こんな日は喫茶ドードーで雨宿り。 (双葉文庫 し 45-02)

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  • 双葉社
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575526516

作品紹介・あらすじ

今日もおひとりさま専用カフェ「喫茶ドードー」には、毎日をがんばり過ぎたお客さんが訪れる。店主そろりが腕によりをかけて作った美味しい料理をご用意して、お待ちしております。あなたも喫茶ドードーでひと休みしていきませんか? 心がくつろぐ連作短編集、大好評シリーズ第二弾!

感想・レビュー・書評

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  • 『自分が真剣にやっていることは「こんな」で片付けられてしまうものなのだ。やらなくても誰も困らない、つまらない仕事なのだ』。

    この世には数多の仕事があり、私たちは憲法第二十二条のもとに、自由に仕事を選ぶことができます。とは言え、それは建前論とも言えます。外国と違い、会社に就職して会社の指示に従って与えられた仕事をするしかない私たちは、必ずしも自分がやりたい仕事をしていると言い切れない毎日を送っていると思います。

    一方で”好きなことを仕事にしてはいけない”という言葉があります。そのようなことをしてしまうと好きだったはずのことが好きでなくなってもしまう、そんな可能性を踏まえてのことだと思いますが、好きなことを仕事にしていない身からすると随分と贅沢な悩みだとも感じます。

    好きなことを仕事にするのが良いのか、そこから離れたことを仕事にするのが良いのかは意見の分かれるところでしょう。しかし、限られた人生を生きる限りはその一瞬一瞬に意味のあることをしたい、誇りを持てる仕事がしたいと思うのは自然な感情だと思います。『やらなくても誰も困らない、つまらない仕事なのだ』と思いながら生きることほど辛いこともないと思います。

    さてここに、自らの仕事を『こんなつまんない仕事』と言われた一人の女性が主人公となる物語があります。『自分が真剣にやっていることは「こんな」で片付けられてしまうものなのだ』と思う主人公。この作品はそんな主人公が『大通りを一本横に逸れ』た先に『小さな看板』を見つける物語。そんなお店で提供される”食”に一つの起点・きっかけを見る物語。そしてそれは、『いらっしゃいませ。喫茶ドードーへようこそ』と店主が迎える喫茶店に立ち寄る人々の、悩み苦しみを見る物語です。
    
    『一番好きだったのは工作の時間だった』と『幼稚園児だった頃』のことを思い出すのは主人公の米沢夏帆(よねざわ かほ)。何事においても『先生、出来たよ』と『クラスの中で一番早くに完成』できることを自慢に思っていた夏帆ですが、ある時担当の教諭が母親にこんなことを伝えているのを耳にします。『夏帆ちゃんはね、いつも工作で一番に出来上がるんですよ。でもちょっとお糊が剝がれちゃっていたり、ハサミの切り込みがずれていたりするんです。せっかちさんね』。そして、『いまも何か小さなミスをするたびに』、『あ、またお糊が剝がれていた』と思う夏帆。『主に家電の取扱説明書の作成を請け負っている全社員三十名弱の中小企業』で働く夏帆は新人が入らないことで『もう三十半ばになる』ものの『下っ端』として働いています。そんなある日、『頼れる先輩』として『なにかにつけて気にかけてくれる』『技術班の絵里奈』に『帰りに軽くご飯どう?』と誘われ『連れ立って会社を出』ます。『大通りを一本横に逸れ』た先、『喫茶ドードー』という店名の下に『おひとりさま専用カフェ』と書き添えられた看板を見つけます。『へえ、おひとりさま専用なんて珍しいね。このご時世だから?』、『四個の卵で作ったオムレツだって。美味しそう』と会話する二人ですが、『おひとりさま専用じゃあ二人では入れてもらえないね』と諦めます。そして、『中華料理』のお店に入った二人。そんな中で『実はね、話したいことがあって』、『結婚することになったんだ』と切り出す絵里奈は『一応会社は春で退職。でもフリー契約』を続けさせてもらえる旨説明します。遠距離恋愛のゴールとして『入籍後は九州住み』と言う絵里奈は『落ち着いたら九州にも遊びに来て』と話します。場面は変わり、異動になる次長の送別会に出席した夏帆は、『欠員の補充と』して『一名増員される』話を聞きます。『米沢ちゃんもよかったじゃない。いよいよ下っ端脱出で』と言われる夏帆。そして、榊はづきという二十八歳の女性が配属され、指導が夏帆に一任されます。『まずお客さんが来たら、お茶ね』と説明する夏帆、メモアプリに目を落とす はづき。『このご時世だから、お茶はペットボトルなの』、『冷たいのが苦手な人もいて、その場合は常温か、あったかいのはこっちに』、『坂口部長とミサワ商会の三澤会長があたたかいお茶、三枝さんが常温…』と『取引先の名前と湯温の好みを伝え』ていく夏帆。そんな夏帆は『改めてこうして説明していると、余計自分のやっている仕事が馬鹿馬鹿しいことに感じられて』くるものの『口をつけずに帰る人もいるけど、いったん出したものは廃棄、ね』と続けます。そんな中、来客があり『社長自ら出迎え、連れ立って応接室に向かってくる』のが見え、『視線を落とす程度に会釈』する夏帆。『隣を見ると、はづきが九十度くらいにまで曲げた腰を戻し』『あの方がセントラル電気の営業さんですね』と言います。そして、打合わせが終わり、片付けに入ると『客側は封が切られてい』ない『ペットボトルを取り上げ、一枚抜き取ったアルコールティッシュでボトルの側面を拭』く はづきは客を追いかけ『木崎さん』、『よろしければこちら、お持ち帰りください』と渡します。『実は喉が渇いていたんだよね。ありがたいなあ』と言われる はづき。そんな はづきは『セントラル電気ってエコにすごく気を配っている企業みたいなので』と夏帆に説明します。『お名前よくわかったね』と訊く夏帆に『さっき守衛さんに聞いてきたんです』、『少しでもお客さまのお名前を覚えておけたらって思った』と話す はづき。『単なるお茶出しだ。誰もそこまで求めていない』と思う夏帆。『こんな仕事…。未だに…』と思って生きてきた夏帆のそれからが描かれていきます…という最初の短編〈第一話 君が正解のオムレツ〉。一人の女性の生き方に光を当てるこの作品らしさを見せる好編でした。

    “おひとりさま専用カフェ「喫茶ドードー」には、毎日をがんばり過ぎたお客さんがふらりと訪れる。心が雨の日は、あなたも喫茶ドードーで雨宿りしていきませんか?店主が腕によりをかけて作った「あなたの悩みに効くメニュー」をご用意して、今宵もお待ちしております”と内容紹介にうたわれるこの作品。標野凪さんの代表作である『喫茶ドードー』が登場する物語、この作品はそんな第一作である「今宵も喫茶ドードーのキッチンで」に続くシリーズ第二作となります。第一作が刊行されたのが2022年5月、そしてこの作品が刊行されたのが2023年3月と一年を経ずして続編が出されているところを見るとこの作品の人気のほどがわかります。

    では、この作品を三つの視点から見ていきたいと思います。

    まず一つ目は、執筆時期の関係からコロナ禍が非常に色濃く描写されているのが大きな特徴だということです。もうそれは全編に渡って顔を出します。まあ、誰一人として無視することのできなかった地獄のような三年間を思うとコロナ禍をなきものとして作品を生み出す方がファンタジーとも言えるようにも思いますのでこれは仕方ないことなのだと思います。ただ、第一作と第二作の執筆時期の違いから、同じ世界観の作品でも描写に変化が生じています。コロナ禍後期もしくは終期とも言える時期だからの変化だと思いますが、第一作と第二作をあまり間を空けずに読んだ者としては、そこに新鮮さを感じます。それこそが、この視点です。

     『新型コロナウイルスは、人々の考え方に分断を生んだ、とも聞く。最初の頃こそ、未知のウイルスに対抗すべく、みなが同じ方向に進んでいたが、コロナ禍が長引くに従って、道はさまざまに枝分かれしていった』。

    未知のウイルスに怯える空気がこの国を覆っていた2020年4月、そんな空気も次第に薄れ、国の感染対策本部のコロコロ変わる発表にいい加減呆れ感が出始めていた時期、それがこの第二作の執筆時期なのではないかと思いますが、それを標野さんはこんな風にさらりと書かれています。

     『最近は少しずつ出歩く機会が増えてきた。感染状況が落ち着いてきたこともあるが、コロナとの付き合いも長くなり、だんだん気をつけるポイントが見えてきたおかげでもある』。

    コロナに向き合う感覚が個々人に掴めてきたこともあってか、第二作は第一作に比べて同じ構成の物語にも関わらず随分と明るい雰囲気感を作り出しているようにも感じます。そんな第二作刊行からもやがて一年という期間が経過することになり、コロナ禍もすっかり過去のものになろうとしています。コロナ禍真っ只中には、時代を映した作品としてリアル感が演出されていたと言えますが、この先、コロナ禍の描写が含まれる小説群はどのようになっていくのでしょうか?バブル期を描いた作品が今や古臭いものと見下されるのと同様に、こんな時代もあったね、こんな時代があったんだね、まるで冗談みたい…と奇異な目で見られる、そんな未来が来るような気もします。そういった意味でも、この作品のようなコロナ禍どっぷりに描かれた作品は、賞味期限(賞読期限?)ギリギリとも言える今のうちに読んでおくのが吉である、そう思いました。

    次に二つ目ですが、この作品のシンボルでもある『喫茶ドードー』に関する描写です。主人公たちが『大通りを一本横に逸れると、空気が急に澄んだように感じた』と行き着く先に現れる看板『喫茶ドードー』。『おひとりさま専用カフェ』というのは今の時代にあっては、まさしくブーム最前線とも言えるお店が登場するこの作品ですが、シリーズ第二作ということを意識されてか、思った以上にその雰囲気感の描写が少ないのが特徴です。間違ってこの第二作から手にした人にはこの『喫茶ドードー』の意味が感じられないのではないか?と思うのと第一作から読んだ身にも少し描写が少なすぎるのが気になります。しかし、そんな前作からの読者も次の文章によって思わずニンマリさせられます。

     『私は、そろりやお客さんがほどよく幸せに過ごせますようにと、そんなことを願いながら、見守っているのです』。

     (*˙ᵕ˙*)え?あんた誰?

    そんな読者の疑問に答える次の一文。

     『ああ、ご挨拶が遅れました。私は、このキッチンの柱にかかっている小さな額に入ったドードー鳥のイラストです。「喫茶ドードー」のアイコン的存在だと自負しています』。

    これにはビックリです!第一作では、壁に『ドードー鳥』のイラストがかかっていること、だからこの店が『喫茶ドードー』という説明こそありましたがそこまでです。店主の そろりの描写などに若干のファンタジー感はありましたが、それでもギリギリ、リアルものというのがこの作品の位置付けだと思っていました。それが、この記述をもって堂々とファンタジーの領域に踏み出したのです!とは言え、物語全体がファンタジーになるわけではありません。あくまでこの程度の記述まで、標野さんはそこに一線を引いていらっしゃいます。ファンタジーは嫌いです!という方にも安心してお読みいただければと思います。

    そして、三つ目として、この第二作の魅力は”食”についての描写がより細かく魅了的なものになっているところです。『喫茶ドードー』を舞台にしたこの作品では、店主の そろりが試行錯誤によって生み出していく料理の数々が各短編に登場します。その料理名は、その短編の主人公に起点を与えるものとなってもいきます。例えば〈第一話〉で提供されるのは『正解のオムレツ』というそれだけではなんだかよくわからないものです。物語は、その料理の名前にこそ意味があるとも言え、実際の料理の内容は二の次と言えなくもありません。第一作はその感がより強かったのですが数多の”食”を取り上げる小説を意識されてか、それを食す場面がより魅力的なものになっています。では、『わあ、スペイン風オムレツ!』と登場する料理を見てみましょう。

     『ショートケーキのように三角にカットされたオムレツが、白い皿に置かれていた』という料理を口に運ぶ夏帆。『ほくほくのじゃがいもや厚切りベーコンが中にみっちり詰まっている。飴色の玉ねぎが甘くて、口で蕩ける。チーズもふんだんに入っているのか、味わいは濃厚で、卵はスフレのようにふかふかだ』。

    まさしく食事の様子が目に浮かぶようです。見事な食リポという気がします。『卵八個。しかも黄身だけを使ってね』と作り方を解説する そろり…と物語は続いていきますが、やはり”食”を取り上げる作品はいいなあ…そう思いました。

    そんなこの作品は前作同様にそれぞれの短編タイトルに料理の名前がつけられています。上記した通り、この名前が秘める意味合いが迷える主人公たちに起点・きっかけを与えていくことに繋がってもいきます。では、そんなタイトルを挙げておきましょう。

     ・〈第一話 君が正解のオムレツ〉

     ・〈第二話 傷つかないポタージュ〉

     ・〈第三話 時を戻すアヒージョ〉

     ・〈第四話 自信が持てるあんバタートースト〉

     ・〈第五話 春一番のコトダマ〉

    どうでしょうか?〈第四話〉のようにタイトルだけでどことなく話が見えそうにもなるものもありますが、〈第五話〉のようにちんぷんかんぷんなものもあります。物語は、それぞれに一人ずつ女性主人公が登場します。それは会社員である場合が多いですが、彼女たちはいずれも今を生きる中に悩み苦しみを抱いています。〈第一話〉の主人公・米沢夏帆は『手際が良い』という自らの認識の中に会社員を続けていますが、自らの仕事を『こんな仕事…。未だに…』と自ら見下す日々を送ってもいます。〈第三話〉の主人公・徳永夕葉は『不妊治療の医師を紹介しようか…』等『大きなお世話だ』と思えるシチュエーションの中に、イライラした思いが募ってもいきます。そして、〈第四話〉の主人公・鈴元朱莉は他人の目を意識する中に『自分が生きている価値って何だろう』と思いを深めてもいきます。この作品の主人公たちの悩みは、それが解決されなければ人生が危ういというようなものではありません。もしかしたら世の中を生きていく中で、贅沢な悩みと言えるもの、すぐにどうこうすることはなくても良いかもしれないものだと思います。これは、私たちも同じではないでしょうか?なんの悩みもなく生きている人がこの世にいるとは思いません。誰かしら何かしら悩みを抱えている、そして、それは他人から見ると些細なことでもあるかもしれません、しかし、なんとかモヤモヤを晴らしたい、そんな思いは誰にだってあると思います。この作品では、そんな思いを抱えた女性たちが、『喫茶ドードー』を訪れ、そこに提供されるメニューによって一つの”起点・きっかけ”を得ていく物語が描かれていました。何か劇的なことが起こるわけではありません。悩みが決定的に解決されるようなこともありません。『喫茶ドードー』に入る前と出た後、そこに見た目主人公たちに何の変化も見ることはできないと思います。しかし、彼女たちの心の内がすっと楽になっていく、この作品はそんな人の心の機微を描く物語なのだと思いました。

     『いらっしゃいませ。喫茶ドードーへようこそ』

    そんな言葉で出迎えてくれる店主の そろり。この作品にはそんな そろりが『どうかな』、『うーん、なんか違うぞ』と試行錯誤を繰り返しながら作り上げていく少し不思議な名前のついた料理の数々が、訪れる人たちの人生に”起点・きっかけ”を与えていく物語が描かれていました。美味しそうな料理の数々に”食”の魅力を感じるこの作品。どこかのんびりとした『喫茶ドードー』の雰囲気感に魅せられるこの作品。

    シリーズとしてまだまだ続いていきそうな物語の中に、今度はコロナ禍明けの新しい時代を映しとって欲しくもなる、そんな作品でした。

  •  「喫茶ドートー」シリーズの第2弾…。「喫茶ドートー」は街の奥、森の中にひっそり佇むおひとり様専用カフェ…。オーナーはそろりさん…。この作品でも、仕事にプライベートにちょっとだけ疲れた人たちが「喫茶ドートー」を訪れ、ちょっぴり元気になってこの店をあとにします。

     でも期待していたんですけど、今回も男性のお客さんは訪れませんでしたねぇ…。5編の短編に共通するのは「言葉」…「言葉」は人に傷つけられたり逆に人を傷つけてしまったりします。だけど、人を元気づけられたり視点をかえるためのヒントもまた「言葉」なんですよね…!何気なく使っている「言葉」だけれど、重いですよねぇ…。

     そんな考えを持っちゃったのと、読み終えてからレビューを投稿するまでの期間が少しあいてしまったこともあって、あぁ~よかった!だけじゃなく、あれこれ考え込んでしまう結果に…。でもラストの描写はいいなって思いました。

  • シリーズ第2弾。
    「喫茶ドードー」から聞こえる語り手の主は、店に飾られている小さな額に入ったあの方です。
    なんて不思議な魅力を持った空間なんでしょう。
    大人の女性が一人ずつ訪れるこの物語は、連作短編の形をとっていて、登場人物に少しずつつながりがあります。
    心が雨の日も、「喫茶ドードー」で店主そろりの作った料理を味わえば、沈んだ気持ちもすっきりと晴れそうです。

    自分のペース、それぞれのペース。早いことだけが良いわけじゃない。
    時が解決するという意味の「日にち薬」という言葉。
    本当の贅沢っていうのは、穏やかで豊かな時間が過ごせるということ。

    私たちは日頃から、言葉に傷ついたりはげまされたりの繰り返しだけれど、この本には疲れた心をほぐしてくれるような、素敵な言葉がいっぱい詰まっています。

  • 5篇の連作短編集。第二弾。
    美味しい食事と癒やしの空間。喫茶ドードーはやっぱり素敵。

    今回は『言葉』について。
    第二話のソロリ、むつこ、かずきの会話が印象的だった。
    父を無くしたかずきは、知り合いにかけられた、「気持ちはわかる」「私達の前で話してしまえばいい」などという言葉に傷ついたことに対し、優しい言葉さえ受け入れられないなんて社会で生きるのに不適合な人間ではないかと悩む。
    それに対しむつこさんは「あなたは実際に、その方々の言葉で傷ついた。それが全てよ。良かれと思ってかけられた言葉かどうかじゃなくて」と言い、ソロリさんも「その方たちって本当にあなたの味方でしょうか。自分達の価値観をおしつけていいことしている気分に浸っているだけのように僕には聞こえたんです」言う。
    ちょっとホッとしました。相手に悪気はないからと自分の気持ちをごまかさず、思うまま。そのまま。素直なまま。傷ついた自分を認めて一呼吸おくのが大切なんだなと思いました。
    ソロリさんの言っていた「寄り添うは言うは易く行うは難し」に納得でした。

    ついでに一番食べたかったのは『あんバタートースト』

  • シリーズ第2弾。
    連作5話短編集。
    今回も店主そろりの美味しい料理が、お客様の悩みによりそうメニューになっていて、看板を見るとついつい足を運んでしまう。

    マイペースながら悩める人の気持ちがよくわかる店主そろりのことばが、押し付けがましくなくて心にじんわり沁みてくる。


    ①君が正解のオムレツ
    効率的で要領がいいようで、早足すぎて失敗し、ペースが違う相手をよく見てなかった。
    『失敗したらやり直せばいい、自分だけの正解はある』

    ②傷つかないポタージュ
    些細なことを気にしすぎて、冷静でいられない。
    『心が窮屈になっていたりするときこそ、ひとつ行為を挟むことが大切で、それは自分が傷つかないための養生と同じ』

    ③時を戻すアヒージョ
    違う立場の人から勝手に断定されると嫌なくせに他人に同じことをしている。
    『立場が変われば考えも変わる。それは仕方のないこと。知らなかったことを知っていく、それが大切』

    ④自信が持てるあんバタートースト
    自分の存在がないことのように扱われる。
    『自信を持つこと、つまり自分を信頼すること』

    ⑤春一番のコトダマ
    常連の睦子さんが、昔の仕事関係の人に「すごいじゃないですか」と言われて嫌な気分になったけど『有無を言わせぬ唯一の存在になるよう決意した』ってところが凄い。

    「贅沢って何だと思う」と尋ねる睦子に『穏やかな時が過ごせること』と答えるそろり。
    このことばが素敵!
    最高のひとことを頂きました。




  • 喫茶ドードー第ニ段。
    そろりさんの温かな雰囲気に、なんとも癒されます。読んだらおひとり様でカフェに行きたくなる作品です。

  • ☆4

    前作に引き続き、「喫茶ドードー」の店主であるそろりさんの何気ない言葉によって主人公たちが救われていく連作短編集。
    心に響く言葉がたくさん散りばめられていたので、気持ちが落ち込んだ時などにまた読み返したいなぁと思いました。(そろりさんの言葉に私も背中をそっと押してもらいたいと思います!)

  • シリーズ2作目。
    前回もホッコリしましたが、今回もホッコリ癒されました。
    そろりさんのお店に行って食べてみたいメニューが沢山出てきて、お腹が鳴っちゃいました笑

  • おひとりさま専用カフェ『喫茶ドードー』に、今日も悩みを抱えたお客さんがやって来ます。

    「心が穏やかじゃないから余計傷つくんです。もちろん穏やかでいたって凹む時はありますが、凹む度合いが違います。だからなるべく平らな心でいること、それが大切なんです。」

    「大地の木のように、しっかりと足をつけて立つ、それが自信です。」

    そろりさんの優しい言葉と料理に疲れた心がほぐれます。『喫茶ドードー』の美味しそうな料理食べてみたいです。

  • 『今宵も喫茶ドードーのキッチンで。』の続編。続編タイトルと、美味しそうな装丁が何とも良い。都会の隠れ家的な喫茶ドードー、そして店主のそろりの変わらぬ様子にほっとする。本作のテーマは「言葉」だった。章ごとに変わる主人公はいずれも現代社会を頑張って生きている女性。誰かからかけられた一言にもやもやしているところで、喫茶ドードーに出会う。その日のメニューもその人の悩みを癒すためまるでカスタマイズしたような内容。喫茶ドードー、そろりが少し幻想的なので、もしかすると必要な人の前にだけ表れるお店なのかもしれない。喫茶ドードーの中庭や周りの自然、店内の落ち着いた雰囲気や料理に癒されながら、言葉の持つ力の大きさを実感した。良かれと思って発した言葉が相手を傷つけたりモヤモヤさせることは残念ながら有り得る。そんな時、自分がどのように感じたかは大切にしつつ、同時にさっと流せる強さも持ち合わせていきたいと思った。

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著者プロフィール

静岡県浜松市生まれ。東京、福岡、札幌と移り住み、現在は東京都内で小さなカフェを営む現役店主でもある。2018年「第1回おいしい文学賞」にて最終候補となり、19年『終電前のちょいごはん 薬院文月のみかづきレシピ』でデビュー。その他著書に、『終電前のちょいごはん 薬院文月のみちくさレシピ』『占い日本茶カフェ 迷い猫』『伝言猫がカフェにいます』『本のない、絵本屋クッタラ おいしいスープ、置いてます。』等がある。

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