幸せな小国オランダの智慧 災害にも負けないイノベーション社会 (PHP新書)
- PHP研究所 (2012年1月13日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784569803180
作品紹介・あらすじ
スウェーデン、フィンランドなど北欧諸国を抑えて「子どもの幸福度」1位に輝くオランダ。400年の交流がありながら、日本人はこの小国をあまり意識してこなかった。ところが震災を経て混迷を深めるいま、1000年に及ぶ洪水との死闘を乗り越え、欧州屈指の低失業率で経済的にも安定を続けるオランダが一躍注目されている。自由闊達な対話を認め、問題解決に向け協力し合う関係性豊かな社会。日本人にもっとも欠けている「不確実性に強い知的弾力性」はどこからくるのか?"オランダ的思考"の強さの秘密。
感想・レビュー・書評
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掘り下げているのに、新書であるのでサクサク読めるそんな本。
最近読んだ新書の中では、一番な好印象。
時々出てくる他の専門家の発言や著作からの引用が、いやらしい感じがまったくなく、説得力を加えてくれている。
オランダと日本は異なるので、だからこそ学ぶべきところがあるのではという視点。(単純にマネしろなどとそこ浅はかなことを決して著者は論じていない。)
災害とイノベーションという一見関係性の薄い事柄を「知的弾力性」の視点を通じて見る。
オランダだって、問題は山積している。
それでも終わりなき対話に真摯に向かい合い、ちょっとずつでも個々人の幸福を追求できる社会。持続性をある社会。
日本の「男性的(性別により役割分担される)」で「寛容性が低い(多様性を認めない・受け入れにくい)」社会と対極に位置するオランダ社会を通じて、われわれ一人一人の変革の必要性について考えざるを得ない読後感となる。
ただ、失われた20年で、日本から「ソーシャルキャピタル」も失われたことになっていますが、これってそうでしたっけ。むしろ、ボランティアの精神なんかがその隙間を埋めるように浸透したように思います。。 -
読み終わってオランダという国への興味が増した。
オランダの強み
社会インフラの充実
→個人主義と共同体意識の共存
知的弾力性
一度決まったことについて再度見直し、ダメな部分は改める
上記2点は、海抜が低く、昔から多くの洪水に見舞われる中で円熟してきたもの
すぐには無理だが、日本には必要な、かつて持っていたもので取り戻すべきもの(明治維新前後の日本にはあったと自分は考える)
また、経済危機を経て、導入した「同一労働同一賃金」という考え方のワークシェアリングは多少の問題はありながらも、閉塞感の強い日本にも導入すべきであるし、下らないシガラミを無視出来れば実現可能
最後に個人的にはトータルフットボールに見るオランダ人分析が一番面白かったという印象 -
2012.02.11 ソーシャルキャピタルの豊かさがオランダの豊かさ、経済的な成功のベースのようだ。日本は今、オランダの正反対。このままではどんどん幸せから遠ざかりそうだ。国家戦略の転換が必要だ。もう間に合わないぞ。
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集団主義で個人主義。一人一人が政党といわれるほどの主張にもかかわらず話し合いで解決しようとするポルター文化。その裏には洪水の度に流されてきた国土を守ることにあった。小国ながらも幸福度の高いオランダから学ぶべきこととは。
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FBのお友達の推薦。
とてもおもしろい。一つ一つがどうというより、オランダをみる観点が納得感がある。
(1)カギになるのが、デザインやアートなどの要素であることはなんとなくわかっている。だだ、その力が表層の差異化だけでなく、産業や組織の深層レベルで発揮されなければならないのだ。(p226)
著者は断定しているが、自分もなんとなくそうだと思う。福岡伸一さんが「うつくしいかどうか」が決めてといったのとも近い。
知識産業化とはイノベーションというのも、うつくしいかどうか、いいデザインとおもえるかどうかがカギじゃないかな。
(2)創造性経済の根幹をなす知的資産を生み出す場として都市が注目されている。(p95)
(3)干拓地を中心とするボルダーという共同体を中心としたボルダーモデルがオランダ復活の決め手。(p49)
必ずしも、自治会とかいうのにこだわらず、職場のタテ関係ではない、よこのつながり、それがFBであろうと、マンション管理組合であろうとかまわないので、そういうよこのつながりを大切にしていくことが、都市の再生の一歩のような気がしてきている。
なお、オランダの都市計画については、角橋さんの『オランダの持続可能な国土・都市づくり』(学芸出版社)が参考になると思う。(自分は、2010.8.2にブログでコメントしている)。 -
フューチャーセンター界隈で名前が挙がった本。日本はやはりオランダから学ぶべきか?
<目次>
プロローグ 「予測不能な時代」を生き抜くための力とは
第?部 いま、なぜオランダなのか?
第1章 「トモダチ」でも「遠い」友人ーオランダという映し鏡
第2章 災害を乗り越えてきた不屈の歴史ー自然災害と経済災害
第3章 オランダから見る「内向き日本」−鎖国の真実をよく知る国
第4章 小国オランダの知識経済戦略ー国民一人ひとりの持続的な豊かさ
第?部 人のつながりを力に変える
第5章 ソーシャルキャピタルとは何かー関係性が資本となる
第6章 個人主義と集団主義の矛盾なき両立ーオランダ的「場」の思考
第7章 いまオランダが抱える問題ー自由の代償
第8章 混沌を許容する文化ー対話しつづける人々
第?部 オランダ人のイノベーション力
第9章 「製造業」と「サービス業」の垣根を越えてー経済格差とグローバル展開
第10章 思い込みから解き放たれた経営ーシナリオ的アプローチ
第11章 会社に縛られない働き方ーネットワークとコミュニケーション
第12章 「オランダ的思考」の原点ー人間の知を無駄にしない哲学
エピローグ 「美徳」の資本主義
<メモ>
・日本人にもっとも欠けている「不確実性に強い知的弾力性」(カバー)
原発事故の時、駐日オランダ大使が「なぜ、東京にとどまったのか」
・第一の理由は、『原発事故による放射線量は、医学的に、東京に住んでいる人たちに影響を及ぼすレベルに達していない』とのオランダ政府の判断
・第二の理由は、関東には約700人のオランダ人がおり、大使館として撤退はできない。
・第三の理由は、日本とオランダの400年以上の長い関係に大きな責任を感じており、事態が悪化した時にとどまることも「トモダチ」の証だと考えた」
(読売新聞 2011年4月25日)(6-7)
第1章 「トモダチ」でも「遠い」友人ーオランダという映し鏡
・「特異」な日本の価値観ー男性的/不確実性の回避(24-25)
・日本はある意味で克己心を保ち、欧州諸国と協調しつつも、きわめて孤立した性格(こつこつと努力を積上げる)によって成功を生み出してきたユニークな社会だったといえる。(29)
第2章 災害を乗り越えてきた不屈の歴史ー自然災害と経済災害
・鎖国時代の日本:諸外国が関心を引いたのは事実上、捕鯨用の中継基地(アメリカ)、不凍港(ロシア)、そして銀の為替レートによる金貨(小判)の魅力だった。鎖国を続けられたのは、大きな資源がなかったことと、オランダがほかの諸外国をマークし、ブロックしていたからである。(75)
・田中明彦氏『新しい中世』
「新中世圏」人が自由に往来。EU、日本、アメリカ西海岸など
「近代圏」領土的野心、拡張。中国、ロシア、韓国、北朝鮮
「混沌圏」秩序が崩壊。イラク、アフガニスタン、ハイチ
日本は新中世圏の国でありながら、地政学的には近代圏の国に囲まれている。そのため「新中世圏のなかで生きる方向を見失わないこと。近代圏の国々と上手にかかわること、混沌圏への対応もしっかり行うこと」の3つの対応に迫られる。(80)
第5章 ソーシャルキャピタルとは何かー関係性が資本となる
・ソーシャルキャピタルは、社会的なネットワーク、信頼、互酬性、参加意識、市民の力、生活者としての価値観、多様性、帰属意識などによって形作られる(98-99)
第7章 いまオランダが抱える問題ー自由の代償
ワークシェアリングの考え方
・日本は90年代以降、日本的経営でもオランダ的ワークシェアリングでもない、「安心できない雇用」に国民を追いやったといえるだろう。日本の場合、雇用制度は産業や企業の論理に経っている。オランダは国民(人間)の論理に経っている。両者の差異はソーシャルキャピタルを重視したか否かである。(135)
・日本は世界一病院死が多い。日本人は8割(81%)が病院で死んでいる。高齢者施設は3%、自宅などが16%、とくに、がん患者の院内死亡割合は93%とぬきんでている。オランダは病院が35%、高齢者施設33%、自宅などが31%(池上直己「終末期ケアの課題と将来展望」、『社会保障旬報』2004年9月4日)(138)
エピローグ 「美徳」の資本主義
・加護野忠男:最近の日本企業の元気のなさの理由として、経営精神の喪失を指摘する。それは過去と現在を切り離し(自身のルーツを忘れ)、表層的なグローバル経営に目を向け、社会性より営業利益の追求に走り、コミュニティを喪失してしまった過程ともいえる。過去の日本企業へのたんなる回想ではなく、経営精神を回復しなければならないのだ。(244) -
再読。やっぱりオランダには学べる面が沢山ある。
あの規模だから(日本の九州くらいの大きさ、ただ人口密度は日本と変わらない)出てくるチャレンジ精神みたいなものもあるだろうし、人種のるつぼとしての多様性への理解もベースになってるだろうし、何よりああいう地形、土地柄が「今のオランダ」になる根本的な部分として大きいと思う。(2017/01/19) -
自ら土地を創り民主主義を生み出したオランダの「ポルターモデル」現実的な問題をソーシャルキャピタルのもと実践的に解決する思考と行動力。日本企業や社会に取り入れた方がいいと思う。