- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784569849447
作品紹介・あらすじ
目に見えない神の世界と、すぐ目の前で鑑賞できる美術。この関係を神学と美術史学の両面から迫る。
感想・レビュー・書評
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表紙はダヴィンチの《サルヴァトール・ムンディ》
え?見たことないなぁ。
サウジアラビアの皇族の所有なので、見られないそうです。
イスラム文化には建築やタイル装飾、ミニアチュールなどありますが、いわゆる「美術」らしきものはほとんど見あたらないし、「美術館」もない。
でもアラブ各国にはオイルマネーを手にした富豪が印象派作品をたくさん持っているという事実があるそうです。
面白いですね。
しかしこの本で一番面白かったのは、
カラヴァッジョのデビュー作《聖マタイの召命》です。
5人の中の誰がマタイなのか?
いわゆる「マタイ論争」「マタイ問題」
それについての様々な解説の後、マタイの三点の連作が登場。
《聖マタイの召命》《聖マタイの殉教》《聖マタイの霊感》
そこに、第二次世界大戦で消失してしまった
一作目の《聖マタイの霊感》が提示されます。
おそらく依頼主の意向を受けて書き直ししたことでボツになった作品。
そのマタイを見ると、現存する《聖マタイの召命》の
「左端の男」との共通点が見られるのです!
しかし、作者に読み方を限定する権限はなく、他の解釈をする人がいても、必ずしも批判すべきものではない、と宮下さんは言います。
絵の解釈は何通りもあります。
ただし忘れてはならないのは、画家の側は神を念頭に置いて作品を書いているということ。
また、イコンをはじめ、宗教美術はそもそも偶像ではない。
イコンも聖書自体も「目に見えないもの」に通じる窓であり、可視化されないものを信じるのが宗教だと宮下さん。
佐藤優さん、話が弾んでとても楽しそうでした。
もちろん、私も面白かった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
Windowsとアップルがカトリック思想からきているとは宗教に関心の低い日本人からすると、驚きです。
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美術と宗教を考察するという意味でこれ以上ない優良書。お二方の優れた古今東西の宗教と宗教絵画解説、それにあわせた的確な挿入作品の美しさで貪るように拝読させていただいた。美術鑑賞は宗教行為であり、見えざる神との対話の窓であることがよく理解できた。
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・ルネサンス概念の変遷
・佐藤優氏の”日本は仏教、儒教の土壌があったから、キリスト教の本質を理解することができた”という趣旨の『日本基督教の精神的伝統』(魚木忠一著)からの引用が興味深い。
・カトリックとプロテスタントの違いに敏感になれる記述。
☆3.5 -
いや〜面白かった。私が大学で勉強したかったことはズバリこれであった。今からもう一度大学に戻って新約の勉強し直したい。icon(=イコン=アイコン)は神を見る窓である=Windowsの話は大変興味深かった。現代のあらゆる物事が宗教に基づいていることがより深く知れた本。
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言語化出来ない違和感も考察に値するはずだ。
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カトリックとプロテスタントの違いや、キリスト教が世界に広がって行った経緯、日本における布教など知らない話も多く興味深かった。
布教する国民の心情に合わせて色々工夫するらしい。今見るキリスト像は十字架に掛かっているものが多いけど、当時の日本では磔にされているのは極悪人のイメージが強いので、その像は使わずにマリア像で布教ということになっていたらしい。
よって,隠れキリシタンの礼拝する像はほぼマリア像らしい。
イコンやキリスト教絵画の図版も多く挿入されていて楽しい。
カラヴァッジョの聖マタイの召命。誰がマタイなのか、論議の的になるのだけど、一番左の若者であるそうな。というのは、その後描かれた聖マタイの絵と同じ椅子に座っているのが理由らしい。
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・見方によっては「美術は宗教を越える」
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キリスト教に造詣が深くないと楽しめない。