武士の碑(いしぶみ)

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  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (456ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569824444

作品紹介・あらすじ

西郷隆盛と大久保利通の後継者と目された村田新八。西南戦争とパリを舞台に“最後の武士”として生き抜いた新八の活躍を描く力作長編。

感想・レビュー・書評

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  • 西南戦争で散りゆく西郷隆盛をその最後まで共にした村田新八を主人公として描く。
    薩摩隼人にとり、西郷隆盛は神であり、日本の西郷隆盛でなく、薩摩の西郷隆盛としたかった。
    明治維新により近代化を進め、武士の世が終わりとなるならば、暴発する若者達とともに、死にゆく神、西郷隆盛は必要であったのだろう。
    それにしても、その経歴をみるなら、一緒に散りゆく村田新八が惜しまれる。

  • 村田新八を主人公に西南戦争を描いたもの。

    裏の主人公は当然ながら西郷隆盛である。

    西郷がいなければこの内戦は起きなかった。
    西郷を取り合って、何千人もの人が戦死したのである。

    本書では、西郷は味方に撃たれて死ぬ。
    彼らはそこまでして、西郷を敵の、というか、大久保利通の手に渡したくなかったのだ。

  • 村田新八。
    西郷隆盛、大久保利通の後継者として期待された男。
    欧州視察中、西郷の下野を知り急遽帰国した新八は西郷、大久保の喧嘩の仲裁をしようと鹿児島に赴く。大久保の挑発に私学校党が暴発。西郷もここに至り起ち上がる。新八は心ならずも二番大隊隊長として戦に赴く、手風琴と共に。熊本城攻防から田原坂。やがて戦場は最後の地城山へと。村田新八享年42。武士の時代が終わりを告げた。
    最後は・・・?のところもありますが面白し。

  • 男には、死なねばならない時がある――山高帽をかぶり、フロックコートに日本刀。その男は、戦場においても楽器を奏でていた。

    西郷隆盛と大久保利通の後継者と目されていた村田新八。彼は、いわば日本の将来を託された男といっても過言ではない。

    岩倉使節団の一員として渡欧、フランスで西郷が下野したとの報に接した新八は、大久保と西郷の“喧嘩”を仲裁するために帰国、故郷である鹿児島へ向かう。だが、大久保の挑発に桐野利秋らが暴発して挙兵、彼は否応なく巻き込まれていくのだった……。

    怒濤の展開、衝撃の結末! わが国最後の内戦・西南戦争を、真正面から描く著者渾身の長編小説。

    吉川英治文学新人賞、山田風太郎賞、中山義秀文学賞等、数々の文学賞を受賞し、今もっとも注目される歴史作家が、初めて近代史に挑んだ新境地。

  • 幕末から明治維新に関しての知識を再確認し、知らない事実を新たに得るという意味もあって 伊東潤先生の、「武士の碑」と いう 著作を約3週間で読み終わりました。
    読後感として下記を上げたいと思います。

    鹿児島弁で進むストーリー展開と地理的描写と行動描写の正確性
    薩摩藩士の村田新八の生き方はメインテーマであり、西南戦争と彼がフランスに行って、コンサーティーナを入手するまでの物語を サブテーマにして、物語が進んでいきます。
    大変感動しました 。自分が過去に読破してきた歴史小説としては記憶に残る1、2を争うものではないかと思います。
    まず、新八や西郷隆盛を始めとする薩摩藩士が鹿児島弁でストーリを進行させるので臨場感があります。さらに、熊本の 田原坂 を中心とした九州全域の位置的関係の確認、その各地での戦闘状況の精密な描写 これは圧巻です。
    また、フランスの描写ではパリ以外 知らなかった各地の地名とか、当時のフランスの状況が詳細に記述されているので大変な調査をされたはずだと思いました。素晴らしいです。

    村田新八の苦悩と葛藤の描写の精密性
    一方で メインテーマである 村田新八について、自分も彼の名前さえも知らなかったが、こういう立派な方がいたことをこの本で知っただけでも、読書して良かったと思います。
    彼は 鹿児島県の西郷隆盛や大久保利通に次ぐ世代の優秀な人物であって、 政府側にいれば総理大臣になったのではないかと思います。
     
    しかし、私学校の生徒が西郷さんに師事するあまり、暴発して兵をあげることに対して永山弥一郎とともに、最後まで反対したが、うまくいかなくなった。
    最近のウクライナ侵攻に関してよく聞く偽旗作戦と同様の戦術を政府側が行ったため、そこに 結局 巻き込まれた形になったわけです。
    まさに 西南戦争が勃発するトリガーとして 大久保利通 と川路大警視が仕掛けた 西郷隆盛暗殺の暗黙の指示で私学校での襲撃事件を引き起こし 西南戦争に至るのです。
    薩摩人同士の争いも見ものでした。このあたりに西郷隆盛の有名な言葉である「ちょっ、しもた」、「おはんらにおいの身体を預けもんそ」は何遍読んでもあきません。

    だから、新八は一旦、西郷側につくと決心したからには、西郷隆盛に心酔していたからこそ政府の方には戻れなかった。西郷さんと心中するしかないと思ったに 違いありません。
    この物語を読んで、 西南戦争の始まりとか それから 西南戦争の最後に 城山で新八が西郷隆盛を狙撃し、洞窟で別府に介錯させたという著者の考え方が分かってきました。
    結局、最後の最後まで戦闘をつなげて城山で 官軍 に打たれるのですが、本当に切ないものがあります。

    西郷隆盛と大久保利通の人間味の表現の素晴らしさ
    田原坂の戦いで負け戦になって、 鹿児島の方に落ち伸びていく状況の中で 西郷隆盛が自分の意思を表明しない、戦況が芳しくない時 、自分の考えを言わないことに対して、村田も心配し、嘆いていたし、 少しイライラ感があったようです。自分もそれは同様です。 だから、ここが 西郷隆盛の金の玉ではあるが、傷のある 悪い点かなと思います。
    大久保に言わせるとこの辺が「 西郷が ずんだれてしまった(だらしなくなった)」
    ということかもしれません。しかしながら、 逆に言うと西郷の 弱い点に人間味があってそれも一つの姿なのかなとも 思いました
    一方、大久保に関しては、大久保が鹿児島弁を使わず 標準語を使用するということは、明治新政府での「イモザムライ」 と言われるのは論外であったし、薩摩と決別する気概でもあったと思います。
    しかし、一度だけ 鹿児島弁を使って、パリにいる村田新八を日本に帰るよう説得したことがあるのです。ここの文を借りると、(珍しく激した大久保が新八の胸倉を掴む。
    「吉之助どんとおいが、おはんのことをどいだけ考え、こん職を与えたかおはんにはわからんのか!)
    大久保も新八に目をかけて今後の明治政府を鹿児島県を代表してくれると思っていたが、パリの病気の貧困女性を救おうとしている村田新八に対して、なぜ、パリで自堕落な生活をしてるんだ、 とんでもないことだと、鹿児島弁を使って叱り飛ばしているのです。まさに 圧巻でした。ここが本著作での利通の唯一のいいところだったかなと思います

    「死ぬ時と場所は自ら決める」ことの難しさ
     ”人は死ぬ時と場所というのは自分で決めるのである”というのがこのテーマです、新八のように武士でなくても、これはなるほどと思いました。
    死ぬ時期は 天命であり 自分では コントロールできないけど、 やはり 天がちゃんと 采配して死ぬ時期と死ぬ場所を決めてくれるというものだと理解しました。

    自分も最近思いますが、 事故などの不測の出来事以外は病気なり 老齢になって死ぬときは、生まれて来たときの回帰状態として、最後の気持ちが 母親や郷里の方に向いて人生に感謝しなければいけないかなと思いました。

    自分の明治の歴史認識をさら深耕していきたい
    西郷の征韓論や遣韓論も大久保との喧嘩別れの事情もよく詳細に記述してあり、大変面白かった。
    この作品がテレビ映画化されれば、さらに明治の事情が現代人にもわかり、村田新八の生き様を何らかの形で参考にできる人も出てくると思います。
    自分は次のステージとして、司馬遼太郎の「跳ぶが如く 」や「坂の上の雲」を読み進めて自分としてはますます 幕末から明治維新 明治維新から日露戦争辺りのがに興味が湧いて来ています。 自分の明治の歴史認識をさらに強固なものにしていきたいと思います。

    以上です。
    今後も伊東先生の著作を読み進めたいと思います。ありがとうございました。

  • 全体としてあまり面白くない。でも、死刑覚悟で法廷に立つことを決めた西郷を桐野が後ろから撃ち、村田もそれに続くというラストは良かった。

  • 2018.05.01
    偶々、大河テレビで「西郷どん」をやっている。新しく買ってきた本。余りにも寂しい最期でしたなあ•••。

  • 村田新八が主人公。
    西南戦争を描く。
    なぜかとても読みづらく時間がかかってしまった。

  • 西南戦争のこと。
    またもや、なんで予約したのか記憶喪失。
    飛ばし読み。
    アコーディオンを携えて戦った、最後の武士が、なんだかカッコええ。

  • 武士身分の剥奪に反対する士族の最後の反乱、西南戦争を描いた小説。主人公は西郷隆盛軍の幹部、村田新八。武闘派ばかりの西郷軍にあって、村田は海外渡航の経験もあり、欧米文化に親しみ、政府側の信頼も厚かった。そんな彼ですら最後まで従わせる西郷隆盛オーラの凄みを改めて知る。

    村田新八というマイナーな武士を主人公にしているが、作者としては西郷隆盛を主人公にしたかったのではないか。しかし、日本史における西郷隆盛の存在はあまりに美化されて、知られている割に何を考えて行動したのかがよくわからない。

    そもそも、西郷が明確に日本の将来を描いていたとは考えにくい。悪く言えば、他人に流されて、行き当たりばったりの人生で、その挙句が西南戦争だ。

    本作品のテーマは「人はしかるべき場所で死ぬ」ということ。村田新八ら、西南戦争で西郷に従った者たちは、そうした考えのもと、死んでいった。が、西郷は死ぬべき場所ですら自分で決められなかった。実は、西郷隆盛は決断できない軟弱な男だったのではないか。

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著者プロフィール

1960年神奈川県横浜市生まれ。私立浅野中学、浅野高校、早稲田大学卒業。日本IBM(株)入社後、おもに外資系日本企業の事業責任者を歴任。
著書に『戦国関東血風録 北条氏照・修羅往道』(叢文社)、『悲雲山中城 戦国関東血風録外伝』(叢文社)がある。
加入団体に『八王子城とオオタカを守る会』『八王子城の謎を探る会』『ちゃんばら集団剣遊会』『三浦一族研究会』等。
趣味 中世城郭遺構めぐり 全国合戦祭り参加 ボディビル エアーギター アマチュア・ウインドサーファーとしてソウル五輪国内予選に参加(8位) 「湘南百年祭記念選手権」優勝等各種レース入賞多数
*ご意見、ご感想等の連絡は下記のメールアドレスへ
jito54@hotmail.com

「2006年 『虚けの舞 織田信雄と北条氏規』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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