もうひとつの屋久島から (フレーベル館ノンフィクション)

著者 :
  • フレーベル館
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本棚登録 : 137
感想 : 25
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784577046258

作品紹介・あらすじ

1993年、日本で初めて世界遺産に登録された屋久島。この自然豊かな島のいたる所で、その11年前まで広大な原生林が伐採されていた事実があった!屋久島の過去・現在・未来にせまる、渾身のドキュメンタリー。

感想・レビュー・書評

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  • 『もうひとつの屋久島から』 武田 剛 | こどもの本 on the Web (月刊「こどもの本」2018年6月号より)
    https://www.kodomo.gr.jp/kodomonohon_article/15358/

    もうひとつの屋久島から 世界遺産の森が伝えたいこと  - 編集部ピックアップ|フレーベル館
    https://www.froebel-kan.co.jp/pickup/pickup5422.html

    もうひとつの屋久島から フレーベル館ノンフィクション 1 - フレーベル館
    https://www.froebel-kan.co.jp/book/detail/9784577046258/

  • 「もうひとつの屋久島」ってなんだろう?

    多くの人が屋久島と言われてまずイメージするのは、巨大な幹で地面にドシンと岩のようにたたずむ縄文杉だろうか?
    しかし著者は、そのような単一の屋久島像の殻を破ろうとして、屋久島の歴史と自然環境との両面から、屋久島の実像を描こうとしている。特に、屋久島の自然が残っているのは「当たり前」ではなかったことと、屋久島が誇る自然環境が縄文杉だけではないということが強調されている。

    もう少し詳しく見てみよう。
    今では信じられない話だが、江戸時代ころから、屋久島の大きく成長して材木としても良質な杉の木は、その立派さゆえに次々と切られていった。特に戦後から高度成長期にかけて、国主導で、建築材料として屋久杉をどんどん切ることが奨励された。
    そして今から書くことは重要だが、経済成長を背景に、当時は何百年も生きてきた杉の木を次々と切り倒すことを誰も悪いとは思わなかった。いや正確に言うと、ごく少数だが「それはおかしい」と思う人がいた。最初は多勢に無勢で、その人たちの声はほとんど非難または無視された。でも屋久杉が成長するかのように何年も時間をかけて少しずつ輪が広がっていったのである。

    つまり「もうひとつの屋久島」とは、少数者の意見が顧みられず、多数者によって目先の利益のために木を伐りつくされて丸はだかにされた屋久島の山々のことを言い含んでいるのではないのだろうか。事実この本では、その寸前にまで屋久島の自然が追い詰められたことが詳しく書かれている。
    -こう書くと、「そんなにネガティブに読まなくても…」と言われるかもしれない。
    でも「もうひとつのフクシマ」と言い換えれば、私が言わんとする意味はわかってもらえると思う。それに、日本の自然環境が近視眼的にあちこちで改変されてきた結果、自然は持続性を断ち切られて復元できずに退化し、あるいは自然とは似て非なるレジャーランドのような姿にされていることは、もう否定しようもない。

    この本を通して読めば、今日のように自然環境を守るという考えと、自分たちの生活上の幸せとを同列に考えるようになったのは、一部の“少数者”が数々の困難や誤解にもめげず、自分の正しいと思う道を忍耐と努力によって推し進め、長い時間をかけて共感をふくらませてきたからだとわかる。
    だから、自分の信念がなかなか共感を得られずめげそうになっている人は特に、この本を読めばいい。やはり「あきらめたらそこで試合終了だよ」だと、よくわかるから。

  •  世界遺産に登録されている屋久島。
     深刻な現実を切実に訴えるこの作品は、是非とも読んでほしいです。

  • 世界遺産に認定されて、その後島の環境が目まぐるしく変わったことについて、屋久島にルーツを持つ2世の同級生の話を聴いたことを思い出した。
    島という環境だからこそ、そこにしかないものがある。
    ただ、それは太古の昔から脈々と受け継がれてきたもので、一朝一夕でできたものでないことが多い。賞賛こそすれ、それを体験したいがために訪れる観光客のエゴについて、その時は考えさせられた。

    移住して屋久島発の発信を心に決めた著者は、かつての黒歴史についても触れ、それを紐解いている。生きていくための生業として屋久杉を伐採せざるを得なかった過去。環境保護と食い扶持はいつも相反しているようにも思え、その程よいバランスは難しい。生きていくための食い扶持、生態系サービスを享受するために、人はもっと謙虚に対峙せねばならない。その事実を身をもって知っている人たちは一体どれほどいるのだろうか。

  • 屋久島の森林伐採の歴史!2019年高学年課題図書。

  • 小学校高学年向けのノンフィクション。
    高学年の児童が、屋久島の自然の素晴らしさ、自然破壊とたたかってきた歴史、多くの観光客が訪れることで起きている課題など、様々な視点から屋久島について考えることができる一冊。

    屋久島と言えば、自然豊かな原生林、大きくて太い屋久杉、貴重な野生生物などが思い浮かぶ。

    本書は、屋久島の大自然を中心にしているが、ただ素晴らしい、貴重だ、宝だと書き続けているのではない。
    屋久島の抱える課題にページの大半をさいている。著者が一家で現地に移住し、島民の中で足で稼いでやっと得られた情報が満載だ。

    屋久島の木々が伐採され続けてきたことは知らなかった。守る会の人たちが懸命に訴え続けてくれたことに、感謝してもしきれない。

    屋久島の恩恵を受ける者の一人としては、もし観光で訪れることがあれば、トイレやゴミ、歩く場所など本当に基本的なことに注意して、太古の自然を愉しみたいと思う。

  • 屋久島といえば縄文杉をはじめとする屋久杉だと思っていたので、植生の垂直分布の方も重要な位置にあるとは知らなかった。

    世界遺産である事が価値の指標みたいな言い方がどうしても気に入らないし、どうしても疑問点が小学生っぽくて、綺麗な面だけでまとめられるもののみを見せられるのは苦手。

    今から批判を多くするけれど、問題提起自体は良いと思ってる!!内容について、実現が難しいから改善点があると感じた。あと偏った見方をさせてるような気がして。
    例えば管理人を置くべきという意見は良い面しか取り上げられていないけれど、管理人を置く方が利益が大きいのなら、こんなに大きな観光地だし利点しかないものをやらないはずない。何か理由があると思うのだけど、それを「私は管理人必要だと思う。専門家もこう言ってる。」だけで終わらせるのは見方を偏らせているように見える。
    屋久島専用のリュックがあれば良いという意見。多分専用のポケットを安心出来る位置に置くとしたら私が思いついたのはリュックの側面のペットボトル置きを拡張したようなものなのだけど、それだと周りの登山者に不快な思いをさせる部分はあんまり変わらない。リュックの内部に作ると、結局中身が溢れるのが不安。それに文中にもあるように、携帯トイレは軽い気分の観光客に心理的抵抗が大きいし、問題は多いはず。そんな簡単じゃない。そのあたりは技術者が考えろって事なのだろうけれど……。あまりに本にするには短絡的な気がする。

    京大総長の山極さんが出てきて、ゴリラ研究の第一人者という印象だったからヤクザルもやってるのは驚き。ゴリラのハーレム・同性愛の観察や子殺しの研究の人。

  • まだ屋久島に行ったことないが、世界遺産になるまでのいきさつや苦労などがよくわかる本。自然崩壊を守るマイノリティが最後まで戦ったことで屋久島が成り立つことがよくわかった。伐採が増えると人間ではできても自然では帰ってこないことがあるだと実感。奥深い本であった。小学生高学年でも読めるので読みやすい!!

  • 児童書だって一筋縄じゃいかない! 屋久島の今、昔の大変なこと、教わりました。
    ありがとう、この本を教えてくれて。
    ただ、キミの住んでる地区と屋久島の自然は規模が違うよ。
    「ボクの住んでる地区も自然いっぱいなので~」
    とかいってくれて。ありがとう。

  • 朝日新聞社を退職した著者、退職して屋久島に移住。そこのところから始まり、屋久島の歴史、課題を記載。

    ガイドブックなんかよりも、屋久島のことが十分わかるし、読みやすい。

    でも、これ読んでると、また屋久島に行きたくなったなあ〜。

    同時期に買った屋久島本の著者、長井三郎氏も少し登場。

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著者プロフィール

公認会計士 税理士 HLB Meisei有限責任監査法人 統括代表社員
青山監査法人(PriceWaterhouse)を経て、2005年5月に明誠監査法人(HLB Meisei有限責任監査法人)を設立。その後現在に至るまで、金融商品取引法及び会社法に基づく法定監査、米国基準や国際財務報告基準に基づく監査、その他の保証業務やコンサルティング業務などに幅広く従事。訳書に「ActiveData For Excelを用いたデータ監査入門」(著者:ミッシェル・シェイン、リチャード B. ランツァ)

「2020年 『ExcelとActiveDataで簡単にできる!監査のためのデータ分析』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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