- Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
- / ISBN・EAN: 9784575238808
作品紹介・あらすじ
海外営業部長、望月正幸は、贈賄行為に携わっていた。
それに気づいた浮気相手の夏目は、告発するとともに「逃げて」と正幸に懇願する。
結果、行方をくらました正幸の妻、娘、姉……残された者たちのその後は。
正幸とはどんな人間だったのか、なぜ逃げなければならなかったのか。
『誰かが足りない』の著者が、人間の弱さと強さに迫る連作短編集。
感想・レビュー・書評
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始まりのセリフを見て
まったくあらすじ知らずに読み始めた本。
思ってた話とぜんぜん違ったけど
最後の章がよすぎて、読んでよかった。
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難しかった
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宮下先生らしい前半と後半でした。理不尽さと羨望からくる負の感情、そこから他人の暖かさや今の状況を再認識し、新たな一歩を踏み出すような感覚になる。明日も前を向こうと思えました。
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贈賄の疑いで逃亡した望月正幸。
その愛人、妻、姉、娘の担任、娘、逃亡後の同僚、の目線から語られる連作。
それぞれに思う『たった、それだけ』の大切な事。
愛人にとっては、「どうしたの」のたった、それだけ。
妻にとっては、生きていてさえくれればいい、それだけ。
姉にとっては、義妹が正幸にとって必要のある人間だと思っていた、正幸にとってだけ、のたったそれだけ。
娘の担任にとっては、俺は俺だというたった、それだけ。
娘にとっては、母は働いて、働いて、父を待つ、たった、それだけ。
そして正幸本人にとっては、好きな人と好きな映画を観た。短い間だったけど、一緒に暮らした。たった、それだけの記憶だけで、生きていける。たった、それだけ。
正幸のタブレットにログインするパスワード“Teardrops for me”
小学生の頃父親に『男が泣くな。みっともない。簡単に涙に逃げるな』と叱られて以来泣くことのなかった正幸。
娘が産まれて初めて喜びの涙がある事を知る。
封じ込められた涙、知った喜びの涙、菩薩の様な笑みを浮かべ続ける正幸、それらがどう贈賄に結びついたのか真実は明かされない。
しかし、娘にルイ(涙)と名付けたこととパスワードが結び付くと何とも言えず胸が詰まる。
ルイは喜びの涙を教えてくれた。
私のためのルイ。
ルイと担任の先生の章と、ルイとトータの章が好きだった。
ルイと正幸は出会えるのか、希望が持てるラストだった。
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望月正幸に関わる人たちの連作。
いい人のようだが、浮気も一人ではなく何人もでもでは、流され過ぎだろう。贈賄問題も上から罪を被らされている感じではあるが、断りきれない、流されやすい性格が災いしてるんだろうと思った。
最後の章での、正行が大橋くんに言った言葉。「正直に生きることです。自分に正直でいれば、すべては自分で選んだことだと納得することができます。自分にとことん正直であるなら、後悔しない。〜」重みがある。
トータのまっすぐさが良かった。介護の世界で頑張り出した大橋くんにエールを送りたい。成長期する中に苦労したルイだがトーイにいい影響を受けて明るくなってきて良かった。皆に幸あれ。
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逃げてるつもりが、地球は丸いから実は追いかけてるのかも知れない。トータ、いい奴だな。
読み終わって何とも言えない後味。
ルイには幸せになって欲しい。 -
会社の上司が贈賄に関わっていると知り、明るみに出る前に逃がす浮気相手の女性から物語は始まる。
失踪を知った妻と弟を心配している姉。
帰らない人を待ち続ける妻。
弟のことがわからない、わからなかったということがわかっただけで何もできない姉。
それでも時だけは流れて1人娘も父のことは、わからないまま成長する。
転校を繰り返しながら気づいているのは、母はしあわせにならずに父の帰りを待っている。そうやって無意識のうちに父に復讐している。いつまでも不幸でいることで、永遠に罪の意識を持たせる。
しあわせになった瞬間に、相手をそこに留めておけなくなってしまうとでもいうかのように。もとより相手の気持ちはそこにないのに。
こんなふうに娘に思わせる結果になってもいつかは会えると思っていたのだろうか。
どこまでも強い人なのかもしれない。
娘にしてみれば独りよがりと感じるのだろうが…。
苦しさと刹那のなかに優しさを見たような、弱さや強さも見たような今までにない読後感だった。 -
人の人生ってわかんないなあ、、