最高峰に位置するとされる大学での講義であってさえも KiKi が卒業した大学のあの「国際関係論」の授業と比較して、決して高いレベルとは感じられない・・・・・。  これが現代日本の知的文化レベルだとするとちょっと将来を危ぶんでしまいそうな想いに囚われました。

    ただ逆に言えば、大学を卒業して何年も経って、学究の道からは遠く離れてしまって、逆に一当事者として現在の国際社会の中で目の前に提示された命題に取り組み、何らかの活動をしてきたような社会人にはいい本だなぁと感じました。  つまりとかく些末な部分に振り回されがちな現実問題から一歩下がってもう一度「現在」や「現在に至る流れ」を振り返り、そこに流れる思想的潮流やら文化的変貌を整理して考え直すとっかかりには非常に適したテキストだと感じました。

    著者の意見に100%賛同するわけでもなかったけれど、第1講の「戦争の仕組み」と第4講の「アングロサクソンとは何か」は無条件に面白かったと思います。  KiKi も「戦争責任とは何ぞや?」とか「平和教育が本当に平和をもたらすのか?」というあたりは常々考え続けていることだし、まして「実は恐ろしい民主主義」というのも感覚的にはそう考えているところがあるので(だからといって「独裁制がいい」とは思っていません 念のため)そういう意味では「そう、そう」と頷けるところが多々ありました。  又、40代以降は「時代が進めば世の中は進歩していく」と楽観的には考えられなくなってきているし、「正義という言葉ほど胡散臭いものはない」とも思うようになってきているので、そういう面ではかなり共感することができる部分もありました。

    「パクス・ブリタニカ」→「パクス・アメリカーナ」な~んて言う言葉はもう久しく使っていなかった(だって日常生活では必要ないし・・・・ ^^;)けど、久々に接して懐かしさみたいなものを感じました。  個人的には相変わらずアメリカは世界の超大国ではあっても「パクス・アメリカーナ」はとっくに終焉していると考えているので、今の時代をどう呼べばいいのかに興味があります。  ただ、今現在も国際社会の中で起こっている様々な出来事にはアメリカの思惑が見え隠れするし、相変わらず彼の国は「自由」「民主主義」「市場主義」を標榜し、それを画一的に広めようとしているし、そのツールとしての「グローバル・スタンダード」なるものの布教活動にも熱心だから、まだまだアメリカが世界をリードしていくように見える覇権構造は続くのでしょうけど・・・・・。  (もっともかなり行き詰まっている気配も濃厚だけど・・・・・ ^^;)

    さて、ちょっと残念だったのは、ここからさらに一歩進んで何かを考察するのに適するテキストの紹介が全くと言ってないことでした。  著者も仰るように日本のマスメディアにはそれはあまり期待できないと KiKi も思っているので、せっかくこの本で興味を持ったテーマ(実に網羅的、巨視的、文明論的なんですよね)をさらに突っ込んで考えるための読者サービスがあってもいいのではないか?と感じました。  まあ、この本の成り立ちが講義録の書籍化ということなので、講義の際には「このことに興味があれば、別途質問にいらっしゃい」で終わってしまっているというのもあるから故の中途半端さだとは思うんですけどね。  

    本文中に過去の「国際関係論」関係の論文はいくつか紹介されているんですけど、それってこっちの分野に興味のある人にとってはある意味でおなじみのものばかり・・・・・。  できれば最近の資料の紹介が欲しかったなぁ・・・・と思うわけです。  と言うのも、社会人の場合(というより KiKi 個人の場合か?)は他にも何かと忙しいわけで、世に出る論文を片っ端から読む余裕はないうえに、そればかりを追いかけてもいる時間も経済的余裕もありませんから・・・・・・。

    いずれにしろ KiKi 個人は現代社会、それもパクス・アメリカーナにどっぷり浸った英・米・日の社会(ドイツ、フランス、ロシア、中国あたりは表面的なことしか知らない ^^;)をとりまく問題の多くの根っこは「プラグマティズム偏重」にあるのではないかと思っているので、そのあたりを今後もあれこれと考察してみたいと考えています。  久々に「児童文学」からちょっと離れてみるとこれはこれでなかなか刺激的で面白いものでした。

  • 京大教授の著者による「現代国際政治」講座の内容を書籍化したもの。
    私のような初心者にとっても分り易くまとまっている良書である。

    興味深い説明がいくつも出てくる。
    近代科学主義、民主主義、国民主権が万能の「進歩の象徴」とは成り得ないことが明確になった第一次世界大戦を、現代文明の分水嶺と捉える世界史観について、実例をいくつも取り上げての解説。

    国際連合と国際連盟でどちらが良い制度なのか。
    連合では常任理事国に拒否権があり連盟ではなかったのだが、多数決で決まったことに従いたくない国が脱退して戦争につながってきたことを考えると、民主的ではない制度であるにもかかわらず現在の連合の制度のほうが平和を保つために大きな役割を果たしていると云う。

    戦後の日本国憲法第9条論争において、時の吉田首相に共産党が投げかけた問が意外だった。「具体がなければ誰が日本の国家の安全を保障するのか。いまは占領されているから占領軍が保障するが、いずれ彼等は帰っていく」という今とは全く逆の見解で、首相の「侵略戦争をしないためには、いっさい軍隊を持ってはならない」という答弁を引き出している。今に至ってみれば、共産党は憲法改正反対を叫ぶし、自民党は軍隊ではないと言いながら自衛隊を設立してしまったのだから、この答弁は何だったのだろうと思うわけだ。

    BBCが第二次大戦中にも関わらず、ずっと正確な情報を流していて、ドイツでさえもその内容を信じていたのだが、ノルマンディ上陸作戦の時だけ上陸位置を偽ったいう逸話は他でも聞いたことがあるが、国際外交におけるイギリスの姿勢を浮き彫りにしていて面白い。

    大きな史観を解説する箇所では、いくつかの重要な書籍を取り上げている。
    フランシス・フクヤマの「歴史の終わり」は冷戦時代のような大対立がなくなると、大きな歴史の動きはなくなり終わるという論であり、90年代初頭は確かにそれに似た雰囲気があったように思う。
    それに対して93年に発表されたハンチントンの「文明の衝突」では、冷戦後は諸文明の対立・摩擦・衝突で世界史は彩られるという。先日のマリのクーデターから始まったと言われるアルジェリアのテロも911も、まさにこの流れだろう。
    著者は「歴史の終わり」でまとまったように見えた世界が、「文明の衝突」でまとまった中で文明間での小対立があちこちで起こり、最後は「文明」ではなく「国家」という単位で異質な世界の乱立した形になっていくと考えている。

    このような世界史論に結びつけて、核兵器のあり方や北方領土問題やトルコのEU加盟問題など幾つものトピックを取り上げて、極めて平易に全体観を表しているところに共感が持てる。
    読み物としても面白かったし、初心者が国際政治全体を俯瞰するのにはもってこいの本であった。

  • 京大生 こんな授業 受けてたら そりゃあ頭も 良くなるよねえ

    京大の国際政治学の講義内容をまとめた本なんですが、すごく面白かったです。できることなら学生時代にこんな授業を受けたかった。(笑)

  • 中西輝政さんの京大での講義録をまとめた1冊。第一次世界大戦から現在までの世界、政治の見方がわかりやすく紹介されていて参考になる。
    ただ、各エピソードが若干断片的な印象なのは、入門コースとして幅広に解説されたという講義の性格上、致し方ないか。
    グローバリゼーションの時代が終わり、これからはまた国家の役割が大きな意味を持つようになるという氏の論は、ビジネスを中心に世界を考える目線からは少し遠い響きに感じられるものの、実際に世界秩序を維持しているのは、強国とその周辺国(ここ200年であれば、英米とロシア、ドイツ、フランス、中国、および日本など)というそれぞれ国家であって、決して国連や共同体ではないという指摘には納得させられる。
    経済共同体の進展か国家の再構築か。今後の10年、20年をそういう切り口で見ていくのも面白そうだ。

  • どうして戦争が起こるのか?
    行われた戦争の意味はあったのか?
    本当に大事だった戦争は第二次世界大戦ではなく、第一次大戦だった?
    坂本龍馬はイギリスの操り人形だった?

    なるほどなーって感じでした。

  • 紀伊国屋@梅田で立ち読みしてたら隣にあった本
    なんか賢くなった気分になりたくて読んだ。

    全201ページ
    はじめに 6 P
    一章:戦争の仕組み 34 P
    二章:地上のどこにもない場所 36 P
    三章:幻滅の20世紀 32 P
    四章:アングロサクソンとは何か 34 P
    五章:「一超多強」の時代 32 P
    六章:日本文明が生き残るために 27 P

    三章では、明治維新と世界がどのように関わっていたのかや
    日露戦争、大東亜戦争、などがなぜ起こったのかの問いついて書かれており、
    その他にも冷戦や一次世界大戦など、戦争はなぜ起こるのかについて
    いろいろと解説された本

    イギリスやアメリカが今まで戦争で負けた事がない理由は、
    海を支配していたからであり、
    これは経済で言うと金融業を支配することであると書かれていたことが印象的だった。


    ロンドン・タイムス(英)、gurdian(英)のホームページをブックマークした。
    読むかは不明('_')

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著者プロフィール

1947年、大阪府生まれ。京都大学法学部卒業。英国ケンブリッジ大学歴史学部大学院修了。京都大学助手、三重大学助教授、スタンフォード大学客員研究員、静岡県立大学教授、京都大学教授を歴任。石橋湛山賞(1990年)、毎日出版文化賞・山本七平賞(1997年)、正論大賞(2002年)、文藝春秋読者賞(1999年、2005年)受賞。専門は国際政治学、国際関係史、文明史。主な著書に『帝国としての中国――覇権の論理と現実』(東洋経済新報社)、『アメリカ外交の魂』(文藝春秋)、『大英帝国衰亡史』(PHP文庫)、『なぜ国家は衰亡するのか』(PHP新書)、『国民の文明史』(扶桑社)。


<第2巻執筆者>
小山俊樹(帝京大学教授)
森田吉彦(大阪観光大学教授)
川島真(東京大学教授)
石 平(評論家)
平野聡(東京大学教授)
木村幹(神戸大学教授)
坂元一哉(大阪大学名誉教授)
佐々木正明(大和大学教授)

「2023年 『シリーズ日本人のための文明学2 外交と歴史から見る中国』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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