この本は別に以前から読みたいと思っていたわけでもなく、存在を知っていたわけでもありませんでした。 たまたま9月の末で有効期限が切れてしまう Sony Point があって、捨てちゃうのも勿体ないし何かあれば・・・・と Sony Reader Store を覗いてみたらその切れちゃうポイント見合いの本の中で、「これなら読んでみてもいいかも♪」と思えたのがこの本だけだったので、とりあえず購入してみました。 大学を卒業して早○0年余り。 たまにはアカデミックな本を読んでみるのもいいかなぁ・・・・なんぞと殊勝なことを考えてみたっていうわけです。
実は KiKi は大学時代(2回生から3回生に進学する時)にそれまで専攻していた「英文学」でこのままいくのか、はたまた別の方向に進むのか悩んだ時期があったんですよね~。 その時に考えた別の方向っていうヤツが「国際関係論」で、たまたま大学の一般教養課程で選択した「国際関係論」の授業に嵌っちゃって、学問としてはこっちの方が面白そう!なんぞと考えたんですよね~。 その時は、当時の指導教授(英文学の教授)に相談して、結局は説得されて英文学の道を継続することにしたんだけど、心の中のどこかに「国際関係論」とか「国際政治論」への興味はわずかながらもくすぶり続けていたんですよね。 ま、てな背景があって見つけたこの本だったので、「あの京大での現代国際政治の講義」という帯(電子書籍だから帯はないけど・・・・ ^^;)の文言は実に魅力的だったっていうわけです。
さて、読了してみてまず思うのは、「え? これがあの京都大学の講義??」ましてや「3回生や4回生も聴講生には含むレベル?」というのが率直なところでした。 何て言うか、「天下の京大にしてこのレベル??」と思っちゃった(苦笑) もちろん読み物としては面白かったし、アカデミックな世界からは随分遠のいた今の KiKi にしてみれば忘れかけていたあれこれを反芻できて楽しい読書体験だったんだけど、京大みたいな最高峰に位置するとされる大学での講義であってさえも KiKi が卒業した大学のあの「国際関係論」の授業と比較して、決して高いレベルとは感じられない・・・・・。 これが現代日本の知的文化レベルだとするとちょっと将来を危ぶんでしまいそうな想いに囚われました。
ただ逆に言えば、大学を卒業して何年も経って、学究の道からは遠く離れてしまって、逆に一当事者として現在の国際社会の中で目の前に提示された命題に取り組み、何らかの活動をしてきたような社会人にはいい本だなぁと感じました。 つまりとかく些末な部分に振り回されがちな現実問題から一歩下がってもう一度「現在」や「現在に至る流れ」を振り返り、そこに流れる思想的潮流やら文化的変貌を整理して考え直すとっかかりには非常に適したテキストだと感じました。
著者の意見に100%賛同するわけでもなかったけれど、第1講の「戦争の仕組み」と第4講の「アングロサクソンとは何か」は無条件に面白かったと思います。 KiKi も「戦争責任とは何ぞや?」とか「平和教育が本当に平和をもたらすのか?」というあたりは常々考え続けていることだし、まして「実は恐ろしい民主主義」というのも感覚的にはそう考えているところがあるので(だからといって「独裁制がいい」とは思っていません 念のため)そういう意味では「そう、そう」と頷けるところが多々ありました。 又、40代以降は「時代が進めば世の中は進歩していく」と楽観的には考えられなくなってきているし、「正義という言葉ほど胡散臭いものはない」とも思うようになってきているので、そういう面ではかなり共感することができる部分もありました。
「パクス・ブリタニカ」→「パクス・アメリカーナ」な~んて言う言葉はもう久しく使っていなかった(だって日常生活では必要ないし・・・・ ^^;)けど、久々に接して懐かしさみたいなものを感じました。 個人的には相変わらずアメリカは世界の超大国ではあっても「パクス・アメリカーナ」はとっくに終焉していると考えているので、今の時代をどう呼べばいいのかに興味があります。 ただ、今現在も国際社会の中で起こっている様々な出来事にはアメリカの思惑が見え隠れするし、相変わらず彼の国は「自由」「民主主義」「市場主義」を標榜し、それを画一的に広めようとしているし、そのツールとしての「グローバル・スタンダード」なるものの布教活動にも熱心だから、まだまだアメリカが世界をリードしていくように見える覇権構造は続くのでしょうけど・・・・・。 (もっともかなり行き詰まっている気配も濃厚だけど・・・・・ ^^;)
さて、ちょっと残念だったのは、ここからさらに一歩進んで何かを考察するのに適するテキストの紹介が全くと言ってないことでした。 著者も仰るように日本のマスメディアにはそれはあまり期待できないと KiKi も思っているので、せっかくこの本で興味を持ったテーマ(実に網羅的、巨視的、文明論的なんですよね)をさらに突っ込んで考えるための読者サービスがあってもいいのではないか?と感じました。 まあ、この本の成り立ちが講義録の書籍化ということなので、講義の際には「このことに興味があれば、別途質問にいらっしゃい」で終わってしまっているというのもあるから故の中途半端さだとは思うんですけどね。
本文中に過去の「国際関係論」関係の論文はいくつか紹介されているんですけど、それってこっちの分野に興味のある人にとってはある意味でおなじみのものばかり・・・・・。 できれば最近の資料の紹介が欲しかったなぁ・・・・と思うわけです。 と言うのも、社会人の場合(というより KiKi 個人の場合か?)は他にも何かと忙しいわけで、世に出る論文を片っ端から読む余裕はないうえに、そればかりを追いかけてもいる時間も経済的余裕もありませんから・・・・・・。
いずれにしろ KiKi 個人は現代社会、それもパクス・アメリカーナにどっぷり浸った英・米・日の社会(ドイツ、フランス、ロシア、中国あたりは表面的なことしか知らない ^^;)をとりまく問題の多くの根っこは「プラグマティズム偏重」にあるのではないかと思っているので、そのあたりを今後もあれこれと考察してみたいと考えています。 久々に「児童文学」からちょっと離れてみるとこれはこれでなかなか刺激的で面白いものでした。