大停電を回避せよ!

著者 :
  • PHP研究所
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (183ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569806853

作品紹介・あらすじ

なぜ"脱原発"は進められないのか?3・11以後、電力叩きに奔走するマスコミに対し口をつぐんできた電力各社社員たちが、"供給側から見た電力問題"を初めて語った。

感想・レビュー・書評

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  • 知ること大事。
    2012年時点で書かれているが、各地の電力会社に丁寧に取材してあるため、日本の電力事情がよくわかる。自然の力を利用した発電施設の現状、今後原子力を扱う技術の進歩はあるのか、など微妙な問題も現場の声をありのままに伝えている。
    たとえば、原発が必要か不要なのか、その判断を下すためにはきちんと現状を把握し、正しい情報を知らなくてはならないわけだが、この本は、そのための入り口を作ってくれるドキュメンタリーだと強く感じた。

  •  ただ言えることは真実は一つだがそこに行きつく道は複数あるということ。

     自分はどの道を進んでいるのかもう一度考え直す良いチャンスを与えてくれる一冊なのではないか。

     今現在電力は足りている。そんな軽々しく発言するべきではない。いかに彼らが緊迫の中、誹謗中傷を受けながらも電力維持をまもりぬいているのに我々はいらぬ論争ばかりしている。本筋が何かを見極める努力をしなければいけない。

     ”二号機”が修復を終えた日、取材にきたマスコミはゼロ。少々難しい話だから、数分のニュースでは報じようないのだ。   p19

     ここで言う2号機は原子力発電所ではない、解体予定の火力発電所のことだ。この二号機が稼働していなければどうなっていたのか。知らなければいけないのはベースとピーク電源だという。

     そして電気料金日本は世界一高いという2010年では先進国24か国中8番目、日本の停電率からすれば決して高い訳ではない。
     デンマーク、イタリア、オーストリア、オランダ、アイルランド、ルクセンブルグ、スロバキアに次ぐ8位

     その中に自然エネルギーという見えざる宝が入ってきたら電力は安くなるのだろうか?計算は難しいが当時の神奈川県の太陽光発電推進は後退しているという。金額に無理があるためだ。

     そこで電力会社の人は言う、
     「自然エネルギーを売る側に電力の供給責任はない。天気次第、風任せで電気ができたときだけ高値で売ればいいんです。一方、我々には供給責任がある。バックアップの火力発電所を作るのは我々の仕事、ブラックアウトさせてしまったら我々のせい。こんな理不尽な話って、ないと思いませんか?」   p131

     もっともな話だろう。ここで反~は自らの蒔いた種だ責任はお前たちにあるというだろう。しかしすべての事必要なものは分解して論じなければならない。それをだれも理解していない。

     そこで禁断の言葉が浮かんでしまう。一度ブラックアウトを経験してみればよいと。


     いろいろ考えさせられる本はこの原発問題が生じてからいろいろ出ているが、これほど中立的な立場から現場に人に直接取材した本というものはただ一つもなかった。真も反も何も考えずに読んでもらいたい。

  • なかなか発言できない電力会社の現場の人から取材をしている。
    中部電力武豊火力発電所二号機は1972年に運転を開始し、2009年10月に運転休止。最新の発電機が60%近い効率なのに対し39%の変換効率と燃費は悪く、解体を待つ身だったが311の後永崎所長は運転再開準備の指示をする。5月10日の浜岡原発の停止要請を受けて7月31日には運転を再開するのだが事前の指示で状態を把握していたからギリギリ間に合ったらしい。
    2012年2月3日午前二時頃、新大分発電所230万kWがトラブルのためダウン。この時点での九電の供給力1278万kWに対し翌朝9時の需要は1470万kWが見込まれる。顧客への需要調整と6電力会社からの融通で計240万kWで1518万kW。供給予備率3.1%とぎりぎりになった。このとき中部電力も予備率3.5%、最後の砦となったのが武豊2号機の37.5万kWでもし故障しよう物なら供給力の残りは10万kWとなりブラックアウトが起きてもおかしくなかった。この出来事はほとんど報道されていない。

    東北電力女川原発は福島第一とほぼ同じ規模の津波に襲われながらも破滅的な事態は回避した。一番の違いは建屋を海抜15mに設置したためで、議事録には残っていないが建設時の幹部が強行に15m以上にすべきと主張したと言う伝説が残っている。また津波対策として引き波の際も冷却水がなくならないように取水口の内部に段差をつけプールとなるようにしている。一方の福島第一は当初35mの高台に設置する計画を掘り下げて10mにしている。根拠は想定された津波の高さが5.7mだったからで当時の安全基準は満たしている。東北電力は他の火力発電所の復旧に関しても通常の手順より復旧を優先し、メーカーや設備業者の支援も受けて仙台火力発電所は2012年2月8日に復旧、計画当初日程に余裕を持たせない工程表で目標とした3月11日より1ヶ月前倒しを達成している。
    東京電力は仙谷代表代行からの計画停電に対する問い合わせに対し「ご不明な点はカスタマーセンターまで」と言うFAXを送りつけて激怒させている。もはやブラックジョークだが基準や内規に従っていれば良いと個人の判断を介在させないことが結局事故につながったのではないかと言うのが著者の指摘だ。

    3章以降は火力発電に切り替えることによる年間3兆円の赤字、現時点での再生可能エネルギーの問題点、原発の津波対策などを紹介している。
    例えば神奈川県の黒岩知事がぶち上げた200万戸のソーラーパネル構想だと電力会社が42円で買い取るのに対し火力のコストは10円/kW。パネル代金200万円に対し売電で回収できるのが10年間で120万円。買い取った電力との差額は値上げで一般消費者が負担することになる。発電効率がもっと高くなるか、設置コストが下がらないとお勧めできない。

  • 311以降、電力会社がどれだけ頑張っているかが書いてある本です。匿名が多いのですが、それだけ風当たりが強いということだと思う。これだけ優秀な人たちのモチベーションが維持できるのかが、これから心配。
    こういった話は文中にも書いてあったけど新聞やテレビではやらないなぁ。この老朽化した発電所の話なんて映像向きだと思うんだけどという一冊。

  • マスコミの報道しない事実がきちんと書かれている。原発0%,太陽光発電,風力発電,といったまやかしに踊らされないためには必読。

    2012/08/04図書館から借用;08/06の朝の通勤電車と出張の移動中に読んで読了

  • 冷静に、電気がどれだけ足りてないのか、停電とは何か、代替エネルギーの欠点は何か、新しい情報はないけど、電力側の取材も交えて公平・平易にまとめられてる。

  • これを読んで何を感じ、何を考えるのか?
    切り捨てるのは簡単。

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著者プロフィール

ジャーナリスト

「2014年 『「ザクとうふ」の哲学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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