なぜローカル経済から日本は甦るのか GとLの経済成長戦略 (PHP新書)

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  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (273ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569819419

感想・レビュー・書評

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  • ローカル(L)の世界とグローバル(G)の世界に分けて政策提言.グローバルとローカルは格差ではなく選択の問題,そこに序列はないという考え方には納得.ただ両方を見て選択できる人は限りがあるのではとも感じた.里山資本主義と合わせて読むと理解が進む.

  • 「GとLの経済成長戦略」というサブタイトルを持つ本書では、二つの経済はそもそも別のものであるとした上で、それぞれに応じた具体的な成長戦略を説く。

    グローバル経済と地方の経済は分けて考えた方がいいというのは、そのとおりだろうし、個々の成長戦略の説明も説得力があるように思える。

    ただ、ふたつの経済の関係性が、まったくないというのは、本当にそうなんだろうか。
    そこのところが最後まで釈然としなかった。

  • ・同質的な集団は、必ず意思決定能力が低下する。その場の「空気」でものが決まるから。ムラの空気の調和を保つためには、絶対に勝てないとわかっていても戦いを始めてしまう。
    ・社外取締役の導入義務化は、事実上どの国も実施している。
    ・多くのグローバル企業は、内輪で意思決定を行う「ムラ社会型」の経営から休息に脱却しつつある
    ・女性役員と合わせ、多くの企業がダイバーシティを持ったコーポレートガバナンスが必要不可欠であると気づき始めている。
    ・ダイバーシティが欠けると、本質的に大事な意思決定を間違えたり、先送りしてしまったりすることがある。自頭が悪い、知識がある、知識がないという事で意思決定を間違える企業はほとんどない。
    ・経営者が個人連帯保証を入れている場合は、自己破産する事が債務免除の条件になってしまう信用保証協会融資が入ってる企業の再生処理は、取り組みそのものを半ば諦めなければならなかった。
    ・産業別・規模別の労働生産性比較
    中央値で見ると、商業・サービス業のほうが製造業よりも労働生産性がやや低い。また、労働生産性の格差は、大規模事業者よりも小規模事業者の方が、また製造業よりも商業・サービス業の方が、顕著に大きい
    ・財務省「平成23年度法人企業統計年報」
    1.労働生産性=付加価値額/従業員数
    2.付加価値額=人件費+支払利息等+動産・不動産賃借料+租税公課+営業純益
    3.従業員数=役員数+従業員数
    4.倍率=上位10%の労働生産性/下位10%の労働生産性

    ・世界各国と比較したわが国の生産性の状況
    わが国は、生産性が高い部門の経済全体に占める割合は低く、生産性が低い部門の割合は高い
    通商白書2013
    ・資金調達における保証利用動向
    抽象企業庁「財政制度等審議会財政投融資分科会参考資料」
    ・人口減少問題研究会

  • 経済政策を考える上で、過去にとらわれて実態に合っていないという指摘を読み、個人的には非常にすっきりした思いです。
    マスコミで流れる企業のイメージはあまりに画一化しすぎていて、どうも実態と合っていないのでは、というのは何となく思っていましたが、理論的にとても整理されていました。

    経済の考え方として、グローバルとローカルを分けて考える必要があります。

    ・Gの世界:製造業やIT産業が中心になる世界
     基本的に「モノ」(製造業なら車などの有形物、ITんら情報などの無形物)を扱い、規模の経済性が効く、資本の集約性

    ・Lの世界:非製造業が中心、本質的に「コト」の価値(観るコト、運ぶコトなど)を顧客に提供、分散的な経済構造、対面サービス、同時性・同場性のある経済圏、密度の経済性、不完全な競争、労働集約性

    これまでの加工貿易立国時代から時代が移り、両者の経済的な関連性は良くも悪くも薄くなってきているため、両者の考え方、政策も分けて考える必要があります。
    一方のみを意識した政策を行っても、関連性がないためトリクルダウンも起きない。
    だからこそ、政策を分けて考える必要があります。

    「GかLか」の二者択一ではなく、両者は良くも悪くもあまり連関していないので、GはGとして、LはLとして、それぞれに最適な政策を選択・遂行しても、あまり矛盾は起きないのではないか

    という指摘を踏まえ、今後の政策の推移を見守っていきたいと思っています。


    <この本で得られた気づきとアクション>
    ・ローカル経済でできる方向性が見えた。それにふさわしい支援はできているか
    ・製造業の中でもグローバルを目指すものとそうでないものの区別はできるか、どの段階でどのような支援をできるのか。

    <目次>
    第1章 グローバル(G)とローカル(L)という二つの世界
    第2章 グローバル経済圏で勝ち抜くために
    第3章 ローカル経済圏のリアル
    第4章 ローカル経済圏は穏やかな退出と集約化で寡占的安定へ
    第5章 集約の先にあるローカル経済圏のあるべき姿
    第6章 GとLの成長戦略で日本の経済・賃金・雇用は再生する

  • グローバルと昨今叫ばれているが、実態経済はローカルでなりたっているということを説明した本。20170101

  • グローバル経済に注目しがちだが、実際はグローバル企業は例外的で、分散型のローカル企業が多く占める。
    グローバル経済への対抗としては、里山資本主義は面白いがそのような条件がそろう事例は限定的だ。
    ローカル企業が地域に還元することでローカル経済は循環する。
    少子高齢化が進むなか、ローカル経済は人手不足状態だ。ローカル企業の労働生産性を向上させる。
    ローカル企業を選別し、みこみのない企業には退出してもらう。
    ローカル企業が効率化、集中することでローカル経済は活性化するとしている。
    退出のめやすのひとつとして担保中心の融資から、銀行員の目利きに基づく融資に戻すという提案には非常に納得できた。

  • グローバルシティとローカルタウンは、異なる原理で動いている別々のシステムだ。良くも悪くもリンクしていない。大富豪が増えてもトリクルダウンは起きない。金持ちを貧乏にしても、貧乏人は金持ちにならない。都会でエグゼクティブウーマンが増えても、99%の女性の働きやすさは向上しない。

    「Gの世界」と「Lの世界」は交わらないパラレルワールドだ。Brexitやトランプ現象を経たいまだからこそ、改めて注目されるべき本。GとLの両極化は世界的現象なのだから。

  • トランプ大統領就任含めて、色々最近と起こっていることが点でばらばらにあったが、線で繋がったような印象を受けた。近いうちに再読したい。

  • グローバル経済とローカル経済について書いた一冊。

  • ・雇用過剰の時代の終焉。日本の経済社会問題における巨大なパラダイムシフト。人類史上初の状況。高度経済成長期に急激に需要が増え、供給を増やそうとして人出が足りなくなった世界と、バブル崩壊で急激に需要が落ち込み、供給を調整する過程で人出が余った世界という「2つの世界観」に縛られている。課題先進国と呼ばれる日本に続いて、いずれ多くの国も人余りの状況くら劇的に人が足りなくなる状況に必ず移行する。現在は急激に成長を続ける中国でも、おそらくあと30年もすると日本のようなことが起こる。日本は、この問題にどう対峙するのか、世界からの注目が集まっている。

    ・人類史上初の少子高齢化起因による人手不足は地方経済から始まった。中央より地方のほうが生産労働人口の減少が先に起こっているからだ。少なくとも生産労働人口が減少しているローカル経済圏において、今後ますますサービス産業のセクターは構造的な供給力不足、つまり人手不足に陥る。このことを前提に物事を組み立て直さないと、ローカル経済圏で暮らす圧倒的多数の人々を幸せにすることはできない。

    ・ローカル経済圏の経済性は密度の経済性が強く効いてしまうこと。そこにいること自体が比較優位になる。地域に密着していて、地域で密度をつくっていることが優位になるので、もとものそこにいるローカルプレイヤーのほうが絶対有利になる。

    ・以前の典型的な家族のモデルは家族を支える年収700万を夫一人が稼ぎ妻は専業主婦で子どもが2人いるというもの。しかし今どきのローカル経済圏の現実的な家族モデルは、夫婦共働きで夫と妻2人で合わせて年収600万〜800万を稼ぎ、子どもは1人ないし2人いるというモデル。昔からの家族モデルの設定が変わってきているのである。夫婦共働き型への変化は、じつは日本人にとって斬新な家族モデルへの進化ではなく、むしろ江戸時代以前に戻っただけ。

    ・「県大会」上位を目指すローカル経済圏で必要なのはカリスマ経営者ではない。一定の資質の人材に経営者としてしかるべき訓練さえしていれば、優秀な経営者は十分に排出できる。

    ・グローバルの世界に生きる企業の最重要KPI(主要業績指標)は資本(物的・人的)効率性。ローカルの世界に生きる企業の最重要KPI(主要業績指標)は労働生産性。コンパクトシティ化により生活圏の集積度が高まることは、運行効率を大幅に高めるし、都道府県レベルにおいて地域連携型の動きが進むと、広域経営がやりやすくなる(ex.みちのりホールディングス)。ローカルの世界のキーワードは集約化。

    ・女性の就労参加のリアリティは、普通の職場で子育てをしながら女性が働きやすくなることら、その上で、夫と2人でおおむね800万程度の世帯収入があり、無理なく子どもが育てられる状況をつくってあげるほうがはるかに有効。このモデルは巨大都市圏よりも地元の地方都市のほうがはるかに成立しやすいしら実質的な生活水準も高レベルになる。これからの平均的な日本の家庭モデルはローカルの世界を軸にた構想していくべき。

    ・グローバルとローカルの間に序列などない。サッカーと野球、テニスとゴルフの間に序列がないのと同じで単に違うメカニズム、経済ルールで動いているというだけの話。どちらかの世界で給料を稼ぐかは、究極的には個人の選択の問題。自分の資質や人生観によりフィットする世界を選択していくことのほうが、幸福な職業人生にとっては重要だ。

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著者プロフィール

冨山 和彦(トヤマ カズヒコ)
株式会社経営共創基盤(IGPI)グループ会長
1960年東京都生まれ。東京大学法学部卒業、スタンフォード大学経営学修士(MBA)、司法試験合格。ボストン コンサルティング グループ、コーポレイト ディレクション代表取締役を経て、2003年に産業再生機構設立時に参画し、COOに就任。2007 年の解散後、IGPIを設立。2020年10月より現職。日本共創プラットフォーム(JPiX)代表取締役社長、パナソニック社外取締役、経済同友会政策審議委員会委員長。財務省財政制度等審議会委員、内閣府税制調査会特別委員、内閣官房まち・ひと・しごと創生会議有識者、国土交通省インフラメンテナンス国民会議議長、金融庁スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議委員、経済産業省産業構造審議会新産業構造部会委員などを務める。主な著書に『なぜローカル経済から日本は甦るのか』(PHP新書)、『コロナショック・サバイバル』『コーポレート・トランスフォーメーション』(いずれも文藝春秋)などがある。

「2022年 『両利きの経営(増補改訂版)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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