じい散歩 (双葉文庫 ふ 22-03)

著者 :
  • 双葉社
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感想 : 59
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  • Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575526790

作品紹介・あらすじ

夫婦あわせて、もうすぐ180歳。中年となった3人の息子たちは、全員独身――。明石家の主、新平は散歩が趣味の健啖家。妻は、散歩先での夫の浮気をしつこく疑っている。長男は高校中退後、ずっと引きこもり。次男はしっかり者の、自称・長女。末っ子は事業に失敗して借金まみれ。……いろいろあるけど、「家族」である日々は続いてゆく。飄々としたユーモアと温かさがじんわりと胸に沁みる、現代家族小説の白眉。解説・木内昇

感想・レビュー・書評

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  • 新平さんの健康ルーティンに、とっても共感した。こんな89歳の日常を送る新平さんの身体と精神になりたいものだ。

    明石新平、89歳。毎朝45分体操、庭の水遣り、健康フードの朝食の後には、少し長い散歩に出る。椎名町から、歩いて行ける旧江戸川乱歩邸等など名建築と美味しい食べ物屋を巡り、池袋辺りまで歩く。

    人生ってこんなもの。

    大正生まれ。戦争末期に懲役経験あり。戦後のいい時も悪い時も、真面目に、しかし決して清廉潔白ではなく過ごして、現在は年金とアパート経営でなんとか一家を養っている矍鑠とした老人である。

    養っている?そう、息子3人がなかなか独立してくれないのである。全員独身の50代、引きこもり長男、スカートを履く次男、借金まみれ三男、認知症始まりの妻と共に、客観的にはなかなか「暗い現実」を、しかし飄々と健康的に生きている。

    新平さんの一歳下の妻が倒れた時に、新平さんの下した決断はびっくりするようなものだったけど、正直わたしは「カッコいい」と思ったものである。実際は全然かっこいいものではなかった。それを含めて、わたしは新平さんを尊敬する。新平さんの人生は、多くの日本人89歳がたどって来た人生と幾つかは見事に被っていると思う。

    オーディブルで、珍しく1日で聴き通してしまった。続編は出ているらしい。








  • 題名通り、90歳新平さんの毎日の散歩風景。
    新平さんが、毎朝のルーティンを淡々とこなし、美味しそうな洋食をペロリと食べ、建物を見に行く。90歳で元気だよなあ。私より元気だ。

    但し家族は、色々事情を抱えている。
    でも新平さんは淡々とその状況を受け入れ、毎日を過ごす。

    ...うーん、ちょっと読む時期が早かったかな?
    読む年齢が違ったら、もっと心に響いたかも。
    最後の展開がいきなりで怖かった。身の上に起こる出来事に「抗わない」ということは、生きていく上では大事なことなんですが...しかし...。
    うーんうーんうーん。まだまだ若輩者だな、私。

  • 藤野千夜さんの本を読むのは『団地のふたり』に次ぐ2冊目。
    90歳に近い夫婦とその息子3人が主な登場人物。一般的に見れば大変ですねと同情されかねない状況なのかもしれないが、夫である新平は淡々と毎日を過ごしている。散歩や喫茶店での飲食、「事務所」での趣味の時間など、好きなことやルーティーンをこなすことで、状況をいたずらに悲観したり先を無駄に不安がったりしていない姿勢が良いと思った。そんな家族の日常の話だが、高齢ゆえにやはりガタは来る。そんな時も新平の適応力や対応力は何気に高いと思った。10月に続編が出るらしく、本書のこの終わり方でどのような展開となっているのか少しおっかなびっくりではあるが、楽しみにしたい。

  • じいの散歩は本格的だ。

    昼前から出発し、途中で洋食をガッツリ食べる。そして建築物を見たり、芸術観賞した後、仕事場だった事務所へ。

    そこでもう一つの趣味のエロ収集を眺め、夕食に間に合うように帰宅する。

    明石新平89歳の生活と人生が、気になる。
    とにかく気になる(笑)

    88歳の妻:英子は、新平の浮気を疑い認知症の兆しがある。3人のアラフィフ独身息子は、引きこもり・自称長女・アイドルオタク延長の仕事で借金まみれ。

    先行き不安な状況なのに、大らかでコミュ力凄い新平の日々は続くのだ。お茶目なじい物語を笑いながら読了!

  • 美男美女の恋愛や、天才的な頭脳、個性的なキャラクターだけで、世の中は構成されていない。また、その人たちがこの世の主人公でもない。
    ぐずぐずしていて、ややずるくて、老いて、そこそこのところで生きている市井の人たちこそが、本当のこの世の中心だ。

    アキ・カウリスマキの映画を見た後でこの本を読んだので、藤野千夜の描く世界とアキ・カウリスマキの世界がシンクロした。

    「まあ、そんなもんだ」で、この世はできているんだよね。

  •  久々のジャケ買いでした。面白かったです。

     綺麗事で済まない、現実にあり得そうな話。
    ただ、主人公の気持ちが若いなぁと感じた。実際に年を取らないと分からないが、新平くらい気持ちを若く保てるものなのだろうか。

     三兄弟で唯一、次男さんは素敵。続編もあるみたいで気になります。

  • もうすぐ90歳の新平と英子夫婦の過去と現在をいったりきたり。時系列がたびたび変わるので混乱したところもあるけど、面白く読めました。健康オタクで女好きでパワフルなおじいさんの新平と、運動嫌いで友人もいない英子は対照的だけど、最終的にはお互いを必要としているようで微笑ましくもある。現実にはこんな老々介護は過酷でしかないと思うけど。新平には100歳まで生きてほしいなぁ。

  • はぁ〜。主人公のおじいさん89歳でも元気元気!すごいです。毎日てくてく歩いて素敵な建物を見て周り美味しいランチを食べる…。でも家に戻ると認知症の妻に女に会いに行っていると責められる…苦笑
    おじいさんの変わらぬ毎日のルーティンの中でも少しずつ妻の具合で変わらざるを得ないことが増えていく。どこの家にもありそうな場面を過去の話も混ぜながら淡々と書かれていました。

  • めちゃくちゃ元気なおじいさんと、ダメダメな家族たちのお話。
    非常に先行きが心配になる家族構成ながら、田舎の付き合いや嫁姑などしがらみが一切ない上に不動産もあり、お金には困らないので主人公が好き勝手できるんだろうなぁと羨ましくもありました。
    終わり方、好きでした。

  • 夫婦あわせて180歳。3人の息子は中年で全員独身。どうしようもないクズ。
    でも笑っていられない。現実にこういう家庭がいっぱいいると思う。

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著者プロフィール

1962年福岡県生まれ。千葉大学教育学部卒。95年「午後の時間割」で第14回海燕新人文学賞、98年『おしゃべり怪談』で第20回野間文芸新人賞、2000年『夏の約束』で第122回芥川賞を受賞。その他の著書に『ルート225』『中等部超能力戦争』『D菩薩峠漫研夏合宿』『編集ども集まれ!』などがある。家族をテーマにした直近刊『じい散歩』は各所で話題になった。

「2022年 『団地のふたり』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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