- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784569804170
作品紹介・あらすじ
「地元に帰らず、ホテルに住めていいねえ」「東電からいっぱいもらっているんでしょう?」「放射能が移るから近寄るな!」-何気ないひと言や所作に原発被災者たちは疑心暗鬼となり、神経をすり減らす。誤解や偏見は差別やいじめへと発展する。そのストレスは計り知れない。「避難すべき人が避難できずに被曝した」「必要のない人に避難を強制した」。福島第一原発事故で、政府は二重の誤りを犯した。ある人は「被曝」というかたちで犠牲になり、ある人は「避難」というかたちで家や仕事を奪われた。「真実を知ってほしい」。絆を引き裂かれた住民の心は、いまだ苦しみの渦中で喘いでいる。
感想・レビュー・書評
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2022/05/27
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●放射能が距離とともに減衰するのは「放射線源が1つだけ」と言うケースに限られる。福島第一原発事故では、莫大な数の放射線源が塵に乗って煙のように流れたのだ。セシウム、ヨウ素、プルトニウムといった放射性物質は、様々な大きさの塵にくっついて、原子炉から流れ出し上昇し移動し地表に降ってくる。その雲の方角を予測し忘れたわけである。北西方向へ流れることは予想できたはず。
●真っ先に逃げ出したマスコミ。
●立ち入り禁止ゾーンより南相馬市の方が、放射線放能汚染が高かった。
●サイエンスの世界は白から黒まで全部ある→難しくてどれが真実なのかわからない→しかし、関係があると分かったときには手遅れだ。
●とにかく電源車があれば何とかなるはずだった。しかし、普段から接続する訓練などをしていなかったために準備できなかった。
●いかんせん、最後の最後まで廃炉にする選択肢を選択しなかった。1号機廃炉にする決断を早くしていれば、まだコストは安かった。2、3号機は助かったかもしれない。
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被曝は人災だった。誤解、偏見、差別、対立、いじめが被災者に降り注ぐ。絆を引き裂かれて苦しみは続いている。実は被曝者も避難者も出さない方法は確実にあったそうだ。法律もあったどうだ。しかしそれを適用しなかった政治家、官僚、学者の罪は大きい。世界ではスリーマイル、チェルノブイリの事故より5重の安全対策を立てていたそうだが、「安全神話」が優先されて安全対策が30年遅れてしまったそうだ。そして現在もそれが改善されないままに再稼動されようとしているらしい。ウム、恐ろしい。
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原発事故で故郷を追われた人たちの苦悩を綴る前半と、余りにも稚拙であった事故対応について原発災害のスペシャリストが語る後半の2部構成。
特に後半のインタビューは呆気にとられる。何故「格納容器は壊れない」ということになっていたのか?何故住民への避難指示は遅れたのか?またSPEEDIがありながら半径20キロ避難という理解し難い避難指示がなされたのか?その答えがいとも簡潔に語られている。 -
感情論に引きずられる議論が多く語られる福島原発事故を、淡々と事実を積み重ね検証した良著。
前半部分は被爆した人達のその後の暮らし等を書き、事故によって日常から何が失われたのかを書いている。
後半はもっと小さな事故で押さえられたはずの事故が、なぜ拡大したのか、避難は遅れたのかを検証している。
いま読むべき一冊。 -
原発行政が如何に秩序のなさを露呈してるか
今回の事故で誰も責任を取らないだけでも良く分かる。
沖縄と同じく私たちはフクシマを異化しようとしている。 -
原発事故避難に迫るノンフィクション。
原発事故直後の様子やその後の生活の苦悩など、当人達の生の声が書かれていて、心にずしりと刺さる。
さらにこの本では、原発事故の際のマニュアルが存在することをつきとめ、その作成者にインタビューをしているのだ。マニュアルどおりに対応し、早い段階で廃炉を決意していればここまでの被害は防げたのだ。強い憤りを覚える。
原発事故を考える上で外すことのできない一冊。 -
長年の知り合いである烏賀陽さんの、最新刊。さまざまな報道から知ったような気になっている事柄も多いが、やはり実際に被害にあった人たちに当っている生の取材から浮き彫りになる事実の重みは大きい。簡単に読めるので一読をオススメします。
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私もかかわっている野田村と南相馬市に愛情を持って接し、それゆえに厳しい現実を次々と報じてくれる宇賀陽総長の最新著。
ステイの方々から聞いている以上の困難に向き合っていることを痛感し、それだけにやらねばならないことがあると覚悟しました。