怖くて眠れなくなる天文学

著者 :
  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569846750

作品紹介・あらすじ

小惑星が地球に衝突? 隕石は毎晩地球に降りそそいでいる! などなど、天文学の怖くて眠れなくなる知識を盛り込んだ入門書。

感想・レビュー・書評

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  • 宇宙。こんなに面白いノンフィクションがあろうか。

    本当は全ページ全行にマーカーを引きたいぐらい。(意味ない)

    知らなかったことはもちろん、そもそも身近すぎて考えもしなかったり、疑問にも思っていなかったことがたくさん。
    これが教科書だったら、どんなに楽しい授業になるだろうと思う。どの教科より楽しみになる。

    私が宇宙に興味を持ち出したのは、たぶん『教団X』で、「暗黒物質」というものが私達の周りに存在し、未だ解明されていないと知った時と、数年前に小惑星が地球のすぐ側を通り過ぎたことを知った時、あるテレビ番組で、オーロラとは太陽風(太陽から発生した放射線)による現象だと知った時。
    それまではどこか違う世界のように思えていた宇宙の存在を認識させられた。やっぱり私達は宇宙から誕生し、今もその一部なのだということを。

    特に隕石の話は怖くてとても惹かれる。人類が今、絶滅もせず生きていられるのは偶然で、実際恐竜やその他の生物が大量絶滅した原因は隕石だと言われているけれど、人類の歴史はまだ浅く、たまたま大きな隕石が落ちていないだけ。でも日常的に隕石は落ちまくっている。
    綺麗だと眺めている流れ星は、地上に届かなかっただけで、届けば隕石という脅威の対象に変わる。

    興味深かったことを箇条書きで。

    ・スペースデブリ
    私が知らない間に大量の宇宙ゴミが捨てられていた。宇宙や地球で誰かにぶつかる危険性のあるものを、捨てて良い訳がない。もはや宇宙をもゴミ箱にする人間。
    ・太陽
    水素ガスのかたまりで、中心では水素の核融合反応が起こっている。その状況を、なぜ何億年も保っていられるのだろう。
    太陽風を地球磁場で防いでいるなんて、うまいことできている。磁場はいつから備わっていたのか。地球にいるから分からないけど、宇宙は真空や放射線で、生身ではいられない場所なんだ。
    ・国際宇宙ステーションISS
    今は当たり前のように存在しているけど、考えたらすごいこと。常に宇宙にあって、人がずっと滞在してるなんて。1998年の打ち上げ当時、きっとすごい話題になったんだろうな…。
    ・太陽の光を熱エネルギーに変換
    あんなに遠くはなれた太陽の暖かさで人間が生きていると思うとやはり奇跡。地球は太陽に生かされている。
    ・オゾン層は海の植物が作った
    これは驚いた。どうしてそうなったのか、なぜそんな都合良く?そんな地道な方法で作られたなんて知りもしなかったし、それを破壊する人間の愚かさよ。
    ・天照大御神の天の岩戸は日食
    古事記や日本書紀の天の岩戸の神話は前から知っていたのに、なんで気付かなかったんだろう、そうとしか思えない。
    ・SDGs
    この本で初めて知って、もっと広まるべきことと思っていたら、最近テレビで頻繁に言われるようになってきた。世界で意識して協力することが大事。
    ・8000基以上の人工衛星
    前に、すごく輝く1番星だと思ったら人工衛星だったことがあった。2等星から7等星の明るさ...どうりで。本物の星がどれだか分からなくなるかも。
    ・月の誕生
    元々あのサイズで存在していたのだと思っていたら、まさか地球と惑星がぶつかった破片でできたとは。まず地球が他の惑星と衝突していたことにも驚いた。
    ・ブラックホール
    太陽系のすぐ近くにブラックホールはない。だから地球は奇跡。ものすごく運が良い星。
    時間が遅くなるとはどういう状況だろう。ずっと前から考えても分からない。
    ・超新星爆発
    これは私にとって結構衝撃的だった。平安時代の人が目撃し、記録にも残していたとは。さらに今も残骸が観測できる。でも今の姿はなんとなく悲しいというか、この星は終わったんだという虚しさを感じる。また、新たな星になるのかもしれないけど。
    そしてさらっと書かれているけど、太陽が50億年後には終わる、滅びるかもしれないということ。
    人間も含め地球上の生命がその時まで生き残っているかはさておき、必然的に地球もその瞬間終わるだろう。それまでに太陽系からは必ず脱出していなければならない。
    全ての物事には必ず終わりがやってくる。しかし超新星爆発は元素を生成するらしい。滅びるから生まれるものもある。
    光の速さで地球に届くガンマ線バーストだけは起きて欲しくない。
    ・宇宙人
    いてもおかしくないし、過去にいたかもしれないけど、何故か私はいなくても良いし、落胆はしない。それだけ地球って奇跡的な星なんだ、ものすごく特別なんだとも言えるから。地球のような環境になるってすごい確率だと思うし、そんな偶然があちこちで起きていると言われても俄には信じられない。
    ・超新星爆発2
    人間の体は、超新星爆発によって作られた元素からできている。太陽と地球は同じ時期に誕生した。人間は、宇宙や、そこで起こったできごとによって誕生できた。地球でというより、宇宙で生まれた。
    ずっと引っかかてたんだけど、138億−46億は92億。宇宙が誕生してから92億年後に地球が誕生した。思ってたより早い。というより宇宙の歴史が浅い(私の感覚では)。138億年とは長いのか短いのか分からなくなってくる。その前はなんだったのか、ビッグバンが起こった状況は、空間は、きっかけは何だったのか。
    ・暗闇
    考えてもみなかった。確かに宇宙は真っ暗なのに、昼間の地球は明るい。地球自身は発光していないし、月など他の星では真っ暗な空しか見たことがない...なんと地球の大気が太陽光を散乱させているからだそうな。これこそ当たり前すぎて疑問に思ったことがなかった。どこまでも地球は人類に都合が良く、優しい。
    ・ダークマター
    特に興味深いもの、暗黒物質。目に見えない、観測できないのにあることは分かっているってどういう状況?そもそも目で見える普通の物質(バリオン)の割合がたったの5%なのも驚き。
    ダークマターは私達の周りにも普通にあるそうで。不思議で不気味。でもそれが、宇宙の均衡を保っている。
    ・ダークエネルギー
    中学の時、クラスの日誌に、担任の先生(理科担当)に向けてメッセージを書いたことがある。「宇宙に果てはあるのか」先生の答えは、「宇宙は今も膨張し続けているらしい」
    果てがあっても無くても疑問だったけど、果てが広がり続けているというのならそれが一番腑に落ちる。
    それがこのダークエネルギーの力。しかもバリオン・ダークマターの重力に対して反対の力、斥力。
    やっぱり、バランスなんだ。重力だけでも斥力だけでも宇宙は成り立たない。
    ・宇宙の終わり
    地球と銀河との距離と遠ざかる速度が比例することで宇宙が膨張していると発見するなんて、今や当たり前なのかもしれないけどすごい視点だなと思った。
    誰も答えを知る術を持っていないけれど、そうやって事実を分析して解明していくんだ。
    終わりのないものはない。もし、今までに宇宙が限界まで膨張して破裂していたとしたら、または一度限りなく収縮してからビックバンによって膨張したのが今の宇宙だとしたら、今の宇宙は一体何度目の宇宙なのだろう。
    ・宇宙は遠くを見れば見るほど昔の姿しか見えない
    これは非常にもどかしい。もはや宇宙に騙されているような、はぐらかされているような気がしてくる。今この瞬間に存在しているものが見られないというのは、不思議で少し残念。
    ・マルチバース
    星や宇宙の距離は、規模や単位が大きすぎて、くらくらする。莫大な数字が溢れている。それにマルチバースなどと言われると、意識が遠のいてしまう。
    ・観測できないもの
    目に見えないものがある。見えていても過去の姿だったり、まだ技術的に観測することができないとすれば、見えているものをつなぎ合わせたり、推測で補うしかない。視覚が無理なら理屈(理論天文学)で補おうという試みがすごい。
    一方、人間は核爆弾のようなとてつもない威力の爆発は起こせても、その状態を維持できない。または宇宙の始まりやブラックホールなどの特異点を再現できない。宇宙はそう簡単に思い通りにはならないだろう。
    星が自ら作り出すエネルギーは凄まじく、尊い。
    ・心の豊かさ
    こんな広大な世界で、人間の行いとはなんて小さいんだろう。宇宙規模で見れば、人間の問題や悩みごとがどうでも良いと思えてくる。でも人間は常に地上しか見ていない。少ない資源や土地を多くの人間で奪い合うことしか考えていない。
    本当に、人間同士で戦争なんてしている場合だろうか。こんなに広い宇宙に囲まれながら、することなんだろうか。
    宇宙を考えると言うことは、視野を広げるということ。視野が広がると、心に余裕ができる。心の器が大きくなる。自分ばかりじゃなく、人にも目を向けて、優しくなれる。
    天文学者は一番その事に気付くことができる存在なのかもしれない。
    ・月と太陽
    言われてみれば、地球からはほぼ同じサイズに見えている。どっちがかものすごく大きく見えていた可能性もあったはず。これは偶然なんだろうか...奇跡の地球は謎だらけ。

    最近思うことがある。
    私は自ら意思を持ち、考え、行動する人間の存在が不思議で仕方がない。宇宙規模で考えると圧倒的にマイノリティな存在、人間。私達の常識は、宇宙基準で考えると全く通用しない。
    その人類どころか宇宙さえもいつか滅びるとすれば、生命は何の為に生きているのだろう。人間は何のために命を繋いで、文明や文化を発展させ、進化してきたのだろう。結局何も残せないかもしれないのに。
    いや、そもそも人間だから意味なんて考えてしまうだけで、ただ有るか、無いか、それだけなのかもしれない。
    もしくは全てが滅びても、そこからまた新たな物質が生まれるという意味では、人間が生きてきた意味があるんだろうか。
    奇跡の地球さえも滅びる。それはとても惜しい。地球や生命、人間について語る者もいない。

    宇宙誕生から今までを1年とすると、人間が誕生してからは4時間しか経っていないそうだ。
    いつ滅びてもおかしくない、4時間の生命。
    だから私はこの地球に生まれたからには生きたいと思う。今生きていることは、とてつもなく奇跡的なことだ。まだ解明されていない事実が分かるまで、できるだけ見届けたいのだ。

    20210218

  • 図書館で借りた本。太陽系、恒星や銀河、宇宙論の恐怖をかいつまんで説明してる内容。古代の地球の話は興味深かった。人工衛星のスペースデブリ問題は切実で、宇宙から見た地球は人工衛星の輪っかができてるのでは?と想像してしまった。

  • 宇宙への恐れを駆り立てるような天文学的な知識を紹介している本。面白いのは隕石の落下自体もだけど隕石を奪い合っての殺人は起こり得る恐怖という話とか。映画も好きなんだなと伝わってくる。
    プラネタリーディフェンス、スペースデブリ、デリンジャー現象、磁気嵐、宇宙天気予報、スーパーフレア、オゾン層、温暖化、スノーボールアース、光害、宇宙の広大さ、ブラックホール、超新星爆発、ガンマ線バースト、太陽の最後、ダークマター、ダークエネルギー、宇宙の加速膨張、超ひも理論など。
    怖い話ももちろん多いけど、最終的になにか暖かくほっこりするのは著者の人柄が滲み出ているからだろう。

  • とてもためになる本でした。

  • 「おれたちの住む地球や宇宙って将来こんなやばいことになるかもなんだ!?国内外で戦争とか権力争いとかみみっちいことしてる暇あったら人類皆で力合わせて地球守らんといずれ星ごと滅んでまうで!」 と視野が超広くなる本。

  • 眠れなくなることはない
    スペースデブリの数が半端ない
    いろいろためになることが書いてある

  • あーーおもしろかった
    宇宙に比べたら私の悩みなんてちっぽけや〜!
    未来ワクワクする反面怖いね

  • 太陽が地球を飲み込んだり、天の川銀河とアンドロメダ銀河が衝突したり宇宙が消滅したりと数十億年後のことでに起こらないことのように感じるがこの世に「無限」は存在しないのだと思いました

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著者プロフィール

1961年生まれ。自然科学研究機構国立天文台准教授、天文情報センター普及室長。専門は天文教育。東京学芸大学大学院教育学研究科理科教育専攻修了。総合研究大学院大学准教授を兼務する他テレビやラジオ等でも活躍。

「2015年 『星の王子さまダイアリー2016』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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