真壁家の相続

著者 :
  • 双葉社
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本棚登録 : 213
感想 : 35
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  • Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575238921

感想・レビュー・書評

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  • 相続をめぐり家族が崩壊していく様は息を呑んだ。
    最後、お母さんのしたたかさに笑ってしまったが、苦労が報われてよかった。

  • 著者初読み。構成が凄いですね。途中読んでて辛くて醜いシーンもありましたが、良くできた推理モノみたい。相続と家族、家族なのに大きくなると別の自分の家族があって、兄弟姉妹だけで、とはならないものなんですね。知らない相続の制度も勉強になりました。みんな「自分のところだけは大丈夫」って、つい思ってしまいますけど。相続に当事者以外が絡むと厄介、これはそうかもしれません。

  • どこの家にでも起こりそうな遺産相続問題。どんなに仲良い一族でもお金が絡むとこういうことになるんだと考えさせられる話でした。

  • .

  •  遺産相続を巡る人間模様を描く。
     8章からなり、物語は、相続人の1人、渓二郎の娘・りんの視点で描かれる。

          * * * * *

     相続が絡むと血縁関係にもひびが入る。よく言われることです。平等に分ければ済むものなのに、なぜ揉めるのか? その理由がよくわかる構成になっていました。

    ・ 取り分を多くしたいという利己主義
    ・ 相続人以外の人間の(欲得ずくの)介入
    ・ 故人の気持ちを汲もうとしない不人情

     そして、陽一郎のような強い劣等感や、風子のような享楽至上主義が、話をこじれさせることもよくわかりました。こういう人間とは、親族であっても縁を切るべきだと思いました。( りんは縁を大切にしたそうだったけれど甘すぎると思います。それよりは容子のつかず離れずのスタンスの方を見習いたい。)

     本作は、植田大介という、正体不明の人物が序盤から登場することによってミステリータッチで進んでいきます。そのおかげで、前半は読み進めるモチベーションにつながりました。( 結局、真壁家とは血縁がないのがわかって少しがっかりはした。)

     また、故人の介護に尽力しても相続の蚊帳の外に置かれる現行法への問題提起になった点でも、彼はキーパーソンとなっていました。
     キャラクター設定として優れていたと思います。

     苦手なイヤミス構成ではありましたが、いちばん賢く立ち回ったのが容子だったことが明かされるラストのおかげで、最後まで読んでよかったと思えました。優れた〆だと思います。
     ただ欲を言えば、容子とりんはやがて千歳にいる渓二郎のもとに身を寄せ、地道に幸せに生きていくというオチにして欲しかった。

  • (母は)こつこつ積み立ててきた家族の堅実な将来を、「人間本来の生き方」などというふわふわしたもののために手放すはずがない。通帳は父に全部渡してしまい、学資保険は生活のために解約してしまい、それでも、母はあきらめずに、将来を積み立て続けた。

    <母の献身はなかったことになってしまった。マンションの売却が決まり、祖父や祖母は相続分の金額を満足げに眺めていた。祖母のために、彼らは自分のどんな生活も変えなかった>

    家族の間に弁護士を入れるなんてあってはならないことだと。(入れるなら)絶縁を覚悟して挑んだほうがいいらしい。家庭内の働きを強化するということが、これほど難しいことだとは思わなかった。

    「うちのやつもそうしたがってるって。父さんは言ったらしい。叔母さんはそれを都合よく解釈して、お母さんが進んで介護をしたかのようにとってるだけなんだ。」
    「うちのやつもそうしたがってるって、そう、あの人そんなこと言ったの」

    祖父が生きていた頃から、終わりははじまっていたのかもしれない。親子だけで過ごす年月は終わり、他人が交ざり、守るべきものが他にできる。交わす言葉の端々に、遠慮や、気遣いや、妥協や、嘘や、秘密が生まれる。親戚同士が集まるとわく、賑やかで温かな空気は、大人たちの少しずつの我慢の上に成り立っていたのだ。

    何かないだろうか。相手に強要するんじゃなく、自然と行動を変えさせる方法。母がいつもやっているような解決法があるはずだ。

    「でもよく考えて、いい考えかもしれないと思ったの。お金をもらえるって思ったら、こっちも手を抜かないでしょう。どうして私だけって恨みに思ったりもしなくていい。ビジネスライクにやれる。それに生命保険だったら」生命保険は相続財産に含まれない。請求手続きができるのは受取人だけで、相続人に知られず、手続きをすませることができる。

  • 確かに、相続の話は当事者だけの方がスムーズに行きそう。配偶者や周りに相談するといらぬ知恵がついてそう。怖い怖い。

  • 相続 うん。うん。
    小説だぁ。〆もあり。すごいなぁ。

  • お金が関わると、どんな仲良い家族や親戚でも、自分が得しようとするんだなと。
    相続って、残された側は面倒だなと思った。

  • これ、教訓だね。
    財産なんてないから、と思っていても相続となると揉めるのかもしれない。関係ない人は口出ししてはいけないやね。

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著者プロフィール

東京都中野区生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。2009年、『マタタビ潔子の猫魂』(「ゴボウ潔子の猫魂」を改題)でメディアファクトリーが主催する第4回ダ・ヴィンチ文学賞大賞を受賞し、作家デビュー。13年、『駅物語』が大ヒットに。15年、『海に降る』が連続ドラマ化された。現代の働く女性、子育て中の女性たちの支持をうける。主な作品に『賢者の石、売ります』『超聴覚者 七川小春 真実への潜入』『真壁家の相続』『わたし、定時で帰ります。』など。

「2022年 『くらやみガールズトーク』 で使われていた紹介文から引用しています。」

朱野帰子の作品

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