- Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
- / ISBN・EAN: 9784569903705
作品紹介・あらすじ
9年ぶりのシリーズ第4弾! 「日本語にはなぜ母音が五つしかないのか」「氷河期、日本人はどこにいたのか」などの謎を解く。
感想・レビュー・書評
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この本は面白い!
ホモサピエンスの出アフリカは7万年から6万年前と考えられているのに、日本には砂原遺跡(約12から11万年前)や金取遺跡(9万年前から8万年前)の遺跡があり、サピエンスの日本上陸には、12万年前説と4万年前説がある。
これについては人類学的見地からは、4万年前以前の石器を遺したのは、デニソワ人などの旧人であるという説と4万年前以前の石器はあてにならないという説があるが、日本には1万箇所以上の旧石器時代の遺跡があるというのだから驚きだ。
この本では、日本列島にこのように多くの人類が居住していた理由を地形と気候から明らかにしている。現在の異常気象も深刻であるが、今から2万年前のウイスコンシン氷期では現在よりも6度も気温が低く、海面は120mから140m低かったようだ。
このような時代に日本列島に多くのサピエンスが居住してナウマンゾウなどの大型哺乳動物を絶滅させたのだ。
この著者の「日本史の謎は地形で解ける」シリーズは全部で4冊出版されており最初の本を読んではいたが、この4冊目の本はスケールが大きくてとても面白かった。2冊目の文明文化編と3冊目の環境民俗編も読みたいと思う。
この本は「日本人の起源編」である。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
歴史と地理が両方好きだった私は、社会人生活の終わりを迎えるにあたって、ビジネス書よりもこのような本を読んでいるとワクワクします。
最近ではテレビ番組でもやっていますが、近年の歴史研究により新しい情報が出てきて、私が昭和時代に習った事実も書き換えられようとしています。また、同じ日本であっても、私達はその場所に行くことができますが、数百年も経過していると地形が変わっていることを考慮する必要があリます。
そんな私にとって、竹村氏が出されている、このシリーズものは毎回楽しく読ませてもらっています。機会を見つけて、今までのように出張のついでではなく、自分で旅行を計画して訪れてみたく思っています。
以下は気になったポイントです。
・日本語の発声音数は、約120で、英語(2000)や中国語(数千以上で数えきれない)と比較して少ないが、一般会話での語彙は小学生レベルで約30000であり、欧米の5000程度と比較して多い。言語には2つの伝達手段があり、発声と文字がある、日本語は発声は極めて貧弱だが文字言語(語彙)は圧倒的に豊富である(p22)
・医学者の研究では、人の気管支は恐怖に遭遇すると細くなる、気管支が細く圧迫されれば自然と声は小さくなり子音中心となる。敵と味方が入り混じる出合いでは様子を伺う会話となる。母音はどうしても敵か味方か簡単にわかってしまう(p30)
・その国の権力層内部に亀裂を起こし、それを拡大させる。言語が異なる地方間の疑心暗鬼を増幅させて闘争へと誘っていく、体力が消耗した頃に傀儡政権を樹立してその国を支配していくのが欧米諸国の植民地化の原則であった。原則通りにフランスは江戸幕府、英国は薩摩・長州藩についた、しかし欧米人にとって思わぬことが起きた、江戸幕府と倒幕の指導者たちが京都に集まって行った、その全員が同じ日本語で会話をしていた。結局、無血の大政奉還と王政復古を実現してしまった(p38)
・水の民が蜘蛛の巣状の水運ネットワークをつくりあげた、移動しない農耕民族を相手に交易する水運ネットワークは利益が出た、移動する人々は移動しない人々の産物を買った、そして移動しない人々に情報を売った(p44)
・ヒトのサバンナでの直立二足歩行への進化は、生命の誕生・存続を否定する危険な進化であった、1)流産の危機(誕生)、2)体毛の消失(存続)であった。外敵から逃げるたびに胎児が重力によって大地に落下する危機に直面する、産道を狭くして流産を避けるように進化せざるをえなかった、なので未熟児の状態で生まれる(p61)乾燥したサバンナの大気は身体の水分を奪う、体毛は水分蒸発を防いでくれた、ゴリラ・チンパンジーなどの霊長類は、この体毛を脱がなかった。サバンナ説ではこれらを説明できない、これが可能なのがアクア説である(p63)水域での生活を始めたヒトの祖先は自然と直立の姿勢をとるようになった、水辺の生活では両手を地面につけるのは不利である(p66)
・7000万年まえに、カバの祖先が水中に入り、鯨やイルカになった、象の祖先が海に入り、マナティやジュこんになった、3000万年前に、熊や犬の祖先が海に向かい、アザラシやカワウソになった、彼らは全て体毛を脱いだ。そして皮下脂肪を蓄えていった(p68)
・大地溝帯の湖の水が縮小し、ヒトは再び陸に上がらざるを得なくなった、しかしゴリラなどの様に手を前を出して四足歩行をする前傾姿勢を取れなかった、異常に大きな頭部を進化させてしまったヒトは、前傾姿勢が取れるほどの強靭な首の筋肉を失っていた(p73)
・ナイル川が地中海まで到達するように、西岸の流路を安定させる堤防が必要となった、そこで古代エジプト人たちは、巨大な「からみ=ピラミッド」を建設することにした(p97)ナイル川西岸の130基以上のピラミッド群は堤防を形成、ギザ台地の3基のピラミッドは、デルタ干拓の灯台となった(p102)
・10万年の間、赤道直下の三大湾(東南アジア湾、メキシコ・カリブ湾、アラビア湾)のホモサピエンスは西に東に動き回っていた、のちに石器人、縄文人、古代エジプト人を呼ばれる人々である(p115)2009年、同志社大学の研究陣が、日本最古の島根県出雲市の砂原遺跡を発掘し、日本列島には12万年前からホモサピエンスが住んでいたことを明らかにした(p121)
・その集団が共同体かどうかを見分けるのは簡単である、その集団が喜びを共有しているか否かである、世界の歴史はユーラシア大陸を舞台にして展開した、その世界史を一言で言えば、暴力による侵略と被侵略の繰り返しであった、メソポタミア、エジプト、インダス、黄河、ギリシア、ペルシア、イスラム文明で侵略されなかった文明はなかった(p134)
・利根川の表流水は調子に向かったが、山々から供給される地下水は依然として江戸湾に向かって流れ続けた、地形が供給する地下の水脈網まで変えることはできなかった、これが東京湾内の海水の入れ替えをしている(p154)この様な閉鎖性水域は、東京湾以外に、伊勢湾、三河湾、有明海、そして瀬戸内海がある(p155)
・戦国時代は流域の尾根を超えた領土の奪い合いであった、しかし江戸時代は尾根を越え膨張する領地拡張は許されなかった(p165)
2024年2月24日読了
2024年4月9日作成 -
紹介者:ものづくり工学1年生
最後の章だけでも構わないので、読んでみてほしい。最後の章は、地理とはそこまで関係なく、組織の構成や体質を著者の体験を踏まえた上で論じられるが、とても興味深い。
ダム建設にて現地住民とお上の意向を噛み合わせようと案を模索したり、エネルギッシュな先輩とのあんなことやこんなこと……そしてそこから、世代の認識の差から生まれる組織の不合理な構成について、代案を示しつつ思索していく。
読み終わったら少しだけ知的な人間になれた気がしてしまう一冊。 -
全く新しい視点を持った歴史学。治水という観点から太古の昔から現代に至るまで街や都市が発展していったかを解き明かす。
ピラミッドは、ナイル側の氾濫を守るためにからみという手法で建設された。そしてその手法は日本から流れて行ったとの説に驚かされた。 -
日本語:発音音数 語彙数 日本語は母音が優勢 地理が脳を支配 水運⇒語彙社会 直立二足歩行:ルーシー ミッシング・リンク サバンナ説 流産の危機・体毛の消失 アクア説 地形と気象⇒文明の下部構造 命の源・季節風:ヒマラヤ・カラコルム山脈 ピラミッド・からみ工法:土木工学的説明 沖積平野の形成 ロボット:侵略と奴隷 奴隷にならなかった日本人 東京湾の魚介類:地下水 大湿地の関東 中部地方:閉じこもり・モノを作る 技術を全員で共有 流域:流域共同体 流域の再登場 治水の原則 1930年代生まれの行政官