- Amazon.co.jp ・本 (269ページ)
- / ISBN・EAN: 9784575658446
感想・レビュー・書評
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佐高書評集から。そんなこと、とてもしそうも出来そうもなかったって人が、とんでもない事件を起こしてしまった、という風に語られるところのもの。逐一論考していくと、色々とマズかった部分も目につくんだけど、でもそれをいちいち気付けるかというと、なかなかに難しいと思うし、自分のことに置き換えてみても、確実に違った結果に至ることが出来たと言える確信もない。でも、我が事として考える一助たり得る、優れたノンフィクション。
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本田靖春氏の『誘拐』を読んだ後に、「ノンフィクションは、どうあるべきか?」を考察しましたが、
本書の佐瀬稔氏の『金属バット殺人事件』は、裁判記録を読み込み、被告の両親が生まれた故郷を訪ね、少年の生育記録を辿り、友人らへの取材、当時の社会情勢も交え、事件がどのようにして起こったかを読者に提示する、ノンフィクションの王道と言える手法を取っている。
それによって、読者は事件の背景を知り、事件の要因に迫る。
少年は、明るく陽気な気質であったが、理由が定かでない家出を機に、おとなしく、目立たない存在へと変貌した。
事件が起きたのは、1980年、僕が中学1年生の頃だ。
数年後、僕も大学受験にチャレンジしたが、今なら受験失敗して就職という選択肢もスムーズに選択できようが、当時、重い空気の下、受験生にとって、就職という選択肢が受験生にとって”死”の宣告をも意味する選択肢であったことを思い出す。
ちょうど、少年らの世代ではなく、僕ら世代のことであろうが、当時、僕達世代は、”新人類”などと呼ばれていた。
著者・佐瀬稔は、所々で、バタ臭い自分達と異なり、洗練された、それまでの日本人と全く異なった人間の登場を書いている。
著者・佐瀬稔は、精神医学の専門書もよく読み込み、それまでの重い精神病とは違う、境界的な精神の病の登場を解説している。
そして、事件の背景、原因に、少年の精神的な病に求めている。
少し著者の主観が、被告の内面、心情に反映し過ぎという感はあるが、よくできたノンフィクションである。
評論などに与えられる日本推理作家協会賞受賞作である。
今では想像するのも難しいが、昭和の時代の社会の強い集団への帰属への要請などを考えた。
そこら辺も、事件に関わっているように。 -
第38回日本推理作家協会賞 評論その他の部門賞。
推理作家協会賞だが、実際に起こった金属バット殺人事件を題材にしたノンフィクションでもある。
次男が父親を金属バットで殴り殺した事件。犯人はもう分かっているが、それに至ったいきさつを、社会的背景を考察しながら追っている。事件があったのはごく普通の家庭。そんな家庭でもこんな事件が起きてしまうのだからまさに「事実は小説よりも奇なり」。 -
作者が故人と知り驚いた。同時に、よくぞこの名作を遺してくれたと感謝したくもなる。他の著作も読みます!
第38回(1985)日本推理作家協会賞評論その他部門受賞作。
ミステリ評論ではなく実際に起こった犯罪実録(ノンフィクション)がこの部門を受賞するのはまだ珍しかった。
瀬戸内シージャック事件のノンフィクション福田洋「凶弾」が乱歩賞に応募し最終候補に残るも、栗本薫「ぼくらの時代」に負けたりしたこともあった。無事出版され映画化されたけど主演が石原良純のせいか2週間で打ち切りに。閑話休題。
金属バットにより浪人生が両親を撲殺…って当時はものすごい衝撃だったのを思えてる。山下公園の高校生ホームレス(当時は「浮浪者」と言ってた気がするが)襲撃殺人と並んで80年代前後のパラダイムシフトを象徴するような事件だった。90年代以降もっと少年犯罪(20代の起こす犯罪も)はすごいことになっていくのだけれど。 -
日本推理作家協会賞(1985/38回)
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そんな前の事件とは思えない生々しさ・・・久しぶりに読み返した
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いろいろな事を考えさせられる一冊。特に、この本の中でエイリアンと呼ばれている世代が僕らの親の世代であると考えると…。