殺しのコツ、教えます (双葉文庫)

著者 :
  • 双葉社
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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575521870

作品紹介・あらすじ

殺したいくらい嫌な奴、いませんか? アリバイ工作に密室、叙述トリックに連続殺人。推理作家の世古先生が繰りひろげる名作を駆使した実践的トリック談義は、思いがけない方向へ――「ローンの返済も殺人も、無理なく実行できるものが望ましい」と語る世古先生の、あなたの役に立つミステリ講座へようこそ!

感想・レビュー・書評

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  • ミステリーは好きやから、楽しく読めた(^_^)v
    作中の推理作家さんは、日々、新たなトリックを創造してる。自身で実験を繰り返しながら…ほんまにこんな事してんのかは知らんけど、色んなトリックあるな…
    それに必然性がないと納得出来ない。

    こんなの呑み屋でやったら楽しいやろうな…談話が続く。私は、素面でも大丈夫やけど^^;

    こんなに日々精進してるのに売れないというのは、考えてるトリックが面白くないとも言えなくはないが…笑
    まぁ、ほんまに書いてる作家さんは人気作家さんやから大丈夫か…

    最後は、こんな話を請けて良いのか?とも思うけど、懐事情もあるし、今までのが無駄にならなくて良かった〜かも?

  • 推理作家の世古先生による、古今東西の様々なトリックのあれこれ。
    ミステリー好きには、たまりません。
    果たして、完全犯罪は可能なのか?
    ややブラックですが、楽しめます。

  • 新たなトリックを日夜考え、実行可能なのか自分で実験を繰り返す推理作家の世古先生。彼が行きつけの居酒屋で働く青年ガクとの様々なトリック、推理作品のネタなどが軽妙な会話で展開される。

    密室、アリバイ、完全犯罪、連続殺人不連続殺人などなど古今東西様々なミステリー作品も題材にしながら、世古先生の講義と提案とガクの質問とトリック崩しが楽しめる。
    基本的にはガクはミステリーはほとんど読まないので、その分先入観なしにツッコミを入れてくれるところが面白い。
    世古先生が自分の作品作りのために時に自らの身体を犠牲にしながらも実験して作り上げたトリックや日夜苦しみながら絞り出したネタをガクの指摘でお蔵入りになったりするところもお気の毒ながら笑ってしまう。
    一方でガクが推理小説の意地悪さ(これは作家が読者をいかに騙すかという技量に関わっているのだが)に気付いて相当の注意深さで世古先生に確認するところなども思わず共感。

    ネタバレ防止のために世古先生が上げてくれない作品名を知りたかった。巻末の参考文献にある作品は半分以上読んでいないものなので、ちょっと気になるものはそのうちに読んでみたい。

  • ミステリ談義。アリバイトリックが想定どおりにいかないのは納得。

  • これ、新鮮だ

    小説家がミステリーのネタを語る感じで物語が進むというとても変わった、新鮮な作品で満足。物語の中ではアガサ・クリスティー等有名な作家さんの作品が登場する。ネタバレを避けるための工夫がとても好感度高く、既読でも読みたくなるような解釈が添えられている。

    カー作品はほぼ読んでいないのだが、これを機会に読んでみようかなと思わせるわくわく感を植え付ける紹介方法に感激。作者さん、本当にミステリーが好きなんだなぁと感心する。

    ある意味ではミステリー入門のような本書。この手の作風は初めてだ。いやぁ、楽しかった。

  • 推理作家の世古先生と、居酒屋に勤める
    ガクが身近な出来事から名作のミステリの
    トリックの話や実際検証してみたアリバイや
    トリックの話などが語られているが
    ちょっと集中して読まないとアリバイや
    トリック解説なんかは理解出来ずに
    スルーしそうになったwww

    私自身はミステリ系をあまり読まない
    のですがこの作品を読んだことにより
    作中で紹介される名作のネタバレが
    されないように配慮されています。
    たしかにその配慮は未読の読者に
    とってはありがたいかも・・・

    ミステリ講義本のような話の
    展開でしたが最後の方の話の顛末に
    ミステリ感がありました。

    個人的にはミステリ講義よりの
    作品だったのでもうちょっとだけ
    本格的な感じがよかったかも。

  • ローンの返済も殺人も、無理なく実行できるものが望ましい―と語る推理作家の世古先生は、新たなトリックを生み出すため日夜実験を重ねていた。そんな時、馴染みの居酒屋に勤める青年・ガクが「ぶっ殺したくなるくらいヤなやつがいる」と言い出す。ガクのリクエストに応えて、古今東西の名作ミステリーを駆使しながら世古先生が繰りひろげる斬新なトリック談義。果たして完全犯罪は可能なのか!?

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    ローンの返済も殺人も、無理なく実行できるものが望ましい―と語る推理作家の世古先生は、新たなトリックを生み出すため日夜実験を重ねていた。そんな時、馴染みの居酒屋に勤める青年・ガクが「ぶっ殺したくなるくらいヤなやつがいる」と言い出す。ガクのリクエストに応えて、古今東西の名作ミステリーを駆使しながら世古先生が繰りひろげる斬新なトリック談義。果たして完全犯罪は可能なのか!?ブラックユーモア・ミステリーの快作!
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    推理作家の世古先生が、居酒屋のバイトのガクくんに乞われて、完全犯罪のトリックを講義するという趣向である。世古先生の知識は豊富だが、時々抜けているところもあって、すごいんだかすごくないんだかよくわからないのが、一興である。ガクくんも、トリックに疎いようでいて、時々鋭い推理を展開してくれたりするので、世古先生も気が抜けない。さらには、居酒屋で披露したトリックが独り歩きしたような事件が起こったり、先生自身がだまし討ちにあったりもして、展開から目が離せなくなるのである。すごいようなすごくないような、鋭いような間が抜けているような、不思議な面白さの一冊である。

  •  独特の奇妙な味わいで、ミステリー界に孤高のポジションを築く作家、蒼井上鷹。近年、新刊も途絶え気味なところに、文庫で届けられた新刊。タイトルといい、「ブラックユーモア・ミステリ」の快作!というフレーズといい、地雷臭がプンプン漂うが…。

     結論から言うと、いい意味で裏切られたし、読んでよかった。人物造形などにこの方ならではの味は残っているものの、詰め込みすぎということもなく、とても整理されており、読みやすい印象を受ける。それには理由がある。

     売れない推理作家の世古先生は、考えたトリックが実行可能か確認する、律儀な性格の持ち主(割り切れないから売れないのではないか?)。それはさておき、行きつけの居酒屋では、店員のガクとミステリ談義を繰り広げるのだった。

     そう、ミステリの体裁をとっているものの、本作の面白さはミステリ談義にある。具体的に言うと、トリック論。古今東西の先人が築いてきたトリックを分類し、一つ一つ論考していく。評論っぽさを感じさせない文体で、すっと頭に入ってくる。

     ガクにせがまれて問題を出したり、時には現実の事件について推理を試みたりする世古先生。作家以前に筋金入りのミステリマニアなのだ。そして、ガクはなかなか頭の回転が速い。鋭い突っ込みに世古先生もたじたじになる。

     ミステリ談義を中心にしつつ、作中にもちゃんと罠が仕掛けてあるのが楽しい。実にスマートで、蒼井さんらしくないと感じたほどである(失礼)。適度に力が抜けて、蒼井さんご本人も楽しみながら書いたのではないだろうか。

     作中、実在の古典作品のトリックに触れる箇所がある。構わず読み進んだ自分は、その作家の名前くらいは知っていたが、古典ミステリには疎い。蒼井上鷹さんは、世古先生の言葉を借りて、古典ミステリの面白さを伝えてくれているのかもしれない。

     ところで、本作を読み終えた後に、『4ページミステリー』の続編が出ていたことに気づいた。買わなければ。

  • ○ 総合評価  ★★★★☆
    〇 サプライズ ★☆☆☆☆
    〇 熱中度   ★★★★☆
    〇 インパクト ★★★★☆
    〇 キャラクター★★★☆☆
    〇 読後感   ★★★☆☆

     蒼井上鷹は,「九杯目には早すぎる」や「ホームズのいない町 13のまだらな推理」などを読んで好きになった作家。質の高い短編を書く作家といイメージの作家である。この作品は,第1話から最終話(第6話)まで緩やかなつながりがある,ブラックなテイストの短編集。
     主人公のミステリ作家,世古は,自ら考えたトリックを実際に試してみることをモットーとしている。この世古のキャラクターが結構いい味を出している。

    〇 第一話 あなたもアリバイを崩せる
     主人公,世古は行きつけの居酒屋「はる」で,店員のガクに,電車の連結部にアリバイ工作に使ったクオカードを隠すというアリバイトリックの話をする。その話を聞いていたのか,偶然だったのか,居酒屋「はる」にその日に来ていた中目黒氏が殺人事件を起こし,逮捕される。中目黒氏は,世古が話したアリバイトリックを使おうとしていたのかもしれない。しかし,中目黒氏は,ガクが事故にあって電車を止めてしまったことで,アリバイトリックを成立させることができずに逮捕されてしまったのか。そのような疑惑を持った状態で終わる。
     蒼井上鷹っぽい作品。ブラックユーモアとひねりがあるが,一読してすっと落ちない分かりにくさがある。★3か。

    〇 解けない密室などない!【理論編】
     世古とガクが,ディクスン・カーの「3つの棺」の密室講義を使った密室の解説とクイズを行う。世古が出すクイズは3つの棺の密室トリック。世古は3つの棺の密室講義そのものが,3つの棺というミステリ作品のトリックのミスディレクションになっていることを,ガクに説明をしていく中で実証しようとする。世古は,密室講義はあらゆる密室をパターン分けしている。この講義に沿って正しい手順で検討すれば,問題の密室の謎は必ず解けるといって説明をする。しかし,検討を終えても世古が出した推理クイズを解くことができなかった。これは世古がある趣向で密室講義の説明をしたから。見事にガクはひっかかってしまった。
     トリックは被害者が訪問者として密室に入った。被害者はダミーを用意していた。「外で撃たれた被害者が部屋に帰ってきて死ぬ」というのが3つの棺のトリック。カーは密室講義にいくつもの仕掛け(大切な部分に自作のトリックを入れて楽屋落ちっぽくするなど)を入れていて,3つの棺のトリックが見破られないようにしていた。密室講義そのものがミスディレクションだった。
     3つの棺において,密室講義の真の狙いは,作中の密室トリックが見破られないように読者を誘導することだったという推測を紹介している短編。この短編そのものも読みやすいし,この短編を読むと3つの棺が読みたくなうと言う見事な書評になっている。傑作といっていい短編だと思う。★5で。さすが蒼井上鷹と感じさせる作品

    〇 解けない密室などない!【実践編】
     ガクの祖母であるスズコさんの家に泥棒が入り,ミスミユウという画家の絵画が盗まれる。そして,スズコさんの家はドアにも窓にも鍵が掛かっており,密室だった。家が密室だったこともあり,ガクも容疑者になっている。
     密室談義を利用して,実際にあった密室の謎を解く話。推理した真相は,時間差を使った密室。スズコさんが2階の窓を開けていた隙に家の中に入っていたというもの。犯人は配達員だと推理する。
     よくできた話。蒼井上鷹らしく,読みやすい文章であり,オチもすっきりしている。とはいえ,話やオチは平凡。★3で。

    〇 うまい騙しに嘘はいらない
     叙述トリックが仕込まれている過去の作品の紹介がメイン。最後に,「解けない密室などない!【実践編】」の犯人が世古であるという,ガクの先輩の推理が披露される。
     この辺りから,この短編集の作品を世古が書いており,作中の人物,ガクやガクの先輩が読んでいるというメタミステリ的な手法で描かれている。第1話でガクがバイト先の店長と言っていた人物が,ガクの先輩の女性であったことが判明。女性を男性と誤認させるガクの意図しない叙述トリックに世古がひっかかっていたというオチになる。
     叙述トリック作品の紹介部分が上手い。蒼井上鷹の書評,過去の作品の紹介は非常に巧みで,ネタバレにならないようにしながら,その作品を読みたい気分にさせる。蒼井上鷹作品が好みの文体であるということもあるが,この作品も楽しめた。★4で。

    〇 完全犯罪への道【前編】
     カムフラージュ連続殺人-自分の動機を隠し,捜査をかく乱するために,必要な殺人と必要でない殺人をまぜこぜにする作品の紹介となる短編。カムフラージュ連続殺人の作品は作品名を紹介するだけでネタバレになることもあり,作者の苦心がうかがわれる。
     世古は,第1話で知り合った女性から,会長が書くミステリのアイデアを出してほしいという依頼を受ける。そして,「未連続殺人事件」というアイデアを思いつき,ガクに話す。「センセイ」と呼ばれる人物が孫と一緒に遊んでいるときに事故死。孫である幼児に,自分のせいで人が死んだという罪の意識を背負わせないために死体を隠蔽。その場面を「スマジイ」に目撃される。そこで,口封じのために「スマジイ」を殺害。そのとき,センセイがまだ生きていたと思わせるために,警察にセンセイの目撃証言を通報したというもの。
     これもよくできた話。十分及第点のデキである。とはいえ,肝心のトリックはやや複雑で分かりにくい。傑作と浜ではいえないので★3で。

    〇 完全犯罪への道【後編】
     世古は,会長がミステリを書くためのアイデアがほしいと依頼を受け,ターゲットとなる被害者は複数いるが,警察もターゲットたちもそれが連続した事件と気付かない=非連続殺人事件についてのアイデアを,第1話で知り合った女性話す。
     そして誰もいなくなったタイプのミステリについての紹介。この紹介は,これまでの作品によるミステリの紹介ほどの面白みがないのが難点。
     第1話で知り合った女性が,女流ミステリ作家の那珂川光であることが分かる。那珂川はスランプで世古に小説のネタを考えさせていたと思われるが那珂川は否定。世古は那珂川にアイデアを提供したあと殺害されようとしていたとも取れる描写もあるが,那珂川は当然これも否定する。
     話全体のオチは,これまでの話を世古がミステリ短編集としてまとめたものがこの短編集だというもの。これは蒼井上鷹らしいオチだが新鮮味はない。この短編単独で見れば★3程度だろう。

     古今東西のミステリーを駆使しながら世古が斬新なトリック講義をするという設定だが,過去作品の紹介部分が面白い。「解けない密室などない!【理論編】」は傑作だと思う。トータルでは★4としたい。

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著者プロフィール

1968年千葉県生まれ。大学卒業後、会社勤務を経て執筆活動に入る。2004年、「キリング・タイム」で第26回小説推理新人賞受賞。同年「小説推理」掲載の「大松鮨の奇妙な客」は、第58回日本推理作家協会賞・短編部門の候補作に選ばれた。同二作を含む短編集『九杯目には早すぎる』でデビュー。著作に「4ページミステリー」シリーズ、『ロスタイムに謎解きを』『最初に探偵が死んだ』など。

「2016年 『お隣さんは、名探偵 アーバン歌川の奇妙な日常』 で使われていた紹介文から引用しています。」

蒼井上鷹の作品

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