雨の日は、一回休み

著者 :
  • PHP研究所
3.46
  • (23)
  • (87)
  • (107)
  • (16)
  • (4)
本棚登録 : 822
感想 : 88
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569849454

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • オレがセクハラで訴えられるだとースコール
    もうすぐ定年で残り物の惣菜ばかりー時雨雲
    やりきれない思いは女を買ってやり過ごせー涙雨
    派遣社員の憂さ晴らしはー天気雨
    退職した男の名は世直しオジサンー翠雨

    会社で働いてきた男たちが社会についてゆけなくなって苦しむお話が5編。

    1本目では「え、察しわる!」と驚き呆れ読めば読むほど「そんなこと考えている非生産的なヒトなんて今時いるの?!」胸糞悪くすらなった。
    2本目では「なんでそんなに不貞腐れとん?」とこれまた不快感。
    3本目では「バカなん?」
    4本目では「卑屈だなぁ」
    5本目では「うわ、迷惑なひと!」

    おおまかにはこんな思いを抱きながらそれぞれ読んだのですが、登場人物が今のよくない状況からお話によっては自分をみつめ、他者を見つめ、少しだけ違ったステージに移りホっとできる。
    結局この「ホっとする」ことが快感になりどんどこ読み進めてしまいました。

    いつもは手に取ることがない、良い本を読めました。
    ブクログのおすすめかなんかで見つけたんですよね。
    ブクログさんありがとう!

  • 5話から成る5名の中年男性を主人公とした短編連作。時代の変化に取り残され、自分が若手だった頃の価値観や働き方などをいつまでも引きずりつつ、いちいち他人を小馬鹿にすることも忘れない。当然、周囲の反感や顰蹙を買っている。それすらも気づけない様子がとても不器用で痛々しかった。
    だが、そんなおじさん達が色々な経験をしながら少しずつ考え方を変えていく様子が描かれており、やはり人は断片的に見ただけで判断してはいけないなと思った。

    そえぞれの話のタイトルが翠雨、時雨雲など雨や天気の名前になっているのが風流だと思った。時に家族と板挟みになったり、懸命に働いたり、東京で必死に生きるおじさん達の姿が良く描かれている。社内の様子などもリアルで面白かった。「人にしたことは全部自分に返って来る」というフレーズが複数の話で出て来てたのも印象的だった。

  • 報われない「おじさん」たちの心情を時にコミカルに、時に切なく描き出す、連作短編集

    世帯主で働いてるので、「養ってやってるんだ!誰のおかげで食えるんだ!」と叫ぶおじさんの心理も分かる。一方、社会で理不尽な扱いを受けているので、男だってだけで出世できた事すら認識できていない自称企業戦士のおじさんの勘違いを冷めた目で見てしまう・・・どっちの気持ちも分かる話ばかりだった。

  • オジサンの嫌なところ、自分に活気が漲っていた時代と今の時代の価値観の齟齬でもがく姿を目の当たりにした。

    この作品では男性のそういうところに焦点が当たっていて、女性は比較的前向きだったりいい意味で強かに描かれているけど、生きづらさというのはポイントが違うだけで、誰もがもがいているのだと思う。

    オジサンの嫌なところ、とはいったものの、誰もがその人なりに一生懸命に生きているのに、環境や価値観、容姿など色々なもののタイミングが違うだけで、自分も含め簡単にこの人たちになり得るのだということにぞっとする。

    自分は幸い、理不尽なセクハラに遭うことも若者に絡まれることもなく、田舎で平和にオバチャンになったけど、自分の子どもが理不尽なパワハラに潰されたり面白半分に誰かに害を加えたり、誰かに弱みを握られたり握ったり、あやしい薬物に染まってしまったりする機会はゼロではないと思うと心配は尽きない。

    無意識の無神経はとても怖い。自分だってオバサンの嫌なところを煮詰めた人間になっているかも。せめて、他人もただ一人の「人」であることを忘れず、敬意を持って接していきたい。

  • 働くおじさん達の日常、それぞれ5話。

    セクハラで訴えられた相手がまさかの…思いもしない相手だったり。
    年代が違えどさまざまなおじさん達が登場する。
    まぁ、こんなこともあるかもな〜と。
    なくはないかなぁと。

  • おじさんたちの切なくもコミカルな連作短編。
    最初はどのおじさんのたちの中にある凝り固まった考え方にうんざりしてたけど、どの話も読み進めると時代だったものね、おじさんも辛いよねとなぜか共感してしまい、応援したくなるから不思議だ。
    現実はそんなに簡単には変われないけど、なんとなく心がほっこりしてくる。
    年取ってもまだまだ人は変わろうと努力できるんだなと嬉しくなった。

  • 帯の通り報われないおじさん達の連作短編集。
    自分とほぼ同じ世代、5人の男達が今のご時世、世知辛く切ない思いが吐露される。
    喜多川さん。この話は途中から読むのが辛く、気持ちが入ってしまった。自分たちの世代だけが大変なわけではないのは分かっているけどつい共感してしまう。
    獅子堂さん。最後奥さんに寄り添おうとする姿勢に、何とも言えず救いが見られた。
    佐度島さん。親の愛情を咄嗟に表せずに娘に見切りをつけられても、意地を貫こうと頑張り自分を変えていく。勇気を貰えた。次の話でも変わっていく様子に安心する。
    石清水さん。ホントに情けないし、女の子にも励まして貰って喜んでいるんだけど、自分にも置き換えるところがある気がしてよく分かる。弱いところは皆同じ。
    最後にギリギリの少しの大人らしさをみせて、さなたんを少し感心させられたのかな。よし。がんばれー。
    小笠原さん。やはり誰かに認めてもらいたいのは、幾つになっても同じなのか。まだ現役なのでわからないけど、定年後、独りになった時向き合わなくてはいけないのかも。
    喜多川さんが再登場しコンプラに向き合っているのが切ないが何故か微笑ましい。

    作者の坂井希久子さん、初めて読んだ作家さんでしたがよくここまで、おじさんの気持ちが分かるものかと感動です。
    応援してもらっているのか?発破をかけられているのか?でも自分達の思いを少なからず代弁してもらっているようで嬉しかった。

  • スコールもあれば涙雨もある。
    短編集の中に色々な雨が降り、ちょっと立ち止まってみませんか、と言われているよう。
    信じて突き進んできた道も見方を変えれば、迷いの道となる。
    今後どう生きていくのか、どうしたらいいのか、ちょっと立ち止まって一回休みましょう!
    どの話も面白かった。

  •  雨に降り籠められたような、泣きたいほどの状況にいる男たちを描いた短編集。
     5話からなり、脇役だった人物が次話の主人公として登場するというリレー形式をとっている。

         * * * * *

     不運としか思えないような理不尽に見舞われた。当人たちはそう思うでしょう。
     けど違う。その窮状は自ら招き寄せたものなのです。

     男たちは皆、身勝手でした。人、特に大切にすべき人に対する思いやりに欠けていました。
     ひとりよがり、意固地、独善的。凝り固まった男たち。

     けれど突然の雨で心がリセットされて見た景色はなかなか悪くないことに気づく男たち。
     少し心にゆとりを持って物事に向き合ってみれば、見えるものが違ってくる。
     とてもいいメッセージでした。

     第5話のラスト。温かい気持ちで読了させてもらいました。

  • 面白い❗おじさん世代の心の中が。笑う。無視するな、避けるな、俺はまだここにいる。そう叫び続けてきた。自分の価値を誰かに認めてもらいたかった。ちょっとじんときちゃった。

全88件中 11 - 20件を表示

著者プロフィール

1977年、和歌山県生まれ。同志社女子大学学芸学部卒業。2008年、「虫のいどころ」(「男と女の腹の蟲」を改題)でオール讀物新人賞を受賞。17年、『ほかほか蕗ご飯 居酒屋ぜんや』(ハルキ文庫)で髙田郁賞、歴史時代作家クラブ賞新人賞を受賞。著書に、『小説 品川心中』(二見書房)、『花は散っても』(中央公論新社)、『愛と追憶の泥濘』(幻冬舎)、『雨の日は、一回休み』(PHP研究所)など。

「2023年 『セクシャル・ルールズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

坂井希久子の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×