- Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
- / ISBN・EAN: 9784575517309
感想・レビュー・書評
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「異神千夜」「風天孔参り」「森の神、夢に還る」「金色の獣、彼方に向かう」の四篇。
いずれの作品にも鼬(イタチ)が出てくる。「異神千夜」では、蒙古襲来直前、敵情把握のスパイとして送り込まれた一団(旅楽隊)の紅一点、不思議な力を持つ巫術師(ぶじゅつし)の鈴華に纏わりつくペットのリリウが金色の鼬。「風天孔参り」では、風天孔という超常現象に飛び入ってこの世から消えるようと森を彷徨う一団(風天孔参り)の案内人安藤の杖に彫られているのが鼬の彫刻。「森の神、夢に還る」では、鎌鼬伝説の山の異界に棲む金色の巨獣が鼬。「金色の獣、彼方に向かう」で大輝と千絵の前に現れた賢い動物が金色の鼬。
時代設定はまちまちだが、何れも不思議な力の存在と凄惨な出来事が絡んだ話。独特の語り口で味わい深い作品になっている。著者の短編は癖になるなあ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
時代を超え跳梁する獣とそれに惑う人々の姿を描いた作品を4編収録した短編集
昨年読んだ『竜が最後に帰る場所』で恒川さんの作風が少し変わってきたような印象を受けたのですが、解説によるとそれは意図的だそうですね。
異界を作品の舞台としてきて恒川さんですが、今作も舞台は現実の世界。そこに一匹の不思議な鼬がはいることでそうした現実世界が恒川ワールドに変貌します。
一話目の「異神千也」は元寇の時代が舞台。現実、それも過去の時代が舞台というだけで恒川さんの作風が変わったなあ、という印象を受けるのですが、
作品を読み終えた時に残る冷やかさは他の恒川作品と共通するものがあると思いますし、
人や時代の残酷さを前面に押し出さず物語の根底に敷いて、静粛と少し張りつめたような空気感を貫き通しているのも恒川さんらしいと思います。
そうした「異神千夜」から時代を超えて語られる物語はどれも共通した空気感があるように思います。不思議で美しく妖しい獣と現実の残酷さを描いた物語たちは、芸術的とさえ言えるように読んでいて思いました。
解説によると一話目で伝説が生まれ、本を読み終えるときその伝説はどこかへ消えて行ってしまったような物語にしたかったそうです。
でもその伝説は今もどこかに息づき、例えばどこかの山の奥に、もしかすると自分の家と家の狭い隙間に、今も息づいているのではないか、
そんな風に読み終えて思いました。 -
再読。面白かったです。
金色の獣、作中では鼬か鎌鼬っぽかったけど、「鼬行者は筒に入れてた」というので管狐を思わせたし、あるお話では巨大だったりしました。
中国から窮奇という邪神が渡来してきたのが始まりなのかな。「異神千夜」は博多が舞台で元寇があるので身近でした。方言がそれほどおかしくないのは沖縄に住まれてるからかも。歴史に上手く怪異を組み込んだ作品が好きなので楽しく読みました。
「風天孔参り」も好き。風天孔に入った人はどうなるんだろ…救済なのか永遠の絶望なのか単なる消滅なのか、明らかにされないところが死と同じで気になりました。
4篇とも獣は出てくるけど、それぞれテイストが違っていました。気付いていないだけですぐ側にありそうな闇や畏怖。恒川ワールド、好きです。 -
ハズレなし作家、恒川光太郎の「金色の獣、彼方に向かう」を読んだ。黄金の鼬を中心にした短編集。やはり、面白く、ザワザワとする怖さがあった。次がすぐに読みたくなる希少な作家だ。
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久々に読んだ恒川作品は、やはり面白かった。ホラーという枠内に収まらない爽やかさや切なさ。でも怖くもある。そしてそれが両立するものだと思い知らされる。
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図書館で。
面白そうなんだけれども奴隷になった辺りで今こういう重い長いの読む気分じゃ無いなぁと本を置きました。
そのうち気が向いたら再チャレンジしたい。 -
異神千夜 元寇が物語の舞台となる話、このネタで長編一本で読みたいなぁと思ってしまうのは私だけでしょうか?
風天孔参り そんな孔が有るのなら私もその孔の向こう側へ行ってみたい。登場人物達から少しだけ人間の嫌な部分を見せられた。
森の神、夢に帰る いくつかの話がうまく重なり合っている!これぞ常川光太郎といえる良作!
金色の獣、彼方に向かう 表題作、不思議な獣と少年の出会い 猫の墓掘り 鼬行者など不思議なワードに境界があやふやとなる。 -
四篇からなる短編集。連作というほど繋がってはいないけど、出てくる“獣”とか
単語とかに共通点があり、一冊通しての世界観を感じました。
実に恒川氏らしい、美しく幻想的な独特の世界観。うっとり満足。 -
怪奇幻想のファンタジー作家、恒川光太郎による<獣>にまつわる4作から成る奇談の短編集。史実を元に異国からの渡来した邪伸による奇談は<言い伝え>となるダイナミックな歴史怪異譚「異神千夜」を始めとして魔神、妖怪の伝承をキーワードにした連作の着想は見事。その<言い伝え>は様々なモノに姿を変え日本の歴史の中に脈々と生き、現代の世に、そしてさらに彼方(未来)へと息づく。作者の選び抜かれた言葉で紡がれたストーリーは人の心の奥底に有る殺意という闇を人を超越した<物の怪>の視点で炙りだすも、その綴りは非常に美しく幻想的。
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この作者で初めて読む時代小説風の異神千夜。
いままでの幻想を全面に押し出した作品とはひと味違う。
怪奇、幻想そして活劇(アクションではなく活劇、ここ重要。)ががっつり組み合い読ませてくれる。
他3編も幻想に包まれた現実の痛さ、苦しさ、切なさが胸に迫ってくるが読後はあっさりというか爽やかさ残る。
恒川作品にハズレ無し!記録更新中。