- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784575154047
作品紹介・あらすじ
「作戦よろしきを得れば、日本は敗北するものではなかった」「トルーマンこそ第一級の戦犯だ」日本の大義を堂々主張した極東国際軍事裁判「酒田法廷」の記録。特別付録・石原将軍「宣誓口述書」全文掲載。
感想・レビュー・書評
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歴史に<if>はありえませんが、開戦前に主戦派の東條軍閥ではなく、石原莞爾だったら…そう考えてしまうほど、石原の先見性は秀でていました。
勝者が敗者を一方的に裁き、事後法まで使って日本の指導者を戦犯として公開処刑する東京裁判では、戦中威勢よくふんぞり返ってた連中が自分の命惜しさに卑屈になるさまを見せられ、この頃既に武士道精神が失われていたことがわかる。ただ一人、石原莞爾を除いて。
また、二二六事件で見せた上司への反骨精神は、軍上層部に「石原、使いづらし」という印象を持たれたのも事実。その時のやり取りは、以下の通り。
反乱軍に同情する荒木大将と真崎大将の二人と偶然すれ違った際、突然「こんなバカ大将がおって、勝手なまねをするもんだから、こんなことになるんです」「上官に対してバカ大将とは何か!軍紀上許さん」「軍隊がこんなざまになって何が軍紀ですか!」
特に犬猿の仲だった東條英機からは陸軍中将をクビになり、その後も何かと執拗な嫌がらせを受ける。この対立は、上官の覚えめでたく事務能力には長けるが現場を知らず建前論に走る東條と確固とした国防理論を持ち軍の序列を無視し是々非々で評価する石原とでは、まさに水と油でした。年功序列優先の日本の軍隊組織には、石原のような若くて突出した天才は受け入れ難く、また使いこなせるトップもいなかったのは不幸でした。
本書では、ダニガン検事と石原との尋問調書が長々と引用されているが、ここはポイントのみ要約して解説した方がわかりやすかったのが残念でした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
石原莞爾の終戦時の発現をみるには良い本。
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石原莞爾に興味をもったので読んでみた。
この人は戦争終了時ガンにかかっていたそうだ。
石原を東京裁判(東京リンチ)の被告として呼んだら、色々と面白かったろうに。
石原曰く「第一級の戦犯はトルーマンだ。アメリカの飛行機が日本に落としたビラに"もし日本国民が銃後において軍とともに協力するならば、老人、子供、婦女子を問わず、全部爆撃する。だから平和を祈念して反戦態勢の機運をつくれ"と。トルーマン大統領名で書かれている。これは何だ。国際法では非戦闘員を爆撃するなと規定があるにもかかわらず、非戦闘員を何十万人も殺したではないか、このビラがそうだ。立派な証拠である。」法務官「あれは脅しだ。」石原「そうではない。このビラのとおりに実行したではないか。(中略)広島、長崎には原爆を落とした。これは一体どうしたことかね。世界の道義に訴えて世論を喚起すべき性質のものであろう。トルーマンの行為は第一級の戦犯だ。一国の元首である大統領ともあろう者が、こんなビラを出したのは蛮行である。」 -
山形出身なので、石原莞爾がどういう人物だったのか興味があり購入。この人の戦略が実現していたら、アメリカに勝つ(少なくとも負けない)という仮想戦記が現実のものになっていたのではないか?と思わせる。
無謀な戦争に突き進んだ日本にも、このような大局を見て戦略を作れる人物がいたのか、と感銘を受けた。現在の日本にも居て欲しい人物。
そして、ただの地元紙だと思っていた山形新聞が、石原莞爾の裁判に関してはきっちりと取材を行っているのを知り、ちょっと見方が変わった。 -
礼賛本である。客観性に乏しいため割り引いて読む必要があろう。にもかかわらず「必読書」としたのは、やはり石原莞爾〈いしわら・かんじ〉という男が規格外の日本人であったためだ。稀代の天才戦略家は合理性の権化(ごんげ)であった。不合理には昂然と異を唱え、たとえ上官であったとしても罵倒した。普通の日本人とは立つ位置が異なっていたのだろう。
http://sessendo.blogspot.jp/2016/01/blog-post_19.html -
満州事変を引き起こしたの張本人、石原莞爾の戦後を描いた本。戦犯と言えばかなりの戦犯候補だと思うが、何故か東京裁判では被告人とならず、参考人として尋問を受けたのみである。しかもわざわざ酒田に臨時法廷を設けての尋問だから重要視をされていたわけである。
確かに東京裁判で石原を被告人席に立たせたら面白いことになっていたと思うのである。何せ稀代の戦略家ではあるわけだから連合国の検事をやり込めた可能性はありそうである。
石原が戦争を指揮していたら日本はアメリカに勝てないにしてももう少し時間を稼げた可能性はあると思うが、なんといっても石原には日本の指導者になる力量、才覚は無かったのである。そこが政治屋東条との違いであるし、戦争になったら少々問題児でも戦争のうまいやつに任せるアメリカとの違いとも言えるだろう。
日本の敗因を問われ、日本が民主主義でなかったからと言う回答をする石原莞爾はやはり面白い人物ではある。
ほかに面白いと思ったのが、満州事変が誰の指示に基づくものであったかと言う事の尋問を受ける部分である。 -
満州事変を成功させた男・石原莞爾の壮大な戦略を解説する本……かと思ったら、東京裁判の検事に証人尋問されてやり込めました(弁が立つ面倒くさい人だからマッカーサーが被告にしなかった)が大半でガッカリ。東條英機とケンカして左遷されてるから、満州にいた期間は意外と短いのよね
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痛快な本である。
本書は関東軍1万の兵力で、近代兵器を備えた張学良軍22万の大軍を打ち破り、満州国建国に導いた希代の軍略家とされる石原完爾を尋問するために開廷された極東国際軍事裁判『酒田臨時法廷』を舞台としたノンフィクションである。
従来の歴史モノとは少々異なるのは、満州事変〜支那事変〜太平洋戦争に至る歴史を振り返るモノでは無く、あくまで山形県の酒田で行われた『酒田臨時法廷』でのやりとりが述べられているからである。
そういう意味では歴史モノというよりも法廷モノといった読み方もできる。
ここ1、2年でこれまで全く興味を惹かれなかった昭和史モノをよく読むようになった。
特に満州モノはこれまでの知識の乏しさを埋めるかのように読むようになっている。
それは、ひとえによくわからないからである。
本書の主人公、『石原完爾』もとても興味深い人物ではあるが、これまでの歴史上の人物と比較しても、詰め込んだ知識の乏しさからかまだボクにとって明確なキャラクターが確立されていない。
例えば、前述した関東軍1万の兵力で22万の張学良軍を打ち破った希代の軍略家としての一面。
『五族共和』『王道楽土』を唱えるコスモポリタン的思想家としての一面。
『日米最終戦争論』といった長期的戦略を打ち立てる戦略家としての一面。
陸軍中央統帥部との確執により次第に追い込まれ、解任にいたるような頑固一徹なパーソナリティ。
このように様々な面を持ち合わせている石原完爾ではあるが、まだボクには謎な人物である。
本書では決して転向や卑屈にならない頑固一徹な石原完爾がそこかしこに垣間見られる。
リヤカーで酒田臨時法廷に出廷す。
東條首相に『あなたが総理を辞めることだ!』
『トルーマンは第一級の戦犯だ!』
『オレは戦犯だ。なぜ逮捕しないのだ』
『ペリーを連れてこい!』
『信仰を知らぬバカ野郎』
『満州事変はこの石原の責任、戦犯にしてくれ』
『マッカーサーは敗戦国の精神を侮辱している』
等々、本書では酒田法廷での検事とのやりとりや外国人記者とのインタビューを通じてこのような、敗戦国の元中将でありながら、他の戦犯の惨めな答弁とは全く違う、独り気を吐く石原完爾の思い、思想、理念、気概、悔恨が『ひとりの人間』としての石原完爾を浮かび上がらせている。
不思議なことに、酒田法廷の検事や外国人記者はこのような暴言とも思える発言を受けながらも、ウィットとユーモアに富んだ石原完爾と会話をしているうちに、みな一様に先生の講義を受けているかのような気にさせられて、最後には感謝して去って行ったという。
民族を越えた万民に通じる思想を根幹としたものがあるのだとは思われるが、このエピソードがどこまで本当か定かでは無い。
ただ、コレがすべてでは無い。
このような戦時のリーダーがひとりでも居たということは、日本にとっての財産であるかもしれないが、著者である早瀬氏は石原完爾研究家でもあることから、少々一面的な見方にならざるを得ない部分もあると思われる。
そういう意味では、非常に痛快な本ではあるが、これは満州事変当時のあくまで石原完爾側・関東軍側からの見方でしか無いということは、ちゃんと心得ておくべきである。
そういう客観さが欠けているのではと思う部分があるので、評価は『☆☆』。 -
第一級戦犯は広島長崎に原爆を落としたトルーマン、なんて言えるのは石原だけ。
石原はナポレオン戦史の研究科の第一人者で、昭和天皇にヨーロッパ戦争史とナポレオン、フリードリヒ大王を1週間進講していた。
負けてよかった、これで戦争をしなくて済むから内政に振り向けると日本人を鼓舞していた。
この人はすごいな。