- Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
- / ISBN・EAN: 9784575670417
作品紹介・あらすじ
長篠の戦いで、ついに宿敵・武田を破った織田徳川連合軍。だが、ここ遠江から武田勢がすべて去ったわけではない。武田側の拠点である高天神城への補給路の寸断をを命じられた茂兵衛は、森に籠って荷駄隊への襲撃を指揮することに。初めて一隊を率いる立場となった茂兵衛はいかにして任務をこなすのか?
感想・レビュー・書評
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読むのが楽しみな、解りやすい目線で描いた戦国時代小説です。
砦番仁義 ー 三河雑兵心得シリーズの5作目
2021.02発行。字の大きさは…中。2022.03.01~02読了。★★★☆☆
武田と争い三河、遠江の領有をめざす徳川家康に仕える植田茂兵衛の出世物語です。
天正3年(1575年)。武田信玄亡きあと武田家を継いだ勝頼が、遠江へ出撃してくるが、織田・徳川の連合軍に長篠設楽原の戦いで完膚なきまでに敗北し甲斐に逃げ帰ったあと。徳川は、遠江の武田方の城を落としに行きます。
徳川の軍は、西三河岡崎城の家康の嫡男松平信康(のぶやす)を擁する岡崎衆。東三河吉田城主の酒井忠次(ただつぐ)率いる吉田衆。家康の主城である遠江浜松城の家康直属の旗本先手衆である浜松衆の三つからなっています。植田茂兵衛は、本多平八郎、榊原康政などの侍大将を擁する旗本先手衆である浜松衆に属し。徳川一門、大草松平の松平善四郎の副将として俸給を年に100貫(約1000万円)頂いています。
茂兵衛は、家康から善四郎の元を離れて独立して武田の遠江の補給路を断つ作戦を命じられます。その後、足軽大将に昇進して俸給は120貫(約1200万円)。石高に直せば240石前後。
その頃、岡崎城の松平信康と、浜松城の徳川家康の仲が険悪になってきます。信康と不満を抱える岡崎衆が一緒になって謀反をおこしてはと考える家康は、なんとか名目を作って信康を取り除こうとします。そこに織田信長から信康が、武田に通じているとの話があったのをさいわいに信康を切腹させます。信長の命令に抗しきれず、最愛の息子を断腸の思いで切腹させるという形をとります。
茂兵衛は、約百人の者を連れて信濃との境の高根城の城番を務めています。徳川方の最北の砦です。まさに島流しです。そこに切腹を嫌って信康が、甲斐へ逃げて行きます。それを服部半蔵が追いかけて来て捕らえて遠江二俣城で切腹させます。
【読後】
信康の切腹については、織田信長の命令でやむなく最愛の嫡男を死なせたと記憶していますが。この物語では、家康が取り除こうとしている所に、折よく信長からの疑惑がありこれを利用したと書いています。
足軽大将まで出世して、小さいとはいえ城(砦)を預かるまでになった茂兵衛が、次はどこまで出世するかが楽しみです。この物語は、足軽の目線で徳川の戦いを書いているのが面白いです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
紆余曲折あるものの順調に出世を続ける茂兵衛。読む方も調子が出てきて、止まらなくなってくる。
今回は初恋の女性絡みが長く描かれているが、残念ながら実らず。
出世の方は足軽大将として砦番となる。一国一城の主には程遠いが、それでも大したもの。あの有名な大久保彦左衛門も部下となって、益々活躍が期待される。 -
自分もその時代のその場所にいるような錯覚。この時代にタイムスリップしたようなの生活密着感がいい
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シリーズ第五弾。
徳川はこんな風に、武田と織田と国内の揉め事と、色々悩まされながら戦国の世を歩んでいたんだなと、茂兵衛の目を通して改めて感じることが出来る。
今作では、信康切腹までの流れが描かれていて、現在のドラマとは違って腑に落ちる気がした。
茂兵衛が猟師を道案内とし、山奥の城塞では足軽たちを連れて猟をさせ、鍛錬と気晴らしと獣肉での栄養補給を考えるのは、とても面白い。
茂兵衛が人をまとめていく才能を発揮していくので、ますます出世していきそうだ。 -
シリーズ第5弾
百姓上がりの出世物語は、最前線の山城の砦の足軽大将ということで、今なら工場長といったところか。
だんだん人徳が出てきてしまって、少々物足りなさ感も出てきたが、基本的に出来事は史実の通りに進むので仕方ないか。 -
本作も安定の面白さ。長篠後から信康切腹までを描く。史実としては地味な時期であるが、信康との絡みをこう描くかと唸らせられた。
何より茂兵衛の将としての成長が余すところなく描かれていたのが良かった。家康や酒井忠次から直接の密命を受け、30〜50名規模を率い活躍。特に密命時に本多や榊原から貸し受けた足軽の一団を褒美に与えてもらえる場面は非常にエモかった。また、部下となった大久保忠世の弟、彦左衛門の成長も楽しみだ。
今回は前半で朋輩の辰蔵の死を予感させられたが、無事裏切られてひとまずホッとした(服部は命を落としてしまったが)。ただ、今後近い仲間の死は避けられないと思うと、戦国時代の宿命とはいえ、寂しさを感じる。
強いて言えば、信康切腹後の余韻がなかったのが残念だったが、そこは次編に期待しよう。 -
Audible読了
今回は、武田勢が攻め落とした高天神城(現・掛川市)攻略のため、まずは補給路から断つ、というスニーキングミッションだ!山あいに身を潜め、敵の兵糧隊を待つ。
この城は勝頼最大の武勲。海を見渡すことが叶った信玄公の思いが詰まった要所。そこを落とすとなると、戦略的な意義は大きい。旧・今川領を、武田から徳川色に変えなくてはならないのだから大変。
こそこそミッションを、1人の死傷者も出すことなく成し遂げて帰ってきた茂兵衛に対し、家康は家臣団を前にして、なんとうそつき呼ばわりで罵倒する。キツい。しかしその裏では、落胆する茂兵衛の元に小姓をよこし、植田家の家紋を兜に飾ることを許すのだ。
百姓上がりの男を、武家の前であからさまに褒めない、家康ならではの気遣い。それ以上に、主君の意を理解し、納得できる茂兵衛がまた素晴らしい。やはり自分に折り合いがつけられる男なのだ。
この信頼関係が、物語全体を背骨のように支えているのを感じる。この一本道ではないかもしれないが、それでも金の兜飾りのように、男の誇りに最短距離で直結しているんだろうなと思う。
私の胸にも、得体の知れないデザインの社章が付いているが…。
これは飾りだとかなぐり捨ててやるところだ。 -
5巻目は、家康と武田につなぎを取ろうとする妻女築山、息子信康の間に亀裂が!岡崎の武士たちも背後に存在。
クーデターがおこるやもしれない。
信長は絶対に許さない。
どうなるか!
どうも本物の武家にはなれない、慣れなくてもいいと、心で思う茂兵衛。 -
長篠の戦いで、ついに宿敵・武田を破った織田徳川連合軍。勢いをかって、遠江から武田勢の一掃を狙う家康だが、常に浜松衆や東三河衆ばかりが先陣を任されることに不満を募らせる西三河衆は、嫡子・信康を担ぎだし不穏な動きを見せていた。そんな揺れる家中をよそに、武田側の拠点である高天神城への補給路の寸断を命じられた茂兵衛は、森に籠って荷駄隊への襲撃を指揮することに。野に伏し山に伏して好機を待つが、ある日、間者と思しき男たちを捕らえる。戦国足軽出世物語、権謀術策の第5弾!